ワクチン開発や接種
世界の状況は
(2021年)

世界の新型コロナウイルスのワクチンについて、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカなど海外製薬会社による開発・供給の状況や、世界各地での使用許可・接種の状況をまとめています。

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    WHO事務局長“世界全体ではワクチン供給に遅れ 公平な分配を”(12/23)

    2021年12月23日

    WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、先進国などで新型コロナのワクチンの追加接種が進む一方、世界全体ではワクチンの供給が遅れていると指摘し、公平な分配に向けて各国に協力を呼びかけました。

    WHOのテドロス事務局長は12月22日会見を開き、先進国などで追加接種が進む一方、世界全体ではワクチンの供給が遅れ、年内に接種率が40%に達する国は世界の半数にとどまるという見通しを述べました。

    また、現在使われているワクチンの20%は追加接種に充てられると指摘し「入院したり死亡したりしている人の多くはワクチンを接種していない人だ」と述べ、1回目の接種が遅れている現状に危機感を示しました。

    そのうえで「すでに接種率が高い国にワクチンを供給し続けることでパンデミックを長引かせる可能性がある」として、先進国などですべての成人を対象とした大規模な追加接種が行われていることに懸念を示しました。

    テドロス事務局長は「来年こそパンデミックを終わらせ、新たな連帯の時代の始まりにしなければならない」と述べ、ワクチンの公平な分配に向けて、各国に協力を呼びかけました。

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    トルコ 国産コロナワクチン承認 アフリカ各国への提供も計画(12/23)

    2021年12月23日

    トルコ政府は、国産の新型コロナウイルスワクチンに緊急使用が認められたと発表し、国内で接種を始めるほか、ワクチンが不足するアフリカ地域にも提供するとしています。

    トルコ政府は12月22日、国内で初めて開発された新型コロナウイルスのワクチン「トルコワク」について、保健当局傘下の委員会が緊急使用を認めたと発表しました。

    来週にも国内での接種を始めるとしています。

    またエルドアン大統領は12月、イスタンブールで開かれたトルコとアフリカ各国の首脳会議で、「1500万回分のワクチンを提供することを計画している」と明らかにしていて、ワクチンの普及が遅れているアフリカ各国への「ワクチン外交」にも活用する方針です。

    「トルコワク」はウイルスを加工して毒性をなくした「不活化ワクチン」と呼ばれる種類のもので、トルコの大学や研究機関が共同で開発してきました。

    開発担当のトップは12月19日、地元メディアに対し、これまでの臨床試験でワクチン接種者に重症化した事例はなく、肯定的な結果が得られたと明らかにしていました。

    トルコでは18歳以上のワクチン接種の対象者のうち、すでに82%が2回目の接種を終えていますが、1日あたりの感染者は依然として、2万人ほどで推移しています。

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    イスラエル首相 60歳以上などに4回目ワクチン接種始める考え(12/22)

    2021年12月22日

    人口の4割余りが新型コロナウイルスのワクチンの3回目の接種を終えている中東のイスラエルで、変異ウイルスのオミクロン株の感染が拡大する中、イスラエルのベネット首相は、60歳以上の人たちなどに4回目の接種を始める考えを示しました。

    世界的に速いペースでワクチンの接種が進んだイスラエルでは、2021年8月から世界に先駆けて3回目の接種を進めていて、これまでに人口のおよそ44%にあたる417万人が3回目の接種を終えています。

    その後、感染者は減少傾向にありましたが、先月下旬以降オミクロン株の感染拡大に伴い、感染者数は再び増加していて、12月19日にはおよそ2か月ぶりに1日の新規感染者数が1000人を超えました。

    こうした事態を受けて、医師などで作る政府の専門家委員会は12月21日、60歳以上の人たちや医療従事者に4回目の接種を始めるべきだという提言を出しました。

    これを受けて、ベネット首相は、提言を支持し、近く接種を始める考えを示したうえで、「世界中を巻き込んでいるオミクロン株の波を乗り越えるために役立つ。条件に合う人たちは会場に行き接種してほしい」と述べました。

    イスラエルのメディアによりますと、国内ではこれまでに341人がオミクロン株に感染したことが確認されていて、政府は、在宅勤務を呼びかけるなど感染対策を進めています。

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    WHO 米ノババックス社製ワクチンを緊急使用リストに追加(12/22)

    2021年12月22日

    WHO=世界保健機関は、アメリカの製薬会社ノババックスが開発、製造する新型コロナウイルスのワクチンを緊急使用のリストに加えました。

    途上国などへの分配の加速につながることが期待されています。

    WHOは12月21日、アメリカの製薬会社ノババックスが開発、製造する新型コロナウイルスのワクチンを緊急使用のリストに加えたと発表しました。

    同じワクチンでインドの大手製薬会社が製造するものは、12月17日に緊急使用のリストに加えられています。

    このワクチンは、WHOなどが主導するワクチンの開発や分配の枠組み「COVAXファシリティ」の支援を受けて開発され、通常の冷蔵庫で保存できることから途上国などへの分配に適しているとされています。

    これまでのCOVAXを通じたワクチンの分配は、合わせておよそ7億9000万回分で、年内におよそ20億回分としていた当初の計画を大幅に下回っていて今回、新たなワクチンがリストに加えられたことで、COVAXを通じた途上国などへの分配の加速につながることが期待されています。

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    モデルナ 3回接種「オミクロン株への中和抗体効果が大幅上昇」(12/21)

    2021年12月21日

    アメリカの製薬会社モデルナは、新型コロナウイルスワクチンを3回接種することで変異ウイルスのオミクロン株に対する中和抗体の効果が大幅に上昇することを実験で確認したと発表しました。

    モデルナは12月20日、新型コロナウイルスワクチンのオミクロン株に対する効果について、研究室で行った初期的な実験結果を発表しました。

    それによりますと、ワクチンの接種を2回受けた人の血液中では、ウイルスの働きを弱める中和抗体の効果が、オミクロン株に対しては従来のウイルスに比べて低下していました。

    しかし、3回目の追加接種を受けたあとでは、中和抗体の効果は大幅に上昇し、日本やアメリカで3回目の接種に使われる50マイクログラムの接種ではおよそ37倍になったほか、最初の2回の接種と同じ100マイクログラムではおよそ83倍になったということです。

    モデルナは、オミクロン株に特化したワクチンの開発は続けるものの、現在使われているワクチンを3回、接種することによってオミクロン株に対して十分な効果が期待できるとして「現時点では、変異ウイルスに対応したワクチンは必要ないと考えている」としています。

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    ファイザーワクチンの追加接種 オミクロン株にも効果 WHO見解(12/19)

    2021年12月19日

    WHO=世界保健機関は新型コロナウイルスの変異ウイルスのオミクロン株について、ファイザーのワクチンを追加接種することでデルタ株に対する効果と同じ程度の効果があるとする見解を示しました。

    これはWHOが12月18日に公表した加盟国向けの資料で明らかにしました。

    この中で、イギリスから得た初期的なデータだとしたうえで、ファイザーやアストラゼネカのワクチンを2回接種していても、オミクロン株による重症化などを防ぐ効果はデルタ株に対する効果と比べて著しく低いとしています。

    一方でファイザーのワクチンを追加接種した場合、接種から2週間たつとデルタ株に対する効果と同じ程度、またはやや低い効果が見られるとしています。

    WHOはファイザー以外のワクチンを追加接種した場合のオミクロン株に対する効果についても分析を進めています。

    WHOによりますと、オミクロン株は12月16日現在で世界89か国で確認され、市中感染が起きている国では感染者数が1日半から3日で倍増しているということです。

    WHOはこうした国では現在主流になっているデルタ株が今後オミクロン株に置き換わるという見通しを示し、引き続き警戒を呼びかけています。

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    米CDC専門家委員会「コロナ予防にはmRNAワクチンが望ましい」(12/17)

    2021年12月17日

    アメリカCDC=疾病対策センターの専門家委員会は12月16日、新型コロナウイルスの感染症の予防には、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンよりファイザーやモデルナのいわゆる「mRNAワクチン」が望ましいとする勧告を出しました。

    CDCは12月16日、外部の専門家の委員会を開き、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンについてこれまでに得られた効果と安全性のデータを検証しました。

