

「SDGs」=持続可能な開発目標に配慮したという牛肉を手がけ、海外への輸出を拡大している畜産会社が島根県雲南市にあります。世界のバイヤーの心をつかんだポイントは?
エサの工夫で牛のげっぷに含まれるメタンガス削減?

訪ねたのは、雲南市の畜産会社「熟豊ファーム」。社長の石飛修平さんが6年前に設立した会社です。
石飛さんの会社では環境への負荷を減らそうと、食用油の一種「アマニ油」を加えたエサを使っています。
牛にアマニ油を与えることで、地球温暖化の原因となる、牛のげっぷに含まれるメタンガスを減らす効果が期待できるとされています。

さらに、地元で捨てられるはずだった麺類やおからの搾りかすなどもエサに混ぜ、フードロスの削減も行っています。こうした取り組みがSDGsにかなうと考えています。

「動物の福祉」にも力を入れています。牛を飼育する牛舎の掃除をこまめに行い、牛の寝床にコーヒー豆を混ぜて臭いを消すなどしています。牛舎の中では特有の臭いがほとんどしません。
広々としたスペースで飼育することで牛のストレスを和らげ、肉質もよくなるといいます。
「牛の福祉」に反響 輸出先が倍以上に
この畜産会社は、京都の卸売会社「銀閣寺大西」とタッグを組んで「SDGsに配慮した牛肉」として売り出したところ、ヨーロッパを中心に輸出先が倍以上に増えました。
肉は赤身の濃い味わいがあり、脂身が少ないのが特徴です。

イタリア人のバイヤー
「この牛肉は(ほかの牛肉と)全然違う。この農場は『牛の福祉』について、たいへん興味深い技術を持っていると思う」
硬い「経産牛」に価値を
石飛さんの会社で育てている牛は、ほぼすべて「経産牛」=出産を経験した牛です。一般的に経産牛は肉質が硬く、調理用に向かないとされ、主に加工などに回されることが多いといいます。

石飛さんは経産牛を何とかおいしく育てたいと考え、エサや飼育環境を試行錯誤。その中で、肉質のよさとSDGsへの配慮が両立できる飼育法にたどり着きました。
畜産会社 石飛修平社長
「和牛を、お母さん牛だからといって価値が低いものとして見ていることがすごくもったいなかった」

経産牛は仕入れ値が比較的安く済むので、その分、飼育にコストもかけられるといいます。
現在会社では約1000頭を飼育し、その半分近くを海外への輸出が占めるまでになっています。
畜産会社 石飛社長
「より持続可能な畜産業、農業というのを発展させていきながら、中身もいいお肉がつくれるように、こだわれるところはこだわりきろう」
石飛さんは、地元の農家と耕作放棄地を使ってエサとなる牧草やトウモロコシの栽培も始めているということです。捨てられてしまう食品の利用も含め、地域で循環させる畜産業をさらに進めていこうとしています。
(松江局 澤田拓海)
【2023年2月15日放送】
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