目指せ!時事問題マスター

1からわかる!地球温暖化(2)パリ協定と京都議定書、何が違うの?

2020年04月27日
(聞き手:伊藤七海 井山大我 西澤沙奈)

地球温暖化対策のために合意されたパリ協定。
何が目的で、以前話題になった京都議定書とどこが違うの?科学番組のディレクター出身で、環境問題などを担当する土屋敏之解説委員に1から聞きました。(※新型コロナウイルスの感染拡大前に取材しました)

はじまりは28年前

学生
井山

パリ協定をつくることになった具体的なきっかけはあるんですか?

発端は1992年にさかのぼります。この年、ブラジルのリオデジャネイロで「地球サミット」という国連の大きな会議がありました。

土屋
解説委員

1992年6月に開かれた地球サミット(国連環境開発会議)。世界の国と機関から代表が参加し、温暖化や森林破壊などの環境問題にどう対処するか話し合われた。

学生
伊藤

授業でやった気がします。

もはや歴史だよね、皆さんにとっては(笑)。これは環境問題の中ですごく大きな節目となった会議で、この時に「気候変動枠組条約」、いわゆる地球温暖化防止条約というのがつくられました。

その条約、聞いたことがあります。

で、この「気候変動枠組条約」というのが、今も続いている温暖化対策の大きな枠組みなんですが、当時は最初言ったように温暖化についてはっきりしないことが多かったので、条約に書かれていることはかなり概念的な話だけなんです

学生
西澤

といいますと?

具体的に何を、いつまでに、どうしなければいけないということまで決めてないんです。まだ温暖化についてよくわかっていなかったから。

なるほど。

だから、その「気候変動枠組条約」に基づいて具体的なルールを決めたのが「京都議定書」です。

「京都議定書」は1997年ですよね。僕が生まれた年なので覚えています(笑)。

1997年に京都市で開かれた温暖化防止の国際会議。この中で「京都議定書」が採択された。

そうそう。「気候変動枠組条約」の中にある「京都議定書」。「パリ協定」も同じく「気候変動枠組条約」の中にあります。つまり、「京都議定書」と「パリ協定」は兄弟のようなもので、親が「気候変動枠組条約」なんです。

なるほど。

だから「パリ条約」ではないんです。条約は1992年にできているので、その具体的なルールなんですよね。

パリ協定は緩い?

では、京都議定書とパリ協定の違いは何ですか?

まず、京都議定書は2020年までの温暖化対策の目標を定めたもので、パリ協定はそれをバトンタッチする形で2020年以降の目標を定めています。

対象とする時期が違うんですね。

そう。そして大きく違うのが、京都議定書には強制力があったことです。これは法的拘束力といって、約束を守らなければならなかった。

かつ、その約束を守る義務があるのが当時の先進国だけだったというのが大きな特徴です。

守らなければ、誰かから罰せられるということですか?

その約束から抜けてしまえばいいとかいろいろありますが、達成できないと、その分数字を合わせるために温室効果ガスの排出枠をお金で買ったり、あるいはその後の対策で帳尻を合わせることが求められたりしたんです。

なるほど。

で、パリ協定ですが、京都議定書が先進国を義務の対象にしていたのに対して、世界中の参加する国が温暖化対策をするということを約束しました。

先進国だけじゃなく、発展途上国も含めたいろいろな国が対策することを約束したと。

そう。そして、パリ協定の特徴は京都議定書に比べるとかなり緩いことです。

パリ協定では各国が計画を立ててこれだけ温室効果ガスを減らしますという目標を提出することは義務です。ただし、その目標を達成することは義務とは書かれていないんです。

えー!そうなんですか?

だから、パリ協定って意味があるのかという議論はもちろんあります。ただ、それでもパリ協定ができたことに大きな意味があると思います。

二大排出国のアメリカと中国がともに温暖化対策を推進しようという機運になり、後ろ向きだった途上国も「それなら参加しよう」ということで世界中が一応合意できたのは大きい意味がありました。

ちなみに、京都議定書は効果あったのですか?

評価が非常に分かれるところですが、少なくとも京都議定書ができたことで、温暖化対策の必要性が世界的に認識されたり、温暖化対策に向けたいろいろな技術や製品が開発されたりしました。そういう意味では大きな一歩だったと思います。

一方で、一部の国だけに義務を課すということは不公平だという意見が出るのは当然だと思います。

義務を負っていなかった当時の途上国、例えば中国やインドが、その後大幅に排出量を増やしてしまって、いま温暖化がこれだけ深刻な問題になってきているという意味では、いろいろな課題を残した議定書であったともいえます。

そうした課題を踏まえて、パリ協定ではなるべく多くの国を巻きこむことを大切にしたわけですね。

気温上昇を抑えることは・・・

パリ協定の目標が達成できれば気温の上昇を2℃までに抑えることは可能なんですか?

えーとですね…。実はパリ協定に基づいて現在各国が出している目標を全部達成したとしても気温は3.2℃上昇してしまうと計算されています。

えー!全部達成してもですか!?

はい、全部達成しても。それが去年のCOP25の直前に出された最新の計算結果です。

それじゃあダメじゃないですか。

いやいや。あくまで各国が出している「いまの」目標を達成してもということです。そこで、パリ協定には、5年に1回削減目標を見直して、その際にはより頑張る方向に目標を出しなおすというルールがあるんです。

なるほど。各国はより厳しい削減目標を5年に1回出さないといけないと。

ただ、1回目の見直しだけは強制力がなくて、日本のように2030年に向けた目標を出している国はあらためて出さなくても構わないともされています。

パリ協定で各国は、2020年2月中に温室効果ガスの新たな削減目標を国連に提出することになっていた。2月28日の閣議の後の記者会見で、小泉環境大臣は「最優先にすべきは、締め切りを守るけれども中身はないということではなく、パリ協定に水を差すことがないようにしなければならない」と述べ、期限内に提出せずに議論を続ける方針を明らかにした。

排出ゼロに向かうため、より上積みした目標を出してくださいという呼びかけがいま世界中で起きています。

編集 水上貴裕

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