微力だけど発電します

太陽光発電や風力発電という自然エネルギーはよく知られていますが、新たな発電技術の研究が今、進んでいます。わずかな電力ではあっても、可能性を秘めているというその技術。一体、何から発電するのでしょうか?

植物発電を「災害時の非常用電源に」

イルミネーションの配線をたどると、土の中に…

東京・世田谷区で3月初めに開催された発電技術のイベント。植物を光で飾るイルミネーションの配線は、なんと土の中から出ています。「植物」と「土」が発電する「植物発電」です。

土の中には、マイナス極の役割を果たすマグネシウムと、プラス極の役割を果たす備長炭が入っています。

仕組みを詳しく見てみましょう。植物は成長する時、根から土にデンプンなどの糖を放出します。すると微生物の活動が活性化して、土の中にマイナスの電子が発生します。

ここに電極としてマグネシウムと木炭を入れると、電子が移動して発電するのです。

電圧は3.3ボルトで、1.5ボルトの電池の約2本分に相当します。植物に水をかけると、イルミネーションの光が強くなります。

東京・府中市の商業施設では、災害時に停電しても客を誘導できる明かりとして、この植物発電を導入しました。

商業施設に導入された植物発電

植物発電を共同開発する会社「グリーンディスプレイ」 細川理子さん
「災害があった時に、植物発電から電源をとって携帯を充電するとか。非常用の電源として使えるような未来を描いて、今は研究を日々進めている」

湿度の変化で発電する“半永久的な”電池

国の研究機関でも、意外なものから発電する研究が進められています。

空気中の湿度の変化を利用して発電する「湿度変動電池」

産業技術総合研究所が研究しているのは、空気中の湿気の変化を利用して発電する「湿度変動電池」です。電池の中の水が蒸発したり、逆に水分を吸収したりする時に、電圧が生じるようにつくられています。

湿度40%の環境でモーターにつないでみると、徐々に速度を上げて回り続けます。そして湿度を8%下げ、32%にして乾燥させると、発電量が上がり回転速度が約1.3倍になりました。こうした湿度の変化を生かせば半永久的に発電するといいます。

微力ですが、わずかなスペースがあれば発電できることから、この研究機関ではガスや水道の使用量を無線で送信するセンサーなどに応用しようとしています。

産業技術総合研究所 駒﨑友亮 研究員
「メンテナンスフリーで、そのまま置いておいても湿度の変化で発電できる。非常に利便性の高いIoTのシステムが実用化できるのではないか」

現在は太陽光や風力に代わるほどの発電はできませんが、「植物発電」は商業施設やレストランで実際に使われ始めています。微力でも、長時間、安定した発電ができれば、使いみちが広がってくるかもしれません。
【2023年3月6日放送】
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