ワクチン開発や接種
世界の状況は
(〜2020年)

世界各国の新型コロナウイルスのワクチンについて、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカなど、2020年の海外製薬会社による開発・供給の状況や、世界各国での使用許可・接種の状況をまとめています。

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    イギリス政府 アストラゼネカなど開発のコロナワクチンを承認(2020/12/30)

    2020年12月30日

    イギリス政府は、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを承認したと発表しました。このワクチンの承認は世界で初めてで、これで日本が供給を受ける予定の3種類のワクチンが、欧米で承認または許可を受けたことになります。

    イギリス政府は12月30日、アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンについて、安全性と品質、そして効果は厳格な基準を満たしており承認すべきだとする規制当局の勧告を受け入れ、承認したと発表しました。

    アストラゼネカは、接種する量によって、高い場合90%、低い場合62%、平均で70%の有効性が確認されたとする臨床試験の分析結果を医学雑誌で発表しています。

    また、ワクチンに関連する深刻な健康への影響はみられなかったとしています。

    イギリスでは、すでにアメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの接種が始まっていて、新型コロナウイルスのワクチンの承認は今回で2例目です。

    接種の対象は18歳以上で、1回目の接種のあと、4週間から12週間の間隔をおいて2回目の接種を行うことになっていますが、専門家による諮問委員会は2回接種するよりもまずはリスクの高い人々への1回目の接種を優先すべきだとしています。

    イギリス政府は、このワクチンを1億回分確保していて、2021年1月4日から接種を始める予定です。

    今回の承認は、ファイザーのワクチンと同様、緊急的な措置とされ、1年後に安全性などについての見直しが行われることになっています。

    日本政府は、開発に成功した場合、6000万人分の供給を受けることでアストラゼネカと基本合意していて、今回の承認で日本が供給を受ける予定の3種類のワクチンが、欧米で承認または許可を受けたことになります。

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    シンガポールで医師や看護師などにワクチン接種開始(12/30)

    2020年12月30日

    2021年中に国内に住むすべての人に新型コロナウイルスのワクチンを行き渡らせる方針のシンガポールで12月30日、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの接種が始まりました。

    シンガポール政府の発表によりますと、12月30日に接種を受けたのは新型コロナウイルスの検査や患者の治療などを行っている国立の医療機関で働く医師や看護師など30人余りです。

    最初に接種を受けた看護師のサラ・リムさん(46)は「自分を守るだけでなく自分が感染を広げるおそれも少なくなったと思うので本当に安心しました」と話していました。

    接種を受けた人たちはワクチンの十分な有効性を得るため2021年1月20日に2回目の接種を受ける予定だということです。

    シンガポール政府は、初めのうちは医療従事者や高齢者に優先的にワクチンの接種を行うことにしていますが、2021年末までには16歳未満や妊婦などを除いて国内に住むすべての人に行き渡るだけのワクチンを調達し無料で接種を完了させたいとしています。

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    新型コロナワクチン 世界各地で接種本格化 各国の状況は(12/28)

    2020年12月28日

    EU=ヨーロッパ連合では、域内で初めて使用が許可された新型コロナウイルスのワクチンの接種が本格的に始まりました。感染力が強いとされる変異ウイルスが相次いで確認される中、感染拡大の抑え込みに期待が寄せられています。

    EUが12月21日、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンに初めて許可を出したことを受けて、各国では27日、本格的に接種が始まりました。

    フランスのパリ近郊の病院では国内で初めて78歳の女性がワクチンの接種を受けると、見守っていた関係者から拍手が送られていました。

    フランスでの接種は高齢者施設の入所者や職員が優先され、その後に入所者以外の高齢者や医療従事者、そして来年の春からは一般市民にも行われる予定です。

    ドイツでもワクチンの接種が全国規模で始まりました。

    首都ベルリンで接種を受けた高齢者施設に入居する101歳の女性は「高齢者施設で多くの人が亡くなっているので、接種できるのはとてもよいことです」と話していました。

    ヨーロッパ各国では変異ウイルスが相次いで確認され懸念が高まっていますが、WHO=世界保健機関は「今の段階で治療薬やワクチンの効果に大きな影響を及ぼしていない」とする見解を示しています。

    EUは今回のワクチンも合わせて最大で20億回分を確保し、感染抑制の切り札として期待を寄せています。

    UAEも接種本格化 サウジアラビアも開始発表

    中東のハブ空港があるUAE=アラブ首長国連邦のドバイ首長国でも、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチン接種が本格化しています。

    UAEのうちドバイ首長国では、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの接種が6つの公立医療機関で始まり、12月27日、その様子が報道陣に公開されました。

    医療機関では事前に電話で予約し接種の許可を得た高齢者や持病のある人が次々に訪れ、問診や簡単な検査を受けたのちに接種を受けていました。

    接種に訪れた自営業のインド人男性(61歳)は「高齢になってきて、感染して重症化するのが恐ろしくて、予防のために接種に来ました。家族にも接種を勧めたいと思います」と話していました。

    中東湾岸の産油国ではサウジアラビアやオマーンでもワクチンの接種の開始が発表されていて、ヨーロッパで変異ウイルスが相次いで確認される中、各国は対応を急いでいます。

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    東南アジア各国 新型コロナワクチンの調達 活発化(12/27)

    2020年12月27日

    新型コロナウイルスのワクチンについて東南アジアでは、シンガポールが2021年1月接種を始める見通しとなるなど、各国で調達と使用に向けた動きが活発になっています。

    シンガポールの保健当局によりますと、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンがすでに国内に到着していて、2021年1月には接種が始まる見通しだということです。

    そして、国内で開発中のワクチンなどを合わせて2021年9月末までにすべての住民に行き渡るだけのワクチンを調達し、2021年末までには接種を完了させたいとしています。

    インドネシアでは、中国の製薬会社から調達したワクチンおよそ1億5500万回分の緊急使用について審査を進めています。

    タイでは人口の半数をカバーするワクチンの調達を目指して製薬会社と交渉するとともに自国での開発も進めています。

    マレーシアは、交渉が順調に進めば人口の70%をカバーできるワクチンを調達できる見通しとしているなど、各国で調達と使用に向けた動きが活発になっています。

    公平分配を促進する枠組みで賄えるのは一部

    一方、感染拡大が続くミャンマーでは、調達の見通しが立っているワクチンは人口の20%にとどまっているほか、フィリピンは2021年中に調達できるワクチンについて現時点では必要な量の3%にとどまるとしています。

    こうした国々はWHO=世界保健機関などによる公平な分配を促進する枠組み「COVAXファシリティ」を通じた調達を試みています。

    しかし、この枠組みで賄えるのは人口の一部に限られ、独自の財政でワクチンの確保に乗り出している国々には大きく遅れを取っている現状が浮き彫りとなっています。

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    新型コロナワクチンの接種100万回超に アメリカ(12/26)

    2020年12月26日

    アメリカでは、新型コロナウイルスのワクチンの接種が、これまでに100万回を超えました。
    今後、医療従事者や高齢者施設の入居者などへの接種が本格化するほか、段階的に警察官や消防士、さらに多数の人と接する労働者にも、接種の対象が拡大されることになっています。

    “100万回以上接種”

    アメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、12月23日現在、全米に946万回分以上の新型コロナウイルスのワクチンが供給され、100万8000回以上接種されたということです。

    現時点で接種の対象となっているのは医療従事者と高齢者施設の入居者などで、民間団体の調査では全米で1700万人以上にのぼると推定されています。

    ワクチン接種の担い手 大手の薬局チェーンも

    アメリカでは高齢者施設などでのワクチン接種を、大手の薬局チェーンも担うことになっていて、今後、接種が本格化する見通しです。

    CDCは今後、段階的に接種の対象を拡大し、次に接種が優先されるのは、警察官や消防士、75歳以上の高齢者、教師や食料品店の従業員といった多数の人と接する労働者などとされています。

    激しいアレルギー反応の症状を示したケース6例報告

    一方、これまでに接種を受けた人の中には、激しいアレルギー反応の症状を示したケースも6例報告されていて、CDCやFDA=食品医薬品局は、原因の調査を行うとともに、接種の際には必ず一定の時間は経過を観察しすぐに治療できる態勢を整えるよう求めるなど、接種を安全に行うための指針を公表しています。

    2021年2月末までに1億回分のワクチン供給を目指す

    アザー厚生長官は、2021年2月末までに製薬大手ファイザーと製薬会社モデルナの合わせて1億回分のワクチンの供給を目指していると明らかにしたうえで、現在臨床試験が行われている製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンやアストラゼネカのワクチンも加われば供給量はさらに増えるとして、国民に接種を呼びかけていくとしています。

    接種した日本人医師「安心して接種してほしい」

    南部テキサス州ヒューストンにあるベイラー医科大学セントルークス病院の感染症科に勤務する福田由梨子医師は、12月17日に1回目の接種を受けました。

    福田医師によりますと、接種は毎日午前6時から午後10時まで予約が可能で、30分の枠に30人が予約でき、5人の看護師が次々と接種にあたっているということです。

    この病院で接種を受けた医師は「ワクチンの接種を受けて、腕に少し痛みがありますが、それ以外問題はありません。ワクチンが使えるようになったのはとてもうれしいです。もっと多くの人に受けてほしいと思います」と話していました。

    この病院では、年内に直接患者と接触する可能性のある医療従事者およそ数千人に1回目の接種を終える計画だということです。

    福田さんは、「感染の危険にさらされながら働いてきた多くの医療従事者は、ワクチンが接種できるようになり喜んでいます。今後、一般の人に行き渡るようになったとき、どれくらいの人が接種してくれるか心配ですが、いま接種できるワクチンは有効性と安全性が確認されているので、安心して接種してほしいと呼びかけたい」と話していました。

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    ビオンテック “変異ウイルスにもワクチン有効の可能性高い”(12/22)

    2020年12月22日

    新型コロナウイルスのワクチンをアメリカの製薬大手ファイザーと開発したドイツの企業ビオンテックは、12月22日の記者会見で、イギリスで感染が拡大している変異したウイルスについても今のワクチンが有効な可能性が非常に高いとしつつ、必要な場合には、変異したウイルスに対応したワクチンも6週間ほどで開発できるという認識を示しました。

    アメリカの製薬大手ファイザーとともに新型コロナウイルスのワクチンを開発したドイツの企業ビオンテックは12月22日、オンラインで記者会見を開きました。

    この中で、ウール・シャヒンCEO=最高経営責任者は、イギリスで感染が拡大している変異した新型コロナウイルスについて「科学的には、現在のワクチンで対応できる可能性が非常に高い」と述べました。

    ただ「データを集めるには2週間ほどかかる」とも述べ、有効性を慎重に判断していく考えも示しました。

    そのうえで、シャヒンCEOは、変異したウイルスに有効なワクチンが必要となる場合には、6週間ほどで開発できるという認識も示しました。

    また、エズレム・テュレジCMO=最高医療責任者は、日本でもワクチンの安全性や有効性について、念入りに審査が進められているとしたうえで「今後のスケジュールは答えられないが、日本でも迅速に手続きが進められると期待している」と述べました。

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    WHO ファイザーのワクチン 緊急使用リストに追加へ(12/22)

    2020年12月22日

    WHO=世界保健機関は、アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、緊急使用リストに加え、ワクチンを世界に公平に分配する枠組みを通じて、早ければ来月末にも供給を始めたい考えを示しました。

    WHOのシマオ事務局長補は21日、スイスのジュネーブで開いた定例の記者会見で、アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックが開発し、イギリスやアメリカなどで接種が始まったワクチンについて、「今月の終わりまでにWHOの緊急使用リストに加えられそうだ」と述べました。

    また、主任科学者のスワミナサン氏は早ければ1月末にも、WHOなどがワクチンの公平な分配のために立ち上げた枠組み、「COVAXファシリティ」を通じて供給を始めたい考えを示しました。

    ファイザーとビオンテックのワクチンが、WHOの緊急使用リストに加われば、審査体制が整っていない途上国が自国で緊急使用を承認する際の目安にもなる見通しです。

    ただ、このワクチンは、COVAXの分配の枠組みに含まれていないことから、供給に向けた交渉が続いています。

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    アメリカでモデルナの新型コロナワクチンの接種始まる(12/22)

    2020年12月22日

    アメリカでは12月21日、製薬会社モデルナの新型コロナウイルスワクチンの接種が各地で始まりました。アメリカ政府の当局者は、すでに接種が始まっている製薬大手ファイザーのワクチンと合わせて来年初めにかけて2000万回分の供給を目指すとしています。

    製薬会社モデルナが開発した新型コロナウイルスワクチンは12月21日、各地の医療機関などに次々と到着し、早速接種が始まりました。

    このうちニューヨーク州の病院では44歳の看護師、アーリーン・ラミレスさんが最初に接種を受けました。

    父親を新型コロナウイルスで亡くしたラミレスさんは「看護師として多くの患者が生きるために戦うのを見てきました。このワクチンはパンデミックを終わらせる希望です。恐れるべきなのは新型コロナウイルスで、ワクチンの接種を恐れるべきではありません」と接種の重要性を訴えました。

    一方、アメリカ政府のワクチン供給計画の責任者は会見で、すでに接種が始まっているファイザーのワクチンと合わせて来年初めにかけて2000万回分の供給を目指すと述べました。

    また、ワクチン開発計画の責任者モンセフ・スラウイ博士は「ジョンソン・エンド・ジョンソンや、アストラゼネカが開発しているワクチンについても、2021年以降に分析の結果が出てくる見通しだ」と述べ、ワクチンの供給が増えることに期待を示しました。

    このほか、イギリスで見つかった変異型のウイルスについて、スラウイ博士は「このウイルスにワクチンが効かないとは考えにくいが、今後、感染力や、抗体の作用について詳細に調べていく」と述べました。

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    EU ファイザーなど開発の新型コロナワクチンの販売許可(12/22)

    2020年12月22日

    EU=ヨーロッパ連合の執行機関、ヨーロッパ委員会は、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、使用するための販売許可を出しました。EUが新型コロナウイルスのワクチンに許可を出すのは初めてで、加盟国では12月27日以降、ワクチンの接種が始まる見通しです。

    ファイザーとドイツの企業ビオンテックが手がけたワクチンを審査した規制当局のEMA=ヨーロッパ医薬品庁は12月21日、期限を1年間などとする「条件付きの販売許可」を出すようヨーロッパ委員会に勧告しました。

    これを受けてヨーロッパ委員会は「安全性と効果が科学的に確認された」として、通常は数週間かかる手続きを大幅に短縮して、この日のうちに許可を出しました。

    EUで新型コロナウイルスのワクチンに許可が出たのは初めてです。

    ヨーロッパ委員会のフォンデアライエン委員長は12月21日、「困難な1年を終え、ついに感染拡大を抑えることができる」と述べ、意義を強調しました。

    接種は、加盟各国で12月27日から29日にかけて始まり、2021年9月までに合わせて2億回分が供給される予定です。

    EUは、今回許可したものを含めて6種類のワクチンを合わせて最大20億回分確保していて、2021年1月にはアメリカの製薬会社モデルナのワクチンについても許可するか決めることにしています。

    新型コロナワクチンの承認・認可状況

    各国の保健当局などによりますと、
    アメリカの製薬大手ファイザーと、ドイツの企業ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンは、これまでにイギリス、バーレーン、カナダ、サウジアラビア、メキシコ、アメリカ、シンガポール、チリ、スイス、イスラエル、それにEU=ヨーロッパ連合の少なくとも11の国などで、承認や緊急使用の許可などを受けています。

    一方、モデルナのワクチンは、これまでアメリカで緊急使用の許可が出ているほか、EUの規制当局が2021年1月6日に許可の検討を行うことにしています。

    イギリスの製薬大手アストラゼネカが、イギリスのオックスフォード大学と共同で開発しているワクチンはイギリスの規制当局が、現在、審査を進めていて、早ければ年内にも承認されるとみられています。

    このほか、12月に入ってインドで、このワクチンの緊急使用許可が申請され、規制当局が審査を急いでいるということです。

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    アメリカ コロナワクチン接種後 6人に激しいアレルギー症状(12/20)

    2020年12月20日

    アメリカのCDC=疾病対策センターは、製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンをアメリカで接種した人のうち6人が、接種後に激しいアレルギー症状を示したことを明らかにしました。FDA=食品医薬品局は、ワクチンに含まれている物質が関係している可能性もあるとして調査する考えを示しました。

    CDCは12月19日、専門家の委員会を開き、ワクチンの接種状況などについて検討しました。

    この中でCDCは、ファイザーなどが開発し、アメリカで12月14日から接種が始まったワクチンについて、12月19日までに27万人以上が1回目の接種を受けたとしたうえで、12月18日までに接種を受けた人のうち6人が、激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー」の症状を示したという報告を受けたことを明らかにしました。

    この中でCDCは、ファイザーなどが開発し、アメリカで12月14日から接種が始まったワクチンについて、12月19日までに27万人以上が1回目の接種を受けたとしたうえで、12月18日までに接種を受けた人のうち6人が、激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー」の症状を示したという報告を受けたことを明らかにしました。

    6人のうち1人は、過去に別の病気のワクチンでも同じ症状が出たことがあるものの、ほかの5人は今のところ、このような症状が過去に出たことはないとみられるということです。

    アレルギー症状の報告が複数出ていることを受けて、FDAは12月18日の会見で、ワクチンに含まれる「ポリエチレングリコール」という物質が関係している可能性もあるとして調査する考えを示しました。

    アレルギー症状の報告が複数出ていることを受けて、FDAは12月18日の会見で、ワクチンに含まれる「ポリエチレングリコール」という物質が関係している可能性もあるとして調査する考えを示しました。

    一方、12月19日のCDCの専門家委員会では、12月18日にFDAが緊急使用の許可を出したアメリカの製薬会社モデルナが開発したワクチンについても、18歳以上への接種を推奨するとする意見をまとめました。

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    アメリカ ファイザーの新型コロナワクチン 接種始まる(12/15)

    2020年12月15日

    アメリカでは12月14日、ファイザーの新型コロナウイルスワクチンの接種が、各地の医療機関などで始まりました。アメリカ政府は、緊急使用の許可が現在審査中のワクチンもあわせ、12月中に4000万回分を国内に供給するとしています。

    アメリカでは、FDA=食品医薬品局が製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックの新型コロナウイルスワクチンに緊急使用の許可を出し、全米各地に向け290万回分のワクチンの輸送が始まりました。

    このうち、ニューヨーク市の病院には12月14日朝、ワクチンが到着し、新型コロナウイルスの患者の治療にあたる医師や看護師らを対象に接種が始まりました。

    最初に接種を受けた看護師のサンドラ・リンゼイさんは「これが苦痛の歴史の終わりの始まりになることを期待しています」と話していました。

    アメリカ政府によりますと、ファイザーのワクチンは12月中に2500万回分が供給される見通しだということです。

    またFDAが現在、緊急使用の許可を審査中の製薬会社モデルナのワクチンも近く許可が出される見通しで、これとあわせ4000万回分のワクチンが12月中に国内に供給される見通しだとしています。

    新型コロナウイルスのワクチンは医療従事者や高齢者施設の入所者に優先して接種されることになっていて、一般の人への接種はまだ先になる見通しですが、アメリカのアザー厚生長官は12月14日の会見で、2021年6月末までに希望するアメリカ国民全員にワクチンの接種ができるようにするという目標を明らかにしました。

    ニューヨーク市に「コマンドセンター」

    新型コロナウイルスワクチンは供給量が限られる中、各地域に迅速かつ公正に分配していくことが課題となっていて、ニューヨーク市は12月14日、ワクチンの需給を調整する「ワクチン・コマンドセンター」を設置しました。

    ニューヨーク市には、まず7万2000回分のワクチンが供給される見通しですが、このワクチンを、接種予定の人数や地域ごとの感染状況をみながら市内59か所の医療機関などに分配するということです。

    デブラシオ市長は、会見で「われわれの歴史上、最大規模のワクチン接種の取り組みを進めるうえで、効率的かつ迅速な供給はもちろん、公正に分配されているか透明性を確保することも市民の信頼を得るうえで重要だ。今後、コマンドセンターを通じて定期的にワクチンの供給状況を伝えていく」と話しています。

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    アメリカ コロナワクチン供給開始 14日以降各地に到着の見通し(12/13)

    2020年12月13日

    アメリカのFDA=食品医薬品局がファイザーなどの新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を許可したことを受け、アメリカ政府の当局者が会見し、配送に向けた作業がすでに始まり、12月14日以降、全米各地にワクチンが到着する見通しを示しました。

    FDAは12月11日、製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックの新型コロナウイルスワクチンについて、16歳以上の人への接種を可能にする緊急の使用許可を出しました。

    これを受けて12月12日、アメリカ政府のワクチン供給計画の責任者が記者会見し、供給の見通しを説明しました。

    それによりますと、中西部ミシガン州にあるファイザーの拠点では、ワクチンの梱包など配送に向けた準備が始まっていて、12月13日、全米636か所の配送拠点への輸送が始まるということです。

    そして、12月14日から16日にかけて全米50州や首都ワシントンなどに順次、ワクチンが到着する見通しだとしています。

    最初に供給されるのは290万回分で、各州には人口などに応じて配分され、医療従事者や高齢者施設の入所者などに優先して接種が行われることになっています。

    12月17日には製薬会社モデルナのワクチンの緊急使用の許可について、専門家が議論するFDAの委員会が開かれる予定で、このワクチンにも緊急使用の許可が出れば、12月中にファイザーとモデルナのワクチン合わせて4000万回分が全米に供給される見通しです。

