ロシアのウクライナへの軍事侵攻の影響で、アンモニアを原料とする肥料の価格が上昇しています。
世界第2位の生産国・ロシアからのアンモニアが供給不安となる中、世界第3位の生産国・アメリカの大手肥料メーカーは増産体制。さらにクリーンなエネルギーとしてのアンモニアにビジネスチャンスを見いだしています。
アンモニア供給不安 肥料価格が3倍に
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アメリカ中西部アイオワ州の広大な畑でトウモロコシを作る農家のスゥエンカさんは、アンモニアから作られる尿素を肥料として使っています。
しかしロシアの軍事侵攻以降、肥料の価格が高騰し頭を痛めています。尿素1トン当たりの価格は2022年春に1000ドルと、20年の年末と比べて約3倍に跳ね上がりました。
農家 スゥエンカさん
「経営に大きな影響がある。誰も肥料に3倍の価格を払うとは予想していない。実際に払う時にとても大きな痛手となる」
アメリカ産のニーズ高まる
南部ルイジアナ州にある、大手肥料メーカー「CFインダストリーズ」の世界最大のアンモニア工場を訪ねました。東京ドーム約120個分という広大な敷地で、24時間態勢でアンモニアや尿素を大量生産しています。
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アンモニアの国際取引の指標となる価格は22年4月には1トン当たり1625ドルとなり、21年の同じ時期と比べ約3倍に跳ね上がりました。ロシア産にかわり、いまアメリカ産のニーズが高まっているといいます。
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大手肥料メーカー 製造責任者 ライアン・スタイルズさん
「世界的なエネルギー問題の影響でアンモニア需要はかつてなく高まっている。増産する方法を常に探っている」
「燃料」にビジネスチャンス
さらにこの肥料メーカーは新たなアンモニアの可能性にかけようと、動き始めています。それが「燃料」としてのアンモニアです。
いま世界は脱炭素社会に向けて動き出していますが、日本やアジアなど、すぐに石炭火力発電をやめられない国が数多くあります。
アンモニアは燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さないことから、石炭にアンモニアを混ぜて燃やすことで、その排出を抑える「混焼技術」が注目されているのです。
アメリカの肥料メーカーも、アンモニアを肥料だけでなくエネルギーに変える取り組みを大きなチャンスと捉えたのです。
日本の商社と共同で工場建設へ
実は日本はこの混焼技術で世界をリードしています。取材した日、大手商社の三井物産の担当者が肥料メーカーの工場を訪問しました。両社が共同でアメリカに新たな工場を建設し、燃料用にアンモニアを増産する計画です。
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米国三井物産 中山竜一マネージャー
「アンモニアの生産・操業に関して(このメーカーは)豊富な経験を持っている。そういった点で安定的な操業・生産にたいへん期待している」
肥料メーカーの経営トップは、エネルギー事業への参入に自信を見せています。
肥料メーカー アンソニー・ウィルCEO
「(ウクライナへの侵攻が)浮き彫りにしたことの1つがエネルギーの供給源の重要性。将来的にアンモニアはクリーンなエネルギー源として重要な役割を果たすと確信している」
アンモニアは燃やしてもCO2を出しませんが、製造工程では化石燃料を使うということで、このメーカーは発生するCO2を地中に埋めるなどの方法をとって環境負荷を下げようとしているということです。
世界情勢が変化しサプライチェーンも変わってきている中で新しいビジネスチャンスが生まれているようです。
(アメリカ総局 記者 江﨑大輔)
【2022年8月25日放送】
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