    このワクチンはアメリカで1700万回以上接種されていますが、接種後まれに脳などの血管が詰まる血栓症が起き、CDCは、これまでに54人が報告され、9人が死亡したとしています。

    血栓症の報告が最も多いのは30歳から49歳の女性で、接種100万回当たり10人程度の頻度だということです。

    CDCは、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンが重症化や死亡を防ぐ効果について、リスクを上回るとしつつも、ファイザーやモデルナのいわゆる「mRNAワクチン」よりは低いとしています。

    これらのデータを検討した専門家の委員会は「新型コロナウイルスの感染症の予防には、『mRNAワクチン』が望ましい」とする勧告を出しました。

    CDCはファイザーやモデルナのワクチンが手に入りにくい地域の人などは、引き続き接種してもよいとしています。

    ジョンソン・エンド・ジョンソン「依然 重要な選択肢」

    ジョンソン・エンド・ジョンソンは12月16日、CDCの専門家委員会の勧告を受けて、「このワクチンは強い抗体と細胞性免疫、長期にわたる免疫記憶、それに変異ウイルス全体にわたる幅広い防御をもたらすことが裏付けられている」とする声明を発表しました。

    そのうえで、mRNAワクチンの接種を避けている人などに対し「依然として重要な選択肢となっている」としたうえで、今後、血栓症への対処方法などについて啓発に取り組むとしています。

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    米ファウチ博士 オミクロン株 ワクチン効果 追加接種で高まる(12/16)

    2021年12月16日

    アメリカ政府の首席医療顧問を務めるファウチ博士は12月15日、変異ウイルスのオミクロン株に対するワクチンの効果は現在使われているワクチンの追加接種によって十分高まるとして「現時点で変異ウイルスに対応した新たなワクチンの接種は必要ない」とする見方を示しました。

    アメリカ政府の首席医療顧問を務めるファウチ博士は12月15日の会見で新たな変異ウイルス、オミクロン株に対するワクチンの効果について現時点での見解を説明しました。

    それによりますと、現在使われているファイザーやモデルナの新型コロナウイルスワクチンは2回の接種を完了してもオミクロン株に対しては感染や重症化を防ぐ効果が顕著に低下するとしています。

    その一方で、複数の初期的な研究の結果として「3回目の追加接種によってウイルスの働きを抑える中和抗体の効果がオミクロン株に対しても大幅に上昇することが示されている」と述べました。

    そのうえでファイザーやモデルナが開発を表明しているオミクロン株に対応したワクチンについて「現時点で、変異ウイルスに対応した新たなワクチンの接種は必要ない」とする見方を示し、あらためて国民に現在使われているワクチンの追加接種を受けるよう呼びかけました。

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    英調査 オミクロン株 追加接種で約70~75%の発症防止効果(12/11)

    2021年12月11日

    イギリスの保健当局は、新型コロナワクチンの追加接種について、変異ウイルスのオミクロン株に感染した人の発症をおよそ70%から75%防ぐ効果があるとする初期の調査結果を公表しました。

    イギリスの保健当局は12月10日、変異ウイルスのオミクロン株に感染した581人を対象にした初期の調査結果を公表しました。

    それによりますと、対象者には、ワクチンを2回接種した人や追加接種を受けた人などが含まれていて、このうち、2回の接種を受けた場合は、デルタ株に比べて、発症を防ぐ効果は大幅に低かったということですが、追加接種を受けた場合は、およそ70%から75%発症を防ぐ効果があったとしています。

    ただし、初期段階の調査であり、追加接種の効果がどのくらいの期間続くのかなど、さらなる調査が必要だとしています。

    イギリスでは12月10日、オミクロン株の感染が新たに448人確認され、累計で1265人となりました。

    保健当局は、このままのペースで感染が拡大すれば、12月中旬までにはオミクロン株が感染者の半数以上を占めることになるとみています。

    イギリス政府は、2022年1月末までに18歳以上のすべての人が追加接種を終えるよう対応を急いでいます。

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    オミクロン株へのワクチンの効果「3回目で向上」ファイザー(12/9)

    2021年12月9日

    アメリカの製薬大手ファイザーなどは12月8日、新型コロナウイルスワクチンのオミクロン株に対する効果について、接種を3回行うことによって、ウイルスの働きを抑える中和抗体の効果が従来のウイルスに対する場合と同じ程度に高まったとする初期的な実験結果を発表しました。
    ワクチンを3回接種すれば、オミクロン株に対する高い効果が期待できるとしています。

    アメリカの製薬大手ファイザーとドイツのビオンテックは12月8日、共同開発した新型コロナウイルスワクチンのオミクロン株に対する効果について、研究室で行った初期的な実験結果を発表しました。

    それによりますと、ワクチン接種を受けた人の血液中にあるウイルスの働きを抑える中和抗体の効果は、2回の接種を受けた人では、従来のウイルスに対する場合と比べ大幅に減少していました。
    しかし、3回目の追加接種を受けた人では、中和抗体の効果は2回接種の場合の25倍になり、従来のウイルスに対する効果と同じ程度に高まっていたということです。

    ビオンテックのシャヒンCEOは、12月8日の会見で「実験結果から考えると、3回目の接種を受けた人ではオミクロン株に対する高い効果が期待できる」と述べました。

    今回の実験結果は初期的な段階のもので、ファイザーなどは今後、3回のワクチン接種を受けた人を対象に感染や重症化を防ぐ効果が実際にどの程度得られているか、詳しく調べるとしています。

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    ファイザーのワクチン オミクロン株に効果低下か 南アの研究所(12/8)

    2021年12月8日

    南アフリカのアフリカ健康研究所は12月7日、ファイザーの新型コロナウイルスワクチンの効果がオミクロン株に対しては、低下する可能性を示す初期段階の研究結果を発表するとともに、3回目の追加接種などによって、ワクチンの効果がある程度維持される可能性が高いとする見解を示しました。

    南アフリカのアフリカ健康研究所のチームは12月7日、ファイザーのワクチン接種を受けた人、12人の血液を採取し、血液中の中和抗体が、新たな変異ウイルス、オミクロン株の働きをどの程度抑えられるかを調べた結果を発表しました。

    それによりますと、12人全体では、中和抗体の効果が従来のウイルスの場合と比べ、およそ40分の1になったということです。

    一方で、12人のうち、新型コロナウイルスに感染したあと、ワクチン接種を受けた6人について調べたところ、このうち5人は中和抗体の効果が低下したものの、比較的高い水準を維持していました。

    研究結果は、まだ他の専門家による検証を受けていない初期段階の小規模なものですが、研究チームは「ウイルスが免疫を回避する能力は完全ではなかった。ウイルスに感染したあとワクチン接種を受けたり、3回目の追加接種を受けたりすれば、中和抗体の働きを高めたり、重症化を防ぐことができたりする可能性が高い」としています。

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    田辺三菱製薬 子会社開発のワクチン 年内にカナダで承認申請へ(12/8)

    2021年12月8日

    大阪に本社がある「田辺三菱製薬」は、カナダにある子会社が植物を使って開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、最終段階の臨床試験で安全性と有効性が確認されたとして、年内にカナダで承認に向けた申請を行う方針を明らかにしました。

    田辺三菱製薬の発表によりますと、カナダにある子会社「メディカゴ」がイギリスの製薬会社と共同で開発を進めている新型コロナのワクチンについて、北米やヨーロッパなどのおよそ2万4000人を対象に行った最終段階の臨床試験で有効性と安全性が確認されたとしています。

    ワクチンが発症を防ぐ効果は71%で、このうち、デルタ株に対しては75.3%だったということで、重い副反応は見られず、発熱などの副反応があった場合でも平均で1日から3日ほどで治まったとしています。

    これを受けて、メディカゴは、年内にカナダで承認に向けた申請を行う方針です。

    このワクチンは、成長が早いタバコ属の植物にウイルスの遺伝子を組み込み、葉の細胞からウイルスに似た形の粒子を抽出する手法でつくられ、2度から8度の温度で保存できることから、規模が小さな医療機関でも使いやすいメリットがあるとしています。

    田辺三菱製薬は、日本でもこのワクチンの初期段階の臨床試験を進めていて、安全性などが確認できれば、海外で行われた最終段階の臨床試験の結果とあわせて、2022年春にも国内で承認申請を行うとしています。