    疾病対策センター 接種推奨を決定の見通し

    FDAがファイザーなどの新型コロナウイルスワクチンに緊急使用の許可を出したことを受け、12月12日、CDC=疾病対策センターは緊急の専門家委員会を開催し、このワクチンの接種を推奨するかどうかを議論しました。

    委員会では、妊娠中や授乳中の女性への接種についてや、過去に激しいアレルギーによる症状が出た人への対応について話し合われましたが、最終的に賛成多数で緊急使用の許可にもとづいた16歳以上へのワクチン接種を推奨する意見をまとめました。

    これを受けて近く、CDCは正式に推奨を決定する見通しです。

    課題は飛行機の輸送力の確保

    FAA=アメリカ連邦航空局は、アメリカ各地の空港に対しワクチンの輸送への協力を要請しています。

    FAAは12月11日に出した通達で各地の空港の管理者に対し、ワクチンの迅速な輸送を可能にするため、航空機の発着に遅れが出ないように滑走路の除雪を行うための人員や設備を余分に準備することや、ワクチンを搭載した飛行機から荷物を運ぶための車両を優先して配分することなどを求めています。

    また、アメリカメディアは、ワクチンを搭載した航空機は発着にあたっても優先される見通しだと報じています。

    一方、ワクチンの輸送にあたっては国際的にも飛行機での輸送力の確保が課題となっています。

    IATA=国際航空運送協会によりますと、世界人口の78億人に1回分のワクチンを提供する場合、その量はボーイング747型の貨物機8000機の積載量に相当するということです。

    アメリカ・ユナイテッド航空の貨物部門の責任者ヤン・クレムス氏はNHKのインタビューに対し「ワクチンの輸送は航空貨物業界にとってこれまでに最も大きな出来事だ」と話しています。

    そのうえで「ワクチンそのものの輸送はふだんから行っているが、これだけの規模の輸送を実現するには、航空貨物会社だけでなく、出荷する製薬会社や陸上での保管や輸送を行う企業などのコミュニケーションと協力が不可欠だ」と述べています。

    ニューヨークでは喜びの声

    FDAがファイザーなどの新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を許可したことについて、アメリカ ニューヨークでは喜びの声が聞かれました。

    このうち、67歳の男性は「すぐにでも接種したいです。ワクチンは日常を取り戻すために必要なものだと思います。この日を待っていました」と話していました。

    別の36歳の男性は「すばらしいニュースです。早くワクチンが十分に供給されて、誰もが接種できるようになってほしいです」と話していました。

    一方で、50歳の女性は「ワクチンはこれまでになかったものなので、接種には不安があります。少し時間をおいて体への影響や問題がないかを確認できてから、接種するかどうか考えたいです」と話していました。

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    英 ワクチン接種の2人に激しいアレルギー反応のような症状(12/10)

    2020年12月10日

    アメリカの製薬大手、ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まったイギリスで12月8日、接種した人のうち2人が、激しいアレルギー反応のような症状を示していたことがわかりました。規制当局は、過去に同じような症状が出たことのある人は接種しないよう、予防的な措置としての勧告を出しました。

    イギリスでは、アメリカの製薬大手、ファイザーとドイツの企業、ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が12月8日、始まりました。

    接種を実施しているNHS=国民保健サービスによりますと、高齢者などとともに接種したNHSのスタッフ2人が接種の直後、激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー」のような症状を示したということです。

    2人は過去にも強いアレルギー反応が出たことがあり、急な症状を抑えるために自分で使う注射薬も持っていたということで、その後、手当てを受けて回復したということです。

    今回の報告を受けて、イギリスの規制当局は医療関係者に対し、これまでワクチンや薬、それに食物で「アナフィラキシー」のような症状が出たことがある人には、このワクチンを接種しないよう予防的な措置としての勧告を出しました。

    規制当局のレイン長官は12月9日、議会の委員会で「広範な臨床試験ではこうしたことはワクチンの特徴にはなかった。勧告を強化する必要があればすぐに実行する」と強調しました。

    ファイザー「規制当局の原因究明に協力」

    今回の発表について、ワクチンを開発した製薬大手ファイザーは「規制当局の原因究明に協力していく。4万4000人を対象とした第3段階の臨床試験のデータを検証した外部の委員会からは、これまでのところ深刻な健康への懸念は報告されていない」とコメントしています。

    専門家「情報公開と冷静対応を」

    イギリスで、新型コロナウイルスのワクチンの接種を受けた人に、激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー」のような症状が出たことについて、ワクチン開発に詳しい東京大学医科学研究所の石井健教授は「かつてはインフルエンザワクチンで、製造過程で使用する卵やゼラチンのアレルギーが問題になったことがあるが、今回のワクチンは成分が異なっている。報道での情報しか得ていないが、ワクチンでアナフィラキシーまで起きるのは決してよくあることではない。命に関わることもあるので注意が必要だ。これが何十万、何百万人に1例なのか、よく起こることなのか注意深く見ていく必要がある」と指摘しています。

    そのうえで「今回のワクチンは数万人規模の臨床試験を終え、接種が許可されているので、これをもってすべての接種をやめたり、アレルギーの人は絶対に打たないとなったりはしないと考えている。ワクチンは怖いから打たないほうがいいという風潮が生まれるのは問題で、透明性のある情報公開と落ち着いた対応を取ることが重要だ」と話しています。

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    カナダ ファイザーなど開発の新型コロナワクチン承認 3か国目(12/10)

    2020年12月10日

    カナダの保健当局は12月9日、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを承認したと発表しました。このワクチンの承認は、イギリスと中東のバーレーンに続いて3か国目になります。

    ファイザーとドイツの企業ビオンテックが開発したワクチンは、12月、イギリスで承認され、すでに接種が始まったほか、アメリカでも緊急使用の許可に向けた審査が進められています。

    カナダの保健当局は12月9日、新型コロナウイルスの治療薬やワクチンについての暫定的な基準に基づいた審査の結果、このワクチンを承認したと発表しました。

    カナダの保健当局は声明で「厳しい基準を維持した審査の結果だ」としたうえで、16歳以上を対象に接種を始めたあとも健康への影響を観察して、安全性への懸念があれば「適切な措置をとる」としています。

    地元メディアによりますと、カナダは12月中に最大24万9000回分の供給を受ける予定で、来週にも最初のワクチンが届く予定だということです。

    ファイザーなどが開発したワクチンは、イギリスとバーレーンが承認していて、アメリカでも近く規制当局の審査が終了する見通しです。

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    ワクチン接種「同意する」は7割 日本含む世界15か国調査(12/9)

    2020年12月9日

    新型コロナウイルスのワクチンについて、日本を含む世界15か国で調査を行ったところ、「接種に同意する」と答えた人は平均でおよそ7割だったことがわかりました。

    スイスのダボス会議の主催団体として知られる「世界経済フォーラム」と民間の調査会社「イプソス」は、ことし10月、日本やアメリカなど15か国の1万8000人余りを対象に、新型コロナウイルスワクチンに関する意識調査をインターネットで実施しました。

    それによりますと、ワクチンの接種に「同意する」と答えた人は15か国の平均で73%、「同意しない」と答えた人は27%でした。

    同意しない理由については
    ▽「副作用への懸念」が34%
    ▽「臨床試験の進行が速すぎる」が33%
    ▽「効果が期待できない」と「ワクチン自体に反対」がそれぞれ10%でした。

    ワクチンの接種に同意すると答えた人の国別の割合を見ますと
    ▽インドが87%
    ▽中国が85%と8割を超えたのに対し
    ▽イギリスは79%
    ▽日本は69%
    ▽アメリカは64%で
    ▽中でもフランスは54%と最も低く、国ごとの意識の違いが浮き彫りになりました。

    また、日本では、同意しない理由のうち、「副作用への懸念」と答えた人が62%と、ほかの国と比べて多く、副作用への懸念が最も低かったアメリカの2倍以上となりました。

    日本では、このほかに「臨床試験の進行が速すぎる」、「効果が期待できない」と答えた人がそれぞれ13%、「私がコロナにかかるリスクは低い」と答えた人が4%などとなっています。

    世界経済フォーラムは、8月に実施した調査と比較して同意する人の割合が4ポイント下がったとしたうえで「ワクチンの接種がまさに始まろうとしているタイミングで、信頼性が下がったことは注目すべきことであり悲しいことだ。政府や企業が協力し、信頼を得ることが不可欠だ」とコメントしています。

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    米 FDA「安全上の懸念特定できず」ファイザー コロナワクチン(12/9)

    2020年12月9日

    アメリカの製薬大手「ファイザー」が開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、緊急使用の許可を出すかどうか審査を行っているアメリカのFDA=食品医薬品局は臨床試験の結果についての詳細な分析資料を公表しました。この中でFDAは「緊急の許可を妨げるような安全上の懸念は特定できなかった」としています。

    アメリカの製薬大手ファイザーは、ドイツの企業「ビオンテック」と開発中の新型コロナウイルスワクチンについて先月、FDAに緊急使用の許可を申請し、現在、審査が行われています。

    FDAは8日、およそ4万人を対象とした臨床試験の結果を分析したワクチンの効果と安全性に関する詳細な資料を公表しました。

    それによりますと、2回の接種を終えて7日目以降での新型コロナウイルスの感染症への有効性は95%で、異なる年代でほぼ同様の有効性がみられたとしています。

    また、1回目の接種のあとでもある程度の有効性が示されましたがFDAは、現在のデータでは十分に確認できないとしています。

    一方、分析の対象となった人のうち、84.1%が接種部位に痛みなどを訴えたほか、62.9%にけん怠感、55.1%に頭痛、38.3%に筋肉痛、31.9%に寒気、23.6%に関節痛、14.2%に発熱がみられたということですが、ほとんどの症状は軽度から中程度だったということです。

    FDAは、安全性の評価について「緊急使用の許可を妨げるような安全上の懸念は特定できなかった」としています。

    FDAは、12月10日にこのワクチンについて専門家の評価を聞く委員会を開催する予定で、この委員会での意見を踏まえて緊急使用の許可を出すかどうか速やかに判断する見通しです。

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    イギリス 新型コロナウイルスのワクチン接種始まる(12/8)

    2020年12月8日

    イギリスでは、アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が、日本時間の12月8日午後、始まりました。

    このワクチンは、一定期間、保存するためにはマイナス70度前後の低温での管理が必要で、ロンドンのあるイングランドでは接種は当面、設備の整った50の病院で行われ、80歳以上の高齢者などが優先的に接種を受けることになっています。

    接種を望む人は6割近く

    ファイザーなどが開発したワクチンについて、イギリスの大手調査会社「YouGov」が11月16日から19日にかけて、ロンドンで成人1048人を対象に、ワクチンが使えるようになった場合、接種したいか聞いたところ、
    ▽「接種したい」が35%、
    ▽「どちらかといえば接種したい」が23%で、6割近くが接種を望むと回答しました。

    一方で、
    ▽「接種したくない」は15%、
    ▽「どちらかといえば接種したくない」は10%で、接種を望まない人は全体の4分の1でした。

    さらに12月7日、今回のワクチンを信頼するか成人4303人に聞いた調査では、
    ▽「非常に信頼」が28%、
    ▽「ある程度信頼」が40%で、7割近くが信頼していると答えました。

    一方、
    ▽「全く信頼しない」が9%、
    ▽「あまり信頼しない」が14%で、信頼しないと答えた人はおよそ2割でした。

    ワクチンの接種は80歳以上の高齢者らが優先で、現地メディアは94歳のエリザベス女王も近く接種するとの見方を伝えています。

    EUよりも先のワクチン承認 英国内では「離脱の成果」の声も

    イギリスはことし1月にEU=ヨーロッパ連合を離脱しましたが、年内は急激な変化を避ける移行期間でEUのルールに従っています。

    しかし、今回イギリスは、独自にワクチンの安全性を確認する手続きをとり、EUより先に承認する結果となりました。

    これはパンデミックを含む公衆衛生上の緊急事態に医薬品を迅速に認可できる措置によるもので、ルール上はEUのほかの国も同様の対応をとることができるものの、離脱派の議員などからはEU離脱の成果だとの主張も出ています。

    一方で、移行期間が終わる年明けからはEU離脱の影響がワクチンの輸送に及ぶ可能性が出ています。

    イギリスで接種が始まったアメリカのファイザーとドイツのビオンテックが開発したワクチンはEU加盟国のベルギーで主に製造されていて、最初のワクチンはイギリスまで陸路で運ばれました。

    しかし、年明けからは同じ方法でスムーズに輸送できるのかは不透明です。

    イギリスとEUが現在進めている交渉の結果、自由貿易協定の締結などが実現しても、移行期間が終わる来年からは通関手続きが新たに必要になり、イギリスとEUの国境周辺で渋滞など交通の混乱が見込まれているからです。

    このため、イギリス政府は軍用機などによる輸送も検討しているとみられていて、接種が本格化する年明け以降、低温での管理が必要な大量のワクチンをどのように計画どおりイギリス国内に運ぶのかが課題になりそうです。

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    新型コロナワクチン 世界各国 確保の状況は?(12/8)

    2020年12月8日

    世界各国は新型コロナウイルスのワクチンが実用化される前から、製薬会社と確保に向けた交渉を始めています。

    このうち日本は、国民全員が接種できる量のワクチンを来年前半までに確保する方針で、欧米の製薬会社3社との間で、開発に成功した場合に供給を受ける契約などを結んでいます。

    これまでのところアメリカの「モデルナ」とは、来年6月末までに2000万人分、来年9月までにさらに500万人分の供給を受ける契約を結んでいます。

    また、同じくアメリカの「ファイザー」とは来年6月末までに6000万人分、イギリスの「アストラゼネカ」とは来年3月末までに1500万人分、合わせて6000万人分の供給を受けることでそれぞれ基本合意しています。

    国や地域ごとの確保状況を調べているアメリカ・デューク大学のまとめによりますと、12月4日の時点で、最も多くのワクチンを確保しているのは、欧米のワクチンの製造で合意しているインドで、16億回分、次がEU=ヨーロッパ連合で、15億8500万回分となっています。

    3番目はアメリカで、ファイザーやモデルナ、アストラゼネカのほか、製薬大手「ジョンソン・エンド・ジョンソン」や、「ノババックス」などから合わせて10億1千万回分を購入する契約を結んでいます。

    また、ワクチンの公平な分配のためにWHO=世界保健機関や国際団体「GAVIワクチンアライアンス」などが立ち上げた「COVAXファシリティ」は7億回分にとどまっています。

    このほかカナダは3億5800万回分、イギリスは3億5500万回分などとなっていて、所得の高い国が38億回余りを確保する一方、所得が中程度の国はおよそ28億回の確保にとどまっています。

    なおこのまとめには、独自にワクチンを開発している中国とロシアは情報が確認できないとして含まれていません。

    デューク大学は、先進国が多くのワクチンを確保することで途上国への供給が後回しになるおそれがあると指摘するとともに、全世界にワクチンが行き渡るのは2023年から2024年になると予測しています。

    韓国政府 4400万人分のワクチン確保を発表

    韓国政府は、アメリカやイギリスの製薬会社などを通じて、人口のおよそ85%にあたる4400万人分の新型コロナウイルスのワクチンを確保したと発表しました。

    韓国のパク・ヌンフ保健福祉相は、きょうの記者会見で、欧米の製薬会社と、世界各国に新型コロナウイルスのワクチンを公平に届けるため、WHO=世界保健機関などがつくる枠組み「COVAXファシリティ」から、人口のおよそ85%にあたる合わせて4400万人分のワクチンを確保したと発表しました。

    具体的には、アメリカの「ファイザー」と「モデルナ」、それにイギリスの「アストラゼネカ」からそれぞれ1000万人分、アメリカの「ジョンソン・エンド・ジョンソン」から400万人分を確保したほか、「COVAXファシリティ」からも1000万人分を確保したということです。

    韓国政府は、ワクチンを購入するために1兆3000億ウォン、日本円にして、およそ1250億円の予算を準備していて、ワクチンは高齢者や医療従事者などに優先的に投与される見通しです。

    一方で、具体的な投与の時期は明らかにしておらず、パク保健福祉相は、「ワクチンの安全性や効果に対する憂慮もあるので、感染の状況や外国の動向などを考慮して、弾力的に決める」としています。

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    ワクチン接種 最優先は医療従事者や高齢者施設の人など 米CDC(12/2)

    2020年12月2日

    アメリカのCDC=疾病対策センターは12月1日、新型コロナウイルスのワクチンについて諮問委員会を開き、供給が限られる最も早い段階での接種は医療従事者や、高齢者施設などに住む人を最優先にすべきとする意見をまとめました。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、アメリカの製薬大手ファイザーがドイツの「ビオンテック」と共同で開発しているワクチンと、アメリカの製薬会社モデルナが開発中のワクチンについて、アメリカの規制当局が緊急での使用許可を出すかどうか審査を始めていて、早ければ12月前半にも接種が始まる可能性が高まっています。

    しかし、使用が可能になった直後は供給量が限られるため、CDCは、感染のリスクが高い人や、重症化のリスクが高い人に優先的に接種することを検討しています。

    12月1日に開かれたCDCの諮問委員会では、ワクチンや公衆衛生の専門家が、安全性の検証方法や年齢や職場ごとのリスクについて最終的な議論を行いました。

    その結果、最優先に接種するべきグループは医療従事者と高齢者施設など介護サービスを提供する施設に住む人たちだとする結論をまとめました。

    アメリカ政府や各州は、今後、規制当局がワクチンの使用を許可したらCDCが示した優先順位に沿って速やかに接種を始めることになっています。

    アメリカ政府のワクチン供給の責任者は、最初に供給されるワクチンの量は640万回分で、12月中に4000万回分が供給できる見通しだとしています。

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    新型コロナウイルスのワクチン 保存用冷凍庫の確保が課題(12/2)

    2020年12月2日

    新型コロナウイルスのワクチンは複数の候補で有効性が確認されたとの発表が相次ぎ、このうち製薬大手の「ファイザー」が開発しているワクチンは、早ければ12月10日以降にアメリカで供給が始まる見通しです。こうした中、課題となっているのがワクチンの保存に必要な冷凍庫の確保です。

    新型コロナウイルスのワクチンについては、アメリカの製薬大手「ファイザー」が11月20日にFDA=アメリカ食品医薬品局に緊急使用の許可を申請していて、早ければ12月10日以降に供給が始まる見通しです。

    ファイザーのワクチンは、マイナス60度から80度という低温であれば、最大6か月間保存できますが、通常の冷蔵庫と同じ2度から8度だと保存期間は5日間とされています。

    専門家によりますと、「mRNA」という傷みやすい成分が入っているためで、適切な温度管理ができないと、接種しても効果が出ないおそれがあるということです。

    このためアメリカでは州の保健当局や病院、それにワクチン接種を行う薬局や輸送を担う大手物流会社などの間で、マイナス80度に対応できる特殊な冷凍庫を購入しようとする動きが活発になっています。

    オハイオ州の冷凍庫メーカー「スターリングウルトラコールド」には、感染拡大前のことし1月時点と比べて2倍以上の注文が来ているということです。

    具体的な名前は明らかにできないとしながらも、出荷を待っている州や薬局、物流会社などが相次いでいるとしていて、現時点では出荷まで1か月待ちだといいます。

    会社によりますと、一方で、低温管理が必要になるという情報をかなり早い段階で得て購入に動いた州もあるということで、ノースダコタ州がこの夏に購入を済ませたほか、ニュージャージー州、カリフォルニア州、オハイオ州などもすでに購入済みだということです。

    現在、会社では、生産にあたる人員を1.5倍に増やしたほか、週7日、休みなく工場を稼働させるなど、生産体制を強化して納期を短縮しようとしているということです。

    「スターリングウルトラコールド」のダスティー・テニーCEOは「需要にこたえるため、優先順位をつけて最大限、製造にとりかかっている。出荷までの待ち時間を減らしてアメリカだけでなくグローバルな需要を支えていきたい」と話しています。

    国内メーカーも安定供給に向けた対応進める

    マイナス80度に対応できる冷凍庫をめぐっては、日本国内のメーカーも今後の需要を見越して安定供給に向けた対応を進めています。

    このうち、神奈川県相模原市の「カノウ冷機」では、アメリカの製薬大手、ファイザーが、新型コロナウイルスのワクチンの有効性に関する暫定的な結果を発表した、11月9日ごろからマイナス80度に対応できる冷凍庫に関する問い合わせが通常の倍以上に増えました。

    自治体や病院などからの問い合わせが多く、中には、一度に数百台注文した場合の納期や価格について尋ねるケースもあったということです。

    この会社では、マイナス80度に対応できる冷凍庫の生産をデンマークにある会社に受注生産で依頼しています。

    このため、今後、注文が入った際にすぐに出荷作業に取りかかり、納期をなるべく短縮できるよう、手元の在庫の量を増やす対応を取りました。

    また、デンマークのメーカーには、各国から同様の生産の依頼が入るため、日頃から現地と緊密に連絡を取り、生産に必要な部品の在庫が足りているかどうかなど状況の把握に努めているということです。

    また、群馬県に工場がある「PHC」は、マイナス80度に対応できる冷凍庫の海外からの注文が増え、ことし1月から10月までの出荷台数は前の年の同じ時期と比べて1.5倍に増えました。

    今後、日本でも需要が高まると見込んでいて、来年1月以降24時間体制で工場を稼働させる計画です。

    PHCバイオメディカ工場の西尾新一工場長は「今後の需要をしっかり読み取って、先手先手で生産計画を組んでコロナの感染の終息に向けて少しでも貢献できればと思っています」と話しています。

    冷凍庫の購入以外の方法を模索する動きも

    薬局や物流会社なども相次いで冷凍庫の購入に動く中、別の方法で対応できないか工夫を模索する動きも出ています。

    全米各州にいるワクチン接種の担当者らでつくる団体が、ファイザーのワクチンにどのように備えるのかことし10月、聞き取り調査したところ、およそ半数の州は、購入しないと回答しました。

