「ガザ地区では空爆が一切止まっていません。日々、命を失うことと隣り合わせの状況です」
こう話すのは、国際的なNGO「国境なき医師団」のスタッフとして、今もガザ地区にとどまっている日本人女性です。
イスラエル軍の空爆による犠牲者が増え続け、死者は少なくとも3700人あまり、けが人は1万2000人以上に上っているガザ地区。
「人々は絶望の中にいる」という、現地の最新情勢を聞きました。
(聞き手:国際部記者 吉元明訓)
話を聞いたのは
国境なき医師団のスタッフとして、ガザ地区での医療支援プロジェクトに携わっている白根麻衣子さんです。
白根さんはことし5月からガザ地区北部のガザ市で現地スタッフの雇用などを担当していました。ガザ地区には2018年12月から半年あまり派遣されていて、今回は2度目の派遣でした。
ガザ市にある事務所を拠点に、ガザ地区全体の病院の支援とガザ市にある国境なき医師団の診療所の支援にあたっていましたが、イスラエル軍が13日、ガザ地区北部の住民に対し避難するよう通告したあと、南部の比較的安全だとされる施設に避難しました。
その後は安全のため外に出られない状況だということです。
(以下、白根さんの話。インタビューは18日に行いました)
ガザ地区の状況は?
衝突が始まって12日目ですが、1日も途絶えることなく毎日、空爆やミサイルの発射が続いている状況です。本当に地獄のような暴力の連鎖で、双方から空爆やミサイルが続いているという状況です。
ガザ地区はもともと人口が密集している地域ですが、そうした地域の中で避難しなければならない人が何万人、何十万人もいて、生活の環境がどんどん悪くなっているのが現状です。居場所もなく、横になることもできない、屋根のあるところで雨風をしのぐこともできないという状況が続いています。
南部に避難してからの状況は?
状況がよくなっているという感覚はありません。
ここに移ってからも空爆が止まることはなく、状況は全然変わっていません。こちらで現地の人から聞くのは北部の街がどんどん爆撃されていて、むしろ状況は悪くなっているということです。
今は避難しているところから動くことができず、医療活動はできていません。ここに来る途中でも私たちを見つけた市民から「治療してほしい」と頼まれることがありました。ただ、私たちも着の身着のままで逃げてきたのでちゃんとした治療などができず、心苦しくもどかしい気持ちでいっぱいです。
現地ではいま何が課題?
一番大きな課題は物資の不足です。
いまガザ地区の外とのアクセスがすべて遮断され、物資が何も入ってこない状況になっています。かろうじていままであったものでつないでいますが、これが長期化すると本当に重大な人道被害につながるのは目に見えています。
あとはやはり爆撃が一切止まっていないということです。ガザ地区では日々、命を失うことと隣り合わせの状況にあるというのが体感です。
逃げる場所もなく、物資もなくなってきています。本当に、本当に危機的な状況です。
病院の爆発について
けさのミーティングで、病院で多くの人が亡くなったと聞きました。
医療施設、医療従事者に対する攻撃は許されることではなく、私たちも医療団体なのでとても憤りを感じています。
ガザはもともと閉鎖された狭い地区で、空爆があるとたくさんのけが人がでるので、病院は最後の命綱です。本当にとても大切な場所なんです。
病院は、たくさんの人たちが助けを求めて集まり、治療を待っている場所です。医療従事者も数が限られているので、一度に全員を診ることはできなくて、24時間身を削りながら働いています。
そうした中で、こうした施設が攻撃されるというのは本当に信じられなくて、とても苦しい気持ちでいっぱいです。
国際社会に求められるものは?
一刻も早く、無差別な暴力、市民が犠牲になっている暴力をとめてほしいです。
そして、いま全て遮断されてしまっている物資の供給、水、電気、燃料の搬入が始まることが本当に大切です。
電力の供給は先週から完全にストップしています。発電機があるところだけは電気が使えますが、供給される一般の電気はとっくになくなっています。
もともと閉鎖された空間がさらに閉鎖された空間になって、ガザでいま何が起きているのかが伝えられないというのも大きな問題です。
何も分からないので、どんな支援が必要かも見えません。この狭いガザ地区で大量の避難民が苦しんでいる現状を把握し、支援をしてほしいです。
日本の人たちへのメッセージは?
ガザにいる人たちは逃げる場所もなく、絶望の中、毎日どうしたらいいのか分からないという状況です。
ガザでいま何が起きているのか、なかなか想像しづらいと思うのですが、一般の市民、女性や子どもたちが一番の犠牲者になっています。
女性や子どもたちがなすすべなく、待つことしかできない。
けがをしても病院で手当てすらできない。ガザ地区の中を逃げ回ることしかできない。そうした現実をみなさんに知って頂きたいです。
そうした問題を解決するために何かアクションを起こす、具体的に何かをするというのは難しいかもしれませんが、まずはいまガザで何が起きているのか、知ってもらいたい。そう思っています。
(10月19日 おはよう日本で放送)