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    米 ニューヨーク市 市内の全企業の従業員「ワクチン接種義務」(12/7)

    2021年12月7日

    アメリカのニューヨーク市は、新たな変異ウイルスのオミクロン株の感染対策として、12月27日から、市内のすべての企業に従業員のワクチン接種を義務づけると発表しました。

    これは12月6日、ニューヨークのデブラシオ市長が会見で明らかにしました。

    それによりますと、12月27日から市内のすべての企業に従業員のワクチン接種を義務づけます。

    従業員の接種義務化は全米の都市で初めてだということで、導入の理由について、オミクロン株の感染力が強いと指摘されていることや、これから寒さが厳しくなること、それにホリデーシーズンで人が集まる機会が増えることなどを挙げています。

    違反した場合の罰則などについては、12月15日に発表するとしています。

    対象となる事業所はおよそ18万4000にのぼるということで、デブラシオ市長は「新たな脅威に対処するためには非常に大胆かつ積極的な行動をとる必要がある」と述べ、理解を求めました。

    また、ニューヨーク市はこれまで屋内の飲食店や劇場などを利用する12歳以上を対象に、ワクチンの接種を少なくとも1回受けたことを示す証明書の提示を求めてきましたが、12月27日からは原則、ワクチンを2回接種した証明書の提示を求めることにしています。

    さらに11月から接種が始まった5歳から11歳の子どもについては12月14日から少なくとも1回のワクチンの接種証明書の提示を求めるとしています。

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    イギリス 追加接種に備え1億1400万回分のワクチン確保の契約(12/2)

    2021年12月2日

    イギリス政府は、今後新たな変異ウイルスによって、さらなる追加接種が必要となる事態に備え、2022年から2023年にかけて1億1400万回分のワクチンを確保したことを明らかにしました。

    新たな変異ウイルス、オミクロン株の感染による影響が広がるなか、イギリス政府は12月1日、2022年から2023年にかけてファイザーとモデルナの2種類のワクチン、あわせて1億1400万回分を確保する契約を結んだことを明らかにしました。

    オミクロン株や今後の変異ウイルスに対応したワクチンが開発された場合には改良されたワクチンも対象に含まれるとしています。

    イギリス政府はすでに2022年に向けて3500万回分のファイザーのワクチンを確保していますが、新たに確保することで今後さらなる追加接種が必要となる事態に備えるねらいです。

    途上国などではワクチンの供給不足も大きな課題となっていますが、イギリス政府はこうした国々に対し、2022年半ばまでに1億回分を寄付することを改めて強調し、このうち3000万回分以上は12月末までに提供するとしています。

    イギリスでは12月1日現在、オミクロン株に感染した人が32人確認されていて、政府は水際対策や感染対策を強化するとともにワクチンの追加接種の間隔を短くするなどして対応を急いでいます。

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    WHO リスク高い人に一刻も早くワクチン接種 途上国にも分配を(12/2)

    2021年12月2日

    新型コロナウイルスの新たな変異ウイルス、オミクロン株について、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、感染力やワクチンの効果に及ぼす影響などについて調査が続けられているとしたうえで、各国に対して高齢者などリスクの高い人たちに一刻も早くワクチン接種を行い、途上国にも分配するよう呼びかけました。

    WHOは11月26日に新たな変異ウイルスの呼称をオミクロン株とし「懸念される変異株」に指定していて、12月1日はこれに関する初めての記者会見を開きました。

    この中でテドロス事務局長は「オミクロン株について新たな情報を得ているところだが、感染や重症化のしやすさ、検査や治療法、ワクチンの効果に影響があるのかまだ多くのことが分かっていない」としたうえで、この数日間、世界各地の専門家が新たな証拠について評価を行っていると述べました。

    そのうえでテドロス事務局長は、各国に対して高齢者などリスクの高い人たちに一刻も早くワクチン接種を行うとともに、途上国にも分配するよう呼びかけました。

    また新型コロナウイルス対策の技術責任者を務めるバンケルコフ氏は「数週間と言わず、今後数日でより多くの情報が得られる見通しだ」と述べました。

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    ワクチン開発 独ビオンテックCEO「オミクロン株の重症化防ぐ」(12/1)

    2021年12月1日

    アメリカの製薬大手ファイザーとともに、ワクチンを開発したドイツの企業、ビオンテックのシャヒンCEO=最高経営責任者が、メディアのインタビューに答え、新たな変異ウイルス「オミクロン株」に対するワクチンの有効性について、重症化を防げる可能性が高いという見解を示しました。

    ビオンテックのシャヒンCEOは、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、「われわれの考えは科学的根拠に基づいている。もし変異ウイルスが抗体による免疫を回避できたとしても、重症化を防ぐ免疫細胞から完全に逃れることはできないだろう」と答え、ワクチンがオミクロン株に対しても重症化を防ぐ効果がある可能性が高いという見解を示しました。

    そのうえで、シャヒンCEOはこれまでにもビオンテックとファイザーが開発したワクチンがデルタ株を含むほかの変異ウイルスに対し、重症化を防ぐ効果を示しているとしたうえで、従来と同じように3回目の追加接種を進める重要性を強調しました。

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    イギリス 2022年1月末までに18歳以上の追加接種終了方針(12/1)

    2021年12月1日

    イギリスでは、新たな変異ウイルス、オミクロン株の感染確認を受けて、公共交通機関でのマスク着用の義務化など対策が強化される中、ジョンソン首相は、2022年1月末までに18歳以上のすべての人への追加接種を終わらせたいという考えを示しました。

    イギリスではこれまでにオミクロン株に感染した人が22人確認されていて、人口の大半を占めるイングランドでは11月30日、対策が強化されました。

    新たな対策では公共交通機関や小売店でのマスクの着用、それに入国から2日以内にPCR検査を受け、陰性の結果が出るまでは隔離することなどが義務づけられています。

    ロンドン市内では地下鉄の車両などでマスクを着用している人の姿が目立ちましたが、市民からは「マスクがどれだけ有効なのかはわからないが、ルールなのでしかたない」とか「再び厳しい外出制限が必要になるのではないかと懸念している」といった声が聞かれました。

    イギリス政府はこうした対策によって感染拡大のスピードを遅らせながら、ワクチンの追加接種を急ぐ方針で、11月30日記者会見したジョンソン首相は、来年1月末までに18歳以上のすべての人への追加接種を終わらせたいという考えを示しました。

    医療関係者やボランティアに加えて、軍も動員して追加接種を進めるとしていて、ジョンソン首相は「オミクロン株に対する最大の防御はワクチンだ」と述べ、追加接種の重要性を強調しました。

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    モデルナCEO 現在のワクチン“オミクロン株への効果低くなる”(12/1)

    2021年12月1日

    アメリカの製薬会社モデルナのバンセルCEO=最高経営責任者はメディアとのインタビューで、現在使われているワクチンは新たな変異ウイルス、オミクロン株への効果が従来の変異ウイルスに対するものよりも低くなるという見方を示しました。

    モデルナのバンセルCEOは、イギリスの新聞「フィナンシャルタイムズ」とのインタビューで、オミクロン株に対するワクチンの効果について「デルタ株と同じレベルの効果が得られることはないと思う。どのくらい効果が下がるかはデータを待つ必要があるが、私が話を聞いた科学者は皆、『これはよくないだろう』と話している」と述べ、現在使われているワクチンはオミクロン株への効果が、従来の変異ウイルスに対するものよりも低くなるという見方を示しました。

    その理由として、ウイルスの表面にある突起のような部分「スパイクたんぱく質」に多くの変化が起きていることに、科学者たちが懸念を示しているためとしています。

    そしてワクチンがオミクロン株に対してどのように作用するのかというデータは「2週間以内に得られるはずだ」としたうえで、これに特化したワクチンを大規模に製造できるようになるには数か月かかるという見解を示しました。

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    ワクチン追加接種「受けるべきだ」 米CDC オミクロン株拡大で(11/30)

    2021年11月30日

    新たに確認された変異ウイルス、オミクロン株の感染拡大の懸念が高まる中、アメリカCDC=疾病対策センターは、接種を終えた18歳以上のすべてのアメリカ国民に対して、ワクチンの追加接種を「受けるべきだ」と呼びかけ、追加接種を強力に推奨する方針を示しました。

