アメリカ中間選挙 エネルギー政策の攻防

11月8日投開票のアメリカの中間選挙。

争点の一つが、バイデン政権のエネルギー政策です。“看板”に掲げた脱炭素の政策がウクライナ情勢によって揺り戻しも見られたことで、論戦が熱を帯びています。

激戦州ペンシルベニア 争点にエネルギー

アメリカ東部のペンシルベニア州は、議会上院の勝敗を決する激戦州の一つです。ここでもエネルギー政策が争点になっています。

環境政策を重視する民主党候補のフェターマン氏は、テレビの討論会で次のように訴えました。

民主党候補 フェターマン氏
「人々を苦しめ、エネルギー企業に記録的な利益をもたらすだけのインフレを抑え込まないといけない」

一方、エネルギー産業から支持を受ける共和党候補のオズ氏は、次のように訴えました。

共和党候補 オズ氏
「物価を上昇させないための最良の方法はガソリン価格を引き下げることだ。フェターマン氏は“エネルギー業界はペンシルベニアの汚点だ”と追及している」

バイデン政権の政策 「ぶれている」

エネルギー政策が争点になるのは、バイデン政権の方針がどちらの側からも「ぶれている」と捉えられているからです。

バイデン大統領は2021年1月の政権発足初日に、原油パイプラインの建設許可を取り消しました。そして「石油業界にはこれ以上の採掘は望まない」と発言しました。

パイプライン建設予定地(モンタナ州)

しかしウクライナ情勢を受けてエネルギー価格が高騰すると、対応は一変しました。石油大手7社に対して書簡を送り、石油精製品の供給を増やす対策をとるよう求めたのです。

脱炭素政策への影響に注目

共和党を支持し、石油・天然ガス会社の社長を務めるカイル・マクグロウさんは、不満を募らせています。

カイル・マクグロウさん

共和党を支持 カイル・マクグロウさん
「(バイデン政権は)『採掘しろ』と言いつつ『掘るな』と言う。選挙では健全な考えの人が当選し、エネルギー開発を促してほしい」

一方、気候変動対策を掲げる民主党候補を支持する、27歳のサード・アメーさんは、気候変動に関心が高い若い世代に「みなさん一人ひとりの動員、組織化、投票率アップの助けが必要だ」と投票を呼びかけています。

サード・アメーさん

アメーさんがいま心配しているのは、バイデン政権の政策のぶれです。民主党を支持していた若者たちが失望して投票に行かなければ、共和党候補の当選につながり気候変動対策が停滞しかねないと危機感を募らせているのです。

民主党を支持 サード・アメーさん
「民主党はエネルギーの転換や気候変動に関する主要な政策を推進しているが、共和党はこうした多くの変化を阻止している。その結果、この中間選挙は非常に重要だ。バイデン大統領に何ができるか、できないかは、中間選挙によって決まるからだ」

エネルギーの安定供給と脱炭素の間で揺れる状況は日本の課題でもありますが、それがアメリカでは、中間選挙を前に国を二分する議論になっています。

選挙を経て、バイデン政権の“ぶれ”や政策のスピード感にどういう変化が出るかは、現地でビジネスを行う日本企業に必ず影響することになるため注目されます。
(ワシントン支局 小田島拓也、アメリカ総局 江﨑大輔)
【2022年11月1日放送】

あわせて読みたい