    対応方法を聞いたところ、すでに冷凍庫を持っている大学の研究施設などから必要に応じて借りたり、ファイザーが開発しているドライアイスを使った専用の小型容器を活用し、ワクチンを複数の施設で分け合って短期間に使い切ったりするなどの工夫を検討しているということです。

    調査を行った団体のクレア・ハナン事務局長は「ファイザーのワクチン接種にはかなり綿密な計画が必要だ。ワクチンが命を救うのではなくワクチン接種が命を救う。ワクチンを扱う人がどう扱えばいいのか、きちんと理解していることが重要だ」と話していました。

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    英 製薬大手開発中のコロナワクチン 信頼性疑問視で追加試験も(11/28)

    2020年11月28日

    イギリスの製薬大手アストラゼネカは、開発中の新型コロナウイルスのワクチンの有効性について、データの信頼性を疑問視する指摘が出ていることから、追加の臨床試験を行う考えを明らかにしました。

    アストラゼネカは、オックスフォード大学と開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンについて、臨床試験で接種の量を変えて調べたところ、ワクチンの有効性は高いもので90%、平均で70%あったとする暫定的な結果を11月23日発表しました。

    これについて、欧米の複数のメディアは、90%の有効性があったとするグループ、およそ2700人には、誤って計画の半分の量を接種していたと伝え、さらにこのグループは感染しても重症化するリスクが比較的低いとされる55歳以下の人たちで、人数もほかのグループに比べて少なくデータに偏りがあるなどと指摘しました。

    これについてアストラゼネカのソリオ最高経営責任者は、アメリカメディアに対し、追加の臨床試験を行って、有効性などを改めて示していく考えを明らかにするとともに、イギリスやEUでのワクチンの承認プロセスが遅れることはないと述べました。

    このワクチンについてイギリス政府は11月27日、イギリスの規制当局に対し、承認に向けた手続きを正式に始めるよう求めたことを明らかにしています。

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    米厚生長官 ワクチン12月10日以降に供給が始まる見通し示す(11/25)

    2020年11月25日

    新型コロナウイルスのワクチンについて、アメリカのアザー厚生長官は、早ければ12月10日以降に供給が始まるとする見通しを示しました。

    新型コロナウイルスのワクチンについては、アメリカの製薬大手「ファイザー」が11月20日にFDA=アメリカ食品医薬品局に緊急使用の許可を申請しているほか、製薬企業「モデルナ」も近く、許可を申請する方針を明らかにしています。

    これについてアザー厚生長官は11月24日の会見で、「緊急使用の許可について検討するFDAの専門家委員会が来月10日に開催され、10日以降にもワクチンの供給が開始される」と述べました。

    そのうえでFDAが緊急使用の許可を出してから24時間以内には全米にワクチンを供給し、CDC=疾病対策センターの勧告に基づいて各州が決めた優先順位に従って接種が始まるとしています。

    またワクチン供給を担当する責任者は、最初に供給されるのはおよそ640万回分となるものの、12月中に4000万回分を供給する目標だと述べました。

    一方、ワクチンを一定期間以上、保存するためには、
    ▽ファイザーのワクチンの場合、マイナス60度からマイナス80度、
    ▽モデルナのワクチンもマイナス20度と、低温で管理する必要があり冷凍庫などの整備が課題と言われています。

    これについてワクチン供給の責任者は、輸送を想定した訓練を実施するなどワクチンを安定して供給できる態勢の整備を進めるとしています。

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    ファイザー 米当局に新型ワクチン緊急使用許可を申請(11/21)

    2020年11月21日

    アメリカの製薬大手ファイザーは、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、アメリカの規制当局に対し、緊急使用の許可を11月20日に申請すると発表しました。

    アメリカの規制当局に緊急使用の許可を申請するのはファイザーのワクチンが初めてとなります。

    アメリカの製薬大手ファイザーは、開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、正式な承認の前に緊急での使用を可能にする許可を11月20日にFDA=アメリカ食品医薬品局に申請すると発表しました。

    ファイザーは、すでにアメリカをはじめとした世界各国で行っている臨床試験の最終的な効果の分析で「95%の有効性が見られた」と発表しているほか、健康への影響についても、安全性にまつわる重大な懸念は報告されていないとしています。

    緊急の使用許可は、正式な承認とは異なり、公衆衛生上の緊急事態に際して規制当局が特別に出すもので、新型コロナウイルスのワクチンについて、申請が行われるのはこれが初めてのケースとなります。

    FDAは今後、申請されたデータをもとに専門家の委員会に諮るなどして審査を行い、許可の判断をすることになります。

    FDAの幹部は、審査には「数週間かかる」と地元メディアに述べているほか、アザー厚生長官は会見で、数週間以内に供給を始める準備ができていると述べ、医療従事者や高齢者が最初の対象となるという見通しを示しています。

    イギリスでも承認に向け手続き開始

    またイギリスのハンコック保健相は11月20日、ファイザーが開発中のワクチンについて、イギリスの規制当局に対し承認に向けた手続きを始めるよう求めたことを明らかにしました。

    今回のイギリスの手続きは、公衆衛生上、政府が必要と判断した場合に行われるもので、独立した委員会などがワクチンの安全性や有効性を審査し、承認するかどうか判断します。

    ハンコック保健相は、ワクチンが承認されれば、12月にも接種を始め、年明けからは、幅広く接種を進めていきたいとしていて、高齢者や、高齢者施設で働く人が最初の接種の対象になる見通しです。

    ファイザーのワクチンは、一定期間以上保存しようとすると、マイナス60度から80度の冷凍保存が必要とされていて、イギリス政府は、ワクチンの保存も可能な接種のための拠点を国内各地に設置していく計画です。

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    米ファイザー ワクチンに「95%の有効性」緊急使用許可 申請へ(11/19)

    2020年11月19日

    アメリカの製薬大手「ファイザー」は、11月18日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、95%の有効性があるとする、効果に関する最終的な分析結果を発表し、数日中にFDA=アメリカ食品医薬品局に対し、緊急使用の許可を申請するとしています。

    アメリカの製薬大手「ファイザー」はドイツの企業「ビオンテック」と開発しているワクチンについて11月18日、臨床試験でのワクチンの効果に関する最終的な分析結果を発表しました。

    それによりますと、臨床試験の対象となった4万人以上のうち、新型コロナウイルスの感染症になったのは170例でした。

    このうち、ワクチンの接種を受けていたのは8例だったのに対し、「プラセボ」と呼ばれる偽薬の接種を受けていたのは、162例だったということで、ワクチンの有効性は95%だったとしています。

    重症化したケースは10例ありましたが、ワクチンの接種を受けたグループでは1例で、9例はプラセボのグループでだったということです。

    ファイザーは、ワクチンの接種を受けた人に重大な安全上の懸念は報告されていないとしていますが2度目の接種後に、3.8%の人にけん怠感、2%の人に頭痛がみられたなどとしています。

    そのうえでファイザーは安全性に関するデータがそろったとして、数日中にFDA=アメリカ食品医薬品局に対し、開発中の医薬品を正式な承認の手続きの前に、限定的に使えるようにする、「緊急使用」の許可を申請するとしています。

    申請が行われば、FDAは専門家の委員会に諮るなどして、許可を出すかどうか判断することになりますが、FDAの幹部は地元メディアに対し、審査には「数週間かかる」と話しています。

    ファイザーのワクチンについて日本政府は来年6月末までに、6000万人分の供給を受けることで基本合意しています。

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    中国やロシアなど新興5か国 新型コロナワクチン開発など協力(11/18)

    2020年11月18日

    中国やロシアなどのBRICS、新興5か国の首脳会議が開かれ、中ロ両国は各国と協力して新型コロナウイルスのワクチンの開発、生産、供給を進めていく方針を示しました。両国としてはワクチンをめぐる各国との関係を強化し、国際的な主導権を握りたいねらいもあるとみられます。

    中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカのBRICS、新興5か国の首脳会議は11月17日、オンラインで開かれました。

    このなかで議長国のロシアのプーチン大統領はすでに2種類の新型コロナウイルスのワクチンを承認し、3種類目の開発を進めているとしたうえで、「われわれはインドやブラジルとワクチンの臨床試験を実施する。中国やインドの製薬会社とは第3国のためのワクチンの生産拠点を開設する協定も締結している」と述べ、各国と協力してワクチンの開発や生産を進める考えを示しました。

    また、習近平国家主席は中国が参加する一方、アメリカは参加していないワクチンの公平分配を目指す国際的な協力体制に言及し、「この基盤を活用し特に発展途上国に優先的にワクチンを共有していく。BRICS各国にも積極的に提供する用意がある」として、ワクチンの各国への供給に積極的に取り組む姿勢をアピールしました。

    中ロ両国としてはワクチンをめぐる各国との関係を強化し、アメリカに対抗して国際的な主導権を握りたいねらいもあるとみられます。

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    従来型と異なる「ファイザー」と「モデルナ」のワクチン(11/17)

    2020年11月17日

    有効性に関する暫定的な結果が発表された「ファイザー」と「モデルナ」のワクチンは、従来型のワクチンとは異なり、いずれも「mRNA」という傷みやすい成分が入っていて、輸送や保管の際の、低温での管理が重要になります。適切な温度管理ができないと、接種しても効果が失われるおそれがあるということです。

    アメリカのCDC=疾病対策センターの会議などで示されたデータによりますと「ファイザー」のワクチンは、
    ▽マイナス60度から80度であれば、最大半年間、保存が可能で、
    ▽2度から8度だと5日間、保存が可能だとしています。

    一方、モデルナのワクチンは、
    ▽マイナス20度で最大半年間、保存が可能で、
    ▽2度から8度では30日間、保存できるとしています。

    これについて、アメリカのメディアは、温度管理の点で、より扱いやすいとみられるモデルナのワクチンの結果を歓迎する専門家の声などを伝えています。

    一方、ファイザーもワクチンの輸送に使う専用の小型容器を開発していて、ドライアイスを入れることで輸送の際や、冷凍庫がない場所での温度管理が容易になるような対応を進めています。

    日本政府 両社から供給受ける契約など結ぶ

    日本政府は、「ファイザー」と「モデルナ」のいずれの製薬会社とも、開発に成功した場合に供給を受ける契約などを結んでいます。

    ▽アメリカの製薬大手「ファイザー」とは来年6月末までに6000万人分の供給を受けることで基本合意しています。

    ▽アメリカの製薬会社「モデルナ」からは2500万人分の供給を受ける契約で、このうち2000万人分は来年6月末までに供給されることになっています。

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    米モデルナ コロナワクチン「94.5%の有効性」暫定結果を発表(11/17)

    2020年11月17日

    アメリカの製薬企業「モデルナ」は、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、「94.5%の有効性がある」とする暫定的な結果を発表しました。モデルナは、効果の割合は今後、臨床試験が進むにつれて変わる可能性があるとしています。

    新型コロナウイルスのワクチンを開発しているアメリカの製薬企業「モデルナ」は、アメリカのNIH=国立衛生研究所などと協力して、アメリカで最終段階となる第3段階の臨床試験を行っています。

    これについてモデルナは11月16日、臨床試験のこれまでのデータを分析した、暫定的な結果を発表しました。

    それによりますと、3万人を超える臨床試験の対象者のうち、新型コロナウイルスによる感染症になったのは95例でした。

    このうち、ワクチンの接種を受けていたのは5例だったのに対し、「プラセボ」と呼ばれる偽薬の接種を受けていたのは、90例だったということで、モデルナは「ワクチンの有効性は94.5%だった」としています。

    また重症化したケースも11例ありましたが、いずれもプラセボの接種を受けたグループでワクチンを接種したグループにはいなかったとしています。

    モデルナは、ワクチンの接種を受けた人に重大な安全上の懸念は報告されていないとしていますが、2度目の接種後に9.7%の人にけん怠感、8.9%の人に筋肉の痛み、5.2%の人に関節痛、4.5%の人に頭痛がみられたなどとしています。

    モデルナは、効果についての評価は試験が進むにつれて変わる可能性があるとしているほか、今後、臨床試験の結果を審査が必要な科学雑誌に投稿するとしています。

    またモデルナは、近くFDA=アメリカ食品医薬品局に対し、緊急使用の許可を申請するとしていて、供給の見通しについては、ことし中にアメリカ国内向けにおよそ2000万回分を出荷できるとしているほか、来年には全世界に向けて5億回から10億回分を生産できるとしています。

    日本政府もモデルナから2500万人分のワクチンの供給を受ける契約で、このうち2000万人分が来年1月から6月までに供給されることになっています。

    効果の評価法と暫定結果

    今回分析の対象となった第3段階の臨床試験には、3万人を超える人が参加しています。

    モデルナによりますと、参加者は開発中のワクチンか、このワクチンとは別のプラセボと呼ばれる偽薬をそれぞれ2回接種されます。

    そして2回目の接種後、新型コロナウイルスによる感染症になった人を調べ、ワクチンを接種した人と偽薬を接種した人が、それぞれどの程度いるのかをみてワクチンの有効性を調べるということです。

    今回、新型コロナウイルスによる感染症と確認されたのは、95例でこのうちワクチンを接種したケースは5例、偽薬を接種したケースは90例で、その割合を調べた結果、モデルナはワクチンの有効性は94.5%だったとしています。

    WHO「勇気づけられる結果」

    アメリカの製薬企業「モデルナ」が開発中の新型コロナウイルスのワクチンに有効性があるとの暫定結果を発表したことについて、開発を支援するWHO=世界保健機関の主任科学者、スワミナサン氏は11月16日に開かれた会見の中で、「非常に勇気づけられる結果だ」と評価しました。

    そのうえで、スワミナサン氏は「すべてのデータが分析され、最終的な効果と安全性を見極めなければならない。少なくとも2か月間、試験に参加した人の半数を対象に副作用が出ないか追跡する必要もある」と述べ、結果を慎重に見極める必要があるとの考えを示しました。

    また、WHOで新型コロナウイルス対応の技術責任者を務めるバンケルコフ氏は、これまでに本部に勤務する職員65人が感染したと発表し、対応にあたる最前線でも感染が広がっていることを明らかにしました。

    加藤官房長官「明るいニュースが続いている」

    加藤官房長官は、閣議のあとの記者会見で、「個別企業の話で、まだ治験の進行段階の状況なので、政府としてコメントは差し控えたいが、新型コロナウイルスのワクチンの開発に対して、多くの皆さんが期待している中で、複数のワクチンについて明るいニュースが続いていると受け止めている」と述べました。

    そのうえで、「安全性、有効性などに関するデータと、最新の科学的知見に基づいて、承認の申請があった場合はしっかり確認したうえで承認するとともに、来年前半までに全国民に提供できる数量のワクチンを確保することを目指して、厚生労働省を中心に取り組むという方針に沿って、引き続き対応していきたい」と述べました。

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    モデルナ ワクチン臨床試験結果の暫定的分析開始(11/12)

    2020年11月12日

    アメリカの製薬企業「モデルナ」は、開発中の新型コロナウイルスワクチンの最終段階となる臨床試験で、想定していた数の感染例が集まったとして、暫定的な分析を開始すると発表しました。

    アメリカの製薬企業「モデルナ」が開発中の新型コロナウイルスワクチンは、アメリカでおよそ3万人を対象に最終段階となる臨床試験を行っています。

    このワクチンについて「モデルナ」は11月11日、試験に参加した人のうち、ウイルスに感染した例が、分析に必要な53例を超えたと発表し、今後、このデータをもとに、効果などについて暫定的な分析を行うと発表しました。

    臨床試験は、ワクチンを接種されたグループと偽の薬「プラセボ」を接種されたグループとを比較して行われていますが、「モデルナ」は感染例がどちらのグループに属しているかなどの詳細は知らされていないとしていて、ワクチンにどの程度の有効性が期待できるかについては明らかにされていません。

    このワクチンは「mRNA」という成分を使った新しいタイプのワクチンで、日本政府は10月、モデルナが開発に成功した場合、来年秋までに2500万人分の供給を受ける契約を結んでいます。

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    EU ファイザーなど開発 ワクチン 3億回分購入で合意(11/12)

    2020年11月12日

    EU=ヨーロッパ連合はアメリカの製薬大手「ファイザー」などが開発している新型コロナウイルスのワクチンを最大で3億回分購入することで合意しました。

    アメリカの製薬大手「ファイザー」は、ドイツの企業「ビオンテック」と開発しているワクチンについて11月9日、「90%を超える予防効果がある」とする臨床試験の暫定的な結果を発表しています。

    このワクチンについて、EUの執行機関、ヨーロッパ委員会は11月11日、最大3億回分購入する契約を結んだと発表しました。

    EU加盟国を代表してまず2億回分を購入したうえで、必要に応じて最大1億回分を追加で購入するとしています。

    EUがワクチン購入の契約を結んだのは、イギリスの製薬大手、アストラゼネカなどに続いて4例目です。

    ヨーロッパ委員会のフォンデアライエン委員長は「使用が認可されれば感染拡大に対する持続可能な解決へと近づく」と期待を示しました。

    ワクチン供給の見通しについて、ファイザーは年内に5000万回分、来年には最大13億回分を生産できるとしていて、日本政府も来年6月末までに、6000万人分の供給を受けることで基本合意しています。

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    ファイザー 新型コロナ ワクチン「90%超の予防効果」と発表(11/10)

    2020年11月10日

    アメリカの製薬大手「ファイザー」は、開発中の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験について、「90%を超える予防効果がある」とする暫定的な結果を発表しました。

    アメリカの製薬大手「ファイザー」がドイツの企業「ビオンテック」と開発しているワクチンはアメリカをはじめとした各国で最終段階となる臨床試験を行っています。

    これについてファイザーは11月9日、外部の独立した委員会が臨床試験のデータを分析した、暫定的な結果を発表しました。

    それによりますと、臨床試験の対象となった4万3538人のうち、新型コロナウイルスの感染が確認されたのは94例でした。

    そして、実際にワクチンを接種した人としなかった人を比較して分析した結果、予防の効果は90%を超えるとみられるとしています。

    また、接種した人に深刻な健康への影響はみられなかったということです。

    ファイザーは試験はまだ進行中で、予防効果の数値は今後、変わる可能性があるとしながらも、安全性のデータがそろう11月第3週以降、FDA=アメリカ食品医薬品局に対し、緊急使用の許可を申請するとしています。

    ワクチン供給の見通しについてファイザーは年内に5000万回分、来年には最大13億回分を生産できるとしていて、日本政府も来年6月末までに、6000万人分の供給を受けることで基本合意しています。

    トランプ大統領 歓迎 バイデン氏 対策進める決意

    アメリカの製薬大手「ファイザー」の新型コロナウイルスワクチンに関する発表について、トランプ大統領はツイッターに「株式市場は大きく上昇。ワクチンがまもなく手に入る。90%の効果があると報告されている。なんとすばらしいニュースだ」と書き込み歓迎しました。

    また、大統領選挙で勝利を宣言した民主党のバイデン前副大統領も声明を発表し、「この躍進を生み出し、希望を与えてくれた才気あふれる人々を祝福する」と歓迎しました。

    一方、バイデン氏は国民に予防接種が広く普及するのはまだ当面、時間がかかるとも指摘したうえで、「マスクの着用がワクチンよりも強力な武器であり続ける」とさらなる感染対策の徹底が必要だとの考えを強調しました。

    そして、「アメリカはいまだ新型コロナウイルスで1日1000人以上が亡くなっており、その数は増え続けている。これが現実で、われわれの目の前にある仕事は変わらない」と、ワクチン開発の結果に一喜一憂することなく、着実に対策を進めていく決意を示しました。

    WHOテドロス事務局長「勇気づけられる」

    アメリカの製薬大手「ファイザー」の新型コロナウイルスワクチンに関する発表について、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は11月9日、ツイッターに「勇気づけられる知らせだ。新型コロナウイルスに打ち勝つため、新しく、安全かつ有効なツールを開発しようとしているすべての科学者や関係する人たちに敬意を表する」と投稿して歓迎しました。

    専門家「試験結果はよいニュース」

    感染症対策が専門のニューヨーク大学のマイケル・マーソン教授は、「ファイザーの試験結果についてはよいニュースだ。しかし、ワクチンの流通や供給の課題、それにトランプ政権があおった科学への不信を打ち消し、信頼を取り戻して、国民にワクチンを接種するという課題も残されている。ワクチンができたからといってこれまでとってきた感染対策が不要になるわけではない」と基本的な感染対策が重要であるとくぎを刺しました。

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    新型コロナワクチン 一般の人たちに接種へ 懸念の声も ロシア(10/31)

    2020年10月31日

    新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、ロシア政府は、世界に先駆け2種類の国産ワクチンを相次いで正式に承認し、首都モスクワでは早ければ来月から広く希望する一般の人たちに接種したい考えです。いずれのワクチンも臨床試験が終了していませんが、すでに医療従事者や学校の教師への接種は始まっていて、広く国民への接種が始まることに懸念の声も上がっています。

    ロシアのプーチン政権は、モスクワにある国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所が開発した新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」をことし8月に正式承認したのに続き、10月には国立ウイルス学・生物工学研究センターが開発したワクチンも正式に承認したと明らかにしました。

    いずれのワクチンも3段階ある臨床試験が終わっていませんが、「スプートニクV」についてはすでに感染リスクの高い医療従事者や学校の教師への接種が始まっています。

    モスクワの医療機関では医師たちがワクチンの接種に訪れ、医師の男性はNHKの取材に対して「まず医師が免疫をつけるべきです。周囲に副作用を訴える人もいないことがワクチンの安全性を十分に示しています」と話していました。

