目指せ!時事問題マスター

1からわかる!地球温暖化(4)世界各国の対策、進んでる?

2020年05月11日
(聞き手:伊藤七海 井山大我 西澤沙奈)

先進国も途上国も温室効果ガスを削減することを目標に掲げたパリ協定。各国はどんな約束をしているの?アメリカが離脱するって聞いたけど大丈夫なの?温暖化対策をめぐる各国の現状を、環境問題などを担当する土屋解説委員に聞きました。

(新型コロナウイルスの感染拡大前に取材しました)

 

温暖化対策、進捗状況は?

学生
井山

いま温暖化対策は世界全体で進んでいるといえるのでしょうか?

「夏休みの終わりが近づいているんだけど、宿題は多い」という状況でしょうか。

土屋
解説委員

京都議定書ができたころから「温暖化対策は必要だよね」ということは一般論として割と広く考えられるようになってきた。省エネの技術が生まれ、多くの国が化石燃料への依存はできるかぎり減らそうという取り組みをやってきました。

しかし、温室効果ガスをあとどれだけ出せるかという残りが少なくなってきているにもかかわらず、対策がそれに間に合うスピードで進んでいない。

学生
西澤

どういうことですか?

つまり、夏休みの最初からハイペースで宿題を片付けていれば終わったかもしれないものが、やるペースが遅くて、今は前よりも短い期間でたくさん宿題をこなさなくてはいけない状態になっているんです。

夏休みの終わりである今世紀後半の排出実質ゼロに向けて、各国はもっと意欲的な目標を掲げて、対策に取り組む必要を迫られています。

なぜアメリカはパリ協定から離脱するの?

トランプ大統領がパリ協定から離脱すると表明しましたが、そもそも離脱できるものなんですか?

できます。ルール上、離脱手続きが可能になったのが去年11月4日でした。アメリカはすぐに手続したので1年後のことし11月4日に離脱できることになっています。

学生
伊藤

なぜトランプ大統領はパリ協定からの離脱を決めたのですか?

「温暖化対策はアメリカの雇用を奪うし、対策にお金がかかり不公平だ」というのが理由です。つまり経済的なデメリットが大きいとして離脱を決めたんです。

なるほど。

あと、そもそもアメリカの2大政党である共和党と民主党は相手の政策を否定しあっています。

京都議定書をつくったときの立役者は、民主党の副大統領だったアル・ゴア氏でした。ところが、その後民主党から共和党に政権が交代した途端にアメリカは京都議定書から離脱しました。

米民主党の副大統領だったアル・ゴア氏

そうだったんですね。

パリ協定も民主党のオバマ政権時代に合意してつくったものですが、トランプさんだけじゃなく共和党の多くの大統領選の候補者は否定的でした。

アメリカのオバマ政権は、温暖化対策に必ずしも前向きでなかった中国やインドなどに働きかけて多国間の交渉をリードし、パリ協定の締結に主導的な役割を果たした。

ただ、中でもトランプ大統領は温室効果ガスを大量に排出するエネルギー産業の支持が強いといわれているので、離脱した方が自分の票につながると思っているんでしょうね。

じゃあ、トランプ大統領の支持者の間で温暖化対策への関心が高まれば、トランプ大統領も考えが変わる可能性があるんですか?

うーん。アメリカでは化石燃料であるシェールガスやシェールオイルがいまの大きなエネルギー産業ですが、そういう人たちに「化石燃料はだめだ」といってもなかなか難しいと思うんですよね。

シェール

頁岩(けつがん)と呼ばれる、泥が固まってできた板状の地層で、はがれやすい性質をもっている。頁岩で形成された層から採れる天然ガスや原油が「シェールガス」「シェールオイル」。

シェールガスを採掘する様子(アメリカ・テキサス州)

アメリカの温暖化対策、今後どうなる?