    CDCはこれまで、ファイザーとモデルナの新型コロナウイルスワクチンについて、2回の接種を終え6か月がたった▽50歳以上の人と▽18歳以上で長期介護施設に住む人に対して速やかな追加接種を呼びかける一方、▽そのほかの人に対しては追加接種を「受けることができる」としていました。

    しかし各国で新たな変異ウイルス、オミクロン株に感染した人が確認される中、CDCは11月29日、2回の接種を終え6か月がたった18歳以上のすべての人に対して追加接種を「受けるべきだ」と、これまでより強い表現で呼びかけ、追加接種を強力に推奨する方針を示しました。

    CDCのワレンスキー所長は、声明で「南アフリカからの初期のデータでは、感染力が強い可能性が示されている」と危機感を示しました。

    また、現在使われているワクチンがオミクロン株にどこまで効果を持つかについては「アメリカをはじめ世界各国の科学者が検証を急いでいる」としています。

    アメリカでは11月29日現在、オミクロン株に感染した人は確認されていないものの、バイデン政権は、製薬大手と対応策に関する検討を始めるなど、警戒を強めています。

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    ファイザーCEO 新たなワクチン「100日以内にできるだろう」(11/30)

    2021年11月30日

    アメリカの製薬大手ファイザーのブーラCEO=最高経営責任者は、南アフリカで確認された新たな変異ウイルス「オミクロン株」について、もし現在のワクチンの効果が低下した場合に備え、新しいワクチンを作る作業を始めたことを明らかにしたうえで「100日以内にできるだろう」という見通しを示しました。

    南アフリカで確認された新たな変異ウイルス「オミクロン株」について、ファイザーのブーラCEOは11月29日、アメリカのテレビ番組のインタビューで「現在のワクチンの効果がもし低下するのであれば、新たなワクチンを作らなくてはならない。すでに新たなワクチンを作る作業は始まっている」と述べたうえで「100日以内にできるだろう」との見通しを示しました。

    一方で「変異ウイルスのデルタ株や、ベータ株に対しても新たなワクチンを作ったが、現在のワクチンもこれらの変異ウイルスに対して高い効果を示したので、使う必要がなかった。新たなワクチンを使うとすれば、オミクロン株に対して現在のワクチンが効果がないとわかったときだけだ」として、新たなワクチンが必要になるかどうかはまだわからないという見方を示しました。

    またブーラCEOは、開発中の飲むタイプの抗ウイルス薬について「ウイルスの変異が起きているスパイクタンパク質に対して働く仕組みの薬ではないので、効果は変わらないと自信を持っている」と述べ、開発に影響はないという考えを示しました。

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    中国 アフリカにコロナワクチン さらに10億回分提供を表明(11/30)

    2021年11月30日

    中国とアフリカ諸国による国際会議がセネガルで始まり、中国は新型コロナウイルスワクチンをさらに10億回分提供すると表明し、新たな変異ウイルス「オミクロン株」の感染拡大が懸念されるアフリカで、いわゆる「ワクチン外交」を展開する姿勢を鮮明にしました。

    中国のアフリカ外交の柱となっている「中国アフリカ協力フォーラム」の会議が11月29日、セネガルの首都ダカールで3年ぶりに始まり、各国の外相などが参加しました。

    中国の習近平国家主席はオンライン方式で参加し、アフリカに新型コロナウイルスワクチンを10億回分提供するほか、医療従事者など1500人を派遣すると表明しました。

    中国は、これまでもアフリカに2億回分のワクチンを提供したとしていますが、一部では中国製ワクチンへの不信感があるほか、アメリカなどもワクチンの提供を増やしています。

    こうした中、中国は支援の強化を打ち出し、新たな変異ウイルス「オミクロン株」の感染拡大が懸念されるアフリカで、いわゆる「ワクチン外交」を展開し、影響力を強めようとする姿勢を鮮明にしました。

    また、習主席はアフリカからの輸入を促進し、今後3年間で総額3000億ドルを目指すことも表明し、アフリカ側の一部で中国製品の輸入が過剰になっているという不満があることに配慮したとも受け止められています。

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    仏 感染再拡大でワクチン追加接種対象の拡大など対策強化(11/26)

    2021年11月26日

    フランス政府は、新型コロナウイルスのワクチンの追加接種の対象を、現在の65歳以上から18歳以上に広げ、ワクチン接種を進めることで感染の再拡大を食い止める方針です。

    フランスでは、新型コロナウイルスの1日の感染者数が3万2000人を超えるなど感染が再び拡大し11月25日、ベラン保健相らが新たな対策を発表しました。

    それによりますと現在65歳以上となっている追加接種の対象を18歳以上に広げるということです。またレストランなどを利用する際に提示が求められる接種証明は、接種から7か月で無効になり、有効とするには追加接種が必要だとしています。さらに、1度も接種をしていない人への対策も強化し、接種証明と同様の効力がある検査による陰性証明の有効期間を、24時間に短縮するとしています。

    これによって接種をしていない人がレストランなどを利用する場合は有料の検査をより頻繁に受けることが必要になります。

    フランスのワクチン接種率は2021年9月、60%を超えたあと伸び悩み、現在はおよそ70%にとどまっています。

    ベラン保健相は「フランスは今、感染の第5波の中にある。この波はことしの夏に比べて、より強く、長期間になる」と指摘し、感染の影響を最小限に食い止めるためワクチン接種への理解を求めました。

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    ECDC“ワクチン追加接種 早期に検討すべき” 欧州感染急拡大で(11/25)

    2021年11月25日

    ヨーロッパで新型コロナウイルスの感染が急速に拡大していることから、ECDC=ヨーロッパ疾病予防管理センターは各国が18歳以上を対象にワクチンの追加接種を検討し、中でも40歳以上については早期に検討すべきだという見解を示しました。

    ヨーロッパでは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各国がワクチンの追加接種を加速したり行動制限を強化したりしています。

    ECDCは11月24日、感染状況や今後の見通しについてEMA=ヨーロッパ医薬品庁とともに会見を開きました。

    EU=ヨーロッパ連合の域内では人口のおよそ65%がワクチン接種を終えていますが、会見でECDCはこうした状況について「感染の広がりを抑えるには十分でないことは明らかだ」と指摘しました。

    そして各国に対して18歳以上を対象に追加接種を検討し、中でも40歳以上については早期に検討すべきだという見解を示しました。

    ECDCが11月24日に発表した報告書では、ワクチンの接種を終えた人が人口の80%以下の国では入院や死亡のリスクを抑えるため来月からの2か月間、人と人との接触を大幅に減らすことが求められるともしています。

    その一方でオーストリアが打ち出した接種の義務化についてECDCは「人々を一層ワクチンを拒否する方向に向かわせる可能性もある。接種率を高める効果はあるが解決策とは言えない」と述べ、義務化には慎重な姿勢を示しました。

    WHO“感染対策継続が重要”

    WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は11月24日、ワクチンの接種によって誤った安心感が広がっているとして、接種した人もマスクの着用などの感染対策を続けることが重要だと強調しました。

    会見でテドロス事務局長は「多くの国や地域でワクチンがパンデミックを終わらせ、接種した人はほかの対策をしなくてもいいという誤った安心感があることを懸念している」と述べました。

    そのうえでワクチンの接種によって重症化や死亡のリスクは下がるものの、感染したりほかの人を感染させたりするリスクは依然としてあると指摘するとともに、接種した人もマスクを着け人混みを避けるといった対策を続けることが重要だと強調しました。

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    米CDC コロナワクチン 3回目接種対象を18歳以上すべてに拡大(11/20)

    2021年11月20日

    アメリカCDC=疾病対策センターは11月19日、ファイザーとモデルナの新型コロナウイルスワクチンについて効果を高めるための3回目の接種の対象を18歳以上の人すべてに拡大すると発表しました。

    CDCはこれまで、製薬大手ファイザーと、製薬会社モデルナの新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種の対象を、65歳以上の人と、18歳以上で重症化リスクの高い人や、感染リスクの高い職場で働いている人としていました。

    これについてCDCの専門家の委員会は11月19日、3回目の接種の対象について、ファイザーやモデルナから提出された臨床試験のデータなどを改めて検討した結果、接種対象を18歳以上の人すべてに拡大することを全会一致で認めました。

