2021年09月03日
(聞き手:小野口愛梨 本間遙)
介護業界の人材不足という課題解決に取り組む秋本可愛さん。大学卒業後、後ろ盾がないまま飛び込みこみましたが、「知れば知るほど、かっこいい」。秋本さんを突き動かす原動力とは?
印象に残っている仕事はありますか?
最近「#ケアワーカーをケアしよう」というプロジェクトをやりました。
コロナ禍って医療現場だけじゃなくて、介護従事者も施設の利用者を感染させないために必死に頑張っているんです。
コロナは高齢者の死亡リスクが高いという話は知っていますか?
聞いたことがあります。
私の介護職の友人は職場にウイルスを持ち込まないようにと、この1年ほどの間、1人でも外食をしていません。
自分の生活をすごく制限しながら人の命と暮らしを支えているんです。
こうしたコロナ禍で働く介護福祉の人たちに、さまざまな企業の協力をいただいて支援品を送ったんです。
Blanket 代表 秋本可愛さん
大学卒業後、介護事業者向けのコンサルティング会社を起業。事業者の採用活動や人材育成の支援などを通じて、介護業界の人材不足の解決に取り組む。
素敵ですね。
これって自分が感じた違和感を言葉にしたことがきっかけだったんです。
モヤッとした時、それは変化を起こせる可能性の種だと思うんです。
どういうことですか?
違和感ってそのままにしたら慣れちゃうと思うんです。人って順応するので。
でも私の場合は、「嫌だな」とかちょっと怒りの感情がある違和感だと、パワーになります。
「怒り」が原動力、ですか?
なにか企画にしたい、とか、どんなアクションを起こせるかなって考えるんです。
今回のケアワーカーを支援しようというプロジェクトも、ある違和感から始まりました。
Go Toキャンペーンで安く旅行に行ける時に、人々の暮らしや命を支える介護従事者が恩恵と無縁なことに違和感を覚えました。
そんな時「介護職向けになにかやられたらいいな」とつぶやいたら「一緒にやろう」と、いろいろな人が声を掛けてくれたんです。
すごいですね!そうしてプロジェクトが大きくなっていったんですか?
そうですね。今回のプロジェクトはクラウドファンディングで、約650万円をご支援いただきました。
化粧品メーカーからはハンドクリームセットを、ホテルからは宿泊券を支援していただき、6万人ほどの介護従事者に届けることができました。
6万人ですか!
多いように聞こえますが、高齢者向け事業所の介護職だけで200万人いるので、ちっぽけな数字かもしれません。
でも、まずは私なりにできることをやっていけたらと思っています。
介護職の方の反応はありましたか?
「多くの人が応援してくれる事を知れて勇気をもらった」とか「気持ちは沈んでいたけどもう少し頑張ろうと思った」という言葉を頂きました。
そういう人の気持ちに触れた時にこの仕事をやってよかったなと思います。
秋本さんのスケジュールにもツイッターと書かれていましたが、よく使うんですか?
トレンド入りしているニュースや介護関連のニュースなど気をつけてみるようにしています。
その時に感じた違和感をツイッターでつぶやくんです。
そうすると「私もそう思う」って人や「一緒にやりたい」って人が実は近くにいたんですよね。
自分が思った事を声に出す、ということですね。
表現の仕方は人によって色々あっていいんです。
動画、noteもあるし、アートや音楽でもいい。私はツイッターをきっかけに人と仕事をすることが好きかな!
人を巻き込みながら仕事をする時、どんなことを意識していますか?
私がやりたい事を「私たちがやりたい事にする」という事が大切だと思っています。
「私がやりたい!」ってだけじゃなくて、なぜやりたくて、なぜ必要なのか、理由をしっかりと相手に伝えていくということ。
関わる人たちに参画の意義を持ってもらうということです。
例えば、企業にお金を出してもらう際には「企業のメリットはなにか」を考えることはとても大切です。
そして「お互いがwin-winかどうか」。そうじゃないと持続可能な関係性にはならないと思っています。
秋本さんはどんな学生だったんですか?
めっちゃ遊んでましたよ。(笑) オールラウンドって分かりますか?
分かります!
運動場を貸し切って鉢巻きを買って運動会をやったり、クラブハウスを貸し切ってコスプレしてハロウィンパーティーをしたり。
楽しそう!
みんなで楽しめる企画をするのが昔からずっと好きでした。授業は真面目にやってなかったかもしれませんね、大学の先生には申し訳ないくらい(笑)
あ、でも授業に来てくれた面白い講師の人たちには、必ずフェイスブックやメールでご連絡させてもらって、社会人と繋がる!ってことをしていました。
そうした人とのつながり方は仕事に生きていますか?
「KAIGO LEADERS」という介護に想い持った人たちのコミュニティー運営を8年間ずっとやっています。
KAIGO LEADERS
介護従事者が組織や職種の垣根を超えてつながりを持てるよう、イベントなどを実施。介護について学ぶイベントには、これまでに約4000人が参加。日常的に介護についての情報交換などをするオンライン上のコミュニティーには約200人が参加している。
イベント参加者とのつながりを大事にしていて、その中でお仕事をいただくこともあるので、成果が出ているのかもしれません。
卒業してすぐに起業して、いろいろな苦労もあると思います。事業を続ける原動力は何でしょうか?
例えば、病気で入院して口から食事をとる事ができなくなった方がいます。
でも介護が関わることで、もう1度食べられるようになったり、もう1度歩けるようになったり、旅行できるようになることもあるんです。
ご本人もご家族も諦めてしまっていても、介護者が寄り添うことで回復の可能性を引き出すこともできます。
そうなんですね。
また、一般的には認知症になったら終わりだという印象があるかもしれませんが、最近は認知症でも働いてる方もいるんです。
環境を作ったりアシストしたりすることで、人の暮らしや生きるということを、最後まで全うできるようにサポートするのが介護職だと思っています。
知れば知るほど、すごくかっこいいし、可能性がある仕事だなと思えたので、私はどんどんこの仕事にはまりました。
秋本さんにとって「仕事」とはなんでしょうか。
悩むけど・・・自分にとって「生きがい」そのものだって思います。
どういうことでしょうか。
私たちは全ての人が希望を持てる社会の実現を目指しています。
最初のきっかけは生きていることに希望を持てない介護施設の利用者の存在でした。
でも、自分自身のことや周りの大切な人の未来のことだと考えると、介護はみなさんに直接的に関わってくる話です。
確かに。
私にとって「介護の未来をつくる」ことを目指すこの仕事そのものが、自分がつくりたい未来に直結していると言っても過言ではありません。
だから、「生きがい」です。
就活生にメッセージをお願いします。
私が学生の時に背中を押されたことばがあります。
「できるかできないかじゃなくて、やりたいかやりたくないかで選べ」です。
社会に出ると、やりたいと思ってもできなさそうなことばかりなんです。
だけど、大学生の頃ってできないことの方が多くて当たり前です。だからこそやりたいという自分の気持ちを大切にして欲しいと思います。
私も入りたい会社が決まらない、と考えていたんですが、今言われたことを踏まえて自分の未来について考えていきたいと思いました。
選択肢に福祉もぜひ!
もちろんです!ありがとうございました。
編集:高杉北斗 撮影:白賀エチエンヌ
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