    ロシア政府はワクチンの大量生産が順調に進めば、首都モスクワでは早ければ11月から世界に先駆けて接種の対象を希望する一般の人たちにも広げたい考えですが、ロシア国内の専門家からも安全性などを懸念する声が上がっています。

    10月行われた世論調査によりますと、ワクチンを接種するつもりだと答えた人は22%にとどまり、44%が接種しないと回答していますが、学校などの教育現場では教師がワクチンの接種を求められるところもあるということです。

    ロシアでは実在する検査機関のものとそっくりのPCR検査や、抗体検査の偽の陰性証明書がインターネットで簡単に購入することができ、ワクチンについても偽造の接種証明書が出回ることが懸念されています。

    こうした事態が起きれば感染対策を進める上でも混乱を招きかねず、専門家は「ワクチンの接種を強制することは絶対あってはならない」と強調しています。

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    新型コロナワクチン接種費用 全額国負担に 改正法案を閣議決定(10/27)

    2020年10月27日

    新型コロナウイルスのワクチンの接種について、政府は、費用を全額国が負担し、健康被害が確認された場合は、医療費の支給を行うことなどを盛り込んだ改正案を閣議で決定しました。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、政府は、アメリカとイギリスの製薬会社と開発に成功した場合に供給を受けることで基本合意するなどしていて、来年前半からの接種の開始を目指しています。

    こうした中、政府は、10月27日の閣議で予防接種法の改正案を決定しました。

    改正案では、ワクチンの接種を国民の「努力義務」と位置づけ、接種は市町村が行い、費用は全額国が負担するとしています。

    また、ワクチンの使用で健康被害が確認された場合、現行の救済制度を適用し、医療費の支給などを行うほか、健康被害を受けた人に製薬会社が賠償した場合は、国が損失を補償するとしています。

    一方、政府は、入国する際の検疫で新型コロナウイルスの感染が確認された人に対する「隔離」の措置などを来年2月以降も実施できるよう「検疫法」の改正案も決定しました。

    政府は、今の国会で改正案の成立を目指すことにしています。

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    IATA “ワクチン 深刻な輸送力不足のおそれ” 対応求める(10/26)

    2020年10月26日

    世界のおよそ290の航空会社が加盟するIATA=国際航空運送協会の物流部門のトップがNHKの単独インタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大で貨物輸送の容量が大幅に減っているとしたうえで、旅客機の座席を取り払って貨物目的での運航ができるようにするなど臨機応変の対応を早急に行うよう呼びかけました。

    IATA=国際航空運送協会によりますと、世界人口の78億人全員に1回分のワクチンを提供する場合、その量はボーイング747型の貨物機8000機の積載量に相当するということです。

    しかし、世界の貨物輸送のおよそ半分は、乗客を乗せて飛ぶ旅客機の貨物室を活用していて、パンデミックで旅客機の60%が飛ばなくなった影響で、貨物輸送の容量が大幅に落ち込んでいるということです。

    これについて、IATAの物流部門のトップ、グリン・ヒューズ氏は、パンデミックの影響で運休している旅客機を再び運航するためには、機体のメンテナンスやテスト飛行などに3週間から4週間かかるとして、多くの旅客機がすぐに稼働できない現状では、仮にワクチンが完成しても深刻な輸送力不足に陥るおそれがあると明らかにしました。

    そのうえで、「航空各社はマスクなどの医療物資を運ぶため、旅客機の座席を取り払い、各国の航空当局に貨物目的で運航できるよう許可を求める手続きを始めている」として、ワクチン輸送に対しても同様の臨機応変の対応を早急に行うことが求められると指摘しました。

    そのうえで新型コロナウイルスワクチンの中には低温での輸送が必要になるものがあり、サプライチェーンの構築は「一企業が単独で解決できる問題ではない」として、各国の航空会社が協力して早めに準備を進めるよう呼びかけました。

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    新型コロナ ワクチンの保存や輸送に課題(10/25)

    2020年10月25日

    新型コロナウイルスのワクチンは複数の候補が開発の最終段階を迎えていますが、いま課題になりつつあるのが大量のワクチンをどう運ぶかです。

    新型コロナウイルスのワクチンの中には、インフルエンザなどとは異なり、マイナス60度から80度というかなり低い温度での保存や輸送が必要となりそうなものがあって、アメリカでは大量の冷凍庫を備えた物流拠点の建設などが進められています。

    開発の最終段階に入った新型コロナウイルスのワクチンには、これまでとは異なる新たな方法で製造されるものがあり、アメリカのCDC=疾病対策センターの会議で示されたデータによりますと、アメリカの製薬大手ファイザーのワクチンは一定期間以上保存しようとするとマイナス60度から80度の冷凍保存が、またアメリカのモデルナのワクチンもマイナス20度での保存が必要とされています。

    専門家によりますといずれのワクチンにも「mRNA」という傷みやすい成分が入っているためで、適切な温度管理ができないと、接種しても効果が失われるおそれがあるということです。

    このためアメリカでは完成したワクチンを、品質を損なわない形でどのように病院など接種の現場にまで届けるのか、サプライチェーンの構築が急務となっていて、アメリカの物流大手「UPS」は全米各地にワクチンを輸送する戦略的拠点となる巨大冷凍施設を南部ケンタッキー州に建設しています。

    施設にはマイナス80度という低温でワクチンを保存できる冷凍庫を最大数百台設置。

    現在300万回分以上を保存できる容量は、需要に応じてこの数倍にまで増やせます。

    一方アメリカの物流大手「FedEx」も温度管理を目的とした小型センサーの開発を進めています。

    2秒に1回、倉庫やトラックの中などの輸送過程にある30万もの通信機器と通信し、貴重な医療物資が盗まれないよう正確な位置情報も確認できるということです。

    医療分野のサプライチェーンの課題に詳しいメリーランド大学のサンダー・ボイソン研究教授は「列車でも飛行機でも、海上輸送の場合でも、注意深く管理された環境が必要だ。新型コロナウイルスワクチンの配布のスケールは巨大で、これまでにない官民のパートナーシップが必要だ」と述べ、民間企業のノウハウを活用した協力体制の強化が欠かせないという考えを示しました。

    FedExの追跡サービスとは

    アメリカの物流大手、「FedEx」が9月から導入した荷物の追跡サービスに使われているのが、縦およそ5センチ、横2センチ余り、重さ7グラムの小さなセンサーです。

    新型コロナウイルスワクチンなどの貴重な医療物資を紛失したり、配達中に高温にさらされて使えなくなったりする被害を未然に防ぐことを目指したもので、ブルートゥースと呼ばれる通信機能が使われています。

    このセンサーを荷物の箱に付けると、この物流会社の倉庫や航空機、それにトラックなど輸送の過程にある30万もの通信機器と2秒に1回の頻度で通信します。

    誤差1メートルほどの精度で荷物の位置情報を正確に把握できるため、万一、輸送の途中で急な変更が生じた場合にも柔軟な対応が可能です。

    例えば、空港の倉庫からトラックを使って陸路で病院まで運ぶ途中の医療物資。

    急きょ、別の場所に届ける必要が出てきたとします。

    荷物が今どこにあるのか、正確に把握できていれば、近くを走っている別のトラックに荷物を積み替えるなどして最短ルートで物資を届けることもできます。

    センサーは今のところ、位置情報の機能に特化していますが、会社は今後、1年程度をかけて改良し、荷物の温度や湿度、光の通し具合などの情報も追跡できるようになる見通しです。

    UPSの冷凍施設

    アメリカの物流大手、「UPS」が南部ケンタッキー州に新たに設けた冷凍施設です。

    会社は新型コロナウイルスワクチンを全米各地に効率的に運ぶための最適な拠点として、ケンタッキー州を選んだといいます。

    10月中旬には新型コロナウイルスワクチンをマイナス80度で保管できる冷凍庫が70台搬入されました。

    冷凍庫1台当たり4万8000回分のワクチンを保管することが可能です。

    設置された冷凍庫は電源を入れたあと一定の時間を置き、その後、マイナス80度まで温度がきちんと下がるか、1台ずつチェックします。

    会社によりますと新型コロナワクチンウイルスの今後の需要に応じて、最大で数百台まで設置台数を増やすことが可能だということです。

    一般的なワクチンより低い温度での管理必要

    開発中の新型コロナワクチンの中でも「mRNAワクチン」と呼ばれるタイプのワクチンは、保管や輸送にあたって、一般的なワクチンと比べてさらに低い温度での管理が必要となっています。

    これらのワクチンには人工的に作られた傷みやすい成分が含まれ、温度管理が適切でないとワクチンの効果が失われてしまいます。

    アメリカのCDC=疾病対策センターのワクチンに関する会議で示されたデータでは、アメリカの製薬大手ファイザーがドイツのビオンテック社と開発中のワクチンはマイナス60度から80度、アメリカのモデルナが開発中のワクチンはマイナス20度程度で管理することによって6か月間の保管が可能だということです。

    両社ともにこれらの温度や保存期間は今後、開発が進むにつれて変わる可能性があるとしています。

    このほかアメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発中のワクチンはヒトに害がないように改変したウイルスを使っていますが、これらのワクチンはマイナス20度では2年間、2度から8度で3か月間の保管が可能だということです。

    一方イギリスの製薬大手アストラゼネカがオックスフォード大学と開発中のワクチンは、冷蔵しての保管が必要だとされています。

    またCDCの会議のデータでは、低温での管理によって輸送し、実際に接種を行う医療機関などに運ばれたあとは、ファイザーのワクチンの場合、2度から8度であれば1日程度保管できるほか、モデルナのワクチンは通常の冷凍庫の温度で10日ほど保管できるとしています。

    専門家「日本も環境整備が必要」

    アメリカのファイザーが開発中のワクチンは、日本も6000万人分の供給を受けることで基本合意しています。

    これについて、新型コロナウイルス対策を検討する政府の分科会のメンバーで、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長はワクチンの輸送にどの程度の低温が必要なのかやそれによって可能な保存期間についてはまだデータがはっきりと分かっていないとしたうえで、「日本でもワクチンの取り扱いについて検討を進める必要がある。
    マイナス80度に凍結しておかないと不安定なワクチンを、普通の冷蔵庫に置いてしまうとワクチンが水のようになって、全然効果がなくなってしまう」などと指摘しました。

    そのうえで、完成したワクチンを有効に使うためには「どこまで厳密な温度管理が必要なのか、きちんと検証したうえで使う必要があり、ワクチンそのものだけではなく、周辺の環境状況も一緒に整備していく必要がある」として、ワクチンの安全性や効果とともに、輸送や保管の温度管理も合わせて検討すべき課題だという認識を示しました。

    厚労省「ワクチンの低温保管は検討課題」

    厚生労働省は「ワクチンを必要とされる低温で保管できる設備が、現時点で日本国内に大量にあるとは考えにくい」としたうえで、「どう保管や管理をしていくかは、広く接種を進めていくうえで、検討が必要な課題の1つだ」としています。

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    イギリス “人為的に感染” 新型コロナのワクチン開発加速(10/21)

    2020年10月21日

    新型コロナウイルスのワクチン開発を加速させるため、イギリス政府は、健康な人に開発中のワクチンを投与したあと、人為的にウイルスに感染させてワクチンの効果などを調べる研究に対し、日本円でおよそ46億円の支援を行うと発表しました。

    発表によりますと、イギリス政府はインペリアル・カレッジ・ロンドンなどが行う研究に、3360万ポンド、日本円にしておよそ46億円の支援を行うということです。

    研究では、はじめに18歳から30歳までの健康な人を対象にどれくらいの量のウイルスで感染が起こるのかを調べます。

    そのうえで、別の健康な人を対象に開発中のワクチンを投与したあと、人為的に新型コロナウイルスに感染させて、ワクチンの効果や副作用を調べます。

    被験者は医師や科学者が24時間態勢で健康状態を観察し、研究に参加したあとも最大1年間は異常がないか経過をみるとしています。

    研究に用いるワクチンはまだ決まっていないということですが、イギリスの規制当局や倫理委員会の承認を受ければ、来年1月にも研究を開始する見通しだということです。

    イギリス政府によりますと、こうした研究はこれまでにインフルエンザなどほかの病原体でも行われたことがありますが、新型コロナウイルスで行われるのは初めてだということです。

    研究チームは、安全が最優先だとした上で、「この研究によって得られる結果は、パンデミックに対処していくため、イギリスや世界各地の人々にとって、役立つものになるだろう」とコメントしています。

    WHO 8つの倫理基準

    WHO=世界保健機関は、新型コロナウイルスのワクチン開発のために、人為的にウイルスをヒトに感染させる研究が倫理的に許されるための8つの基準をことし5月に発表しています。

    基準には、▽リスクよりも利益が大きいと見込まれることや、▽最高水準の科学的、臨床的、倫理的な基準に沿った環境で行われること、それに▽リスクも含めた十分な情報を被験者に伝えたうえで同意を得る「インフォームドコンセント」を厳格に行うことなどが盛り込まれています。

    イギリス政府の発表について、WHOのハリス報道官は10月20日、国連ヨーロッパ本部の定例記者会見で、「この研究に参加するすべての人に、どのような危険にさらされるのか理解してもらったうえで、リスクを最小限にしなければならない」と述べました。

    専門家「倫理的に非常に難しい」

    イギリス政府が発表した研究について感染症の治療に詳しい愛知医科大学の森島恒雄客員教授は今回の研究についてまだ、詳細は把握していないとしたうえで、「本来、ワクチンの効果は自然の状態の中で確かめるものだ。新型コロナウイルスの感染の様式についてはいまだによく分かっておらず、世界的には20代や30代でも重症化して亡くなる人もいる。たとえ健康な人であっても人為的に感染させるとするとリスクが大きく、倫理的には非常に難しい点があると感じる」と話していました。

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    ロシア 11月にも希望者にワクチン接種へ 安全性に懸念の声も(10/21)

    2020年10月21日

    ロシアでは、自国で開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、早ければ11月にも希望者を対象に接種が受けられる見通しとなりました。ただ、臨床試験が十分に行われていないとして、安全性などを懸念する声も出ています。

    ロシアではことし8月、プーチン政権が自国で開発した新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」を正式に承認し、現在、4万人を対象にして最終段階の臨床試験が行われています。

    ワクチンを開発した国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所のギンツブルグ所長は10月20日、メディアに対して「11月中には医師や教師へのワクチン接種が行われ、そのあと、職業にかかわらず接種が始まる」と述べました。

    またワクチンの製造を行っているロシアの製薬会社は現在、生産を拡大していて、早ければ11月にも希望者を対象に接種が受けられる見通しとなりました。

    ワクチンをめぐってミシュスチン首相は10月20日、「コロナウイルスに対するはじめてのワクチンがロシア産であることを誇りに思う」と述べワクチンの海外への提供も急ぐ考えを強調しました。

    ただ、最終段階の臨床試験が終わらないなかで接種が始まることに、ロシア国内の専門家からも「急ぐ必要はない」などと安全性や有効性について懸念する声が出ています。

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    米 ファイザー ワクチン臨床試験 日本でも10月中にも開始へ(10/20)

    2020年10月20日

    アメリカの製薬大手ファイザーは、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて日本国内でも近く臨床試験を開始すると明らかにしました。

    ファイザーは、ドイツの製薬企業と共同で新型コロナウイルスのワクチンの開発を進めていて、開発に成功した場合、来年6月末までにおよそ6000万人分を日本政府に供給することで基本合意しています。

    現在、海外では最終段階の臨床試験が行われていて、アメリカでは、効果が確認できた場合、来月後半にも緊急使用の許可を規制当局に申請する見通しです。

    このワクチンについて、ファイザーは、10月20日、日本国内でも臨床試験を開始すると発表しました。

    対象は20歳から85歳までの日本人160人で、間隔を3週間空けて2回接種します。

    10月中にも接種を始める予定で、有効性や安全性が確認できれば、海外の臨床試験のデータと合わせて、国内での製造販売の承認を申請するということです。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、同じく日本政府が供給を受けることで基本合意をしているイギリスの製薬大手「アストラゼネカ」なども、日本国内で臨床試験を進めています。

    ファイザーは「臨床試験が成功して承認が得られれば、できるだけ早くワクチンを供給できるよう努めて参ります」とコメントしています。

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    ロシア 2例目の新型コロナワクチン承認 早期承認に懸念の声(10/15)

    2020年10月15日

    ロシアのプーチン大統領は、ロシア政府として2例目となる新型コロナウイルスのワクチンの承認を行ったと明らかにしました。各国に先駆けた開発の進展を誇示したいねらいとみられますが、十分な臨床試験を終えておらず国内の専門家からも早期の承認に懸念の声が上がっています。

    ロシアのプーチン大統領は10月14日、政府のオンライン会議で国立ウイルス学・生物工学研究センターが開発した新型コロナウイルスのワクチンを承認したと明らかにしました。

    ロシア政府によるワクチンの承認は8月の「スプートニクV」に続く2例目で、プーチン大統領は「喜ばしいニュースだ」と述べました。

    また、プーチン大統領は「スプートニクV」の外国への提供を進める考えを強調し、各国に先駆けた開発の進展を誇示したいねらいとみられます。

    ただ「スプートニクV」は現在も臨床試験が続いていて、今回、承認されたワクチンも3段階の臨床試験の2段階までしか終了していません。

    このため国立モスクワ第1医科大学のズベレフ教授はNHKの取材に「なぜここまで急がなければならないのか」と述べるなど、国内の専門家からも早期の承認に懸念の声が上がっています。

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    新型コロナ 国産ワクチン実用化「来年から再来年に」(10/14)

    2020年10月14日

    新型コロナウイルスのワクチン開発を進める国内の製薬会社や研究者が参加するシンポジウムが、10月14日、横浜市で開かれ、国産のワクチンが実用化される時期について「来年から再来年になる」などの見通しが示されました。

    このシンポジウムはバイオ関連の展示会の一環として開かれたもので、新型コロナウイルスのワクチン開発を進める国内の製薬会社などが参加し、世界的なウイルス研究者で、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授が司会を務めました。

    この中で、製薬会社の担当者などが開発中のワクチンの特徴や進捗(しんちょく)状況を紹介しました。

    このうち、DNAを活用した新しい技術のワクチンについて、すでに臨床試験を行っている大阪のベンチャー企業と共同で開発している研究者は、国内については「承認が得られれば、数百万人ほどは来年にも可能だろうと思う」としたうえで、海外への供給も視野に入れた大量生産については「2022年後半ぐらいからになると考えている」と説明しました。

    また、遺伝子のRNAという物質を使ったワクチンを開発している大手製薬会社は「2022年を念頭になるべく早期に開発したい」と説明しました。

    そして、国内の医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構の担当者は、「有効性や安全性に対する考え方を国際的に共有しながら、国内か海外かにかかわらず開発されたワクチンを公平に審査していきたい」と述べました。

    ※この記事で、一時、国内で開発中の新型コロナウイルスのワクチンの実用化の時期について「再来年になる」という見通しを紹介していましたが、その後の発表者への取材で、発言は世界的な供給を想定したもので、国内については来年にも可能と考えているということでしたので、表現を更新しました。説明が不十分でした。

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    新型コロナのワクチン「3000万人分 12月にかけ用意できる」(10/7)

    2020年10月7日

    アメリカ政府が進める新型コロナウイルスワクチン開発計画のトップは、複数のワクチンについて効果や安全性が確認できれば「11月から12月にかけて3000万人に接種できる量が用意できる」という見通しを示しました。

    アメリカの新型コロナウイルスワクチンの開発計画「オペレーション・ワープスピード」のモンセフ・スラウイ博士は、10月6日に行われたシンポジウムで、開発や供給の見通しについて発言しました。

    この中でスラウイ博士は、アメリカの製薬会社「モデルナ」と「ファイザー」のワクチンは、臨床試験の最終段階にあたる第3段階の参加者がほぼ目標の人数に達していて「今後数週間以内に効果や安全性について最初のデータが出るだろう」と述べました。

    そのうえで、安全性などが確認できれば「11月から12月にかけて3000万人に接種できる量のワクチンが用意できる」という見通しを示しました。

    また、イギリスの「アストラゼネカ」が開発中のワクチンは、臨床試験が中断された影響で、アメリカで最初のデータが出るのは来年1月以降になるという見方を示したほか、アメリカの「ジョンソン・エンド・ジョンソン」のワクチンも来年初めになる見込みだと述べました。

    ワクチンの開発と供給をめぐっては、アメリカFDA=食品医薬品局が一定の基準を満たしたワクチンは緊急での使用を許可する方針を明らかにしていて、今後の臨床試験で効果や安全性がどの程度検証できるかが焦点となります。

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    米FDA 新型コロナワクチンの“緊急使用”に必要な詳細基準公表(10/7)

    2020年10月7日

    開発中の新型コロナウイルスワクチンをめぐり、アメリカFDA=食品医薬品局は、10月6日、製薬会社が緊急使用の許可を得る上で必要な安全性のデータなどの詳細な基準を公表しました。

    医薬品の規制や承認を行うアメリカの政府機関、FDAは10月6日、新型コロナウイルスのワクチンについて、製薬会社が臨床試験を終えてから行う正式な承認手続きの前に限定的な使用を可能にする「緊急使用」の許可を得る上で必要なデータの詳細な基準を公表しました。

    それによりますと、臨床試験の最終段階でワクチンを接種した参加者を最低2か月間観察し、抗体などのデータを集めるほか、健康への影響を調べた3000人分以上のデータが必要だなどとしています。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、トランプ大統領が来月の大統領選挙の前の実用化を急ぎ、FDAに圧力をかけているという批判が野党・民主党や医療の専門家からあがっています。

    しかし、今回公表された基準は厳しいため、選挙の前にワクチンの緊急使用が認められる可能性は極めて低くなるとみられ、アメリカメディアは、政権が基準の承認を拒んできたと伝えています。