    これを受けて、CDCは2回目の接種を終えて6か月がたった18歳以上の人に対し、3回目の接種を推奨すると正式に発表しました。

    アメリカでは、感謝祭やクリスマスで、旅行や会食の機会が増える季節を前に、感染が再び拡大することへの警戒が高まっていて、一部の州やニューヨーク市などではCDCの推奨を待たずに独自に追加接種の対象を拡大する動きが相次いでいました。

    CDCのワレンスキー所長は「追加の接種は休暇の時期を前にウイルスへの守りを高める重要な手段だ」として、対象となった人に速やかに追加の接種を受けるよう呼びかけています。

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    米CDC 新型コロナ 感染再拡大懸念 “追加ワクチン接種を”(11/18)

    2021年11月18日

    アメリカでは感謝祭やクリスマスの時期を前に、新型コロナウイルスの感染が再び拡大する懸念が高まっていて、CDC=疾病対策センターは、ワクチンの接種を終えた人にも、効果を高めるための追加の接種を強く求めています。

    アメリカでは2021年9月以降、新型コロナの新規感染者数は減少傾向が続いていましたが、11月に入って再び増加に転じ、CDCによりますと1日に報告される感染者の平均は8万3000人余り、新たに入院する人も1日あたり5300人余りとなっています。

    来週には、家族や親戚などが集まって食事をする「感謝祭」が控えていて、アメリカ自動車協会はこの時期に旅行する人の数は感染拡大前の水準近くに戻ると予測しています。

    また、12月のクリスマスの時期にも旅行や会食の機会が増えることから、感染のさらなる拡大が懸念されています。

    CDCのワレンスキー所長は11月17日の会見で「この季節の最高のプレゼントは『健康』だ」と述べ、ワクチンを接種していない人にあらためて接種を呼びかけました。

    CDCは、ワクチンの接種率が比較的高い州でも感染拡大の兆候が見られるとして、接種を終えた高齢者や基礎疾患のある人などに対し、効果を高めるための追加の接種を受けるよう強く求めています。

    このほか、各州の保健当局も、追加接種の対象となる人を独自に拡大するなど、感染の再拡大への警戒を強めています。

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    韓国 3回目のワクチン接種 60歳以上の人など最短で4か月後に(11/17)

    2021年11月17日

    韓国政府は、60歳以上の人などを対象にした新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種について、全国の重症者の数が11月16日に過去最多となるなど、感染が収まらない状況が続いていることから、当初の予定を2か月短縮して、最短で4か月後に受けられるようにすると発表しました。

    韓国は、11月から飲食店の営業時間の制限を解除するなど、新型コロナウイルスの感染防止のための規制を段階的に緩和しています。

    しかし、11月16日の一日の感染者数は首都ソウルで過去最多の1436人、全国でも、これまでで2番目に多い3187人となり、全国の重症者の数も初めて500人を超えるなど、感染が収まらない状況が続いています。

    このため韓国政府は、2回目のワクチン接種完了から半年が経過した60歳以上の人や、入院患者などを対象に進めている3回目の接種について、当初の予定を2か月短縮して最短で4か月後に受けられるようにすると発表しました。

    また、50代についても、2回目の接種完了から5か月後に接種を受けられるようになり、年内には、全人口のおよそ4分の1にあたる1400万人近くが追加の接種を終える見通しだということです。

    韓国では、これまでにワクチン接種を終えた人の割合が78.4%と、日本とほぼ同じ水準ですが、早い段階で接種を終えた高齢者などの間で、いわゆるブレークスルー感染が広がっているという指摘が出ています。

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    ロシア ワクチン接種証明提示の義務化広がる 市民は困惑も(11/12)

    2021年11月12日

    ロシアでは新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、ワクチンの接種を促そうと、各地で接種証明の提示を義務づける動きが広がっていますが、市民の間では日常生活に支障が出るなどと困惑する声が上がっています。

    ロシアでは自国製のワクチンへの不信感から、接種を済ませた人の数が伸び悩んでいることもあり、政府の発表によりますと、新たな感染者の数は連日およそ4万人に上るなど感染に歯止めがかかっていません。

    このため10月、プーチン大統領がワクチン接種を進める対策を強化するよう各地の知事らに指示したことを受けて、ロシア各地では飲食店や商業施設などを利用する際、接種証明の提示を義務づける動きが広がっています。

    このうち、ロシア極東のウラジオストクでは、11月10日から接種証明として発行されるQRコードの提示を義務づける対象の施設が、飲食店などからホテルや商業施設などにも拡大され、地元政府の担当者たちが巡回し実施状況を確認していました。

    これに対して市民の間からは、日常生活に支障が出るなどと困惑する声が上がっていて、28歳の男性は「QRコードがないと何もできなくなる」と話していたほか、衣料品店の店員は「皆がQRコードを持っているわけではありません。冬物の新作が入荷したのに売れ残っています」と話していました。

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    ドイツ コロナ新規感染者5万人超 ワクチン未接種者の規制強化(11/12)

    2021年11月12日

    ドイツでは新型コロナウイルスの新規感染者が5万人を超えて一日の感染者数としてはこれまでで最も多くなり、ワクチンを接種していない人に対する規制を強化する動きが出ています。

    ドイツで感染症対策に当たる政府の研究機関は11月11日、新規感染者がこれまでで最も多い5万196人に上ったと発表しました。感染による死者は235人となっています。

    こうした中、東部ザクセン州は今週から屋内の飲食店を利用できる人をワクチンの接種を終えた人と感染後に回復した人に限るなど規制を強化したほか、首都ベルリンでも同様の規制が15日から始まります。

    さらに連邦議会では職場に出勤できる対象をワクチンの接種を終えた人と感染後に回復した人、それに検査で陰性が証明された人だけとする法案が審議され、近く可決される見通しです。

    感染拡大の背景としてはワクチンの接種率が人口の7割弱で頭打ちになっていることや、寒さのため屋内に人が集まるようになっていることなどが指摘されています。

    ドイツでは2021年9月の連邦議会選挙のあと連立交渉が続けられ、12月にもメルケル首相に代わる新しい首相のもと次の政権が発足するという見方が出ていますが、メルケル首相は11月10日「新型コロナウイルスは連立交渉をしていることなど配慮してくれない。国家全体として再び懸命に努力する必要がある」と述べ、対応を急ぐ考えを示しています。

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    フランスでワクチンの追加接種の対象を拡大へ 感染再拡大で(11/10)

    2021年11月10日

    フランスのマクロン大統領は、新型コロナウイルスの感染の再拡大を抑えるため、ワクチンの追加接種の対象を、65歳以上の人などから50歳以上に広げる方針を示し、ヨーロッパで追加接種を加速する動きが相次いでいます。

    フランスでは、1日当たりの新型コロナウイルスの新規感染者が11月に入って1万人を超える日もあるなど、10月中旬以降、増加傾向が続いています。

    こうした中、マクロン大統領は11月9日、テレビ演説を行い、65歳以上の人や重症化リスクの高い人に対して行っているワクチンの追加接種について、12月12月から50歳以上に対象を広げる方針を示しました。

    また、すでに対象になっている65歳以上の人などのうち、追加接種を済ませたのは40%余りにとどまっていることから、12月15日以降、飲食店や映画館などを利用する際には、追加接種の証明の提示を求めるとしています。

    マクロン大統領は「感染が再び広がる中で、私たちは警戒をさらに強めなければならない。普通に生活できるようワクチンを接種してほしい」と述べて、国民に理解を求めました。

    新型コロナウイルスのワクチンの追加接種をめぐって、ヨーロッパでは、イタリアが接種完了から6か月以上たったすべての人に対して行っているほか、ドイツも先週、同様の方針を打ち出すなど、感染の再拡大を抑えるため、追加接種を加速する動きが相次いでいます。

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    イギリスで医療関係者のワクチン接種義務化へ 2022年4月から(11/10)

    2021年11月10日

    イギリス政府は、医療機関で働く医師や看護師などに対し、2022年4月から新型コロナウイルスのワクチンの接種を義務づける方針を明らかにしました。

    医療関係者からは、現場を離れる人が増えて医療体制に影響を及ぼすのではないかという懸念の声が出ています。

    イギリスのジャビド保健相は11月9日、人口の大部分を占めるイングランドにある、国が運営する医療機関で働く医師や看護師などに対し、2022年4月から原則として新型コロナウイルスのワクチンの接種を義務づける方針を明らかにしました。

