人手不足の公共トイレ清掃 最新IoT技術で効率化

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11月10日は“いいトイレ”という語呂合わせで「トイレの日」。私たちが普段利用する駅や商業施設など公共のトイレの清掃は手間がかかり、人手不足が課題になっています。

それを解決しようと、鉄道会社などが「IoT」と呼ばれる最新のデジタル技術の活用に動き始めています。

駅のトイレ 清掃も“空き待ち”

大阪の玄関口・新大阪駅のトイレ。乗降者数が1日約10万人という巨大ターミナルではトイレの利用者も多く、担当者が1時間ごとに清掃しています。しかし駅が混雑するとトイレにも行列ができて、なかなか清掃に手をつけられません。

駅の清掃業務を担うJR西日本メンテック 技術企画部 溝邉弘 課長
「(清掃員は)1時間の清掃の中で、かなりの時間を個室が空くのを待っている状態」

空き状況やペーパーの減りを通知

JR西日本が試験的に進めているのが、あらゆるモノをネットでつなぐIoTと呼ばれる技術の活用です。トイレの個室の扉にセンサーを取り付け、センサーが空室かどうかを検知します。

右上の白いセンサーで空室かどうか検知する

清掃員が持つ端末に個室の状況を通知することで、空いたところから清掃が進められる仕組みです。

さらにトイレットペーパーや石けんが減ったタイミングもセンサーが検知して、清掃員に知らせます。

駅の清掃を請け負う会社では常に人手が足りないということで、こうしたIoT技術の活用で少ない人数でも効率よく清掃ができると考えています。

駅の清掃業務を担う会社 溝邉課長
「これからますます人手不足が進んでいく。それを上回るスピードで省力化を進めないと、会社が成り立たないというか、この仕事が成り立たない」

つまったトイレ あふれる前に水をストップ

「あっ!あふれそう!」な時も…

人手不足の清掃員をさらに悩ませるのが、トイレのつまりです。この対応にもIoT技術が活躍します。

この鉄道会社は大手住宅設備メーカーに協力を求めました。メーカーの「LIXIL」が新たに開発したのが、センサーが水の量を検知し、あふれる前に水が止まるシステムです。

水の量を検知するセンサー

トイレがつまってあふれそうになると水が止まり、「流す」のボタンを押してもそれ以上流れなくなります。そして清掃員の端末に通知され、優先的に対応することができます。

住宅設備メーカー ビジネスイノベーション部 小川祥司 主幹
「トイレがつまったことをいち早く検知して、あふれの被害を最小限にとどめることができる」

この鉄道会社では、こうしたさまざまな情報を通知するトイレを2023年春に開業する「うめきた(大阪)地下駅」に本格的に導入するとともに、今後ほかの駅に広げることも検討しています。

鉄道会社 鉄道本部 イノベーション本部 橋場諭さん
「もともとかなりの人手・時間帯でやっていたものが、通知型に変えることによって広く清掃の効率化につながっていく。社会課題の解決につながっていけば」

このシステムは、IT企業が開発した技術をもとに鉄道会社が導入しました。初期投資はかかっても、ゆくゆくは人件費の削減につながるなど、元が取れるとみていて、高速道路などさまざまな施設にビジネス展開していきたいとしています。
(経済部 三好朋花)
【2022年11月10日放送】
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