脱炭素社会の実現に向けて、従来の石油に依存したものづくりの見直しが課題になっています。いま研究開発が進められているのが、微生物を使ったものづくりです。将来、二酸化炭素(CO2)の削減にも貢献できると期待されています。
海で分解されるプラスチック 微生物の力で開発
大手コーヒーチェーン「スターバックス」では3月から、持ち帰り用のスプーンなどの素材に、微生物の力で作り出した特殊なプラスチックを使っています。
このプラスチックは海水の中では分解されるなど、環境への負荷が少ないのが特徴です。
プラスチック作りに利用しているのは、1000分の2ミリほどと非常に小さい「水素細菌」と呼ばれる微生物です。
![](/news/contents/ohabiz/ai-assets/images/6e9b9f12-7e35-4e36-8908-07e25b91cc01/03.jpg)
水素細菌は、植物油を与えると、食べて栄養を蓄えます。その栄養分を取り出し特殊なプラスチックに加工しています。
![](/news/contents/ohabiz/ai-assets/images/6e9b9f12-7e35-4e36-8908-07e25b91cc01/04.jpg)
コーヒーチェーン運営会社 古川大輔さん
「100%植物由来であることと、生分解性の要素を併せ持つのは、素材の観点で非常に環境貢献度が高いという評価をした」
この素材を開発した化学メーカーの「カネカ」は年間5000トンを生産できるとしていて、スプーンやフォーク、ごみ袋など、さまざまな製品に加工しています。
![](/news/contents/ohabiz/ai-assets/images/6e9b9f12-7e35-4e36-8908-07e25b91cc01/06.jpg)
CO2を餌に 「水素細菌」の驚きの特徴
さらに、この微生物には驚きの特徴があります。地球温暖化の要因とされる二酸化炭素も餌にすることができるのです。
化学メーカーでは今後、植物油ではなく二酸化炭素だけを使った製品の実用化を急ぐ考えです。
![](/news/contents/ohabiz/ai-assets/images/6e9b9f12-7e35-4e36-8908-07e25b91cc01/07.jpg)
化学メーカー 角倉護 上級執行役員
「ラボ(研究所)レベルでは、植物油から作ったものと全く同じポリマー(素材)ができることが確認できた。これからスケールアップ(量産化)、これを早く解決して実際のものづくりをスタートしたい」
食料や燃料も作れるようになる?
微生物を使ったものづくりは、将来的には食料や燃料も作り出せる可能性を秘めています。
この分野で最先端の研究を行っている神戸大学の近藤昭彦副学長は、国を挙げて取り組むべきだと話しています。
神戸大学 近藤昭彦 副学長
「微生物にCO2を食べさせる。食べさせたらいろんなものづくりができることは非常に画期的、革新的だと思う。資源の少ない日本だからこそ水素細菌を使ってCO2からのものづくりを進めるべきだ」
![](/news/contents/ohabiz/ai-assets/images/6e9b9f12-7e35-4e36-8908-07e25b91cc01/09.jpg)
アメリカや中国も開発競争
水素細菌と二酸化炭素を使ったものづくりは、微生物に二酸化炭素をどう効率よく食べさせるか、コストをどう低く抑えるかなど、さまざまな課題があります。
この分野は中国やアメリカで巨額の投資が行われていて、すでに開発競争が激化しています。日本政府も研究開発を積極的に支援していくということです。
(経済部 記者 野中夕加)
【2022年7月13日放送】
あわせて読みたい