ニューヨーク ビルで加速する脱炭素

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アメリカ・ニューヨークと言えば、摩天楼が思い浮かびます。しかしこのビル群から排出される二酸化炭素(CO2)の量は市全体の約7割を占めると言われています。温暖化対策が叫ばれる中、新たな取り組みが広がっています。

エネルギー効率は何点? ビルごとに点数貼りだし

大都市ニューヨークで今、気候変動対策が求められているのが、中心部に建ち並ぶビルです。

あるビルを訪ねると、「B」というグレードと「72」というスコアが貼られていました。これはエネルギーがどのぐらい効率よく使われているかを示しています。

エネルギー効率のいいビルほど高い点数がつき、上から順に「A」から「D」にグレード分けされます。

これを貼りだすことで、脱炭素の自主的な取り組みを促そうというねらいです。

温室効果ガス排出80%削減目指す 罰金も導入へ

大胆な規制強化策も打ち出しました。2050年までにCO2を含む温室効果ガスの排出を80%削減するというものです。

80%削減に向けて2025年からは、決められたCO2の排出量の上限を超えた分に応じ、一定の規模のビルには罰金が科せられます。金額は1トン当たり年間268ドル(日本円で約3万8000円)です。

例えば、トランプ前大統領の名前がついたビルではこのままだと、罰金が日本円にして年間約3900万円に上る可能性があります。

設計を工夫したビル

脱炭素をどう加速させるか。ある建物は設計の段階からさまざまな工夫を取り入れました。その一つが、大きく張り出した斜めの「ひさし」です。

右:季節で変わる日差し(イメージ)

夏と冬で異なる太陽の動きや日差しの角度を計算し、夏は強い日差しを防ぎ、冬は逆に日光を取り込めるよう設計しました。

建物を設計した建築家 ライアン・ロベロさん
「夏は冷房に使うエネルギーを減らし、冬は暖房に必要なエネルギーを減らすことができる。これがあることで1年中快適な環境で過ごせる」

CO2をコンクリートに閉じ込める

最新の装置を導入したビルもあります。

この装置は、ビルから排出されるCO2を冷やしたり圧力をかけたりして取り出し、その後、液体化してタンクに貯蔵することで排出を削減します。

CO2を貯蔵するタンク

取り出したCO2は特殊な技術でコンクリートにして閉じ込めています。こうした技術は日本の大手ゼネコンも開発しているということで、どこまで広がるか注目されます。

「カーボンクエスト」 ブライアン・アスパロCOO
「ビルから排出されるCO2を取り出し、それをリサイクルして別の形で役立てることができるので、このサイクルは重要」

こうした都市の脱炭素の動きは世界的に加速すると専門家は指摘しています。

脱炭素の動向に詳しい「アーバン グリーン カウンシル」のジョン・マンダイクCEO
「対策にコストはかかるが、ビルの資産価値の向上や運営コストの削減といった利点もある。ほかの都市もあとに続く可能性がある」

(国際部 大石真由)
【2022年11月24日放送】