トルコ 通貨安とインフレの行方は?

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中東のトルコで、自国通貨「リラ」の価値がドルに対して過去最安値の水準になっています。中央銀行がエルドアン大統領の意向に沿って、2023年2月まで金利を引き下げ続けたことなどが要因です。

通貨安に伴って2024年6月のインフレ率は前年同月比71%余り上昇し、経済にさまざまな影響が出ています。

日本も円安による物価高が財布を直撃していますが、トルコの現状はどうなっているのでしょうか。

外国人観光客が増加

トルコの最大都市イスタンブールは、通貨安の影響で、多くの外国人観光客でにぎわっています。

観光客の一人は次のように話しました。

トルコ文化観光省によると、外国からの旅行者は2024年1月~5月に1500万人余りとなり、2023年の同じ時期に比べて12%以上増えました

自動車に駆け込み需要

ある自動車販売店では、値上がりする前に車を買おうと、客の注文が相次いでいます。

客から価格についての問い合わせを受ける担当者

ディーラーの業界団体によると、こうした駆け込み需要で、トルコ国内の新車の販売台数は2023年に初めて100万台を超えました

自動車販売店 販売担当者
顧客は将来同じ値段で車が買えなくなることを知っている。自分の予算に見合った車があれば、彼らはその機会を見逃さない

鶏肉「値段10倍」、家賃高騰 市民生活は危機的に

一方、インフレで市民生活はすでに危機的な状況に陥っています。イスタンブールの市場には、割引になった食品を求める買い物客が途切れることなく訪れています。

市内で、夫と子ども2人と暮らすバヌ・カラスさん(40)は精肉店を訪ね、鶏むね肉のこまぎれを100リラ(約500円)分注文しました。

精肉店を訪れたバヌ・カラスさん
買ったのは日本円で約500円分の鶏むね肉こまぎれ

この精肉店では3年間で鶏肉の値段が10倍になったといい、カラスさんは必要な分だけ少しずつ購入しているといいます。

料理するカラスさん。「鶏肉が減った分たまねぎでかさ増ししている」

住居費も高騰しています。物価高に伴って家賃も上昇するため、6月に大家から60%の値上げを通告されました

バヌ・カラスさん
イスタンブールを離れ、夫の故郷に移り住むことも考えたが、どこも状況は同じ。だから大家の提案を受け入れるほかない

専門家 「低所得者に支援を」

トルコ経済に詳しいエコノミストは、政府はインフレの影響が大きい低所得者層への支援を拡充すべきだとしています。

トルコ経済に詳しいエコノミスト アルダ・トゥンジャ氏
(いまの経済状況では)彼らが生計を立てるのは困難だ。強力な改革が必要だ

利上げに転換も物価高止まり

日本では物価高の中で低金利が続いていますが、トルコの中央銀行は2023年6月、インフレ抑制のために大幅な利上げに転じましたそれでも物価は高止まりしているということです

日本とトルコでは事情が違うものの、金融政策がいかに経済に大きな影響を与えるかを示しています。
(イスタンブール支局長 佐野圭崇)
【2024年7月4日放送】

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