    専門家からは一定の安全性が担保されることを歓迎する声が上がる一方、さらに厳しい基準を適用すべきだという意見もあり、ワクチンの緊急使用をめぐる議論が激しくなっています。

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    新型コロナワクチン接種 国が全額負担 健康被害確認なら救済も(10/2)

    2020年10月2日

    新型コロナウイルスのワクチンの接種について、厚生労働省は、費用を全額、国で負担したうえで、健康被害が確認された場合は医療費の支給などを行うことを決めました。

    新型コロナウイルスのワクチンについて、国は来年前半までに国民全員の分を確保する方針で、開発に取り組んでいる欧米の製薬会社と交渉を進めています。

    厚生労働省は10月2日、都内で開いた専門家会議で、接種の進め方などを明らかにしました。

    それによりますと、費用は全額、国で負担したうえで、健康被害が確認された場合は予防接種法に基づく救済制度を適用し、結核などの定期接種と同じ水準で医療費の支給などを行います。

    健康被害を受けた人に製薬企業が賠償した場合は、国が損失を補償するということです。

    また、接種を行う主体は市町村とし、国民には接種を受けることを「努力義務」として課します。

    ただし、接種が始まったあとにワクチンの安全性や有効性が十分でないことが判明した場合などは、努力義務としないということです。

    厚生労働省は、必要な予防接種法の改正案を臨時国会に提出することにしています。

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    アメリカ 「ワクチン接種しない」 2人に1人(9/30)

    2020年9月30日

    欧米などを中心に新型コロナウイルスのワクチンの開発が急ピッチで進められていますが、アメリカでは、もしワクチンがすぐに接種できるとしたらどうするか、成人1万人余りに聞いたところ、安全性への懸念などから2人に1人が「接種しない」と回答していて、専門家は、正しい情報を伝えることで信頼を得ることが重要だと指摘しています。

    アメリカの調査機関「ピュー・リサーチセンター」は、ことし4月から5月にかけてと9月上旬に、それぞれ成人1万人余りを対象に、新型コロナウイルスのワクチンがすぐに接種できるとした場合どうするか、インターネットを使って調査しました。

    その結果、4月から5月の調査では、「おそらく接種しない」と「絶対接種しない」が合わせて27%だったのに対し、9月の調査ではこれが49%に増えたということです。

    最も多い理由は「副作用の懸念」で、次に多かったのは「どの程度効果があるのかもっと知りたいから」でした。

    アメリカでは以前から、ワクチンそのものの安全性や効果に否定的なグループが学校でのワクチンの義務化に反対したり、接種を拒否したりする活動を行っています。

    さらに11月の大統領選挙を前に、トランプ大統領がワクチンの実用化を急ぐ姿勢を見せる一方、野党・民主党のバイデン候補らは政権が規制当局に圧力をかける可能性があるとして、安全性や効果を慎重に検証すべきだと主張していて、こうした動きは政治的な対立にとどまらず、ワクチンの安全性や効果に対する不信感につながっているという指摘が出ています。

    社会心理学が専門で、アメリカの反ワクチン運動に詳しいイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のドロレス・アルバラシン教授は「ワクチン対する不信感の広がりはパンデミックに立ち向かう上で大きな問題だ。ワクチンをめぐる混乱が原因で副作用を懸念したり、情報がなかったりする人たちに対して、キャンペーンなどを通じて科学的に正しい情報を広く知ってもらう必要がある」と話しています。

    接種義務化に反対する人たちは

    アメリカでは、新型コロナウイルスのワクチンが使えるようになった場合、会社や学校などで接種を事実上、義務づけるべきか検討が始まっていますが、接種の義務化は個人の自由の侵害だとして保守層を中心に反対する人たちもいます。

    東部マサチューセッツ州ボストン近郊の町では、9月26日、店舗の営業制限やマスクの義務化に反対する集会が開かれ、ワクチンの接種の義務化に反発する人も多く参加しました。

    この冬、アメリカでは、新型コロナウイルスとインフルエンザが同時に流行するおそれがあると言われていて、この州では新たに、子どもたちにインフルエンザワクチンの接種を事実上、義務づけることにしたのです。

    新型コロナウイルスのワクチンについて聞いたところ、参加していた40代の女性は「接種は個人の選択であるべきで、義務化すべきではない。新型コロナウイルスのワクチンは安全性の確認が不十分だ」と話していました。

    また、家族で参加した50代の女性は「個人的には新型コロナウイルスのワクチンは接種したくないし、子どもにも受けさせない」と話していました。

    さらに別の女性は「インフルエンザで義務化を認めれば、次は新型コロナウイルスのワクチンが義務化される。政府には自分の体のことを決める権限はない」と話していました。

    集会を主催した保守系の政治団体の代表を務めるジョン・ヒューゴさんは「新型コロナウイルスの脅威は誇張されている」などと話し、新型コロナウイルスのワクチンの義務化には反対するとしています。

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    米政府 コロナワクチン 来年1月までに供給の指針 慎重な声も(9/17)

    2020年9月17日

    アメリカ政府は、新型コロナウイルスのワクチンを全米に速やかに供給する態勢を来年1月までに整備するとした指針を議会に通知しました。ワクチンの供給をめぐって慎重な対応を求める声も上がる中、大統領選挙に向けウイルス対策の成果を示したいトランプ大統領の考えに沿ったものとなっています。

    この指針は9月16日、アメリカ厚生省が連邦議会に通知しました。

    この中では、「接種を希望するすべてのアメリカ国民に、安全で効果のあるワクチンを供給できる態勢を来年1月までに整備する」としていて、素早い供給を実現するために軍を動員し、国防総省と緊密に連携するとしています。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、トランプ大統領は許可や承認を急ぐことで早期に供給できるという見通しを示すなど、11月の大統領選挙に向けて成果を示したいねらいもあると見られます。

    今回の指針は、こうした大統領の意向に沿うものとなっていますが、専門家などからは安全性や有効性の確認を優先し、臨床試験に基づいた慎重な対応をするよう求める声も上がっていて、議論を呼びそうです。

    米CDC 多くの人が接種できるのは来年春以降の見通し

    ワクチンの供給時期をめぐって、アメリカCDC=疾病対策センターのレッドフィールド所長は16日、議会上院で証言し、ワクチンを多くの人が接種できるようになるのは、来年の春以降になるという見通しを示しました。

    この中で、レッドフィールド所長は、「ワクチンはことし11月から12月には使えるようになるかもしれない」とした一方で、多くの人が接種できるようになるのは、FDA=食品医薬品局が使用を許可した6か月から9か月後となるため、来年の春以降、第2四半期から第3四半期になるという見通しを示しました。

    また、政権の主張に沿うよう、CDCの報告書がゆがめられているのではないかという指摘に対し、レッドフィールド所長は、「報告書の内容は科学的な原則を貫いている」と強調し政治的な圧力を否定しました。

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    アストラゼネカ 新型コロナワクチン 日本での臨床試験も再開へ(9/14)

    2020年9月14日

    製薬大手「アストラゼネカ」が、中断していた新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験をイギリスに続いて日本でも近く再開する方針を固めたことが関係者への取材で分かりました。

    イギリスの製薬大手アストラゼネカは、オックスフォード大学と共同で新型コロナウイルスのワクチンの開発を進めていて、イギリスやブラジルなどでは臨床試験の最終段階を迎えています。

    ところが、イギリス国内でワクチンを接種した1人に原因不明の重い症状が確認されたことなどから、アストラゼネカは先週、世界各地で行っていた臨床試験を一時的に中断しました。

    このうちイギリスでの臨床試験について、アストラゼネカは、9月12日に出した声明で、独立した委員会が安全だと判断したなどとして再開したことを明らかにしましたが、関係者によりますと、日本での臨床試験も再開する方針を固めたということです。

    日本での臨床試験は、18歳以上のおよそ250人を対象に複数の施設で行われる計画で、施設などと協議したうえで、早ければ今週から段階的に再開される見通しです。

    日本政府は8月、アストラゼネカと少なくとも6000万人分の供給を受けることで基本合意し、このうち1500万人分については来年3月までの供給を目指しています。

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    アストラゼネカ 一時中断のワクチン臨床試験 イギリスで再開(9/13)

    2020年9月13日

    イギリスの製薬大手のアストラゼネカは、オックスフォード大学と共同で開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンについて、イギリスの規制当局が安全を確認したとして、イギリス国内での臨床試験を再開したことを明らかにしました。

    アストラゼネカは、オックスフォード大学と共同で新型コロナウイルスのワクチンの開発を進めていますが、安全性に関するデータを検証するためだとして臨床試験を一時的に中断していました。

    これについてアストラゼネカは9月12日、声明を発表し、イギリス国内での臨床試験を再開したことを明らかにしました。

    声明によりますと、世界各地で行われている臨床試験を9月6日から自主的に中断し、独立した委員会や規制当局が安全性のデータを検証していましたが、独立した委員会は、再開しても安全だと判断し、イギリスの規制当局もそれを確認したということです。

    アストラゼネカは、これ以上の詳しい情報は公開できないとしたうえで、ほかの国でも臨床試験が再開できるよう、各国の保健当局と協力していくとしています。

    このワクチンについて日本政府は、アストラゼネカと8月、少なくとも6000万人分の供給を受けることで基本合意し、このうち1500万人分については来年3月までの供給を目指すことになっています。

    日本法人 国内での臨床試験再開の検討開始

    アストラゼネカの日本法人によりますと、イギリスでの臨床試験の再開を受けて、現在、中断している日本国内での臨床試験についても再開するか検討を始めたということです。

    今後、再開の時期などについて、関係機関と協議を進めるとしています。

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    アストラゼネカ ワクチン臨床試験 “再開は独立委員会が判断”(9/11)

    2020年9月11日

    イギリスの製薬大手、アストラゼネカは、一時的に中断している新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験について、再開できるかどうかは独立した委員会が判断するとしたうえで、試験を再開すれば、ワクチンに効果があるかどうかは年末までには明らかになるという見方を示しました。

    イギリスの製薬大手、アストラゼネカは、オックスフォード大学とともに新型コロナウイルスのワクチンの開発を進めていますが、安全性に関するデータを検証するためだとして9月8日、臨床試験を一時的に中断したことを明らかにしています。

    アストラゼネカのソリオCEOは9月10日、オンラインのイベントに出席し、臨床試験について、再開できるかどうかは独立した委員会が判断するため、現時点ではわからないと説明する一方、ワクチン開発の過程で、臨床試験が一時的に中断することはよくあることだと強調しました。

    そのうえで、試験が再開した場合には「ワクチンに効果があるかどうかについては、年末までには明らかになるだろう」という見通しを示しました。

    また一部のメディアが、臨床試験でワクチンを接種した人に横断性脊髄炎の症状が出たと伝えていることについて、ソリオCEOは「横断性脊髄炎なのかどうかはわからない。さらに時間をかけて調べなければならない」と述べるにとどめました。

    WHO主任科学者「中断はよくあること」

    イギリスの製薬大手、アストラゼネカがワクチンの臨床試験を一時的に中断していることについてWHO=世界保健機関の主任科学者のスワミナサン氏は9月10日、記者会見で「ワクチンの開発には浮き沈みがあることを皆に知ってもらうための警告なのかもしれない。開発は必ずしも早く一本道では進まない。一時的な中断はよくあることなので過度に落胆する必要はない」と述べました。

    そのうえで、「いかなる臨床試験も最優先されるのは安全性だ。試験が中断され、副作用が出た人の詳細が調査されるだろう」と述べ、安全性の検証を見守る考えを示しました。

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    ロシア 新型コロナのワクチン 最終段階の臨床試験を開始(9/10)

    2020年9月10日

    ロシアは、新型コロナウイルスのワクチン開発で、最終段階の臨床試験を始めたと発表し、ことし11月以降、医療従事者などへの集団接種を行うとしています。

    ロシアでは、国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所が、新型コロナウイルスのワクチン開発を進めていて、ロシア保健省は9月9日、3段階のうち最終段階の臨床試験が、モスクワの医療機関で始まったと発表しました。

    臨床試験は、希望する4万人を対象に行われ、半年にわたって経過を観察するということです。

    このワクチンは、1957年に旧ソビエトが世界で初めて打ち上げた人工衛星の名前にちなんで「スプートニクV」と名付けられ、ロシア政府は8月上旬、第2段階の臨床試験しか終わっていない時点で承認しました。

    開発に携わっているロシアの関係者からは、アメリカに先駆けて開発に成功したと誇示する発言も出ていて、ロシアのワクチン開発は政治的だとして国内外で安全性や有効性を疑問視する見方があります。

    こうした中、ロシアの研究グループは9月、イギリスの医学雑誌「ランセット」で、初期段階の臨床試験の結果として健康への深刻な影響は見られなかったなどと報告していて、ロシア政府はことし11月以降、医療従事者などへの集団接種を行うとしています。

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    アストラゼネカ 新型コロナのワクチン 臨床試験 一時的に中断(9/9)

    2020年9月9日

    イギリスの製薬大手アストラゼネカは、オックスフォード大学とともに開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験を一時的に中断したことを明らかにしました。詳細は明らかにしていませんが、安全性に関するデータを検証するためだとしています。

    アストラゼネカは9月8日、声明を出し、ヒトでの安全性や有効性を確かめるためにイギリスやアメリカで行っているワクチンの最終段階の臨床試験を一時的に中断したことを明らかにしました。

    声明は、「独立した委員会が、安全性のデータを検証するためだ」としたうえで、「大規模な臨床試験では、試験の参加者に何らかの症状が出ることがあり、独立した検証を行う必要がある」としています。

    一方で、具体的にどのような症状が出たのかなど詳細は明らかにしていません。

    アストラゼネカは、「開発のスケジュールへの影響を最小限にとどめつつ、試験の参加者の安全にも十分配慮する」としています。

    新型コロナウイルスのワクチン開発は中国やアメリカなど各国で続けられていますが、アストラゼネカとオックスフォード大学が開発中のワクチンは、その中でも最も進んでいるものの1つです。

    日本政府は、アストラゼネカが開発に成功した場合、来年初めから1億2000万回分、2回接種で6000万人分の供給を受けることで基本合意しています。

    一方で、新型コロナウイルスのワクチン開発は、各国が実用化を急ぐ中、過去に例のないスピードで進められていて、専門家からは、安全性を十分検証するよう求める声が出ています。

    日本での臨床試験も中断

    アストラゼネカは、新型コロナウイルスのワクチンの開発に向けて日本でも8月下旬から臨床試験を始めています。

    アストラゼネカによりますと、国内の複数の施設で、18歳以上のおよそ250人を対象に臨床試験を行う計画で、ワクチンを接種した人と接種していない人を比較して安全性や有効性を検証します。

    しかし、日本で行っていた臨床試験も、安全性を確認するために中断したということです。

    専門家 中断の判断を評価

    アストラゼネカが新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験を一時的に中断したことについて、ワクチン開発に詳しい東京大学医科学研究所の石井健教授は「どのような事情で止まったのか分からないが、臨床試験が止まることは時々あることで、一喜一憂すべきではない。ワクチンは一度打つと、元には戻らない免疫反応を起こすので、安全性に問題があってはいけない。しっかり安全性を見るのがワクチンの臨床試験の基本で、有害事象が起きて止まること自体は何ら問題ないし、止めないで進めてしまうほうがリスクが高い」と話しています。

    そして「最終段階にあたる第3相の臨床試験は、数か月ではなく、何年も続くことが普通で、オリンピックやアメリカの大統領選挙までに終わらせないといけないという政治的な圧力がかかる事態のほうがリスクだ。このプレッシャーの中でしっかり止めて様子を見る決断をしたのは正しい判断だと思う」と述べて、中断した判断を評価しました。

    菅官房長官「承認の可否は適切に判断」

    菅官房長官は、午前の記者会見で、「厚生労働省で、企業から詳細な情報を収集していると報告を受けている。ワクチンは、来年前半までに、全国民に提供できる数量を確保することを目指し、わが国で承認申請があった場合は、治験などのデータと最新の科学的知見に基づき、有効性と安全性の確保の観点から、承認の可否については適切に判断していく」と述べました。

    厚労省「安全対策検証し再開可否の判断を」

    厚生労働省は「症状が出た場合に安全性などを調査するのはワクチンに限らず臨床試験では一般的に行われることだ。安全対策などを詳しく検証したうえで再開の可否を判断してもらう必要がある」としています。

    アストラゼネカのワクチンめぐる経緯

    新型コロナウイルスのワクチンについて、政府は、来年前半までにすべての国民が接種できる量を確保する方針を打ち出しています。

    そのため、欧米の複数の製薬会社との間で、開発に成功した場合、来年以降、ワクチンの供給を受ける方向で交渉を進めています。

    「アストラゼネカ」とは、8月、少なくとも6000万人分の供給を受けることで基本合意し、このうち1500万人分については来年3月までの供給を目指すことになっていました。

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    新型コロナワクチン開発 製薬会社など9社“安全最優先”宣言(9/9)

    2020年9月9日

    新型コロナウイルスのワクチンを開発している製薬会社など9社は9月8日、共同で宣言を発表し、安全を最優先に開発を進めると強調しました。

    宣言を発表したのは、新型コロナウイルスのワクチンを開発しているイギリスの製薬大手アストラゼネカやアメリカのファイザーなど9社です。

    宣言では、ワクチンの安全性と、接種する人たちの健康を常に最優先させることや、3段階の臨床試験を経て安全性と効果が確認されたうえでワクチンの許可や承認に向けた申請を行うことなどを強調しています。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、ロシアが臨床試験の最終段階を待たず正式に使用を承認したり、中国が例外的に接種を始めたりしているほか、アメリカの規制当局の責任者も緊急で使用を許可する可能性を明らかにしています。

    また、各国政府が国際社会への影響力を強めるために開発を急がせたり、アメリカでは11月の大統領選挙を前に許可や承認の申請を急ぐよう製薬会社に政治的な圧力がかかったりしているのではないかとも指摘されていて、今回の宣言はこうした動きに影響されず、安全を最優先させる姿勢を打ち出した形です。

    ワクチンについて、世界経済フォーラムなどが日本を含む27か国のおよそ2万人を対象に、ことし7月から8月にかけて行った意識調査では、全体の26%が健康への影響に懸念があるなどとして接種に消極的な回答をしていて、安全の確保が大きな課題となっています。

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    米製薬ファイザー 10月中にも新型コロナワクチン承認申請へ(9/4)

    2020年9月4日

    アメリカの製薬大手ファイザーは、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、最終段階の臨床試験で効果があると判断すれば、早ければ10月中にも使用の許可や承認を申請する方針を明らかにしました。

    アメリカの製薬大手ファイザーは、ドイツの企業と共同で新型コロナウイルスのワクチンを開発していて、現在、最終段階の臨床試験がアメリカやブラジルなどで行われています。

    このワクチンについて、ファイザーのブーラCEOは9月3日、早ければ10月中にも安全性と効果を判断するのに十分なデータが集まるという見通しを示しました。

    そして、効果があると判断すれば、直ちにアメリカFDA=食品医薬品局をはじめとした各国の規制当局に、使用の許可や承認を申請する方針を明らかにしました。

    一方、11月にアメリカの大統領選挙を控え、許可や承認の申請を急ぐよう政治的な圧力がかかっているのではないかという懸念について、ブーラCEOは、「われわれが効果と安全性があると判断するまで許可や承認の申請はしない」と述べ、影響は受けないと強調しました。

    トランプ政権で新型コロナウイルス対策に関わるNIH=国立衛生研究所のファウチ博士は、アメリカメディアのインタビューで、10月中のワクチンの供給開始について「不可能ではないが考えにくい」と述べています。

    アメリカ政府は11月からの接種開始に備えるよう各州に準備を求めていて、ワクチンの接種が始まる時期に関心が集まっています。

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    新型コロナワクチン 米CDCが11月初めに供給前提で準備求める(9/3)

    2020年9月3日

    新型コロナウイルスワクチンについて、アメリカの複数のメディアはアメリカCDC=疾病対策センターが、全米各州の保健当局に対し、10月末から11月の初めに供給が始まる前提で準備を進めるよう求めていると伝えました。

    アメリカABCテレビによりますと、CDCの所長名で全米各州の保健当局に8月27日付けで文書が送付され、この中で、11月1日までに新型コロナウイルスワクチンの供給に必要な施設が完全に稼働できるように、認可の手続きを急いだり、免除したりするよう求めているということです。

    また、有力紙ニューヨーク・タイムズは、ワクチンが10月末から11月の初めに使用できるようになる前提で準備を進めるようCDCがガイドラインを出したと報じています。

    現在開発中のワクチンは、いずれも最終段階となる第3段階の試験を終えていませんが、中国やロシアは試験が終わる前に例外的に接種を始めたり承認をしたりしているほか、アメリカの規制当局の責任者も緊急で使用を許可する可能性を明らかにしています。

    アメリカでは依然、感染の拡大が深刻な状態が続いていますが、メディアの一部は、11月の大統領選挙を前に、新型コロナウイルス対策の成果を示したいトランプ政権の圧力で、安全性や効果が十分に検証されないまま、ワクチンが供給される可能性があることに懸念を示す専門家の見方を伝えています。

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    コロナワクチン 臨床試験終了前に承認や投与の動き WHOが懸念(9/2)

    2020年9月2日

    新型コロナウイルスのワクチンを、安全性や効果を確認する臨床試験が終わっていない段階で、例外的に緊急投与したり、正式に承認し、接種しようとしたりする動きが中国、ロシアで相次ぎ、アメリカでも緊急使用が許可される可能性があると、規制当局の責任者が明らかにしました。WHO=世界保健機関は「大勢の人に接種を急ぎすぎると有害な事象を見逃すことがある」と懸念を示しています。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては8月、ロシア政府が国内で開発中のワクチンを、3段階ある臨床試験のうち、第2段階までしか終わっていない時点で正式に承認し、11月以降、医療従事者などを対象に、集団接種を開始するという方針を示しています。