    イギリスでは1日あたりの新規感染者が3万人を超えるなど、依然として感染が拡大していて、ジャビド保健相は、患者だけでなく患者と直接接触する医療従事者も守る必要があるとしています。

    国が運営する医療機関で働くスタッフのうち、これまでにおよそ90%が2回のワクチン接種を終えた一方、接種を完了していないとみられる人が10万人あまりに上るということです。

    医療関係者からはワクチン接種の義務化によって現場を離れる人が増え、人手不足が問題となっているイギリスの医療体制に深刻な影響を及ぼすのではないかという懸念の声が出ています。

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    米 南部の州 企業のワクチン接種義務化 一時的な差し止め命令(11/7)

    2021年11月7日

    アメリカのバイデン政権が、企業に対し従業員の新型コロナウイルスワクチンの接種を義務化することについて、南部の州の裁判所は「憲法上、重大な問題がある」として一時的に差し止める命令を出しました。

    アメリカのバイデン政権は、2022年1月から従業員が100人以上の企業を対象に、ワクチン接種か少なくとも週に1回の検査を従業員に行うよう義務づけますが、これに対して野党・共和党の知事や司法長官がいる全米の半数を超える州が、憲法に違反するとして、差し止めなどを求める訴えを相次いで起こしています。

    このうち、南部テキサス州やルイジアナ州などを管轄する裁判所は11月6日、義務化を一時的に差し止める命令を出しました。

    理由について裁判所は「憲法上、重大な問題がある」などとしていて、バイデン政権に対して11月8日までに今回の命令に対する回答を求めています。

    アメリカでは、すでに、自治体や企業が独自に働く人にワクチン接種を義務化する動きも出ていますが、個人の自由を制限するなどとして反対意見も根強くあり、バイデン政権による対応をめぐっても論争が起きています。

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    欧州などの一部でワクチン接種遅れ WHO“あらゆる取り組みを”(11/5)

    2021年11月5日

    WHO=世界保健機関は、ヨーロッパや中央アジアの一部の国で新型コロナウイルスのワクチンの接種が遅れていて、このままの状況が続けば2022年2月までにさらに50万人が犠牲になるおそれがあるとして、ワクチン接種を加速させるよう呼びかけています。

    WHOヨーロッパ地域事務局は11月4日、管轄するヨーロッパとロシア、中央アジアなど53か国で先週確認された感染者の数は6%、死者の数は12%、いずれも前の週よりも増加したと発表しました。

    WHOヨーロッパ地域事務局のクルーゲ事務局長は、管轄する地域について「再びパンデミックの中心地になった」と述べ、強い懸念を示しました。

    これらの地域ではワクチンの接種率が高い国がある一方、地域全体で接種を終えた人の割合は人口の47%となっていて、特にバルト諸国や東ヨーロッパの国々などで低い水準となっています。

    WHOは、このままの感染状況が続けば2022年2月までにさらに50万人が犠牲になるおそれがあるとして、各国に対してワクチン接種のペースを加速させるためあらゆる取り組みを行うよう呼びかけています。

    ドイツ 1日の新規感染者数が最多に

    ドイツで感染症対策にあたる政府の研究機関は11月4日、ドイツ国内の新型コロナウイルスの新規感染者が3万3949人に上ったと発表し、2020年春に感染が拡大して以降、1日の感染者数としては最も多くなりました。

    ドイツでワクチンの接種を終えた人の割合は人口の66.9%で、ワクチンの接種に消極的な人もいて、このところ接種率が伸び悩んでいます。

    感染が再び拡大する中、集中治療室で手当てを受ける患者も多くなっていて、シュパーン保健相が「第4波が本格的に到来した」と述べるなど、ドイツ政府は危機感を強めています。

    ロシア 1日の死者が最多に

    ロシアでは、新型コロナウイルスの1日あたりの感染者の数が、政府の発表でこのところおよそ4万人に上っているうえ、11月4日には1日の死者がこれまでで最も多い1195人となりました。

    ロシア政府によりますと、子どもが感染して亡くなるケースも増えているほか、一部の地方都市では病床の使用率が90%以上になるなど医療体制のひっ迫が伝えられているということで、政府内で危機感が広がっています。

    ロシアでは新型ウイルスの感染拡大を防ぐため、11月7日までを企業などの休業日に定めていて、プーチン大統領は人口の3割程度にとどまっているワクチンの接種を国民に強く呼びかけています。

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    WHO インドの会社開発のワクチンをリスト追加 途上国分配期待(11/4)

    2021年11月4日

    WHO=世界保健機関は、インドの製薬会社が開発した新型コロナウイルスのワクチンを緊急使用のリストに加え、今後、途上国などへの分配が加速することが期待されます。

    WHOは11月3日、インドの製薬会社バーラト・バイオテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、有効性と安全性が確認できたとして、緊急使用のリストに加えたと発表しました。

    2回目の接種から2週間が経過すれば、重症化のリスクを78%防ぐ効果があるほか、通常の冷蔵庫で保存できることから、途上国などでの分配に適しているとしています。

    緊急使用のリストに加えられたことで、WHOなどが主導する国際的な分配の枠組み「COVAXファシリティ」を通じて各国に分配できることになり、途上国などへの分配が加速することが期待されます。

    COVAXでは当初、2021年内におよそ20億回分のワクチンを分配する計画でしたが、感染状況の悪化や先進国からの寄付が滞っていることなどから、これまでに分配できたのはおよそ4億3500万回分にとどまっています。

    WHOはこれまでにファイザーとビオンテック、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、それに中国の製薬会社2社が開発したワクチンを緊急使用のリストに加えていました。

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    ファイザーのワクチン “5~11歳の子ども 接種を推奨” 米CDC(11/3)

    2021年11月3日

    アメリカCDC=疾病対策センターは11月2日、製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチンについて5歳から11歳の子どもについても接種を推奨すると発表しました。これを受けて、一部の地域では、早速、子どもへの接種が始まっています。

    CDCの専門家の委員会は11月2日、ファイザーの新型コロナウイルスワクチンの5歳から11歳への接種について議論し、ワクチン接種による利益は副反応などのリスクを上回るとして、全会一致で推奨する意見をまとめました。

    これを受けてCDCのワレンスキー所長は、5歳から11歳に対しての接種を正式に推奨すると発表しました。

    ワレンスキー所長は「新型コロナウイルスとの闘いにおける重要な一歩だ。今回の決定によっておよそ2800万人の子どもが接種を受けることができるようになる。ワクチンについて質問のある親は、小児科医や学校の看護師などに相談し子どもにとってのワクチンの重要性について知ってほしい」として、接種を検討するよう呼びかけました。

    アメリカ政府はワクチンの接種が速やかに始められるよう各地の医療機関や薬局などに出荷を始めていて、一部の医療機関では早速、接種が始まっています。

    アメリカ政府は、全米に供給が行き渡り5歳から11歳への接種が本格化するのは11月8日以降という見通しを示しています。

    専門家「選択肢できるのは喜ばしい 全員接種するかは検討必要」

    5歳から11歳の子どもに対する新型コロナウイルスのワクチン接種について、小児科の医師でワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「これまでマスクを着用することや3密を避けるしか対策がなかったが、選択肢ができるので、それ自体は喜ばしいことだと思う」と話しています。

    中山特任教授は子どもが接種するメリットとして▽自分自身を守ること、▽周囲の友達などに感染を広げないこと、そして▽一緒に住む祖父母など、高齢者を守ることなどが挙げられるとしています。

    そのうえで「今後増えていくのは学校や習い事での子どもたちどうしの感染だと考えられる。教員など、大人がワクチンを接種する必要があるのはもちろんのこと、子どもたち自身も接種が必要になってくる。今の日本は感染状況が落ち着いているが、感染の第6波に備えた準備が必要だ」と指摘しました。

    一方で、子どもへの接種の進め方については「基礎疾患があって感染した場合に重症化しやすい子どもたちには接種を推奨すべきだと思うが、全員に接種すべきかについては検討が必要だ。感染を抑えるといったメリットと同時に、接種による副反応も避けることはできないので、メリットとデメリットをよく考えて、接種を進めていくべきだと思う」と述べました。

