人手不足で営業できない飲食店も なぜ?背景を詳しく

新型コロナ対策の行動制限の緩和などで、飲食業や観光業などの売り上げが回復してきました。一方、人手不足が深刻になっています。

需要は回復も… 営業できない飲食店

福岡市中心部の商店街では、夜の飲食需要が徐々に回復してきています。しかし店の外には、そこかしこに「アルバイト急募!」「スタッフ募集中」などと書かれた紙が貼ってありました。

ある飲食店はシャッターが閉められ、「人手不足」で夜間の営業ができないという貼り紙がありました。

この店は長崎ちゃんぽんが定番メニュー。日中に訪ねるとにぎわっていました。多い時には昼だけで100人が来店するといいます。

日中は店主の永江秀一さんとパートの女性、学生の3人で切り盛りしています。

しかし2か月前、8年勤めていた従業員が新型コロナに感染したのを機に退職し、夜のシフトが組めない日もあり店が開けなくなっているといいます。

ちゃんぽん店店主 永江秀一さん
「『残念です』という声も直接いただくので、どうにかしたいなとは思ってはいる。それでも人手が足りないということが出てきたりしたので、もどかしい(という思い)がいちばん強い」

このちゃんぽん店のすぐ近くにある精肉店も、人手不足を理由に週3日間のみの営業に減らしていました。

「正社員が人手不足」企業の5割 「非正社員が不足」は3割

人手不足は全国的に広がっています。民間の信用調査会社が行った調査では、8月時点で「正社員が人手不足の状態にある」と答えた企業が49.3%、「非正社員が人手不足」が29.1%に上り、コロナ禍で一時的に緩和されていた人手不足感が再び顕在化しています。


「コスト高で小さい企業は賃金を上げるのが難しい」

労働分野に詳しい日本総合研究所の主席研究員の山田久さんは、今の人手不足には、従来の要因に加えコロナ禍を経験しての特有の事情も影響しているといいます。

山田久主席研究員

日本総合研究所 山田久 主席研究員
「コロナの前はシニアの方や既婚女性の方が結構働いていたが、この戻りが弱い。コロナが完全に収束しているわけではないし、安全に対する考え方も変わってきている。全体として働くサイドの環境が大きく変わった」

山田さんは、人手不足は賃金の上昇につながると指摘します。

「人手不足がこれだけ厳しい状況になっているので、賃金を上げないと人が来てくれない。賃金格差があると言われたパート・アルバイト、いわゆる非正規の方々の賃金が今後上がっていく可能性は十分あるんじゃないか」

しかし、別の問題が懸念されると言います。

「問題は事業者の中には賃金を上げることがなかなか難しいところが結構ある。本当は賃金を上げて人を集めたいが、いろんなコストが上がっているので小さい企業はできない」

機械化・業態転換へ 連携と政策支援がカギに

賃金を上げるためには、生産性を向上させて収益力を高めなければなりません。そのために、ロボットを導入するといった「機械化」やより収益の高い業態への「業態転換」などが必要ですが、多額の資金がかかり個人や中小企業が自力で行うのは難しいのが実態です。

自治体や同業者、地域の金融機関などと連携しながら進めること、それを政策的に支援することが求められていると山田さんは話していました。

(福岡局 早川俊太郎)
【2022年10月28日】
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