アメリカはこのままパリ協定から離脱すると、温暖化対策をしなくなるのでしょうか。

アメリカの人たちが総意として温暖化対策に後ろ向きかというと、実はそうではありません。

どういうことですか?

パリ協定って気候変動枠組み条約の1つですよね。アメリカは、その気候変動枠組み条約からは離脱していないんです。

なので、温暖化対策をしないと言ってるわけではないし、いつでも戻れるようにという事は意識していると思いますね。

さらに最近、アメリカでは「WASI」という活動が盛んに行われています。

「WASI」って何ですか?

「WASI」は「We Are Still In」の頭文字をとったもので、「われわれはパリ協定にとどまる」という意味です。

アメリカでは、「パリ協定にとどまる」と宣言した州や市、企業、NPOなどが組織をつくっていて、全米のGDPや人口の半分を占めるほどになっているんです。

だから、アメリカ全体として決して温暖化対策に後ろ向きというわけではないのです。

世界第1位の排出国・中国は

中国は、アメリカより環境への意識が後ろ向きなイメージがあります。アメリカの動きに反応して中国も離脱するということはないのでしょうか?

公式にはありません。むしろ「守ります」と言っています。トランプ大統領が離脱を表明した直後、習近平国家主席とフランスのマクロン大統領が会って、パリ協定を守っていこうということで合意しました。

そうなんですね。

トランプ政権がパリ協定からの離脱を国連に通告した直後の2019年11月6日、中国の習近平国家主席(写真右)とフランスのマクロン大統領(写真左)が会談。協定の着実な履行と温暖化対策の強化で一致した。

どんな目標を出してるんですか?

GDP(国内総生産)あたりの二酸化炭素の排出量を2030年までに2005年と比べて60%~65%削減するとしています。ポイントは「GDPあたりの」という言葉です。

どういうことですか?

GDPというのは経済成長すると伸びます。つまり、経済成長すると排出量の総量は増える可能性があるんです。

たしかに「総量をどれだけ減らす」という目標じゃないと温暖化対策としては十分ではない。

そう。その総量については「2030年ごろをピークに減少に転じさせる」としているんだけど、裏を返せば「2030年までは総量は増えます」と言っているようなものだよね。

たしかに…

中国が対策にもっと前向きになってくれないと解決に向かわないと思います。

世界第3位の排出国・インドは

インドはどんな目標を掲げているんですか?

インドも「GDPあたり」の目標を出していて、中国よりもっと緩い。

もっと、ですか…

ニューデリー市内の車の渋滞

インドは「GDPあたりの温室効果ガス排出量を2030年までに2005年と比べて33%~35%削減する」としている。

削減目標の数値が中国に比べて半分くらい低いですね。

というのも、インドではまだ電気が使えない地方が結構あるんですよ。

だからインドとしてはもっと国を発展させて、電気を行き渡らせる必要があるんです。

そのために、「単価の安い火力発電所が必要」という考え方があるんです。

なるほど。

インドが早く排出削減にむかえるよう、お金を含めた先進国の支援がいるかもしれません。

これからインフラを整備していく国なので、例えば電気自動車を増やすことには非常に前向きですし、先進国が技術的に支援をして脱炭素型の経済発展をさせていくことが重要になると思います。

ヨーロッパ各国は?

ヨーロッパの国々は温暖化対策に積極的なイメージがありますが、どうなんでしょうか?

積極的ですね。例えばイギリスやドイツ、フランスといった国々は「2050年までに排出量を実質ゼロ」を目標に掲げています。

具体的にはどうやって実現しようとしているのですか?

フランスは原子力大国で、日本以上に原発を使っています。なので、原子力は使いつつ化石燃料による発電をやめることで排出ゼロを達成しようとしています。

フランスの原子力発電所

一方、ドイツは脱原発を打ち出しています。しかも石炭の産出国なのに「2038年にまでにすべての石炭火力発電所をなくす」ともしています。

「脱化石燃料・脱原発」という難易度の高いことを目指しているんです。

編集 水上貴裕

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