    また中山特任教授は、ファイザーやモデルナのワクチンを接種したあと特に若い男性でごくまれに報告されている心筋炎について「ものすごく重篤な疾患だと思う人もいるかもしれないが、実際に報告されている心筋炎は一過性のもので、入院した場合でも特に治療することなく1日か2日で治っているということなので、症状としてはそれほど重いものではないと理解してよいだろう」と話しています。

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    ワクチン接種義務化のNY 未接種の市職員約9000人が休職扱い(11/2)

    2021年11月2日

    アメリカ ニューヨークでは、新型コロナウイルスのワクチンを一度も接種していない市の職員、およそ9000人が休職扱いとなっていて、こうした状況が長期化した場合、市民生活に影響が出ることも懸念されています。

    ニューヨーク市では、すでに接種を義務化している医療従事者や教員などを除いた、およそ16万人の市の職員に対し、10月29日までに新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも1回接種するよう義務づけ、期限までに接種しなかった職員については、11月から無給の休職扱いとしています。

    これについて、デブラシオ市長は1日の記者会見で、無給の休職扱いになった職員が、およそ9000人に上ったことを明らかにしました。

    義務化をめぐっては、一時差し止めや期限の延長を求める大規模なデモが起きるなど反対意見も根強く、ABCテレビによりますと、11月1日朝には消防職員およそ2300人が病気を理由に欠勤しましたが、その多くが抗議の意思を示すためだったとみられています。

    デブラシオ市長は「警察も消防も通常どおり機能している」と述べ、これまでのところ市民生活への影響は限定的だと強調していますが、義務化に反対する消防職員の組合は「市民の安全が脅かされかねない」としていて、こうした状況が長期化した場合、市民生活に影響が出ることも懸念されています。

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    米政府 5歳から11歳へのワクチン接種 本格開始へ準備(11/2)

    2021年11月2日

    アメリカ政府の新型コロナウイルス対応チームは11月1日、CDC=疾病対策センターが製薬大手ファイザーのワクチン接種を5歳から11歳にも推奨した場合、11月8日から本格的に接種が開始できるよう、出荷の準備を進めていると明らかにしました。

    ファイザーの新型コロナウイルスワクチンをめぐっては10月、アメリカFDA=食品医薬品局が接種対象を5歳から11歳にも拡大する許可を出したのを受けて、CDCが推奨に向けた手続きを進めています。

    アメリカ政府の新型コロナウイルス対応チームは11月1日、会見を開き、CDCが接種の推奨を決めた場合、11月8日から全米で本格的に接種が開始できるよう、ワクチンの出荷の準備を進めていると明らかにしました。

    アメリカ政府が公表している子ども向けワクチンの接種計画によりますと、5歳から11歳の子どもは接種するワクチンの量が異なることなどから、これまでとは違う容器で出荷され、接種に使う針も短いものが用意されるとしています。

    CDCのワレンスキー所長は科学的な検証を経て接種が始まると強調したうえで「子どもにワクチンを接種する前に、知りたいことがたくさんあると思うが、ぜひ質問を投げかけてほしい」と述べ、接種についての不安に積極的に対応する姿勢を示しました。

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    G20サミット ワクチン“2022年半ばまでに世界人口70%に接種へ”(10/31)

    2021年10月31日

    G20サミット=主要20か国の首脳会議がイタリアで始まり、1日目の議論で各国首脳は途上国で遅れている新型コロナウイルスのワクチン接種について、供給を加速して2022年半ばまでに世界人口の70%への接種を目指すことを確認しました。

    2年ぶりに対面形式となる2021年のG20サミットは、イタリアの首都ローマで10月30日から2日間の日程で始まりました。

    関係者によりますと、初日の世界経済の議論では、世界的なエネルギー価格の高騰やサプライチェーン=供給網の混乱の影響が懸念されるなか、多くの首脳から新型コロナからの経済の回復には各国の協調が必要だという認識が示されたということです。

    また、新型コロナからの真の復興には先進国と途上国の間でのワクチン接種の格差の解消が欠かせないという認識で一致し、途上国へのワクチン供給を加速するなどして、2022年半ばまでに世界の人口の70%への接種を目指すことを確認しました。

    さらに、企業誘致を目的とした法人税の引き下げ競争に歯止めをかけるため、最低税率を定めたり、巨大グローバル企業に適切に課税できるようにしたりする、新たな国際ルールについて、閣僚級での合意を首脳レベルで確認しました。

    サミットの2日目は、気候変動対策がテーマで、世界の二酸化炭素の排出量のおよそ8割を占めるG20が直後にイギリスで始まるCOP26に向けて前向きなメッセージを打ち出せるかが焦点です。

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    米FDA ファイザーワクチン “接種対象 5~11歳に拡大” 許可へ(10/27)

    2021年10月27日

    アメリカのFDA=食品医薬品局の委員会は10月26日、製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチンの接種対象を5歳から11歳にも広げる案について議論を行い「接種の利益はリスクを上回る」とする結論を賛成多数で可決しました。
    これを受けてFDAは近く、接種対象を拡大する許可を出すものと見られます。

    FDAは10月26日、専門家の委員会を開き、ファイザーの新型コロナウイルスワクチンについて、接種の対象を5歳から11歳の子どもにも広げる案について検討しました。

    この中で、ファイザーは2200人以上の子どもを対象にした臨床試験の結果、新型コロナウイルスの感染症を防ぐ有効性は90.7%と高く、安全性にも懸念は示されなかったと説明しました。

    またFDAは、この年齢層について、さまざまな想定を分析した結果として「感染によって入院するリスクのほうが、ワクチン接種による副反応のリスクより高い」という見方を示しました。

    このあと委員会では、専門家による議論を踏まえて投票が行われ、委員の1人が棄権したほかは全員が「5歳から11歳に対するワクチンの接種は、利益がリスクを上回る」とする結論について賛成し、可決しました。

    これを受けて、FDAは近く、接種の対象を拡大する緊急使用の許可を出すものと見られ、その場合、CDC=疾病対策センターが別の専門家の委員会で検討したうえで、11月初めにも最終的に推奨するかどうかの判断を下すことになります。

    子どもの接種 リスクと利益は?

    ファイザーのワクチンを5歳から11歳の子どもに接種する場合、3週間の間隔をあけて2回の接種が必要なのはほかの年代と同じですが、1回の接種量は12歳以上の3分の1にあたる10マイクログラムとなっています。

    この年代の子どもは、新型コロナウイルスに感染しても比較的重症化しにくいとされていますが、全身の臓器や血管などに炎症が起きる症状が感染から数週間後に起きることも報告されていて、死亡するケースも出ています。

    10月26日に開かれた委員会で多くの専門家が指摘したのが、ワクチンを接種した若い男性でまれに発症するとされる、心臓やその周りに炎症が起きる「心筋炎」や「心膜炎」のリスクについてです。

    公表された資料によりますと、接種後の健康の変化を自主的に報告するシステムを通じて集計した男性の心筋炎などの件数は、ファイザーのワクチンの2回目の接種後で接種100万回当たり、
    ▽65歳以上で0.1件
    ▽50歳から64歳で0.3件だったのに対し
    ▽18歳から24歳で36.8件
    ▽16歳から17歳で69.1件
    ▽12歳から15歳で39.9件と比較的若い年代で多くなっています。

    一方、ファイザーが行った5歳から11歳の臨床試験では、これまでに心筋炎などの報告はないということですが、ワクチンと関連した心筋炎を見つけるには臨床試験の対象人数が少なすぎるとしています。

    FDAは、感染の拡大が深刻な状況や抑えられた状況、ワクチンの有効性が高い場合や低い場合など、6つのシナリオでこの年代について接種の利益とリスクを比較した結果、ほとんどのシナリオでワクチンの接種によって防ぐことができると予測される感染や入院の件数は、心筋炎による入院の件数などを上回り、接種による利益が明らかだとしています。

    さらに、5歳から11歳の子どもは1回のワクチン接種量がほかの年代の3分の1に抑えられることなどから、心筋炎を発症するリスクは12歳から15歳に比べて低くなると考えるのが合理的だとしています。

    官房副長官「有効性と安全性を確認するなど適切に対応」

    磯崎官房副長官は、記者会見で「12歳未満を対象としたワクチン接種については、ファイザー社より必要な薬事上の手続きがなされたときには、有効性と安全性を確認するなど、適切に対応していきたい」と述べました。

