物価や燃料費の高騰 “格安カーリース”で暮らしを支える

地方では特に、自家用車が生活に欠かせません。しかし記録的な物価や燃料費の高騰で、車の維持が難しいと感じる人もいるのではないでしょうか。宮城県石巻市では、経済的な理由で車を維持できない人などに格安で車を貸し出す取り組みが始まっています。

ガソリン高騰「車を維持できない」

宮城県東松島市の髙橋雅彦さん(63)は、2022年12月から車を借りています。工事現場の警備の仕事をしていて、片道50キロほど離れた現場に通勤するため車は欠かすことができません。

しかし収入の不安定さやガソリン代の高騰で、以前乗っていた車は維持できなくなりました。「さみしいけど、維持できないのでは(車を)持っていても税金がかかるし」と話します。

髙橋さんが以前乗っていた車

髙橋さんは、格安で車を貸し出す支援を手がける石巻市の社団法人「日本カーシェアリング協会」を頼りました。車を借りたことで、毎月の維持費が半分以下に抑えられたといいます。

髙橋さんが借りている車。維持費は半分以下になったという

寄付が支える“格安”の取り組み

この社団法人が行っている取り組みが「生活お助けカーリース」です。利用料は軽自動車の場合、毎月5500円。契約期間は原則1年です。

利用者は自動車保険への加入が必須で、ガソリン代や駐車場代などの支払いも必要です。一方、車検代や自動車関連の税金などは運営側が負担します。

安くできる秘けつは「寄付」にあります。貸し出す車は、高齢で免許を返納した人や企業からの寄付でまかなわれています。オイルやタイヤも企業から支援を受けています。

オイルやタイヤも企業が支援

日本カーシェアリング協会 石渡賢大さん
「『車があれば仕事に行けるのに』とか『就職活動ができるのに』という悩みを持つ方に、お金をためて自分の車を持ってもらうのが目標になっている。そこ(購入する)までの、つなぎをさせてもらうのが、この車」

震災後の支援から、経済的に困っている人の支援へ

この社団法人が支援を始めたきっかけは、東日本大震災でした。その後も、災害で車を失い困っている人たちを支えようと取り組みを続けています。

そして支援の仕組みを、経済的な理由で車が必要だけれど維持したり購入したりするのが難しい人にも広げたのです。地域の自立相談支援機関とも協力して、家計のやりくりなど暮らしの再建もサポートしています。拠点を九州にも置いて、これまで40人以上を支援してきました。

震災後の支援の様子

車を借りて仕事を続けている髙橋さんは、少しずつ貯蓄もできるようになったといいます。

車を借りている髙橋雅彦さん
「車があるから仕事もできて、お金も収入もある。どこに行くにしても車社会なので、早く自分の車を持てるようにしたい」

この社団法人は、この取り組みを今後さまざまな地域に広げていきたいとしています。ただ寄付で成り立っているので、どこまで広げられるか課題もあるということです。
(経済番組 新野高史)
【2023年4月18日放送】
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