ロンドンの酒蔵で造る日本酒の味は?ファンを増やし市場拡大へ

ロンドンで日本酒造りに取り組むイギリス人がいます。ウイスキーのイメージが強い国で、日本酒の愛好家を増やしていこうと挑戦しています。

ロンドンにある日本酒の酒蔵

イギリスの首都ロンドンで開かれた世界最大級のワインの品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」には、日本酒部門も設けられています。出品された日本酒の銘柄は1600を超え、審査員がそれぞれの味の特徴を議論していました。

出品された銘柄の一つ、純米吟醸酒「KAZE」は、ロンドンにある酒蔵「KANPAI」で造られています。試飲させてもらうと、果実のような甘みがありました。

ロンドンで造られている純米吟醸酒「KAZE」
酒蔵「KANPAI」

代表のトム・ウィルソンさんは日本への旅行をきっかけに日本酒に魅了され、イギリスでの日本酒造りを始めました。

トム・ウィルソンさん

こだわりの醸造工程

ウィルソンさんの酒蔵では、使用する米の9割以上は日本産です。

取材した日の米は富山県産の『五百万石』

水にもこだわっています。ロンドンの水はミネラルが多い硬水で、低温で時間をかけて発酵できるよう温度管理を徹底しています。

トム・ウィルソンさん
「ミネラルが多いと酵母が活発になる。温度が高すぎたり発酵が進みすぎたりすると、苦みや渋みが出てしまう」

日本酒×果実酒やリキュール 新しい味をPR

イギリス人にもっと日本酒を知ってもらおうと、ウィルソンさんは、日本酒とほかのアルコール飲料の要素を組み合わせる工夫を続けています。

例えば、イギリスで人気の「サイダー」と呼ばれるりんごで造った発泡性の果実酒を、日本酒造りに使われる酵母で発酵させ酒かすを混ぜることで、新しい味を生み出しました。

ロンドンのバーではカクテルにも挑戦しています。こうじ米を使い、純米酒と同じような製法でウィルソンさんが造った特別なリキュールが使われています。

バーテンダーは「リキュールが持つ香ばしさや、こうじの香りは、とてもユニークなもの。うま味と甘みのバランスがすばらしく、客はいつも驚いている」と話します。

ウィルソンさん
「さまざまなスタイルの飲み方を提供する試みが重要だと思う。あらゆる種類の日本酒を売り込み、消費者にもっと楽しんでほしい」

市場拡大に期待

日本酒の2022年の輸出額は、3年前に比べ約2倍になるなど、輸出拡大が続いています。

ウィルソンさんの酒蔵を訪れた日本の「賀茂泉酒造」の前垣壽宏社長も、イギリスでの市場拡大に期待を寄せています。

現地を訪れた日本の酒蔵 前垣壽宏社長
「日本からの輸出が増えることも必要だが、現地で生産される日本酒が同時にあることも大切なこと。それが両方あわさって日本酒の楽しさが広がっていくと思う」

日本生まれの日本酒と海外生まれの日本酒。お酒の味がさまざまに広がることで、国際的な市場のすそ野が拡大していくかもしれません。
(国際部 大石真由)
【2023年5月25日放送】
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