秋田 洋上風力発電をビジネスチャンスに!

再生可能エネルギーとして普及が期待される洋上風力発電。国内で初めての大規模な商業運転が2022年12月、秋田県で始まりました

地元の企業の参入はまだ一部にとどまっていますが、今後のビジネス獲得に向けた動きが活発になっています。

「促進区域」最多の秋田 2030年までに あと100基

秋田県の能代港に設置された直径120メートルの風車。秋田県沖は、年間を通した風の強さや海底の地形が洋上風力発電の建設に適しているとされています。

このため国は、秋田県内で全国最多となる4つの海域を「促進区域」に指定2030年までに、あと100基以上の建設が計画されています

「楽しみしかない」 先行投資した地元機械メーカー

地元企業も大きなビジネスチャンスとして参画を目指します。秋田県由利本荘市にある従業員80人ほどの機械メーカー「三栄機械」は飛行機やロケットなどの精密な部品を生産してきましたが、最近は風力発電の分野に力を入れています。

その理由の一つが、コロナ禍による影響でした。

機械メーカー 齊藤民一 会長
「コロナで航空機産業が大打撃。その分を風力で積極的にやっていこうと」

この会社では、「ナセル」と呼ばれる風車の心臓部に使う部品の受注を目指しています。すでに実績のある陸上の風車に比べ、洋上風力発電は風車が大きく部品も大型になります。

「ナセル」と呼ばれる風車の心臓部(矢印の部分)に使う部品の受注を目指す

そこで会社は、年間売り上げの2割ほどに当たる数億円をかけて大型の機械を導入するなど先行投資に踏み切りました。

機械メーカー 佐々木昭二 営業部長
「(不安はない?)不安はありません!楽しみしかありません!」

広がる商機 「地域の仲間と」獲得なるか

風車を製造するアメリカ企業のプロジェクト責任者(右)が視察

22年11月には、風車を製造するアメリカ企業「GEリニューアブルエナジー」のプロジェクト責任者を務める加藤圭さんが、会社を視察に訪れました。

会社は、大きな部品も高い精度で製造できるとアピール。「大手さんは(三次元測定機を)持っているけど、中小企業で持っているところは限られる」と強みを訴えました。

これに対しアメリカ企業からは一定の評価が得られました。さらに、部品の製造に加えて、部品を風車に据え付けるために必要となる巨大な機器「治具」をつくってみないかと打診されました。

「治具」(丸で囲った部分)の製造も打診された

しかし、この治具は30~40トンあるといい、製造にはさらに広い敷地と大きな設備が必要です。

会社は今後、ほかの中小企業とも協力しながら可能性を探っていきたいとしています。

機械メーカー 齊藤 会長
「この地域の仲間と何ができるかということをみんなで考えながら、参画していくことが非常に大事なのかなと思う」

洋上風力発電は関連産業が多いことなどから新たな成長産業として期待されています。一方で、海の環境や漁業などへの影響を心配する声もあり、そうした声にも応えながら広げていく必要がありそうです。
(秋田局 中尾絢一)
【2023年1月18日】
あわせて読みたい