ファンに“ささる”仕掛けでリピーター獲得目指すホテル

クラフトビールモータースポーツ。幅広い顧客層ではなく、あえて特定の趣味を持つファンにターゲットを絞ったホテルがいま次々にオープンしています。

ビール好きに「天国」を 醸造所にホテル併設

静岡市にあるクラフトビールメーカーは7月、醸造所の向かい側にホテル「THE VILLA & BARREL LOUNGE」を併設しました。

一見ふつうの客室ですが、ビールを注ぐタップが備えつけられ、客が自分で注げるようになっています。1部屋当たり10リットルまで飲める宿泊プランです。

男性客は「泡のクリーミーな感じやフレッシュな感じ、新鮮なビールが飲める環境はほかにない」と話し、味わっていました。

クラフトビールブームで競争が激しい中、このビールメーカーは醸造所の見学を積極的に受け入れるなどして自社のファンを増やしてきましたが、コロナ禍でままならなくなりました。

行動制限の緩和に合わせて、よりファンとの距離を縮めたいとホテルの営業に踏み切りました。

泊りがけで訪れた客は、ビール造りのこだわりなどスタッフとの話に花を咲かせて知識を深めることもできます。

ホテル支配人 黒木龍太さん
「ビール好きには天国のようだとコメントをいただいている。よりコアなファンの方を少しずつ増やしていく感じでやっていきたい」

サーキット敷地内にホテル 車好きとその家族をファンに

車好きに“ささる”ホテルも。外資系の大手ホテルチェーンは10月、静岡県小山町のサーキットの敷地内に「富士スピードウェイホテル」をオープンさせます。客室の窓を開けると、目の前には勝負どころのヘアピンカーブ。部屋にいながらレースを楽しめます。

ガレージ付きの客室もあります。自分の車を好きなだけ眺めていたいというファンに応えるためで、車と客室との間はガラス張り。愛車を最高の角度で眺められるといいます。

一方でこのホテルは、温泉をひいた大浴場やエステサロンもつくりました。

建設前にファンから聞いた要望の中には、車に興味のない家族も一緒に楽しめる施設を求める声が少なくなかったからです。

ホテル 正木剛志朗さん
「どのホテルもファンを増やしたいと思っている。その時にやりがちなのが『私のホテルはこんなにすごい』という話に終始集中してしまうこと。お客様がそもそも持っている興味や趣味に寄り添っていくことで、新規顧客の開拓にもつながるのではないか」

「コロナ禍でホテル内で過ごす時間は増える」

こうしたファンにささるホテルは広がっていくのか、旅行業界に詳しい専門家は次のように話します。

航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん
「コロナ禍でホテルの敷地内で過ごす時間は増える傾向にあり、そこでどれだけ楽しめるかが求められる。万人受けではなく特定の人に“ささる”ことで熱心なリピーター獲得につながるのではないか」

【2022年9月12日放送】

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