    また、中国政府も、医療従事者や検疫の担当者らを対象に、国内で開発中のワクチンの例外的な緊急投与をことし7月から始めたと、8月下旬になって明らかにしました。

    さらに、今週になってアメリカも、医薬品の認可を担うFDA=食品医薬品局のハーン局長が、臨床試験が終わっていなくても緊急での使用を許可する可能性があることを、メディアとのインタビューで明らかにしました。

    通常、ワクチンは3段階ある臨床試験で、安全性と効果を検証したうえで、正式に承認されますが、専門家はこうした段階を終える前に、一般の人に広く接種されることになれば、異例のことだとしています。

    WHOで危機対応を統括するマイク・ライアン氏は会見で、ワクチンの使用を決めるのは各国の権利だとしながらも「大勢の人たちにワクチンを接種することを急ぎすぎると、少ない人数では得られない有害な事象を見逃すことがある。安全性や有効性は多くの研究結果から得なければならない」と述べ、ワクチンの承認にあたっては、一定以上の人数で臨床試験を行うことが不可欠だという考えを示しました。

    新型コロナウイルスの世界的な流行が長期化する中、ワクチンへの期待が高まっていますが、専門家の多くは安全性や効果の検証が不十分なまま、性急な使用が行われることにならないか、懸念を示しています。

    ロシア 大統領は安全性強調 安全性疑問視の声も

    ロシアは8月11日、3段階ある臨床試験のうち、第2段階までしか終わっていない開発中のワクチンを、新型コロナウイルスのワクチンとして正式に承認しました。

    プーチン大統領はみずからの娘も臨床試験に参加して、このワクチンを接種し、大きな問題は生じなかったとして、安全性を強調しました。

    このワクチンは、半世紀余り前の1957年に旧ソビエトによって、世界で最初に打ち上げられた人工衛星の名前にちなんで「スプートニクV」と名付けられ、開発に携わっている政府系ファンド「ロシア直接投資基金」のドミトリエフ総裁は「当時と同じようにアメリカも驚くだろう」と述べ、アメリカを抜いて開発に成功したと誇示しました。

    そして、ドミトリエフ総裁は、すでにサウジアラビアやフィリピンなど、世界のおよそ20か国からワクチンを提供するよう要請を受けているとしています。

    ロシアの外交評論家のルキヤノフ氏は、NHKのインタビューに対して「最初にワクチンを開発した国が政治的にも経済的にも重要なアドバンテージを得ることになる」と述べ、国際社会における存在感を増すためにも、世界に先駆けて開発に成功することが何よりも重要だと指摘しています。

    ロシア政府は、今週から4万人を対象に最終的な臨床試験を始めるほか、11月以降、医師や教師などへの集団接種を始めるとしています。

    一方で、一部の世論調査では国民の54%が「ワクチンを接種する用意はできていない」と回答するなど、ワクチンの安全性などを疑問視する声は、国内でも少なくないとみられています。

    中国 習国家主席 成功すれば「世界の公共財」に

    中国政府はことし7月22日から医療従事者などを対象に、国内で開発中の新型コロナウイルスのワクチンの例外的な緊急投与を始めたとしています。

    これは公衆衛生上の重大事案では、一定の範囲に限って緊急使用できるという中国の法律の規定に基づく措置で、対象は医療従事者や検疫担当者、出入国管理の関係者などに限られるとしています。

    目的について国家衛生健康委員会科学技術発展センターの鄭忠偉主任は、国営の中国中央テレビで「まず特定の人々で『免疫のバリアー』をつくり、都市全体の運営を安定的に行う」と述べています。

    中国メディアによりますと中国では現在、4種類のワクチンが最終の第3段階の臨床試験に進んでいて、緊急投与されているのはこのいずれかだとみられています。

    習近平国家主席はワクチンの開発に成功すれば「世界の公共財」にすると表明し、ワクチンの提供によって、アフリカなど発展途上国を含む各国への影響力を強めようとしています。

    緊急投与の背景には、多くの人に接種することで、いち早く安全性や効果を確かめるねらいもあるとみられます。

    アメリカの専門家 許可され広く接種されれば異例の事態

    アメリカの専門家は臨床試験を終えていないワクチンが国内で緊急使用を許可され、広く接種されれば、異例のことになると指摘しています。

    ワクチンの歴史に詳しいルネ・ナヘラ博士によりますと、アメリカでは今から60年以上前の1950年代の初めに、当時、流行していたポリオ対策のため、開発中のワクチンの接種が臨床試験の一環として大規模に行われた例や、2018年に致死率の高いエボラ出血熱の流行が起きた際、人道的な理由から、正式に承認される前のワクチンが、感染リスクの高い人を対象に接種されたことはあるということです。

    ただ、臨床試験が終わる前のワクチンの緊急使用を許可し、一般に広く接種されたことはアメリカではこれまでにないということで、今回、仮にアメリカでの緊急使用が許可され、広く接種されることになれば、異例の事態だとしています。

    WHO「緊急使用は熟考を」

    WHO=世界保健機関のチーフサイエンティスト、スワミナサン氏は記者会見で、ワクチンの承認は各国が主権を持って行うものだと強調する一方、「緊急使用の許可や承認は真剣に、熟考を重ねたうえで行うべきもので、軽々しく行うものではない」と述べ、慎重な姿勢を示しました。

    ワクチン承認 日本の対応は

    海外のワクチンを国内で承認する際、安全性などを確認するため、事前に健常者や患者に投与する臨床試験が行われます。

    このデータを基に独立行政法人の「医薬品医療機器総合機構」で審査が行われ、安全性と有効性が認められれば、医薬品として承認され、保険が適用されます。

    一方、緊急性が高いワクチンや治療薬については、日本と同様の承認制度がある海外の国で、すでに販売されている場合などに限って、審査の手続きを簡略化する「特例承認」という仕組みもあります。

    新型コロナウイルスをめぐっては、ことし5月に治療薬の「レムデシビル」にこの制度が適用され、申請から3日で承認されました。

    今回、新型コロナウイルスのワクチンが海外で開発された場合の承認の流れについて、厚生労働省は「特例承認の必要性の判断はケースバイケースになる」としたうえで、「患者に投与する治療薬と違ってワクチンは健康な人に打つので、より厳格に安全性を確かめる必要がある。いずれにせよ、安全性と有効性が確認された治療薬やワクチンを、できるだけ早期に国民に供給することを目指したい」としています。

    緊急で使用したケースも

    ワクチンは効果や安全性を確認し、国が承認してからでないと接種は行われませんが、これまでにはこのプロセスを簡略化する形で、ワクチンが緊急に使われたケースもあります。

    通常の場合、ワクチンが承認されるには、安全性に問題はないかや、感染や重症化を防ぐ効果があるか、実際に人に投与して3段階の臨床試験で確認する必要があります。

    臨床試験では、第1段階で少人数に投与して有効な量など基礎的なデータを集めたあと、第2段階で投与する人数を増やして、安全性や有効性があるか調べます。

    ここまでで有望な結果が得られたものは最終の第3段階に進み、数百人から数万人に投与する大規模な臨床試験を行って、安全性や有効性を最終的に確認します。

    ワクチンは健康な人に接種するため、感染の拡大を防ぎ、重症化する人を減らすというメリットが、副反応が出るデメリットを上回る時に接種が認められるもので、評価に時間がかかることもあり、開発の開始から承認されるまでには通常、5年から10年程度かかるとされています。

    ただ、感染症の大規模な流行などで緊急な対応が必要になったケースはこれまでにもあり、1961年に国内で、手足がまひするなどの後遺症が残るポリオが流行した際には、当時の厚生大臣が旧ソ連からワクチンを緊急輸入して、承認のための審査を行わずに、およそ1300万人の子どもに接種する措置が取られました。

    また、2009年に当時の新型インフルエンザが流行した時には、国はアメリカやヨーロッパでワクチンが承認されたことを受けて、国内での審査を大幅に簡略化する「特例承認」を適用し、海外からワクチンの輸入を認めました。

    当時、輸入されたワクチンは細胞を使ってウイルスを培養するという方法で製造され、鶏卵を使っていた国産のワクチンと製造方法が異なっていたこと、アジュバントと呼ばれる免疫の働きを活性化する物質が含まれたこと、それに投与の方法も筋肉への注射で、従来の皮下への注射と異なっていたことから、副反応が従来のワクチンと異なるおそれがあるとして、副反応の情報を速やかに集められるよう、医療機関から国に直接報告が行われました。

    ただ、この時には、ワクチンが受けられるようになった時期には、感染の流行がピークを過ぎており、特例承認された輸入ワクチンが使われた量は少なく、厚生労働省が翌年に出したまとめでは7550回の接種にとどまり、副反応の報告は5件だったということです。

    さらに海外では致死率の高いエボラ出血熱について、最終的な臨床試験で安全性や有効性が確認される前の段階のワクチンが、西アフリカのギニアなどで医療従事者や住民などに対して緊急に使われたケースがあり、WHO=世界保健機関はのちに、このワクチンが安全性や有効性の基準を満たしていると認定しました。

    現在、開発が進んでいる新型コロナウイルスのワクチンの多くは、人工的に合成したウイルスの一部の遺伝子を使って免疫の反応を引き起こす「遺伝子ワクチン」と呼ばれるタイプで、これまで世界のどこでも使用されたことがなく、多くの人に接種するとどのような副反応が起きるか予期できないと指摘されています。

    こうしたワクチンを十分な審査を経ずに、そのまま国内で使用すると、生活習慣や遺伝的な背景の違いなどから予期しない影響が出るおそれもあるため、多くの専門家は慎重な対応を求めています。

    専門家「ワクチン本来の在り方 ゆがめかねない」

    安全性や有効性を確認する臨床試験が終わっていない段階で、新型コロナウイルスのワクチンを緊急に承認する動きが各国で見られることについて、感染症に詳しい長崎大学熱帯医学研究所の安田二朗教授は「世界で感染が拡大する中、ワクチンの開発と接種の準備は速やかに進められるべきだが、実際にワクチンを使うには十分な時間をかけて安全性を調べる必要がある。この点をないがしろにすると、安全に接種して感染や重症化を防ぐという、ワクチン本来の在り方をゆがめることにもつながりかねない。過度な期待のもとに、急速な承認を進めるのは拙速な印象を受ける」と懸念を示しています。

    また、国内での接種について「通常は安全性を確認するだけでも最低1年間は必要だと考えられ、来年前半に国民全員に接種するというのは難しいのではないか。最近では治療法も増えつつあるほか、手洗いやマスク着用、3密の回避など市民の予防意識も高くなっており、ワクチンだけに頼らず、さまざまな感染防止対策に目を向けていくべきだ」と話しています。

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    コロナ抗体調査始まる 再感染リスク解明やワクチン開発に期待(9/2)

    2020年9月2日

    新型コロナウイルスから回復した人の血液を採取して、「抗体」が体内でどこまで持続するのかを調べる大規模な調査が9月2日から始まりました。調査を行う大学などの研究グループは、「再感染のリスクの解明やワクチン開発につなげていきたい」としています。

    「抗体」はウイルスに感染した人の体内にできるたんぱく質で、このうち、「中和抗体」と呼ばれるものはウイルスの働きを抑え、感染を防ぐ力があるとされています。

    横浜市立大学などの研究グループは新型コロナウイルスに感染し、その後、回復した人を対象に、「抗体」や「中和抗体」がどこまで持続するのかを調べる大規模な調査を9月2日から始めました。

    都内の病院では、ことし4月に感染した65歳の男性が、調査に協力し血液の採取を受けていました。

    今回の調査は国の研究費で行われ、4月から5月に掛けて感染した20歳以上の人が対象となります。

    感染の半年後と1年後に血液を採取して、どれくらいの量の抗体が残っているのかを調べます。

    研究グループでは抗体の持続性を調べることで、回復した人の再感染のリスクを分析したり、体内に抗体を作る「ワクチン」の研究開発にも役立てたりしたいとしています。

    抗体についての大規模な調査は国内で初めてだということで、すでに500人の回復者が登録しているということです。

    研究グループは10月にも中間結果を取りまとめたいとしていて、横浜市立大学データサイエンス研究科の後藤温教授は「新型コロナウイルスはまだまだ分からないことが多く、回復者の大規模な抗体調査は世界でも報告がない。病気の解明やワクチンの開発にも貢献できると期待している」と話しています。

    研究グループは9月いっぱいまで調査の協力者を募っていて、電話番号「0120-299-300」で、平日は午前9時から午後8時まで、土日と祝日は午前9時から午後5時まで受け付けています。

    協力者の男性 一時は命の危機に直面

    今回の抗体調査に協力した都内に住む65歳の男性はことし4月、新型コロナウイルスへの感染が明らかになりました。

    胸が苦しくなるなど症状が悪化し、一時は人工心肺装置「ECMO」をつけ、命の危機に直面しましたが、その後の治療で症状は徐々に改善し、1か月後の5月7日に検査で陰性となりました。

    しかし、入院中、寝たきりの状態が続いたため筋力が低下し、1人で起き上がることも食事をすることもできなくなりました。

    その後のリハビリで元の生活に戻りつつありますが、胸の苦しみや呼吸がしづらい状態は続いているといいます。

    「今度、新型コロナウイルスに感染したら、命を落とすかもしれない」。

    そう考えていた男性は主治医から今回の抗体調査の話しを聞き、協力することを決めました。

    男性は「助けてもらった命なのでウイルスの解明に役立ちたいと思い、協力しました。

    自分が再び感染するリスクがどこまであるのかは命に関わる問題なので、ぜひ、今回の調査で解明してもらいたい」と話しています。

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    新型コロナワクチン共同購入の枠組み 日本も参加の意向 厚労相(9/1)

    2020年9月1日

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、加藤厚生労働大臣は、世界各国で共同購入し、発展途上国などにも供給する国際的な枠組みに、日本も参加する意向を表明しました。

    各国が複数の新型コロナウイルスのワクチンを共同購入する国際的な枠組み「COVAXファシリティ」は、先進国が、資金を拠出して自国分のワクチンを購入するほか、発展途上国にも供給する仕組みとなっていて、日本も参加するかどうか検討してきました。

    これについて、加藤厚生労働大臣は記者会見で、枠組みに参加する意向を表明したうえで、「日本はすでに複数の企業とワクチン供給の基本合意に至っているが、わが国のワクチン確保の1つの手段となり得るし、低所得国への公平なワクチン普及に向けた貢献につながる」と理由を説明しました。

    厚生労働省によりますと、この枠組みでは、来年末までに20億回分のワクチンの製造を目指しているということです。

    厚生労働省は、拠出する額などをさらに検討することにしています。

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    ワクチン承認に慎重な検証要望 薬害被害者団体(8/24)

    2020年8月24日

    新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発が進められる中、薬害エイズの被害者などでつくる団体が、承認にあたっては安全性などを慎重に検証するよう厚生労働省に要望しました。

    要望を行ったのは、薬害エイズ事件や薬害肝炎問題の被害者などでつくる12の団体です。

    8月24日は団体のメンバーが厚生労働省を訪れて加藤厚生労働大臣に面会し、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬を承認するにあたって、安全性や有効性を慎重に検証することなどを要望しました。

    このあと協議が行われ、厚生労働省の担当者からは『しっかりと審査をする』と回答があったということです。

    薬害エイズ事件の被害者で「全国薬害被害者団体連絡協議会」の代表世話人を務める花井十伍さんは会見で「医薬品の審査体制は前よりよくなってきていると思いたいが、薬害は間断なく繰り返されている。新型コロナウイルスをめぐってとんでもない薬害が起きないようにしてほしい」と訴えました。

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    ワクチン接種基本方針 秋にも策定(8/22)

    2020年8月22日

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、政府は、優先的に接種する対象を、感染リスクの高い医療従事者や、重症化するリスクの高い高齢者などに加え、どこまで広げるかなどを検討し、秋にも接種の基本方針を策定したい考えです。

    政府は、8月21日の分科会で、新型コロナウイルスのワクチンが実用化された場合、感染リスクの高い医療従事者や、重症化するリスクの高い高齢者と基礎疾患がある人などに優先的に接種するとした案を示し、おおむね了承されました。

    一方、救急隊員や妊婦などを含めるかどうかは、引き続き、検討課題とされました。

    分科会の尾身茂会長は、記者会見で、「どんな副作用があるのかわからない中、妊婦の場合は胎児がいることもあり、より慎重になる必要がある」と述べました。

    また、ワクチンの安全性への監視を強化して接種を進める必要があるという分科会の指摘を踏まえ、政府は、ワクチンの安全性や有効性について正確な情報提供に努める方針で、西村経済再生担当大臣は「種類によって、安全性や有効性が変わってくることなどについて国民に理解してもらえるよう努力したい」と強調しました。

    政府は、今後、優先的に接種する対象をどこまで広げるかなどを分科会で議論してもらい、秋にもワクチン接種のあり方を定めた基本方針を策定したい考えです。

    一方、政府は、イベントの参加人数の上限を5000人とする制限を8月末以降も継続する方針で、8月24日に開かれる分科会では、いつまで制限を維持するかなどについて意見が交わされる見通しです。

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    ファイザーなど 開発中ワクチンで「抗体」量上昇を確認と発表(8/13)

    2020年8月13日

    アメリカの製薬会社などが開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンについて、ヒトでの臨床試験の結果、免疫の役割を担う「抗体」の量が接種後に上昇することが確認されたなどとする初期段階の研究成果が発表されました。

    アメリカの製薬大手「ファイザー」とドイツの「ビオンテック」が開発する新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験について、初期段階の結果が12日、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に掲載されました。

    試験は18歳から55歳の45人を対象に行われ、ワクチンの接種から21日後には接種されたすべての人の血液から新型コロナウイルスに対する抗体が検出されたほか、ウイルスの働きを弱める「中和抗体」の量が上昇することも確認されました。

    「中和抗体」の量は、新型コロナウイルスに感染して回復した人の血液から検出された量の1.9倍から4.6倍だったということです。

    一方、接種された人の半分以上が頭痛など体の変調を訴えましたが、健康への深刻な影響は報告されなかったということです。

    ファイザーとビオンテックのワクチンは、開発に成功した場合、アメリカ政府が少なくとも1億回分の供給を受けることで合意しているほか、日本政府も2021年6月末までに6000万人分の供給を受けることで合意しています。

    このワクチンは先月から開発の最終段階にあたる第3段階の臨床試験に入っていて、ファイザーは早ければことし10月の承認を目指すとしています。

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    新型コロナワクチン 国内生産へ 6社に計900億円を助成 厚労省(8/7)

    2020年8月7日

    新型コロナウイルスのワクチンの国内生産を後押ししようと、厚生労働省は6つの製薬会社などの事業を対象に、合わせて900億円余りを助成することを決めました。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、厚生労働省は、製薬大手のイギリスのアストラゼネカとアメリカのファイザーの2社との間で、開発に成功した場合、供給を受けることで合意しています。

    これとは別に、厚生労働省は国内での生産体制を整備するため公募を行い、6つの製薬会社などの事業を対象に合わせて900億円余りを助成することを決めました。

    このうち、武田薬品工業に301億円、塩野義製薬に223億円、アストラゼネカに162億円、アンジェスに94億円、KMバイオロジクスに61億円、第一三共に60億円が助成されます。

    海外に本社がある企業も含まれていますが、それぞれが日本国内でのワクチン生産を目指して事業を進めるということです。

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    武田薬品 新型コロナワクチンの開発や製造で米企業と提携へ(8/7)

    2020年8月7日

    製薬大手の武田薬品工業は、日本国内向けの新型コロナウイルスのワクチンの開発や製造に向けて、アメリカのバイオテクノロジー企業と提携すると発表しました。武田薬品は、この会社から製造技術の提供を受け年間で2億5000万回分以上のワクチンの生産能力の整備を進めるとしています。

    発表によりますと、武田薬品は、次世代ワクチンの研究・開発などを行っているアメリカのバイオテクノロジー企業、「ノババックス」と提携し、この会社が開発中の新型コロナウイルスのワクチンの製造技術の提供を受けることで基本合意しました。

    武田薬品は山口県光市の工場に生産設備を整え、厚生労働省から301億円の助成金も受けたうえで、日本国内向けのワクチンの開発と製造、流通を行うとしています。

    会社では年間で2億5000万回分以上のワクチンの生産能力の整備を進め来年後半には最初のワクチンの製造にこぎつけ、国の承認を得たいとしています。

    武田薬品が新型コロナウイルスのワクチンで企業と提携するのは初めてで、会社では「日本の国民の公衆衛生と健康に貢献していきたい」としています。

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    新型コロナワクチン 国内で1月から3月の供給に向け体制整備へ(8/7)

    2020年8月7日

    イギリスの製薬大手「アストラゼネカ」が開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、日本国内で来年の1月から3月にかけて最初の供給を行えるよう体制を整備する方針であることが厚生労働省への取材でわかりました。国内でのワクチン供給の見通しが具体的に明らかになるのは初めてで最初の3か月でまず3000万回分が供給されるということです。

    供給の見通しが明らかになったのはイギリスの製薬大手「アストラゼネカ」とオックスフォード大学が開発を進めているワクチンで、海外の一部の国ではすでに最終段階の臨床試験に入っています。

    このワクチンについて、日本国内では8月から臨床試験を始めるとともに供給に向けた体制を整備するということで、厚生労働省によりますと開発が順調に進めば来年の1月から3月にかけて最初の供給を行えるよう体制を整備していく方針だということです。

