2022年8月9日
ウクライナ ロシア

ミサイルが落ちたその下で ロシアのミサイル攻撃受けた現場は?

6月27日、そのショッピングセンターは、大勢の買い物客でにぎわっていました。

そこを突如襲った、耳をつんざくような音。そして爆風。

22人が死亡し、けがをしたのは100人以上。

現場を訪れると、爆風で吹き飛ばされた天井からは、空が見えていました。

(ウクライナ現地取材班 関谷智)

ミサイルが落ちた日

6月27日、ウクライナ中部ポルタワ州の町、クレメンチュク。

敷地の面積が1万1000㎡ある、町で一番大きなショッピングセンターには、休日を前にしていたこともあって、大勢の買い物客が訪れていました。

そこへ、突如、ロシア軍のミサイルが撃ち込まれました。午後4時45分ごろのことでした。

ミサイルは天井を突き破って床に着弾し、爆発。50㎝ほどの深さにめり込みました。

爆風で屋根や壁は吹き飛び、窓は粉々になり、激しい火災が発生しました。

多数の死者とけが人

攻撃を受け火災が発生するショッピングセンター

死者22人、けが人は100人以上。

ウクライナ軍は、ロシア軍の爆撃機による攻撃と発表。

ゼレンスキー大統領は、次のように述べて、ロシア側を激しく非難しました。

「ロシアは、ミサイルを意図的に命中させた。平和な町のショッピングセンターで、できるだけ多くの人を殺害したかったのだ」

一方、ロシア側は、攻撃は意図的に狙ったものではないと主張。欧米側からウクライナに送られた武器や弾薬が保管された倉庫を攻撃した結果、弾薬が爆発し、隣接するショッピングセンターで火災が発生したと説明しました。

また、ロシアの国連次席大使は、SNSに「ウクライナ側の挑発行為だ」と書き込みました。

ショッピングセンターの中は

攻撃から1か月後、そのショッピングセンターを実際に訪れました。

そこには、激しく壊れた巨大なショッピングセンターの残骸がありました。

周辺を歩いてみると、ミサイルは隣接する工業施設にも撃ち込まれていました。

ただ、その工業施設からの距離やショッピングセンターの壊れ方を見る限り、ロシア側が主張するような「弾薬が爆発し、隣接するショッピングセンターで火災が発生した」という状況だとは、到底考えられませんでした。

クレメンチュク市の許可を得て、市が安全を確認できている範囲で、建物の中に入って取材することができました。

案内するビタリー・マレツキー市長

案内してくれたクレメンチュク市のビタリー・マレツキー市長は、訪れた1週間前に、がれきに残された遺体の一部の調査や、敷地内に爆発物や危険物がないかどうかの調査が終わったばかりだと話していました。

最初に向かったのは、ミサイルが着弾した場所です。ショッピングセンターの北側、食料品や電子機器を販売していたエリアでした。

天井も柱も、一部を除いて完全に吹き飛んでいて、建物は跡形もなく、破壊されていました。地面に目をやると、レンガや建物の一部だったとみられる金属片などが積み重なっていました。

天井から見える空

市長によると、攻撃の直前、防空警報が鳴り、買い物客が避難を始めたところだったといいます。

店員たちは、店を片づけるために残っていて、多くが犠牲になりました。ミサイルが着弾した周辺では、若い店員たち12人が亡くなり、一番若い人は19歳でした。

さらにほかの場所も見てみると、太い鉄の柱は、ミサイルの破片などが突き抜けたのか、穴が空き、ぐにゃりと折れ曲がっていました。

また、柱や天井が残っている場所では、天井がカーテンのようにぶら下がり、そこからは空が見えていました。

特に、印象的だったのが、現場のにおいです。魚の干物のにおいを強烈にしたような、独特の匂いが立ちこめていました。食品コーナーの食べ物が腐ったことが原因かもしれません。周辺には、大きな黒いハエが何匹も飛んでいました。

現場では何が起きていたのか

当時ショッピングセンターにいた人たちは、どのような経験をしたのか。

ミサイルが撃ち込まれた時、建物の中にいた、22歳の警備員の男性オレフ・ドブホポルさんに話を聞くことができました。

オレフ・ドブホポルさん

「その日は、入り口近くのいすに座って警備をしていました。突然、停電したかと思うと、ボーンというとてつもない大きな音がして、後ろからの爆風で、床に倒れ込みました。倒れた私の上に、看板が覆いかぶさりました。気が付いたときには、砂ぼこりが充満していて、真っ暗で、自分の手も見えないほどでした。何が起きたのか分からなかったのですが、はいつくばりながら建物の外に向かいました。途中で血を流している男性がいたので、揺すり起こして一緒に避難しました。辺りには、女性たちの泣き叫ぶ声が響いていました」

ドブホポルさんは、倒れたときに両膝にけがをして、病院で治療を受けましたが、幸い大けがではありませんでした。ただ、その日以降、夜になっても眠れなくなる日があるといいます。

マレツキー市長は、こうした惨状に、憤りを募らせていました。

クレメンチュク市 ビタリー・マレツキー市長

「人々は、血なまぐさいテロ攻撃にとても大きな恐怖を感じている。ロシアは人々に不安を植え付けるために、今回の攻撃を行い、ウクライナがロシアに勝てないと思い込ませようとしている。平和な場所で、多くの人がいる時を狙った攻撃は、戦争犯罪だ」

死の恐怖と隣り合わせの日常

ロシア軍によるミサイル攻撃の被害は、ウクライナの東部や南部だけでなく、広い範囲で拡大し続けています。

7月14日には、西部ビンニツァ州の中心部にミサイルが撃ち込まれ、4歳の女の子を含む23人が死亡しました。

ウクライナ側は、ロシア軍による攻撃の7割が民間施設などを標的にしていて、軍事施設などに向けられたのは3割にとどまると非難しています。

家族で買い物に出かけている時、仕事をしている時、家でくつろいでいる時、突然、ミサイルが撃ち込まれるかもしれない。

ウクライナの人たちは、今も、死の恐怖と隣り合わせの日常の中での暮らしを余儀なくされています。

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