

台湾の世界的な半導体メーカー、TSMCが進出する熊本県では、工場建設に伴い台湾から大勢の人たちがやって来ます。いま課題になっているのが住まいの確保です。
社員寮と事務所を探しに来日
台湾の半導体関連企業で日本事業の責任者を務める呉勁毅(ご・けいき)さんは、熊本のTSMCの新工場でガス処理設備のメンテナンスをする予定です。

呉勁毅さん
「大きい企業が短い時間で出来て、すばらしい。期待の気持ちがいっぱいある」
TSMCは熊本で2024年12月までの生産開始を予定していて、呉さんはことし4月、社員寮と事務所を探そうと来日しました。取材した日は、不動産業者と物件を見て回りました。

相次ぐ企業進出 地価が高騰
熊本ではTSMC向けだけで約1000戸の住宅が必要になると見込まれています。
県内外から企業進出が相次いで地価が高騰し、新工場ができる菊陽町では地価上昇率が全国平均を大きく上回りました。

熊本市の不動産業者 中川ますみさん
「土地の価格、相場も2倍以上。いま本当に“いいバブル”にさしかかっていると思う」
風水に交通渋滞 家探しに難しさも
呉さんの住まい探しには難しさもありました。1つ目が文化の違いです。台湾では、商売や住まい選びに風水を重視する人が少なくないといい、物件の条件が合わないこともあります。

2つ目の問題が交通渋滞です。工業団地の周辺ではすでに渋滞が深刻です。
24時間動く半導体工場では、トラブルが起きた場合すぐ駆けつける必要があり、アクセスの良さが重要です。

呉さんはこの日、7つの物件を視察しました。工場に近く条件のいい土地を案内され、30分ほどで購入を決めました。価格は数千万円しますが、ビジネスのスピードが速い台湾ならではの即決でした。
不動産相場上昇で懸念の声も
TSMCの新工場の生産開始まであと1年半余りとなり、世界的な企業の進出でまちの姿が大きく変わろうとしています。
呉さん
「台湾(の台南)も同じ状況だった。前は全部が畑。今は建物に変わった。将来は熊本も、日本のもっと大きな都市になると思う」
熊本のJETRO(ジェトロ)=日本貿易振興機構によると、熊本に進出を検討している台湾企業は現在10社あるということです。
一方地元では、不動産相場が上がることで一般の人の住宅購入に影響が出ることに懸念する声も出ています。地元でメリットが感じられるよう、官民の対応が求められそうです。
(熊本局 馬場健夫)
【2023年6月2日放送】
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