非正規雇用で働く人の春闘 賃上げ広がるか

記録的な物価高となる中、2023年の春闘で焦点の一つが非正規雇用で働く人の賃上げです。賃上げが実現しにくい背景として、労働組合に加入する割合が推定で8.5%と非常に少なく、交渉が難しいという現状があります。

ことしは、非正規雇用で働く人たちが一斉に声を上げる新たな動きが起きています。

一律10%の賃上げ求める 個人加入の16労組

飲食店や学習塾など非正規雇用で働く人々とその支援者が2月、東京都内のオフィス街で声を上げました。求めているのは一律10%の賃上げです。

この運動を呼びかけたのは、個人で加入できる全国16の労働組合です。今回、初めて合同で賃上げを求めていくことにしたといいます。

参加者は、飲食業、教育分野、小売業、製造業、サービス業、ITなど幅広い業種から約300人に上ります。

運動を呼びかけた労働組合による会見(2月15日)

飲食店で働く男性
「春闘の運動から非正規雇用者が置き去りにされることがないように、政府、社会に訴えていきたい」

運動を呼びかけた労働組合の一つ「総合サポートユニオン」 青木耕太郎 共同代表
「非正規雇用は有期雇用で立場が非常に不安定ということもあるので、1人では言いづらいことを、みんなで『同じ思いだよね』ということを確認しながら要求していく」

30代 手取り19万円 「要求し続けることが大切」

コールセンターの契約社員で、東京都内で暮らす30代の女性は、今回この運動に参加しています。時給は1590円で、約5年間の勤務期間で上がった時給は190円です。

毎月の手取りは19万円前後。暮らしに余裕はなかったものの何とかやりくりしてきました。

契約社員の女性のスマホに通知された振込額

しかし、これまでにない物価高に直面し、光熱費だけでも月5000円近く上昇しました。食費も上がり貯金を取り崩さなければならないといいます。

コールセンターの契約社員の女性
「ぜいたくはしていなかった。その状態で今またさらに苦しくなっている。正直どうすればいいの、と思ってしまう」

この女性は社内で賃上げについて相談できる場がなかったといい、個人で加入できる労働組合に加わり、支援を受けて会社に賃上げを求めました。

会社からは「対応しかねる」という回答が返ってきました。今後も団体で交渉を重ねていく予定です。

個人で加入できる労働組合で打ち合わせを行う女性

コールセンターの契約社員の女性
「だめだから『分かりました』と引き下がるのではなく、それでもまだ言い続けないと。要望し続けることが多分大切なんだと思う」

深刻化する人手不足 人件費抑制に頼れば「経営成り立たなくなるリスク」

専門家は人手不足を踏まえ、非正規の人を含めた賃上げに企業が向き合う必要があると指摘します。

大和総研 シニアエコノミスト 神田慶司さん
「企業は人件費を圧迫、抑えつけることで何とか競争力を維持できたが、今や人手不足が深刻化しているので、そうしたこと(人件費の圧迫)をすると、せっかく働いている方が会社を辞めてしまう。経営が成り立たなくなるリスクが高まっている。
企業経営の方向性としては、賃上げをするという前提で、いかにそれに応えられる価格転嫁をするか、より良いものを売れるか、そこが問われている」

企業側が賃上げにどう向き合い、応えるのか、注目されます。
(政経・国際番組部 豊島あかり、社会部 寺島光海)
【2023年2月21日放送】
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