アメリカ中間選挙 インフレ巡る戦略

11月8日に投開票が行われるアメリカの中間選挙で、記録的なインフレが大きな争点になっています。インフレを巡る、与党・民主党と野党・共和党の戦い方に注目します。

共和党候補 キッチンからインフレを批判

ティファニー・スマイリー氏

共和党の上院議員候補(ワシントン州)のティファニー・スマイリー氏は、みずからの選挙広告でキッチンに立って訴えています。批判するのは記録的なインフレです。

共和党 上院議員候補 ティファニー・スマイリー氏
「ホットドッグは26%上昇、卵は40%近く。バイデン氏らが物価高を招いている」

スマイリー氏は州内を回り、有権者に対して「物価高騰は民主党の失策だ」と主張しています。

スマイリー氏
「有権者は生活費やガソリン代の高騰を心配している。状況は悪化の一途をたどっただけ。民主党の現職にはインフレと戦うための計画もビジョンもない」

物価高への対策 注視する有権者

収まらないインフレを前に、有権者も態度を決めかねています。ロサンゼルスに住むジャッキー・ジャクソンさんは、物価高による生活苦で週に1度、食料を配給するフードバンクに通うようになりました。

配給された食料を手にするジャクソンさん「これで3~4日は食べられる」

ジャクソンさんは、前回は民主党に投票したといいます。今回の選挙で重視するのはインフレを打開するための対策です。

ジャッキー・ジャクソンさん
「今回は政党ではなく、どういう主張や政策を打ち出しているかをしっかり見たい。どういう支援をしてくれるか、知る必要がある」

民主党「インフレ」と言わない戦略

一方、民主党はインフレへの批判をかわす戦略です。民主党の下院議員候補(オレゴン州)のジェイミー・マクロード・スキナー氏は、みずからの選挙広告で、あえて「インフレ」ということばを使わず「生活コストの負担軽減」を強調しています。

民主党 下院議員候補 ジェイミー・マクロード・スキナー氏
「人々は苦しんでいる。私は議会のでたらめを蹴散らし、生活必需品の価格引き下げに取り組む」

民主党のスキナー氏。「LOWER COSTS ON THE BASICS(生活必需品の価格引き下げ)」を訴える

スキナー氏は「有権者はインフレをどう呼ぶかは気にしない。必要なのは食べ物に困らないこと、住む場所の確保だ」と話します。

さらにインフレ以外の争点も前面に出しています。その一つが、共和党が反対する人工妊娠中絶の権利の擁護です。

スキナー氏
「自分の体のこと、いつから家族を持つか、そうした選択を自分でできる基本的な自由を守っていく」

支持者の男性は「中絶を巡る女性の権利についてとても懸念している」とし、支持者の女性は「(大事なのは)ヘルスケア、教育、中絶、そして経済」と話しました。

「インフレ」使った広告 民主党は共和党の8分の1?

選挙戦略に詳しいワシントン州立大学のトラビス・リダウト教授は、インフレで攻勢を強める共和党に対し、民主党は戦い方に一層の工夫が求められていると指摘します。

ワシントン州立大学 トラビス・リダウト教授
「インフレは非常に大きな問題だ。問題を無視して無関心に見えるのは望ましくない。だから民主党は別の言い方にしている。どんなことばを使うのか。その選び方がより重要になっている」

リダウト教授は、民主党が今回の選挙で「インフレ」ということばを使ったテレビ広告の回数は、共和党の8分の1に過ぎないと指摘していて、戦略の違いがデータにも表れています。この違いが選挙結果にどう影響するか注目です。
(ロサンゼルス支局 山田奈々)
【2022年11月2日放送】
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