目指せ!時事問題マスター

1からわかる!SDGs(2)日本の達成状況は?世界では?

2023年02月07日
(聞き手:佐藤巴南 梶原龍)

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「持続可能な社会のために世界全体で取り組むべき目標」として掲げられたSDGs。日本は今どれくらい進んでいる?どんな課題がある?世界と日本の取り組みの最新状況を1からわかりやすく解説します。

日本の現状は?

学生
梶原

日本はSDGsの目標を、どれくらい達成できているのですか?

国連は世界全体の進捗状況について毎年発表しています。

土屋
解説委員

各国の個別の成果は、国連事務総長の呼びかけで作られた国際的な組織が、国別の達成度やランキングを発表しています。

日本は2022年はランキング19位で、すべての目標達成を100点とすると79.6というスコアでした。

教えてくれるのは土屋敏之解説委員。科学・環境分野が担当で地球温暖化や脱炭素社会、生物多様性などに詳しい。科学番組のディレクターとして「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」「ためしてガッテン」「サイエンスZERO」などの番組を制作してきた。

まぁまぁいい方ですか?

世界163か国の中の19位です。アメリカは41位、中国は56位です。

日本より上位は全てヨーロッパ諸国で、この順位自体は悪くないかもしれません。

日本も他の国も努力している中で、ランキングは相対的なものですから、順位自体を過剰に気にするよりそれぞれの国の課題を理解し改善していくことが重要だと思います。

日本の課題は?

日本の課題はなんですか?

SDGsが掲げる目標は17つありますが日本は「教育」「産業・技術革新」「平和」という3つの目標は最高評価で、すでに達成しているとされます。

一方で、特に課題があるとされているものが6項目あります。

わかりやすいのが「ジェンダー平等」「つくる責任 つかう責任」「気候変動対策」です。

14「海の豊かさを守ろう」、15「陸の豊かさも守ろう」、17「パートナーシップで目標を達成しよう」も日本の「深刻な課題」とされている

これらは日本にとって深刻な課題になっています。

日本は世界に比べて、ジェンダー平等ではない?

まず「ジェンダー平等」の評価基準には「女性の国会議員の比率」というのがあります。

日本では女性の議員はまだ衆議院で1割、参議院で2割ぐらいで、これは先進国はもちろん、途上国を含めてもかなり少ないほうです。

そうなんですね、知らなかったです。

今、各政党が候補者の中で女性の割合を一定の比率以上にしようという取り組みが出てきたり、ちょっとずつ変わってきてはいるんですが、まだまだ少ないです。

また、「男女の賃金格差」も基準の1つです。

これも日本では格差が大きく、低評価です。女性はパートや派遣社員など非正規雇用の割合が高いことなどが影響しているとされます。

なるほど。

次に、「つくる責任 つかう責任」というのは持続可能な生産や消費についての目標です。

なるべくごみを出さない社会をめざしていて、このレポートではごみの排出量などが評価の基準になっています。

日本は、携帯電話や家電など電子機器の廃棄量が多く、またプラスチックごみも大量に出している上、それを他国に輸出して処分している点も課題とされました。

え!海外にごみを輸出しているんですか。

日本は環境対策に取り組んでいるようにも感じるんですが。

たしかに、日本も「気候変動対策」などがんばっていると思われるかもしれません。

2030年度に二酸化炭素の排出を46%削減することなどを目標に掲げて取り組んではいます。

ただ「1人あたりのCO2排出量」で見ると、ヨーロッパの多くの国だけでなく中国などと比べても依然、日本の方が多いんです。

こうしたことなどから、現状ではまだまだという評価になっています。

今後の世界的な見通しは?

2030年までに目標を達成できなかったらどうなりますか?

SDGsは各国が責任をもって自発的に取り組むべき目標という位置づけで、強制力があるわけではありません

達成できないと罰があるわけでもないですが、それぞれの国の責任で頑張りましょうということです。

ほかの国は目標を2030年までに達成できそうですか?

基本的にはSDGsが出来てから世界全体の平均値は上がってきていて、ちょっとずつは前進してきています。

ただし、ここ数年の新型コロナウイルスの感染拡大とウクライナ侵攻以降は世界的に後退が見られます。

新型コロナの影響は3番の「すべての人に健康と福祉を」だけでなく、経済教育など様々な事象に及んでいます。

新型コロナ対策で医療がひっ迫することによって、他の病気の予防接種をまともに打てなくなっていたり、あるいは結核による死者も増えたりしています。

また、この期間に貿易や産業が止まることもあったので、経済的な影響も大きく、さらには食料安全保障全体が弱体化したとされています。

栄養不良の検査を受ける子ども(マダガスカル 2021年)

コロナ禍以降、世界で飢餓に苦しんでいる状況にある人は10人に1人にのぼると言われています。

また、目標4の教育でも目標から後退している国もあります。

学校では対面授業をできなかった時期もありましたよね。

緊急事態宣言下で遠隔授業を行った都立高校の授業風景(2021年)

豊かな国ならオンライン教育などに切り替えられますが、その余裕がない国もあります。

教育は、今すぐでなく、5年後、10年後に影響してくる問題だと思います。

ますます格差が広がって、貧困から脱することがさらに難しくなっていくことが懸念されます。

コロナがいろいろな分野に影響しているんですね。

そして、ウクライナ侵攻です。

16番の「平和と公正をすべての人に」の目標が脅かされているだけでなく、飢餓や貧困、環境と、様々なものに影響が及んでいます。

国連がこの夏、公表した報告書では、ウクライナ侵攻で世界の最貧困層が増えたり、食料不足の引き金になっていたり。平和の項目も当然ながらすごく下がっています。

SDGsの観点からも、世界的に大きな問題が今起きていると言えます。

SDGsについて日本と世界の課題が見えてきました。次回は、私たちの暮らしと関わりのある身近な取り組みの事例を紹介します。

SDGsについてNHKの番組やイベントの情報はこちらからも
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