物価高 ひとり親の副業は

物価上昇が約40年ぶりの水準となる中、ひとり親の人たちの暮らしを「副業」で支えようという会社に相談が相次いでいます。

ひとり親に副業を提供 登録者1年で5倍に

静岡市にある会社「ヴァリオス」は、ひとり親に副業を提供しています。全国からの登録者は約1500人で、2022年の1年間で5倍余りに増えました。

取材した日は、離婚して間もないという30代女性が副業を求めて相談に訪れていました。

相談に訪れた人
「自分だけの収入で生活をしていかないといけないとなった時に、やっぱり収入面ですよね、子どもに我慢をさせたくない」

この会社は、SNSの運用や動画編集など自宅でできる仕事を企業から請け負い、ひとり親の人たちに委託します。

委託された仕事は2人1組で進めます。子どもが急病の時などに互いにフォローできるようにするためです。収入は1人当たり平均で月1万円~3万円ほどになるということです。

4年前に起業した、この会社の代表の石 光さんは、自身もシングルマザーだった経験から同じ境遇の人たちを支えたいと考えたといいます。

ひとり親に副業を提供する会社 代表 石 光さん
「シングルマザーは子どもを夜置いて働きに出られないし、預けても夜間保育は高い。あと1万円でも2万円でもいい。その1万円、2万円が、いま物価高騰してしまっている部分を補えれば、今までどおりの生活ができる」

代表の石 光さん

物価上昇も 子どもへの支出減らしたくない

この会社で22年8月から副業をしている30代の女性は、小学3年生の長男と、入学を控えた5歳の次男を育てています。

本業は自宅近くの建設会社の事務職ですが、給料は上がっていないといいます。

副業をしている30代女性
「電気代、光熱費もだけど、野菜が高いからすごく大変だし、肉も魚も(食卓に)出る頻度が少なくなった」

副業を始めて半年近くたち、月に数万円を副業で稼ぐようになりました。物価高の影響で子どもの習い事の月謝も上がっていますが、子どもへの支出は減らしたくないと話します。

副業をしている30代女性
「子どもが『やりたい』と言ったことに関して『分かった』とすぐ言えるようにしておきたい。シングルだから貧しい生活が当たり前みたいになっているのは嫌なので、『お母さん、頑張ればこれだけできるぞ』って思ってほしい」

「副業せざるをえない状況を考える必要がある」

こうした生活のための副業について、副業を研究している東洋大学の川上淳之教授は次のように話しています。

東洋大学 川上淳之 教授
「収入が必要なので副業を持てるようになったというのは、ある程度短期的な解決にはなる。ただ一方で同時に、副業を収入のために持たざるをえない状況というのが、一体どういう状況を表しているのか、政府などがしっかり考えていく必要があるのではないか」

川上淳之教授

副業については長時間労働への懸念などもあり、川上教授は「本業の待遇改善も含めて考えていく必要がある」としています。
(経済番組 村上由和)
【2023年1月24日放送】

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