    最初の3か月でまず3000万回分が供給され、最終的には合わせて1億2000万回分が供給されるということです。

    国内でのワクチン供給の見通しが具体的に明らかになるのは初めてです。

    1人当たりの接種が必要な回数は1回か2回になる予定で、ワクチンが何人分に相当するかは決まっていません。

    国内へのワクチン供給をめぐっては、7月末にもアメリカの製薬大手「ファイザー」との間で、開発に成功した場合6000万人分の供給を受けることで基本合意しています。

    開発担当者「できるだけ早く開始したい」

    アストラゼネカで、日本での新型コロナウイルスのワクチン開発を担当する田中倫夫執行役員はNHKの取材に対し「臨床試験が終われば、早ければ来月にもイギリスで供給が始まるかもしれない。日本への供給もできるだけ遅れないよう早く開始したい」と話しています。

    そのうえで「有効性と安全性は、必ずセットで考えるべきだが、日本人のデータは非常に限られたものになる可能性が高い。期待されているワクチンの有効性と新型コロナウイルスの脅威を考えれば、前に進むべきだと考えているが、限られたデータでどういう安全対策を打てるかを厚生労働省と議論して、得られた情報をできるだけタイムリーに開示していくことをいちばんに考えたい」と話しています。

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    ワクチン「ことしの終わりか来年はじめに完成」米の専門家(8/1)

    2020年8月1日

    アメリカ・トランプ政権の新型コロナウイルス対策チームのファウチ博士は7月31日に開かれた議会下院の公聴会で、ワクチンについて「ことしの終わりか来年のはじめに完成するというのは夢ではなく、現実的な見通しだ」と述べ、開発は順調に進んでいるという見方を改めて示しました。

    トランプ政権の新型コロナウイルス対策チームのアンソニー・ファウチ博士は7月31日、議会下院の公聴会で証言し、ワクチンについて、「ことしの終わりか来年のはじめに完成するというのは夢ではなく、現実的な見通しだ」と、開発は順調に進んでいるという見方を改めて示しました。

    そのうえで供給の見通しについて、「来年には安全で効果のあるワクチンが手に入ると考えているが、最初からすべてのアメリカ国民に行き渡るわけではなく、段階を踏むことになる。そのために専門の委員会で優先順位を議論する」と述べ、すべての人にすぐに供給できるわけではないという見通しを示しました。

    アメリカでは、NIH=国立衛生研究所と製薬会社「モデルナ」が開発中のワクチンが7月27日から最終段階の臨床試験を開始したほか、イギリスや中国で開発中のワクチンも最終段階に入っています。

    一方で、アメリカやイギリス、それにEUなどは巨額の資金を投じる見返りに一定の供給量を確保するなど、開発とともに、ワクチンの確保に向けた競争も激しくなっています。

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    新型コロナ ワクチン供給で米企業と基本合意 加藤厚労相(7/31)

    2020年7月31日

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、加藤厚生労働大臣は、記者団に対し、アメリカの製薬大手ファイザーが開発に成功した場合、来年6月末までに6000万人分のワクチンの供給を受けることで、会社側と基本合意したことを明らかにしました。

    この中で、加藤厚生労働大臣は「本日、アメリカのファイザー社が新型コロナウイルスのワクチン開発に成功した場合、来年6月末までに6000万人分のワクチンを日本に対して、供給を受けるということについて、ファイザー社と基本合意に至った」と述べました。

    アメリカの製薬大手ファイザーは、ドイツの製薬会社と共同でワクチンの開発を進めていて、今月からより大勢の人を対象にした段階の試験に進んでいて、早ければことし10月にも承認の手続きに入ることを目指しているということです。

    ワクチンは、1人当たり2回接種することになっているため、供給を受けるのは1億2000万回分になるということです。

    加藤大臣は「今後、最終契約に向けてさらに速やかに協議を進めていきたい。また、他の企業とも交渉を続け、日本の皆さんに安全で有効なワクチンが早期に供給できるよう努力したい」と述べました。

    一方、日本政府が会社側に支払う額については、「これからの契約にかかわるので、差し控えたい」と述べるにとどめました。

    ファイザー「五輪迎える日本 支える力に」

    厚生労働省との合意について、ファイザーは「日本政府と協力していることを非常に光栄に思います。このような困難な状況の中で2021年に東京オリンピック・パラリンピックを迎える日本を支える力になれることを大変うれしく思います。私たちの願いは治験が成功し、規制当局から承認が得られ、これに貢献することです」などとコメントしています。

    組織委「大変心強いニュース」

    東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の武藤事務総長は「大変心強いニュースだ。もし実現すればオリンピックにもいい効果が期待できるのではないか。ワクチンが大会開催の前提条件ではないことは、WHO=世界保健機関とIOC=国際オリンピック委員会の話し合いで確認されていると聞いており、われわれもそう理解している。しかし、ワクチンができるに越したことはない」と話しています。

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    アメリカで開発中の新型コロナのワクチン 最終段階に(7/28)

    2020年7月28日

    NIH=アメリカ国立衛生研究所と製薬会社「モデルナ」は、開発中の新型コロナウイルスのワクチンが最終段階にあたる第3段階の臨床試験に入ったと発表しました。

    NIH=アメリカ国立衛生研究所と製薬会社「モデルナ」が7月27日に行った発表によりますと、共同で開発を進めているワクチンが開発の最終段階にあたる第3段階の臨床試験に入ったということです。

    今後アメリカのおよそ90か所で3万人規模のボランティアを集めて試験を行い、安全性や有効性を調べるということです。

    モデルナはアメリカ政府からこれまでに合わせて10億ドル近い支援を受けていて、年間最大10億回分のワクチンの供給を目指すとしています。

    アメリカ国立衛生研究所のフランシス・コリンズ所長は「安全で効果のあるワクチンをことし中に供給することが大きな目標で、これはアメリカの人々にとって正しい目標となった」とコメントしています。

    新型コロナウイルスのワクチン開発をめぐっては、イギリスのオックスフォード大学が製薬大手アストラゼネカと開発しているワクチンや、中国の企業などが開発している複数のワクチンも同様に第3段階の試験を始めていて、各国で開発が急ピッチで進められています。

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    欧米や中国でワクチン確保の動き活発化 WHO「途上国にも」(7/24)

    2020年7月24日

    アメリカ、イギリス、中国などが異例のスピードで新型コロナウイルスのワクチン開発を進める中、自国民のためのワクチン確保の動きも活発になってきています。こうした動きに対しWHO=世界保健機関は、必要なところにワクチンが行き届くことが重要だとして、経済力の乏しい発展途上国などにも安定してワクチンを供給できる枠組みへの参加を呼びかけています。

    WHOによりますと、7月24日の時点で新型コロナウイルスのワクチンは世界中で合わせて166種類が開発中で、このうち25種類で実際にヒトに接種して安全性や効果を確かめる臨床試験が始まっています。

    このうちイギリスのオックスフォード大学が製薬大手アストラゼネカと開発しているワクチンは7月20日、およそ1000人を対象に行った臨床試験で良好な結果が得られたと発表され、すでに開発の最終段階に当たる第3段階の試験に入っています。

    NIH=アメリカ国立衛生研究所と製薬会社モデルナが開発中のワクチンも、7月27日から第3段階の試験に入る予定です。

    このほか、アメリカの製薬会社イノビオが近く第2段階に入るとしているほか、中国の企業などが開発している複数のワクチンも第3段階の臨床試験を始め、アメリカ トランプ政権で感染対策に当たるファウチ博士は「順調に進めば、ワクチンは早ければことしの終わりか来年の初めにも手に入る」と見通しを示しています。

    こうした異例のスピードで進むワクチンの開発は、アメリカをはじめとした各国が投じる巨額の資金によって支えられています。

    トランプ政権は、早期のワクチン開発と自国民への供給を目指す「ワープスピード作戦」に100億ドルを拠出すると表明していて、すでにイギリスに本社のあるアストラゼネカに12億ドルの資金を拠出し、ワクチン3億回分を確保したほか、製薬大手ファイザーなどが開発に成功した場合、19億5000万ドルを支払い、1億回分のワクチン供給を受けることで合意しています。

    確保したワクチンについてアメリカ政府高官は6月16日、自国民への供給を最優先する方針を明らかにし、「余剰が出ればほかの国に回す」と述べました。

    ヨーロッパでも、イギリスがアストラゼネカなどが開発するワクチンに対し6550万ポンド(89億円余り)の資金を提供し、1億回分のワクチンの供給を受けることで合意したほか、ファイザーなどからもワクチンの供給を確保しています。

    またフランス、ドイツ、オランダ、イタリアの4か国は6月、ワクチンの確保に向けて協力するグループを形成し、EU=ヨーロッパ連合の国々に対して最大で4億回分のワクチンを原価で供給してもらうことでアストラゼネカと合意しています。

    先進国が巨額の資金でワクチンの供給を確保する一方、WHOのテドロス事務局長は「すべての人が必要なものを手に入れられるようにしなければならない」として、ことし4月、発展途上国でのワクチンの普及に取り組む国際団体とともに、治療薬やワクチンなどの公平な分配を促進するための協力体制を作ると発表しました。

    5月には、治療薬とワクチンなどを発展途上国などでも製造しやすくできるように特許や技術を管理する国際的な枠組みを創設しましたが、7月23日の時点で参加を表明しているのは南米の国々などを中心とした39か国にとどまり、開発が盛んなアメリカなどG7=主要7か国は加わっておらず、実効性に疑問が持たれています。

    こうした中、アストラゼネカは、インドにあるワクチンメーカーと提携し、中低所得の国々に10億回分を供給することにしていて、「ワクチンを広く公平に行き渡らせるために努力を続けていて、これによって利益を得ることはない」とコメントしています。

    一方、独自にワクチンの開発を進める中国は、アフリカ諸国への医療援助の一環としてワクチンも提供すると表明していて、いわば「ワクチン外交」を展開する構えを見せています。

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    鼻から吸入する新型コロナワクチン開発進む 効果検証へ 北里大(7/24)

    2020年7月24日

    ワクチンは抗体の働きで感染を防ぎますが、新型コロナウイルスの場合、感染してもしばらくすると血液中の抗体が減り始めたという報告があり、ワクチン開発には課題があると指摘されています。北里大学のグループは鼻から吸い込むことで、ウイルスの入口となる鼻の奥で抗体を作って感染を防ぐ新たなワクチンの開発を進め、近く、動物実験などで効果を確かめるとしています。

    新型コロナウイルスは、感染したあとでできた血液中の抗体が数か月後には減り始めたとする研究が中国から発表されるなど、抗体が維持されるか不明で、ワクチンの開発には課題があると指摘されています。

    北里大学の片山和彦教授らの研究グループは、こうした課題を解決しようと、鼻から吸い込むことで、ウイルスが最初に感染する鼻の粘膜に抗体を作る新たなタイプのワクチンの開発を進めています。

    このワクチンは、免疫の反応を引き起こすたんぱく質を、「分子ニードル」と呼ばれる細胞の中で溶ける極めて微少な針状の分子を使って注入するもので、鼻から吸い込むことで鼻の粘膜に局所的に抗体を作りだして感染を防ぎます。

    研究グループは、注射によって血液中で抗体を作るよりも効果が高く、接種も手軽なので、抗体が減っても対応しやすいとしています。

    片山教授は「新型コロナウイルスは抗体のでき方に個人差があり、どれだけ維持されるかも分からない。安心を届けるために開発したい」と話していて、早ければ8月には動物実験を始め、効果を確かめたいとしています

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    ワクチン臨床試験 英 オックスフォード大学「期待持てる結果」(7/21)

    2020年7月21日

    イギリスのオックスフォード大学は、製薬会社とともに開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンについて、ヒトでの臨床試験の結果、免疫の役割を担う「抗体」の量が接種後に上昇することが確認されたなどとする初期段階の研究成果をまとめました。

    オックスフォード大学は、製薬大手 アストラゼネカなどと新型コロナウイルスのワクチンの開発を進めていて、3段階ある臨床試験のうち初期段階の結果が7月20日、イギリスの医学雑誌「ランセット」に掲載されました。

    それによりますと、ワクチンを接種した人のうち127人で抗体の量を調べたところ、接種していない人に比べて抗体の量が上昇し、接種から28日後に最も高くなることが確認されたということです。

    また、抗体の量は接種してから56日後でも高い値を維持していたほか、さらに35人を調べたところ、ウイルスの働きを弱める「中和抗体」も90%以上の人で確認されたということです。

    一方、接種した人のうち70%が頭痛と疲労感を訴えたということです。

    開発チームは「深刻な健康への影響はなかった」としたうえで、「期待の持てる結果だ」としてヒトでの安全性や有効性を確かめる臨床試験を続けることにしています。

    このほか同じ医学雑誌には、中国で開発中のワクチンの一つについて、抗体が作られることや安全性が確認されたとする第2段階の臨床試験の結果も掲載されました。

    ジョンソン首相「重要な一歩だ」

    イギリスのジョンソン首相はツイッターに「とても前向きなニュースだ。まだ保証はないが、正しい方向に向かう重要な一歩だ」と歓迎のコメントを投稿しました。

    オックスフォード大学などが開発を進めているのは「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれるタイプで、イギリス政府はすでに1億回分の供給量を確保していますが、7月20日、これに加えて新たに、
    ▽ドイツなどの製薬会社が開発を進めている「RNAワクチン」と、
    ▽フランスの製薬会社が開発中の「不活化ワクチン」を、
    合わせて9000万回分確保したと発表しました。

    イギリス政府は、3種類の異なるタイプのワクチンを確保することによって迅速に接種する機会が得られるとしていて、ワクチンの確保をめぐって国家間の争いがさらに激しくなりそうです。

    WHO「課題は十分な生産量の確保」

    WHO=世界保健機関で危機対応を統括するライアン氏は7月20日の定例記者会見で「研究を歓迎し、オックスフォード大学の研究グループの仲間たちを祝福する。前向きな結果である一方で、まだ第1段階の試験にすぎない」と述べ、開発の推移を慎重に見守る考えを示しました。

    そのうえでライアン氏は「課題は、ワクチンの有効性が証明された時、世界中のニーズに応えられるよう十分な生産量を確保することだ」と述べ、生産量が限られる中で、必要とする人にワクチンが行き渡るよう各国が協力する必要があるという考えを強調しました。

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    ワクチン確保へチーム設置 海外製薬会社と交渉本格化へ 厚労省(7/21)

    2020年7月21日

    新型コロナウイルスのワクチンの確保に向けて、厚生労働省は弁護士らをメンバーに入れたチームを設置しました。今後、このチームを中心に海外にある複数の製薬会社との交渉を本格化させる方針です。

    新型コロナウイルスのワクチンの確保に向けて、公明党の斉藤幹事長らは7月20日、加藤厚生労働大臣と面会し、緊急の提言書を手渡しました。

    提言書では、欧米諸国と比べ日本は、ワクチンの開発を進める製薬会社などとの交渉が遅れていると指摘し、交渉を急いでワクチンを確保することや、いつまでにどの程度の量を確保する計画なのかを明らかにすることなどを求めています。

    これに対し加藤大臣は「新たに作ったチームで交渉に当たっている」と述べ、弁護士らをメンバーに入れたチームを設け、海外にある複数の製薬会社と交渉を進めていることを明らかにしました。

    また加藤大臣は、ワクチンが国内で実用化されるのは早くても年明けになるという見通しも示しました。

    厚生労働省はこのチームを中心に、今後、製薬会社との交渉を本格化させ、ワクチンの確保につなげたい考えです。

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    ワクチン開発後の予防接種の基本方針 8月中にも策定へ(7/10)

    2020年7月10日

    新型コロナウイルスのワクチンが開発されたあと速やかに対応するため、政府は予防接種の対象者や優先順位などを定めた基本方針を8月中にも策定する方向で調整しています。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、政府は国内での開発を支援するとともに、海外で開発された場合に、できるだけ多く確保できるよう関係国と協議を進めています。

    ワクチンの開発後、速やかに対応するため、政府は予防接種の対象者や優先順位などを定めた基本方針を8月中にも策定する方向で調整しています。

    関係者によりますと、予防接種は感染リスクの高い医療従事者や重症化しやすい高齢者などを優先する案が検討されているということです。

    また、費用は全額公費で負担する方向で調整が進められているということで、政府は来週から、「新型コロナウイルス感染症対策分科会」で検討を本格化させることにしています。

    そして、基本方針の策定後、各市町村で必要な準備を進め、年明けにも予防接種が始められる態勢を整備したい考えです。

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    米製薬会社「イノビオ」コロナワクチンの臨床試験を次の段階へ(7/1)

    2020年7月1日

    新型コロナウイルスのワクチンを開発中のアメリカの製薬企業「イノビオ」は臨床試験の第一段階で、接種を受けた人の94%で、免疫の働きが確認されたとして、7月以降、さらに多くの人を対象とした、次の段階の試験に進むと発表しました。アメリカの企業としては2社目になります。

    アメリカの製薬企業、「イノビオ」が6月30日に発表した臨床試験の結果によりますと、接種を受けた36人のうち、94%にあたる34人で、ウイルスの働きを弱める抗体の値が上昇したほか、免疫の働きに重要な細胞の活動が高まったことが確認されたということです。

    接種後の体への影響も10人で見られましたが、接種したところが赤くなるといった軽い症状がほとんどで、重症の事例はなかったということです。

    開発を担当するケイト・ブロデリック博士はNHKのインタビューに対し「とても良好な結果で、ワクチンの効果にも自信を深めた」と述べ、7月以降、より多くの人を対象にした第二、第三段階の臨床試験に進む予定を明らかにしました。新型コロナウイルスのワクチンの開発で第二段階に進むのはアメリカの企業としては2社目となります。

    WHO=世界保健機関によりますと、世界では6月29日現在で17種類のワクチンについてヒトでの臨床試験が行われています。このうち少なくとも5種類が第二段階に進んでいて、中には年内か来年の早い時期に生産を開始できるとする見通しを示している企業もあります。

    しかし、新型コロナウイルスへの抗体の働きについてはまだわかっていないことが多く残されているほか、ヒトの体への安全性を慎重に検証する必要が指摘されています。

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    ワクチンの治験 大阪のベンチャーが開始 国内で初(6/30)

    2020年6月30日

    新型コロナウイルスのワクチンを人に投与して、安全性や有効性を確かめる臨床試験を、大阪 茨木市にあるバイオベンチャー企業が6月30日、開始したと発表しました。新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験が国内で始まるのは初めてです。

    臨床試験を開始したと発表したのは、大阪大学の研究者が設立したバイオベンチャー企業「アンジェス」です。

    発表によりますと、臨床試験では「DNAワクチン」と呼ばれるタイプのワクチンを、健康な成人30人に、大阪市立大学医学部附属病院で投与する計画です。

    このワクチンは、ウイルスそのものは使わずに、ウイルスの表面にあって細胞に感染する際の足がかりとなる、「スパイクたんぱく質」の遺伝子を使います。

    その遺伝子を組み込んだ物質を人に注射することで、体内にスパイクたんぱく質が現れ、それに応じて免疫の仕組みで感染を防ぐ抗体ができるとされています。

    投与は2週間あけて2回行い、投与量が少ない15人と多い15人を比べて、安全性や感染を防ぐ抗体が作られるかどうかを確認するということです。

    新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験は、アメリカや中国などですでに始まっていますが、国内では初めてで、この会社の関係者は、ことし秋には次の段階の臨床試験に進みたいとしています。

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    タイのワクチン開発 10月にも臨床試験を開始へ(6/22)

    2020年6月22日

    新型コロナウイルスのワクチン開発に取り組んでいるタイの研究チームは、現在行っている動物を使った研究が順調に進んでおり、ことし10月にも、臨床試験を始めるとの見通しを明らかにしました。

    タイでワクチンの研究をリードする国立チュラロンコン大学は、ウイルスの遺伝子の一部を使って免疫の反応を引き起こす技術で5月から、タイ中部にある霊長類研究センターで、サルへのワクチン投与を始めています。

    研究の責任者らは6月22日、現地で会見を開き、サルの体内では満足のいくレベルで抗体が作られ、健康への悪影響も見られていないと説明しました。そのうえで、ことし10月にもヒトへの有効性や安全性を確かめる臨床試験を開始するとの見通しを示しました。そして、来年のうちに、国内や周辺国でワクチンを安い価格で提供したいとしています。

    ワクチン開発を巡っては、欧米や中国の製薬会社の一部がすでに臨床試験を開始していますが、世界各国に提供されるまでには時間がかかるとの指摘もあります。

    研究チームを率いるキアット・ラックルンタム教授は「他国の開発をただ座して待ち、ワクチンを買う金を用意しておくだけでは正しい戦略とは言えない」と述べ、自国で開発することの重要性を強調しました。

    タイ政府は、日本円で100億円を超える予算を用意し、国内の研究機関によるワクチンの開発を後押ししていて、国際的なワクチンの開発競争が活発になっています。

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    新型コロナのワクチン実用化へ治験開始 全国初 大阪府など(6/17)

    2020年6月17日

    大阪府の吉村知事は、府内の大学などと連携して開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンの実用化に向けて、6月30日から、医療従事者を対象に治験を行うことを明らかにしました。府によりますと、ワクチンの治験は全国でも初めてだということです。

    大阪府と大阪市は、新型コロナウイルスのワクチンを開発するため、2020年4月に、大阪大学や大阪市立大学などと協定を締結し、動物実験などを進めています。

    これについて大阪府の吉村知事は6月17日の記者会見で、ワクチンの実用化に向けて、6月30日から大阪市立大学の医療従事者20人から30人を対象に、開発中のワクチンを投与する治験を行うことを明らかにしました。

