目指せ!時事問題マスター

1からわかる!地球温暖化(1)パリ協定って何?

2020年04月17日
(聞き手:伊藤七海 井山大我 西澤沙奈)

グレタ・トゥーンベリさんの活動で注目される地球温暖化。最近、よく耳にするけど・・・パリ協定って何?地球温暖化ってどういうこと?私たちの生活はどうなるの?そもそもの疑問を1から聞きました。(※新型コロナウイルスの感染拡大前に取材しました)

今回話を聞いた土屋敏之解説委員は1989年にNHKに入局。科学番組のディレクター出身で、「ためしてガッテン」(現「ガッテン!」)、「クローズアップ現代」(現「クローズアップ現代+」)などを担当してきました。現在は、環境問題や科学を担当する解説委員を務めています。

”グレタ現象” 関心は若い世代へ

温暖化というと、いま、グレタさんの活動をメディアがこぞって取り上げていますよね。彼女のことを皆さんはどう思っているんですか?

土屋
解説委員

スウェーデンの17歳、グレタ・トゥーンベリさん。去年、アメリカの雑誌「タイム」の世界に最も影響を与えた「ことしの人」に選ばれるなど、世界中から注目を集めている。

学生
井山

よくニュースで見るんですが、そもそもどんな人なのか、あまりピンとこないです…

学生
西澤

私も同じで、どのような主張をしているのかよく分かってなくて。

彼女の主張は実はすごいシンプル。一言でいえば「科学の言うことを聞いて行動してください」ということです

どういうことですか?

科学の言うこと、というのは、要するに“温室効果ガスの排出ゼロをなるべく早くしなくてはならない”ということですね。

じゃないと、温暖化を食い止められないと…それだけなんですけどね(笑)。

学生
伊藤

なるほど。グレタさんはどんな人なんですか?

スウェーデンの高校生です。彼女は温暖化のことを学習して、「これは問題だ」と思ったんですね。

そこで毎週金曜日に学校を休み、スウェーデンの議会前で「温暖化対策をちゃんとやってください」というプラカードを持って1人で座り込みを始めたのが最初です。この活動は「未来のための金曜日」と呼ばれています。

行動力がすごいですね。こうした姿勢が共感を呼んでいるんですか?

そうですね。去年9月には世界150か国以上で400万人を超える人が温暖化対策を求める過去最大規模のデモを行いました。グレタさんはシンボル的な存在になっています。

自分より年下の子がこんな活動を…。焦りというか、このままでいいのかな私たち、みたいな気持ちはあります

まだ意識が甘いのかなみたいな…

いろんな考え方があっていいと思うんですよ。自分なりによく考えて、生活の中で出来る事があれば気をつけていくってことだろうなと思うんですよね。

グレタさんに対しては、批判的な声もありますよね。

トランプ大統領×グレタさん
アメリカのトランプ大統領は「グレタは自分の怒りをコントロールする問題に取り組むべきだ。友達といい映画を見に行ったほうがいい」などとツイッターで批判。これに対し、グレタさんは「落ち着いていて、友達といい映画を見に行っています」などと皮肉で対抗し話題に。

彼女は口調が強いので誤解されがちですが、言っている内容はすごく当たり前のこと。世界各国の科学者などでつくる国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書などもちゃんと読みこんでいるなと感じます。

「温室効果ガスの削減目標では全く足りない。目標を出し直して排出ゼロに向かう行動を取り始めてください」と言っているわけです。

パリ協定って何?

その「パリ協定」ですが、そもそもパリ協定って何ですか?

世界の平均気温はこの100年余りの間に1.1℃上がっています。このままでは、地球上で様々な問題が生じる恐れがあり対応が求められた…

気温上昇で指摘されている主なリスク

〇海面上昇による高潮や沿岸部の洪水

〇気温上昇や干ばつによる食料不足

〇熱波による死亡や疾病

〇生態系の破壊 など

パリ協定は初めて世界全体で温暖化対策を進めることに合意した協定で、その部分で画期的と言えます。2015年に採択されて、翌年の2016年に発効、ことし本格的にスタートしたんです。

目標は決まっているんですか?

パリ協定の目標は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃より十分低く、できれば1.5℃に抑えることです。

なんか複雑ですね。なぜそのような目標になったんですか?

複雑になったのは、先進国と途上国の間で、議論がなかなか一致しなかった結果、妥協で生み出されたからなんです。

どんな点で意見が合わなかったんですか?

先進国の間では現実的な目標として「2℃までに抑えよう」と主張する国が多かった。

一方、途上国の中には温暖化による海面上昇で水没する危険のある島国がある…さらには、そもそも温暖化が進んだ主な原因は、先に工業化した先進国に大きくあるのに、先進国が責任を逃れようとするのはけしからんという考えを持つ国もあった。

こうしたグループは「1.5℃に抑えることを目標にしよう」と主張しました。

その両者の主張の間をとったということですか?

そうなんです。「2℃より十分低く」というのはみんなが目指す。そして、「できれば1.5℃に抑えること」は努力目標、なるべく頑張りましょうということです。

その目標を達成するために何をしなくてはいけないんですか?

カギになるのはやはり温暖化の主な原因とされている温室効果ガスの排出量。

温室効果ガスとは二酸化炭素やメタンなどのこと。いま私たちはどのくらい出していると思います?

見当がつかないですね…。

世界全体だと二酸化炭素の排出量が年間300億トン~400億トンで、温室効果ガスの76%を占めています。メタンやフロンなど温室効果ガス全体だと、二酸化炭素の重さに換算して年間約500億トン出しています。

多すぎてよくわからないですね…。

そうだよね。パリ協定ができたとき、あとどれだけ温室効果ガスを出したら2℃上昇してしまうのか計算したら、あと1兆トンぐらいが限界という結果が出た。現在の排出量が年間約500億トンだから20年分くらいだよね。

そう考えると、今現在でかなり排出していることがわかりますね。

そして、最新の詳しい計算結果がおととしの秋、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書の中で示されました。

それによると、1.5℃に抑えるためには世界全体の温室効果ガスの排出量を2050年ごろに実質ゼロ、2℃までだと2070年ごろには実質ゼロにしなければならないことが示されたのです。

編集 水上貴裕

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