インフレでペットが危機!保護犬急増でフードバンク設置

記録的なインフレに見舞われているイギリス。コロナ禍で人気が高まったペットたちの生活が脅かされています。

物価約40年ぶりの高水準 デモやスト広がる

イギリスの首都ロンドンで「いますぐ適切な賃金を!」と声を上げる人々。エネルギーや食料品の価格高騰を受け、郵便局員やバス運転手、ゴミ収集員などさまざまな職業の人たちが、各地で賃金の引き上げを訴えるデモやストライキを行っています。

消費者物価指数の伸び率は7月に前年比10%を超え、約40年ぶりの水準に達しました。

イギリス政府は9月、日本円で9兆円を超える光熱費の抑制策のほか、大型減税を打ち出すなど対応に追われています。

ロンドン市内で話を聞くと、ある男性は「政府はもっと対策するべきだ。状況はどんどん悪くなっているのだから」と話し、女性の1人は「政策はよいことだが、最も困っている人たちにもう少しお金をかけてほしい」と話しました。

施設に保護される犬や猫が続々

生活が苦しい人が増える中、思わぬところに影響が広がっています。ロンドンにある、犬や猫を保護している団体「バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム」では、経済的な理由でこれ以上ペットを飼うことができないという相談が相次いでいるといいます。

この団体の施設に「ペットを引き取ってほしい」という依頼は2022年に入り半年で約1200件に上りました。21年の同じ時期と比べ3割余り増加しました。

施設が7月に引き取ったイングリッシュ・コッカー・スパニエルは、飼い主が運転していたとみられる車から投げ出され、ロンドンの町をさまよっているところを保護されたといいます。

保護されたイングリッシュ・コッカー・スパニエル。「ハリエット」と呼ばれている。

コロナ禍では、自宅で過ごす人が増えてペット人気が高まりました。しかし今は、引き取り手を探すのに苦労する状況だといいます。

バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム レベッカ・マカイバーさん
「ペットを手放す人の増加は、生活費の危機が原因だと考えている。冬が近づくにつれ助けを求める人が増えることを非常に懸念している」

ペットのフードバンクが誕生

ペットを手放す人が増える状況に歯止めをかけたいと、飼い主を支援する「ペットフードバンク」も誕生しました。

 

イングランド北部のグリムズビーでは、コンテナを週2日開放しペットフードを無償で配布しています。

運営はすべて企業や個人の寄付で賄われています。需要が急増しているとして、現在の4か所からさらに拡大する予定です。

飼い犬を連れてペットフードバンクを訪れた男性は「必要なものを我慢して、この子たちの食べ物を買っていた。(支援は)とても助かっている。私は年金で暮らしているから」と話しました。

ブルー・クロス病院・ペットフードバンク クリスティーナ・プールさん
「まだ私たちのところに来ていない多くの家庭は、出費に耐えられるかどうか瀬戸際に立たされていると思う。ここの支援はペットにとって文字どおり“命綱”だ」

イギリスの統計局のデータでは、コロナ禍が続いていた21年はペット関連の支出が日本円で約1兆5000億円と過去最高となり、ペット産業が活況を呈していました。しかし王立動物虐待防止協会によると、22年は捨てられたペットが7月までに前年の同じ時期と比べて24%増加しました。記録的なインフレが動物たちにも深刻な影響を及ぼしています。
(ロンドン支局 記者 松崎浩子)
【2022年9月29日放送】
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