    府によりますと、新型コロナウイルスのワクチンの治験は全国でも初めてだということです。府では安全性が確認できれば、2020年10月に数百人規模で治験を行ったうえで、年内に20万人分のワクチンを製造することにしています。

    そして、2021年の春から秋にかけて国の認可を得て、実用化につなげたいとしています。

    吉村知事は、「新型コロナウイルス対策には、治療薬とワクチンが重要で、その第1歩を大阪から踏み出すことになった。国民の命を守れるワクチンの開発を実現したい。ウイルスとのたたかいの反転攻勢につなげていきたい」と述べました。

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    第一三共 ワクチン開発へ 2021年3月ごろ臨床試験開始(6/12)

    2020年6月12日

    製薬大手の第一三共は新型コロナウイルスのワクチンの開発に乗り出すことを決めました。2021年3月ごろに臨床試験を始め、できるだけ早く供給できるよう取り組みたいとしています。

    第一三共は2020年4月に、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の研究開発を目的とした全社横断的なタスクフォースを立ち上げ、自社の特許や技術を活用して研究を進めてきました。

    その結果、遺伝子治療の技術をもとに試作したワクチンを動物実験で使ったところ、新型コロナウイルスに対し抗体ができることが確認されたということで、会社は本格的にワクチンの開発に乗り出すことを決めました。

    今後は2021年3月ごろに臨床試験を始めるとともに、供給体制の整備にも取り組むことにしています。

    第一三共は「国内の製薬会社としてできるだけ早くワクチンが供給できるよう取り組んでいきたい」と話しています。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐって国内では、大手製薬会社の「塩野義製薬」やバイオベンチャーの「アンジェス」などが、研究機関や大学とともに開発に乗り出していて、早期の供給に向けた動きが加速しています。

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    ブラジル 新型コロナウイルスのワクチン開発競争過熱(6/12)

    2020年6月12日

    南米ブラジル、サンパウロの州政府は6月11日、中国の国有企業が開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、7月から9000人を対象に最終段階の試験を行うことで合意したと発表しました。ブラジルではイギリスの大学などが開発中のワクチンについても、来週から最終段階の試験が行われることになっています。

    中国の国有企業が開発しているワクチンは、中国ではすでに1000人に接種して、安全性や効果を確かめる第2段階の試験まで行われているということです。

    このワクチンについてブラジル・サンパウロの州政府は6月11日、より多くの人に接種して、長期間にわたり安全性や効果を確かめる最終の第3段階の試験をサンパウロで行うことで中国側と合意したと発表しました。

    具体的には、7月から医療関係者など9000人に対してワクチンの接種を始め、1年間にわたってその効果を検証するとしています。

    ワクチンの開発をめぐっては、イギリスのオックスフォード大学などが開発中でアメリカが支援しているワクチンについても、来週からブラジルで最終の第3段階の試験が行われることになっています。

    ブラジルでは今も1日に1000人以上が死亡し、感染者数はアメリカに次いで2番目に多くなっていて、ブラジルでのワクチンの開発競争が過熱しています。

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    政府 ワクチン開発など支援 団体に3億ドル拠出へ(6/4)

    2020年6月4日

    新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は、発展途上国でのワクチンの普及に取り組む国際団体に、合わせて3億ドルを拠出することになりました。

    発展途上国でポリオなどのワクチンの接種を推進する国際団体「Gavi(ガビ)ワクチンアライアンス」は、新型コロナウイルスの感染拡大で、ワクチンの開発などを支援するため、各国に資金の拠出を呼びかけています。

    これを受け、政府は、すでに表明している1億ドルに加え、新たに2億ドルを拠出し、合わせて3億ドルの支援を行う方針を決めました。

    そして、こうした方針を安倍総理大臣が、6月4日夜に行われる団体の会合にビデオメッセージを寄せて表明する予定です。

    政府としては、ワクチンの開発や普及を後押しして、2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催にもつなげたい考えです。

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    新型コロナ ワクチン開発 世界で100種類以上研究(5/23)

    2020年5月23日

    新型コロナウイルスのワクチンについて、アメリカやイギリスでは研究機関と製薬企業などが協力して、量産体制を整備するなど早期の供給に向けた動きが加速しています。

    WHO=世界保健機関によりますと、新型コロナウイルスのワクチンは現在、世界で100種類以上、研究が進められていて、このうち少なくとも10種類については、実際に人に接種して安全性や効果を確かめる臨床試験が始まっています。

    このうちアメリカの製薬企業「モデルナ」と、NIH=国立衛生研究所が開発中のワクチンは、安全性を確かめる第一段階の臨床試験が始まっていて、ワクチンの接種量や効果などを確かめる第二段階に進む承認も得ています。

    ことし7月には、より多くの人に接種して、効果などを確かめる臨床試験の最終段階に進む見通しです。

    このワクチンの開発にはアメリカ政府が巨額の資金援助を行い、FDA=アメリカ食品医薬品局が、特例的に早期に承認する方針を示しているほか、アメリカ政府も開発と並行して、国内外で量産体制を整備する計画を発表しています。

    一方、イギリスのオックスフォード大学が、イギリス政府の支援を受けて開発中のワクチンは、4月から1000人規模の臨床試験が始まり、夏には開発の最終段階に入る見通しです。

    このワクチンの生産について、オックスフォード大学と提携するイギリスに本社がある製薬大手「アストラゼネカ」は、ことし9月に供給を開始する体制が整ったと発表しました。

    発表によりますと、アストラゼネカは、ことしから来年にかけて、10億回分を生産することが可能になったとし、少なくとも4億回分の供給をことし9月に始める予定だとしています。このうち1億回分は、イギリス国内に供給されるということです。

    また、アストラゼネカはアメリカの生物医学先端研究開発局から10億ドル以上(1070億円以上)の支援を受けたということで、イギリスメディアは3億回分程度はアメリカに供給されると伝えています。

    一方で、臨床試験の結果はまだ出ておらず、アストラゼネカは開発がうまくいかない可能性もあるとしています。

    ワクチンの効果がまだ実証されていない段階で、量産体制が整備されるのは異例のことで、流行が長期化する中、速やかにワクチンを供給し、医療システムへの負担を軽減するとともに、経済への影響も最小限に抑えることが期待されています。

    新型コロナウイルスのワクチン開発をめぐっては、開発国などによる囲い込みが懸念されていますが、アストラゼネカはWHOなどと協力して、ワクチンを世界に公平に行き渡らせられるよう取り組むとしています。

    早期実用化 疑問視する声も

    一方、ワクチンの開発では、重大な副反応が起きないか安全性を慎重に確認する必要があり、専門家の中には、早期の実用化を疑問視する声もあります。

    また、ワクチンの開発に成功した場合、どのような順序で供給するのかも重要な問題となります。

    アメリカ政府は生物医学先端研究開発局を通じて、モデルナや、ジョンソン・エンド・ジョンソン、アストラゼネカ、サノフィといった製薬企業などに、合わせて1000億円を超える資金を提供し、開発や生産体制を支援しています。

    こうした中、フランスの製薬大手サノフィのCEOは、通信社とのインタビューで、生物医学先端研究開発局からの資金提供を理由に、「アメリカに最も多く事前発注する権利がある」と発言していて、フランス政府が「ワクチンへの平等なアクセスは譲れない」と激しく反発するなど、ワクチンの確保を念頭に置いた国家間の争いも激しくなっています。

    また、今週閉幕したWHOの総会では、ワクチンの特許に制限をかけて、発展途上国に安価にワクチンを供給できるようにすることを目指す決議が採択されましたが、アメリカは「開発中の製薬企業などに誤ったメッセージを送る」として、決議に賛成しませんでした。

    決議に強制力はありませんが、流行の長期化で経済への影響が深刻化する中、感染拡大を防ぐのが難しい発展途上国にワクチンがどのように供給されるのか不透明なままです。

    国内 今夏にも人への臨床試験始まる見通し

    国内でも大手製薬会社やベンチャー企業、それに大学などの研究機関が開発に取り組んでいて、今週、製薬会社などが主導する4つの研究と大学などの研究機関が主導する5つの研究に対し、国が新たに合わせて70億円余りを補助することが決まりました。

    国内でも早ければことしの夏にも、実際に人に投与する臨床試験が始まる見通しです。

    ワクチンは従来、ニワトリの卵や動物の細胞などを使ってウイルスなどの病原体を培養したあと、毒性をなくしたり、弱めたりする方法で製造されてきましたが、ウイルスそのものを使うために、高いレベルの安全設備を備えた施設で実験を繰り返す必要があるほか、培養に時間がかかるため、ワクチンを増産できるまでに年単位の時間がかかるとされています。

    このため、新型コロナウイルスに対しては、開発にかかる期間を短縮しようと、増やすことが比較的容易なウイルスの遺伝子の一部や、人工的に作った「抗原」と呼ばれるたんぱく質を使って免疫の反応を引き起こす、新しい技術を使ったワクチンの開発も進められています。

    国内でも大阪大学の研究をもとに設立された大阪のバイオベンチャー企業「アンジェス」は、新型コロナウイルスの遺伝子の一部を「プラスミド」という特殊なDNAに組み込んで培養する方法で、ワクチンの開発を進めています。

    動物実験で安全性やウイルスに対する抗体が十分できるかなどについて調べていて、ことし7月からは実際に人に投与して、安全性や有効性を確かめる臨床試験を行う計画で、来年春の実用化を目指しているということです。

    また、製薬大手の「塩野義製薬」は、国立感染症研究所と協力して、遺伝子組み換え技術を活用して、新型コロナウイルスの表面にあるのと同じ形のたんぱく質を作り出す方法で、ワクチンの開発を進めています。

    年内に人に投与する臨床試験を始めるため、厚生労働省などと調整を進めていて、来年以降、1000万人規模での提供が可能となるよう、量産化に向けた体制を強化するとしています。

    さらに、東京に本社があるバイオベンチャー企業「IDファーマ」は、国立感染症研究所や上海の大学の研究機関とそれぞれ共同で、新型コロナウイルスの遺伝子の一部をベクターと呼ばれる特殊なウイルスを使って送り込むワクチンの開発を始めています。

    先行する上海の研究機関との研究では、6月から動物実験を始める予定で、来年には人に投与する臨床試験を始めたいとしています。

    このほか、熊本市の「KMバイオロジクス」では、ウイルスの毒性を無くしたワクチン、東京大学医科学研究所ではウイルスの毒性を弱めたワクチンなど、さまざまな手法での開発が進められています。

    専門家「接種まで少なくとも1年か」

    新型コロナウイルスのワクチンが開発される見通しについて、ワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「現在開発中のワクチンで、人での有効性はまだ示されていない。今後の臨床試験の結果しだいだが、接種できるようになるまで少なくとも1年はかかるのではないか」と話しています。

    そのうえで、ウイルスの遺伝子の一部を使って、免疫の反応を引き起こす「DNAワクチン」など、新しいタイプのワクチンの開発が進められていることについて、「新しい技術を使ったワクチンは迅速に大量生産しやすい利点があり、世界中で開発が進められている。ただ、ワクチンは健康な人を対象にするもので、有効性に加えて、安全性の評価も非常に重要だ。開発を急ぐ必要はあるが、人に使ってみて初めて分かることもあるので、慎重に評価していかなければならない」と指摘しています。

    さらに、中山特任教授は「外国でよいワクチンができても簡単には輸入できないおそれもある。日本人ではワクチンへの反応が異なる可能性もあり、国内で生産できるようにしておくことも大切だ」と話しています。

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    米「DNAワクチン」接種のサル 3分の1でコロナ遺伝子不検出(5/21)

    2020年5月21日

    「DNAワクチン」と呼ばれる新しいタイプのワクチンの効果を複数のサルを使って確かめたところ、全体の3分の1で接種後、新型コロナウイルスの遺伝子が検出されなかったとする研究成果をアメリカのハーバード大学などのグループがまとめました。

    「DNAワクチン」は、遺伝子を体に入れることによって、体内で特定のたんぱく質を合成させウイルスの働きを抑える抗体を作らせる新しいタイプのワクチンで、ハーバード大学の医療センターなどのグループは研究用に6種類を開発し、それぞれをアカゲザルに2回接種して効果を確かめました。

    その結果、いずれのワクチンもサルの血液の中の抗体の量が、新型コロナウイルスに感染して回復したヒトと同じ程度か、それ以上の量まで上昇したということです。

    また、ワクチンを接種したあと、鼻や気管からウイルスを含んだ液体を注入して感染するか確認したところ、25匹のうち、5種類のワクチンを接種した合わせて8匹からはウイルスの遺伝子が検出されなかったということです。

    研究グループは「新しいタイプのワクチンで、ヒトでも感染を予防できる可能性があることを示す結果だ」としています。

    「DNAワクチン」は、動物では一部の病気で承認されていますが、ヒトではまだ実用化されておらず、アメリカでは新型コロナウイルスのワクチンとして臨床試験が進められています。

    この研究成果は5月20日付のアメリカの科学雑誌「サイエンス」に掲載されています。

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    米企業 ワクチンの臨床試験「予防の可能性 実証」(5/19)

    2020年5月19日

    新型コロナウイルスのワクチンを開発中のアメリカの製薬会社は5月18日、臨床試験の初期の結果で、接種を受けた人の抗体の値が上昇したとして、「予防の可能性が実証された」と発表しました。

    アメリカの製薬会社「モデルナ」は、NIH=アメリカ国立衛生研究所と共同で、ことし3月から新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験を行っています。

    モデルナは5月18日、ワクチンの働きと安全性を確かめる第1段階の臨床試験の初期の結果として、ワクチンを接種された人の間で、血液中の新型コロナウイルスに対する抗体の値が上昇したと発表しました。

    発表によりますと、ワクチンを最初に接種してから43日目の人の、ウイルスの感染を防ぐ特定の抗体の値は、感染後に回復した人と同じ程度か、それ以上に上昇したということで「われわれのワクチンによる予防の可能性が実証された」としています。

    第1段階の臨床試験は18歳から55歳の45人が対象となっていますが、今回発表された特定の抗体についての結果は8人分にとどまり、臨床試験全体の結果の公開が待たれています。

    また、抗体の値が上昇しても新型コロナウイルスの感染を防げるかはヒトでは十分に実証されていないほか、接種を受けた人の一部には発熱や頭痛といった症状が出た人もいるということで、実際の効果や安全性の確認も今後の課題となっています。

    モデルナは、すでに接種するワクチンの分量などを検証する第2段階の臨床試験へと進むための承認を得ていて、7月には最終的に効果や安全性を確認する第3段階に進む見通しだとしています。

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    新型コロナワクチン 中国が臨床試験の第2段階に進んだと発表(4/15)

    2020年4月15日

    中国政府は中国国内で開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験について、安全性などを確かめる第1段階を終えて、有効性などを確かめる第2段階に進んだことを明らかにしました。

    中国科学技術省、社会発展科学技術局の呉遠彬局長は14日の記者会見で、国内で進めている新型コロナウイルスのワクチンの開発状況について説明しました。

    このうち、軍事科学院軍事医学研究院の陳薇研究員のチームが開発を進めているワクチンは、新型コロナウイルスとは別のウイルスを遺伝子の運び役として使うもので、3月までに主に安全性などを確かめる第1段階の試験を終えて、主に有効性などを確かめる次の段階の試験を始めるためにワクチンを投与するボランティアの募集を4月から始めたということです。

    呉局長は3段階ある臨床試験のうち2段階目に進むのは、新型コロナウイルスのワクチンの開発では世界で初めてだとしています。

    このほか国有企業の子会社の「中国生物武漢生物製品研究所」と民間の製薬企業「北京科興中維生物技術」は感染する能力を失わせたウイルスやその一部を材料にする「不活化ワクチン」の開発を進めていて、いずれも4月、中国政府が臨床試験の実施を承認したということです。

    呉局長によりますと、ほかにも複数のワクチンの開発が進行中で、5月にかけて臨床試験の申請が行われる見通しだということです。

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    ワクチンの臨床試験開始 米製薬企業 新型コロナ 世界で3番目(4/7)

    2020年4月7日

    アメリカの製薬企業「イノビオ」は6日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、安全性を確認する臨床試験を開始したと発表しました。世界で開発中のワクチンで臨床試験に進んだのは、これが3番目となります。

    「イノビオ」はワクチン開発のための世界的な連携機構、CEIP=感染症流行対策イノベーション連合の支援を受けて、ことし1月中旬に新型コロナウイルスのワクチンの開発に着手しました。

    ワクチンは動物を使った実験では効果を確認できていて、これを受けて6日からペンシルベニア州とミズーリ州で臨床試験を開始したということです。

    40人の健康な成人に4週間の間隔で2回ワクチンを打って、安全性を確認するということで、順調に進めばことしの終わりにはワクチンを緊急的に使うことができるようになるとしています。

    開発中のワクチンはヒトの細胞の遺伝子に働きかける「DNAワクチン」と呼ばれる新しいタイプのもので、従来のウイルスを利用したワクチンに比べて、開発や生産にかかる時間が大幅に短縮できると期待されています。

    しかし、このタイプのワクチンでは実用化されたものがないため、臨床試験でヒトに対しても予防の効果があがるかが最大の焦点となっています。WHO=世界保健機関によりますと、新型コロナウイルスに対応するワクチンについては現在、各国で合わせて60種類以上の開発が進んでいますが、臨床試験の段階に進んだのは、中国とアメリカの別の製薬会社に続き3番目になるということです。

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    ワクチン「来年早い時期に完成」米医薬品大手が見通し発表(3/31)

    2020年3月31日

    アメリカの医薬品大手 ジョンソン・エンド・ジョンソンは、新型コロナウイルスに対するワクチンを来年早い時期に完成させ、およそ10億回分接種できる量を提供できるようになるという見通しを発表しました。

    新型コロナウイルスはこれまでのところ効果がはっきりと確認された治療薬は見つかっておらず、予防のためのワクチンもないため、複数の研究機関や民間企業が治療薬の効果の確認や新たなワクチンの開発に取り組んでいます。

    アメリカの医薬品大手 ジョンソン・エンド・ジョンソンは30日、ワクチンの開発の見通しについて「来年の早い時期に完成する」という見通しを発表しました。

    発表によりますと、ワクチンの候補となる物質はすでに絞り込みを終え、遅くともことし9月にはヒトでの臨床試験を開始し、安全性と効果を確認するということです。

    そして来年の早い時期にアメリカFDA=食品医薬品局から承認を受け、世界に提供できる見通しだとしています。

    また、生産体制を拡大し、早い時期に10億回分の接種ができる量を生産可能だということです。

    ワクチンをめぐっては、アメリカNIH=国立衛生研究所と民間企業が3月から開発中のワクチンの臨床試験を始めているほか、各国の製薬ベンチャー企業や研究機関も開発を急いでいて、新型コロナウイルスの感染拡大を終息させる切り札として世界的な期待が高まっています。

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    WHO事務局長「ワクチン開発 少なくとも1年から1年半」(3/28)

    2020年3月28日

    WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスのワクチンの開発には今後少なくとも1年から1年半かかるという見通しを示しました。また、ウイルスに有効だと証明されていない治療法は控えるよう呼びかけました。

    WHOのテドロス事務局長は27日、スイスのジュネーブの本部で開いた定例記者会見で、世界全体の新型コロナウイルスの感染状況について、「50万人以上が感染し、2万人以上の死亡が確認された。悲劇的な数字だ」と述べ、感染が確認された人の合計が世界で50万人を超えたと明らかにしました。

    一方、ワクチンの開発についてテドロス事務局長は、「少なくとも1年から1年半かかる」と述べ、来年の春から夏以降になるという見通しを示しました。

    また、新型コロナウイルスに有効だと証明されていない治療法は控えるよう呼びかけました。

    新型コロナウイルスの有効な治療法は、今のところ確立されておらず、対症療法が中心で、世界ではエボラ出血熱の治療薬として開発中の抗ウイルス薬「レムデシビル」や、マラリアの治療に使われる「クロロキン」などを使った臨床試験が進んでいますが、アメリカでは3月、みずからの判断で「クロロキン」を服用した男性が亡くなっています。

    このほか、世界各地で高齢者だけでなく若者が重症化するケースも相次いでいることについて、技術責任者のバンケルコフ氏は、「若者は症状が軽いことがほとんどだが、重症化し、亡くなったという報告もある。若者自身の症状が軽くても体の弱い人に感染させ、重症化し、命に関わる場合もある」と述べ、すべての人がこまめに手を洗い、人との間隔をとるなど、一人ひとりが責任を持って行動する必要があると呼びかけました。

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    WHO 新型ウイルス ワクチン開発「最短でも1年かかる」(3/23)

    2020年3月23日

    新型コロナウイルスのワクチンについて、WHO=世界保健機関で危機対応を統括するライアン氏が海外メディアのインタビューに応じ、開発には「最短でも1年かかる」という見方を示しました。

    WHOのライアン氏は22日、イギリスの公共放送BBCのインタビューに応じました。

    この中で、新型コロナウイルスのワクチンについて、「開発には長い時間がかかる。試験を繰り返して安全性を確かめ、効果があることを証明する必要がある。さらに、すべての人のために十分な量を生産しなければならない」と述べ、一連のプロセスには「最短でも1年かかる」という見方を示しました。

    また、ライアン氏は、若い人は新型コロナウイルスに感染しないという誤った認識を一部の人が持っていることについて、イタリアでは、集中治療を受けている人の3人に2人が70歳未満であることなどを指摘し、「高齢者だけが感染するものではなく、特に中年の人たちにも大きな影響を及ぼす」と警戒を呼びかけました。

    そのうえで「もしいま厳しい対策を取らず、移動制限や街の封鎖などを解除してしまったら、感染が再び勢いを増すおそれがある」と述べ、拡大を食い止めるためできるかぎりの対策を講じるべきだと強調しました。

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