廃棄される「酒粕(かす)」をブランド豚に!秋田の酒蔵が挑戦するSDGs

寒さの厳しい冬は日本酒造りの最盛期です。酒を搾った時に出る「酒かす」は甘酒を作る時などに使いますが、生産者にとっては廃棄処分にかかる費用が重い負担となってきました。

酒どころ・秋田では、酒かすを豚のえさとして活用し新たな利益を生み出す取り組みが始まっています。

酒かす廃棄に悩む

酒を搾った時に出る酒かす

酒かすは酒を搾った時に必ず出るもので、秋田県大仙市の酒蔵「出羽鶴酒造」では、1日で約400キロの酒かすが出ます。

料理などに使うよう販売もしていますが、こうじ菌がメラニン色素を発生させるため、数日で黒ずみが出てきます。食べるには問題ないものの見た目が悪く売り物にはなりません。

黒ずみが出た酒かす

そのため大部分は費用をかけて廃棄しています。秋田県内の酒蔵から廃棄される酒かすは年間400トン以上に上ります。

出羽鶴酒造 伊藤洋平 社長
「われわれとしても無駄にはしたくないし、酒かすをどう活用していくか課題になってくる」

栄養価高く、えさに活用 「ばくばく食べる」

この課題を解決してくれるのが、豚です。

秋田県内の養豚場で、酒かす入りのえさが使われています。通常のえさよりも栄養価が高く、豚の食いつきもよいといいます。

養豚業者 細川拓也さん
「すごくばくばく食べるなあ、という印象があって、太り方というか育ち方がすごくまるっと育ってくれて、生産者から見てもおいしそう」

粉末化する機械を導入した酒蔵

秋田県湯沢市の酒蔵「秋田銘醸」は、えさ用の酒かすを提供しています。年間約100トンの酒かすが出ますが、豊富なたんぱく質など栄養価の高い酒かすを無駄にしたくないと、2022年から活用に乗り出しました。

この酒蔵は新たに、酒かすを乾燥させて粉末にする機械を導入しました。水分を取り除いて保存性を高めることで使いみちの幅を広げました。

乾燥させ粉末にする機械

ブランド豚の生産拡大を後押し

酒かす入りのえさで育てた豚は「ほろよいとん」のブランドで販売されています。

サシが細かく入って肉質が柔らかく、甘みのある脂が好評だそうです。試食してみると、ほんのり甘みがあって脂くどくなく、ぱくぱく食べられました。

「ほろよい」という名前がついているものの、酒かすを乾燥させる段階で熱でアルコールが飛ぶため、豚たちが酔っ払うことはありません。

この酒蔵は今後、処分に悩むほかの酒蔵からも酒かすを買い取り、ほろよいとんの生産拡大を後押しすることにしています。

秋田銘醸 市橋杏理さん
「廃棄物もなくなり、SDGsにつながっていくと思う。異業種の方ともいろいろ連携できるので、地域の活性につながるのでは」

これまで捨てていたものが、新たな利益を生むこの取り組み。有名な酒蔵の酒かすというブランド価値を打ち出すとともに、利益を出すには一定の量が必要になるということで、酒蔵どうしの連携が必要になります。

その連携が順調に進み、今では30軒の酒蔵が酒かすの活用に取り組んでいるということです。地域発の新たなSDGsの取り組みとしても注目されます。
(秋田局 丹治亮介)
【2023年1月13日放送】
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