2022年6月7日
ウクライナ ロシア

「銃よりも包丁で」ふるさとの味で安心届けるカリスマシェフ

「銃の扱いは下手ですが、包丁なら簡単です。“キッチンの戦士”ですからね」

こう得意げに話すのは、ウクライナのシェフ、イェフガン・クロポテンコさん(35)です。

ウクライナ各地から避難してきた人たちが数多く身を寄せる西部リビウに、3月下旬新たなレストランをオープンしました。取材に訪れた日、夕食の時間帯だったということもあり、店の外にも行列ができていました。

クロポテンコさんは、ウクライナでは有名なシェフ。テレビ番組の料理コーナーに出演したり、YouTubeでレシピの紹介をしたりするなど、ウクライナ料理を世界にも発信してきました。

侵攻前のクロポテンコさん

ロシアによる軍事侵攻が始まってから、シェフとして何か貢献できることはないかと考えたクロポテンコさん。みずからが経営する首都キーウのレストランを、前線に向かう兵士に開放しました。

さらに、避難する人たちを料理で元気づけようと、古いカフェを借りて改装して新たにオープンしたのが、リビウのレストランです。避難してきた人には、料理を無料でふるまいます。

取材した日、クロポテンコさんが腕を振るったのが、ウクライナの伝統料理の煮込みスープ、ボルシチ。できたてのボルシチを口にした人たちは、思わず顔をほころばせていました。 

「家庭料理みたいで、とてもおいしいです。もう3回も食べに来ています」

こう話す、東部ハルキウから避難してきた夫婦は、クロポテンコさんと笑顔で言葉を交わしていました。

同じような店を、今後、各地に広げていくことが、クロポテンコさんの次の目標です。

「避難する人たちに少しでも幸せな気分になって、心の痛みを和らげてほしいと思っています。ふるさとの伝統料理を食べて、安心してほしいのです」

ロシアの侵攻で心身に傷を負った人たちに、少しでも笑顔を取り戻してほしい。クロポテンコさんの思いのこもった一つ一つの料理が、家を追われた人たちに、ひとときの安らぎを与えているように感じました。

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