給与の“デジタル払い”解禁で何が変わる?くわしく解説

給与はこれまで、銀行振り込みや手渡しで支払う必要がありました。新年度からは、従業員が同意すれば、「〇〇ペイ」などの決済アプリに給与を支払うことが認められるようになりました。

デジタル払いのメリットは?

デジタル払いのメリットは何でしょうか。スマホの決済アプリに直接、給与が入ってくることで、銀行からのチャージが不要になるほか、何にいくら使ったか分かりやすくなる企業からすると銀行振り込みの手数料が抑えられることで、従業員が給与を複数回に分けて受け取れる可能性があるなどの利便性が指摘されています。

動き出した企業も

給与のデジタル払い導入に向けて動き出している企業もあります。東京・港区のIT系コンサルティング会社「ピアズ」は、デジタル払いに対応しようと給与口座の振り分けシステムを導入。

社員は自分の給与の何パーセントを決済アプリで受け取るか、アプリを使って決めることができます。残りはこれまでどおり銀行口座に振り込まれます。

給与口座の振り分けシステムの見本画面

社員
「今までの形とは全く違う給与の支払い方なので、楽しみ」

別の社員
「ふだんから電子マネー決済とかQRコード決済を使っているので、結構使いやすいのではないか」

この会社は、給与のデジタル払いが定着すれば、将来的には週払いなど柔軟な給与の支払いもできるようにしたいと考えています。

IT系コンサルティング会社 堂前晋平 執行役員
「(デジタル払いを)使う方向性にしたほうが、社員の満足度は非常に高くなっていくのではないか。福利厚生の一環のような位置づけとして捉えて、主導していく」

どの決済アプリが対応?

どの決済アプリが給与のデジタル払いに対応するのでしょうか。今のところ、「PayPay」「楽天ペイ」「d払い」「au PAY」といった大手の事業者は参入する方針を示していて、厚生労働省の審査を経て数か月後にはデジタル払いに対応する見通しです。

安全対策は?

利便性が期待される一方、街の人からは安全面への不安の声も聞かれました。

女性会社員 50代
「デジタルって不安要素もそこそこあるので、もしシステムに何かが起こった時に全部なくなっちゃうんじゃないか」

男性会社員 30代
「サイバーアタック(攻撃)とか、最近いろいろニュースを見ているので、そういう懸念はあるかなと思う」

安全対策はどうなっているのでしょうか。まずデジタル払いで受け取れる金額は100万円までとされていて、万一利用している「〇〇ペイ」の事業者が破綻してしまった場合、その100万円は保護されます。

不正なアクセスによる出金などがあった場合は、利用者に過失がなければ、全額が補償されるということです。

安全対策が普及の壁に?

一方、保護の仕組みをしっかりさせることが普及の課題になるとも指摘されています。そもそも「〇〇ペイ」の事業者は、金融庁の法令によって顧客の資金を100%保護するための資金確保や保険などの対策が義務づけられています。

それに加えて、新年度からの給与のデジタル払いでは、厚生労働省が1つのアカウント当たり100万円を保証するように定めています。

業者にとっては二重の負担が生じることから、新規参入のハードルになるのではと指摘されています。

キャッシュレス決済に詳しい堀天子弁護士は、デジタル決済の期待と課題面について、次のように話しています。

堀天子 弁護士
「働いた分をどのような手段で受け取れるのか、いつ受け取りたいのかについて、労働者の選択が増えるという意味では大きな前進だ。
安全性が確認されたあとは、コストがかかる部分や課題である部分は見直して、より使い勝手のいい法律になっていくといいと思う」

安全性を守りながら普及を進められるか、まずはその点に注目です。
【2023年4月3日放送】

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