夏に食べたい冷たいアイス。暑さで「溶けてしまう」のは避けられません。それを克服しようと開発された商品が、いま広がりを見せています。
どのくらい溶けにくい?
名古屋市にある東山動植物園。“イケメンゴリラ”として人気の「シャバーニ」の姿をデザインしたアイスがあります。
その特長は「溶けにくいこと」。取材した7月23日の名古屋市は午前中に気温が30度を超える暑い日でしたが、どのぐらい溶けにくいのか、溶けるまでの時間を計ってみました。
5分経過してもアイスの形にあまり変化はありません。10分後には端のあたりが少し溶け始めましたが、形は維持しています。
このアイスは1本400円という価格設定ですが、多い日で1日100本~150本売れるといいます。溶けにくいため屋外で動物を見ながら食べるのに適しているということで、購入した親子連れは「手にポタポタしてこないからいいですね」と話していました。
秘密はイチゴポリフェノールにあり
このアイスを開発したのは金沢市の企業「フルライフ」です。溶けにくい秘密は、イチゴから取り出した「ポリフェノール」にあるといいます。
アイスは、水と、牛乳やクリームなどに含まれる油の成分がくっついて形を保っていますが、温度が上がると水と油が分離して溶けてしまいます。
イチゴのポリフェノールは水と油を結びつける効果があり、アイスを溶けにくくします。
この会社は地元の金沢大学の研究者と共同で開発し、特許も取得しました。溶けにくいアイスなら、キャラクターなどの細部まで凝った形も長い時間保てるということです。
アイスを開発した金沢市の会社 広報 藤野夏未さん
「キャラクターの形のあるアイスの問い合わせがすごく増えてきている。立体のアイスを広げていけたら」
デリバリーでもアイスを溶けにくく
配達に時間がかかるデリバリーで溶けにくいアイスを活用する動きも進んでいます。
ハンバーガーチェーン「ロッテリア」が期間限定で販売している、デリバリー用の「クリームソーダ」と「コーヒーフロート」。使われているアイスは、25度の室温で30分ほど形を保つといいます。
このアイスはグループの会社の「ロッテ」が開発し、ゼラチンを使用するなど作り方を工夫しました。
開発のきっかけは高齢者施設の利用者の声でした。「食べるのに時間がかかってもアイスをおいしく食べたい」という声に応えたといいます。
デリバリーはコロナ禍で需要が高まりましたが、店内での飲食に比べ飲み物の注文が少ないことが課題でした。会社は、溶けにくいアイスで飲み物の売り上げを底上げしていきたいと考えています。
デリバリー商品のアイスを開発した会社 マーケティング本部 深堀愛美さん
「店内でしか食べられないなど、限られた使い方しかできないのは、すごくもったいない。幅広い販路拡大を目指していきたい」
溶けにくいアイスは今後さまざまな展開が考えられています。今回の金沢市の会社では、人気のアニメキャラクターなどのアイスを作って海外で販売することも模索しているそうです。
【2022年8月3日放送】
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