その支援 ちょっと待って!被災地に物資を送るポイント
豪雨災害。被災地を支援したいと、今、まさに段ボールにさまざまな物資を詰め込んでいる人、いらっしゃるかもしれません。でもその支援、ちょっと待ってください。
(ネットワーク報道部記者 飯田暁子 藤目琴実 吉永なつみ)
2018年7月放送の西日本豪雨ニュースに関連する内容です
目次
ちょっと待って(1)季節外れの衣服
2018年の西日本豪雨。岡山県倉敷市は支援物資の受け入れを一時的に休止すると発表しました。その訳は、物資を保管するスペースや、仕分けの職員が足りないため。
さらに、届いた物資の中には秋冬の衣服なども多く、スペースを圧迫してしまっているということです。季節にあわないものはかえって被災地を混乱させてしまいます。
ちょっと待って(2)千羽鶴
こんなツイートも話題になっています。
「折り鶴を贈るのはやめてください。場所もとるうえ重く、モノがモノですから捨てづらいです。折り鶴を作る費用を募金してください。お願いします」
東日本大震災で被災したある自治体の担当者によると、全国からお見舞いや激励のメッセージが添えられた千羽鶴や絵画、般若心経の書写などが届いたということです。多くは仮設住宅の集会所に飾ったということですが、事前の連絡なく大量に届いた場合などには、飾る場所がなく残念ながら処分せざるをえないケースもあったといいます。
自治体の担当者は、「おひとりおひとりの応援してくださる気持ちは大変励みになりました。ただ、西日本の被災地では今はニーズに即した物資がいちばん喜ばれるのではないでしょうか」と話していました。
ちょっと待って(3)ペットフード
ペットを飼っている人は、被災者と一緒に避難しているペットのことが気がかりだと思います。気持ちはわかりますが、今、ペットフードを送るのもちょっと待ってください。
熊本市中央区にある竜之介動物病院の徳田竜之介院長はこう指摘します。
「ペットフードは湿気に気をつけないとカビが発生し、それを食べておう吐下痢が始まってしまう。災害直後にペットフードを送ると被災地は困るので状況を見てからにしてください」
徳田さんがこう話すのは2年前の熊本地震の経験から。当時この病院では、ペット同伴の被災者を延べ1500組受け入れました。SNSでそのことを知った全国の愛犬家などからペットフードが毎日、3トントラックで何往復も届き、260平方メートルある駐車場はあっというまに物資で埋まったといいます。中には賞味期限が迫っているものや、開封済みの食べかけのものまで…。
人間と同じで「ペットもまずは食料だろう」と考えがちですが、徳田さんによると、災害時に動物たちは環境変化のストレスで食欲がなく熊本地震の時も1週間程度は水以外ほとんど口にしなかったそうです。
また、犬種や年齢によってペットフードの種類も違います。結局、せっかく届けられたペットフードの大半は余ってしまったということです。
もし送るなら腐らないもの。たとえば、首輪や動物のキャリーケース。着の身着のまま避難した飼い主も多いため、避難所に身を寄せることになったときにはこれらが必要です。最も汎用性(はんようせい)が高いのはペットシーツで人が使うトイレにも代用できるからだそうです。
ちょっと待って(4)じゃあどうやって支援
地震や水害で被災した人たちの支援活動を続けているNPO法人「レスキューストックヤード」によりますと、なによりも知っておいてほしいのは、「ものが不足するのは供給ルートが寸断されているからだ」ということだそうです。
物流が復旧すれば物資が被災地に届くようになります。逆に物流が復旧しないうちに個人で物資を送ろうとしても被災者には届きません。そして被災地で必要とされているものは次々と変化していきます。
レスキューストックヤードでは、被災者と顔が見える関係でないのならば個人で自治体に物資を送るよりも義援金などの形でお金を送ったほうがいいと提言しています。物資などを送る際の注意点についてはホームページにまとめています。
http://rsy-nagoya.com/volunteer/sizai.html
ちょっと待って(5)支援はふるさと納税で
今、はやりのふるさと納税で被災地を支援する仕組みもあります。
ポータルサイト「ふるさとチョイス」では、災害支援の特設ページを設けています。このサイトで応援したい自治体を選び、希望する金額を寄付することができます。これまでに寄せられた寄付はおよそ1万4000件、金額にして2億円以上に上っています。(7月11日正午現在)
サイトを見ていて気になったのは「代理」という文字。被災した自治体の名前の下に小さく「代理」として別の自治体が書かれています。このサイトでは「代理寄付」というしくみを取り入れ、被災していない自治体が代わりに寄付を受け付けているのです。
広島県と岡山県倉敷市への寄付を代理で受け付けている茨城県境町に問い合わせると、過去の経験から学んだ教訓だったことがわかりました。
境町は3年前の関東・東北豪雨で大きな被害を受けた際、ふるさと納税を活用して全国から多くの寄付が集まりました。しかし、職員の数が限られる中、寄付証明書の発行などの事務手続きに人手が取られ、負担となったということです。
そのため「代理寄付」の仕組みを提案し、いったん境町に寄付する形を取ることで、被災した自治体に事務作業の負担をかけずにふるさと納税による寄付ができるようにしたということです。もちろん寄付は全額、被災した自治体に送られ、事務作業にかかった経費は境町で負担するということです。
境町まちづくり推進課の岩井和彦主事は、「被災地にできるだけ負担をかけずに支援する、ふるさと納税の『代理寄付』という方法もうまく活用してほしい」と話していました。
ちょっと待って(6)ボランティアも
「みずから被災地に行って支援したい」という人もちょっと待ってください。現地の受け入れ体制が整う前に駆けつけては、かえって復旧作業の妨げとなってしまうおそれがあります。
先ほど紹介したNPO法人「レスキューストックヤード」に聞きました。まずは、被災地がボランティアを募集しているかどうか事前に確認してください。ボランティアの募集状況は、「全国社会福祉協議会」のホームページで確認できます。
https://www.saigaivc.com/
被災地に入るにあたっては、食事や宿泊場所は自分で手配、費用も自己負担です。緊急車両や災害復旧作業の妨げにならないよう、極力マイカーの使用は控えてください。また、「水害ボランティア作業マニュアル」として作業に適した服装や、あると便利な道具をイラストで紹介しているほか、熱中症や破傷風など作業中に気をつけるポイントも記されています。詳しい情報は、以下のサイトまで。
http://rsy-nagoya.com/volunteer/volknowledge.html
今、高まる被災地への思い。同時に、支援する前の情報収集も大切です。
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