    専門家「接種には意義あるが慎重に」

    5歳から11歳の子どもに対する新型コロナウイルスのワクチン接種について、小児科の医師でワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「これまでは接種できるワクチンがなく、ワクチン以外の対策に頼っていたので、接種できるようになることは、新たな感染対策の1つができるという点で意義がある。実際に学校や塾などでクラスターが発生していて、感染すると周りの人にも感染させる可能性がある。ワクチン接種には個人を守ると同時に、生活する集団を守る役割がある」と指摘しました。

    その一方、子どもにも感染が広がったアメリカと感染者数が減っている日本の状況は異なるとしたうえで、日本での接種の進め方について「基礎疾患のある子どもたちは感染すると重症化するリスクが高く、ワクチン接種を進めたほうがいいと思うが、子どもは多くの場合軽症で、重篤になることは少ないため、全員にワクチンを接種すべきかどうかについては慎重に考えないといけない。性急に進めるのではなく、様子を見ながら進め、徐々に接種が拡大していくことを望んでいる」と述べました。

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    イタリアでワクチン接種進む 背景に「グリーンパス」(10/26)

    2021年10月26日

    イタリアでは、人口の70%を超える人がすでに新型コロナウイルスのワクチン接種を済ませ、ヨーロッパでも最も接種が進んでいる国のひとつです。

    背景には、ワクチンの接種や検査による陰性結果を記録した「グリーンパス」と呼ばれる証明が日常生活の多くの場面で必要になったことがあります。

    2021年8月からは、レストランや美術館、長距離の交通機関などを利用する場合に証明の提示が必須となったほか、9月1日からは、学校の教職員や大学生に証明の所持が義務づけられました。

    さらにイタリア政府は、10月15日から、すべての労働者に所持を義務づけ、その対象は2300万人にのぼります。

    イタリアは、2020年の春、ヨーロッパで最も早く感染が拡大し、長期間にわたって小売業や観光業を中心に経済が大きな打撃を受けました。

    政府としては、踏み込んだ措置によってワクチン接種を促すことで、次の感染拡大の波を防ぎ経済活動への影響を最小限に抑えるねらいがあります。

    イタリア各地にホームセンターを展開する企業は所持の義務化を受けて、出勤時間に入り口で証明を所持しているか確認していて、従業員がスマートフォン上のQRコードで証明を提示すると、担当者は専用のアプリで読み取って接種記録などを確認しています。

    この企業では、2020年、イタリアで感染が拡大した際に、全国120余りの店舗で休業や営業時間の制限を余儀なくされたほか、営業を再開してからも従業員に感染者が相次いで人手不足となるなど、売り上げにも大きく影響したということです。

    企業によりますと、証明の所持が義務づけられてから、従業員のワクチン接種率が上がったということです。

    この企業で「グリーンパス」を担当するピエルマルコ・テスタさんは「変異ウイルスによって今後、何が起きるか分かりません。こうした方法は日常的に実践することが難しいことでありませんし、職場での感染を抑え、安全性を高めるためにも役立ちます」と話していました。

    また、従業員の男性は「安全な環境で、同僚もみなワクチンを接種しているので、安心して働くことができます」と話していました。

    ECDC=ヨーロッパ疾病予防管理センターのまとめでは、イタリアの人口あたりの感染者数はスペインや地中海の島国マルタに続いて少なく、感染は抑えられてます。

    「グリーンパス」について、ローマで市民に聞いたところ「ワクチン接種を進めるためによい方法だ」などと、前向きに評価する声が多く聞かれました。

    G7のワクチン接種状況と接種証明などの対応

    G7=主要7か国では、ワクチンの接種状況と接種証明の提示などの対応が国によって異なっています。

    イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、ワクチンの接種を終えた人の人口に占める割合は、10月24日の時点で
    ▼カナダが73.56%と最も高く、
    ▼イタリアは70.8%、
    ▼日本は69.94%、
    ▼フランスは67.5%、
    ▼イギリスは66.77%
    ▼ドイツは65.64%、
    ▼アメリカは56.67%、となっています。

    各国の感染状況については、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと(10月23日の感染者数)、1日あたりの感染者数は
    ▼イギリスが4万5102人、
    ▼アメリカが2万6998人、
    ▼ドイツが1万3863人、
    ▼フランスが6357人、
    ▼イタリアが3905人、
    ▼カナダが1118人、となっています。

    各国では、ワクチン接種が進んだことや感染状況の改善に伴って、行動制限の緩和が進められています。

    このうち経済活動を維持しながら感染を抑制する取り組みとして広がっているのが、飲食店の入店時にワクチンの接種を終えた証明を提示するよう義務づける措置です。

    このうちフランスとイタリアでは、全国一律でレストランなど飲食店の入店時や長距離の交通機関を利用する場合などに、接種証明の提示が義務づけられています。

    ドイツは、全国一律での接種証明の提示の義務化は行われておらず、州によって対策は異なります。

    またカナダでも、一部の州で接種証明の提示を義務づけています。

    イギリスでは、スコットランドやウェールズでナイトクラブなどの入店時に接種証明の提示が必要ですが、イングランドでは接種証明の義務化は見送られています。

    アメリカでは、ニューヨーク市などで屋内の飲食店や劇場などの施設で接種証明の提示が義務づけられている一方、南部フロリダ州では飲食店などがワクチン接種の証明を求めること自体が禁止されるなど、地域によって対応が大きく異なっています。

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    米CDC モデルナとJ&Jコロナワクチン 追加接種の対象者を発表(10/22)

    2021年10月22日

    アメリカCDC=疾病対策センターは21日、モデルナとジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンについて、効果を高めるための追加接種の対象者を発表しました。

    CDCは10月21日、外部の専門家委員会がアメリカの製薬会社モデルナと製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンについて、効果を高めるための追加接種を推奨する結論をまとめたのを受けて、対象者を発表しました。

    それによりますと、モデルナのワクチンの追加接種の対象となるのは、すでに追加接種が始まっているファイザーのワクチンと同じく、65歳以上の人のほか、18歳以上で重症化リスクの高い人や、感染リスクの高い職場で働いている人などで、2回目の接種のあと6か月たってから3回目の接種が可能になるとしています。

    一方、1回接種するタイプのジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンについては、接種から2か月たった18歳以上の人すべてが2回目の追加接種の対象となっています。

    このほか、最初に接種したワクチンと異なる会社のワクチンを追加で接種することも認めています。

    CDCのワレンスキー所長は声明で「今回の推奨は、新型コロナウイルスから可能な限り多くの人を守るための取り組みの1つだ」として、追加接種を呼びかけました。

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    ファイザー ワクチン3回目接種 有効性“95.6%” 臨床試験結果(10/22)

    2021年10月22日

    アメリカの製薬大手ファイザーは、新型コロナウイルスワクチンの追加の接種の効果を確かめる臨床試験の結果、発症を防ぐ有効性は95.6%だったと明らかにしました。

    ファイザーは、接種から時間がたつにつれワクチンの効果が低下するとして3回目の接種によって効果が再び高まるかどうかを確かめる臨床試験を行っていて、10月21日にその結果を公表しました。

    臨床試験では、およそ1万人を半数に分け、3回目の接種としてワクチンを接種したグループと、プラセボと呼ばれる偽の薬を接種したグループで新型コロナウイルスの感染症を発症した人の数を比べました。

    その結果、接種から7日後以降に新型コロナウイルスの感染症を発症したのは、ワクチンを接種したグループが5例だったのに対し、プラセボを接種したグループでは109例でした。

    このためファイザーは、3回目の接種による発症を防ぐ有効性は95.6%で「2回目の接種を終えたあとの水準に戻すことができた」としています。

    アメリカでは、9月から65歳以上の人や、重症化リスクの高い人を対象にファイザーのワクチンの3回目の接種が始まっているほか、モデルナとジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンに関しても近くCDC=疾病対策センターが追加の接種についての最終的な判断を示す見通しです。

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    中程度から重い免疫不全の人 3回接種標準化すべき WHO諮問委(10/12)

    2021年10月12日

    WHO=世界保健機関の諮問委員会は、ファイザーやモデルナなどの新型コロナウイルスワクチンについて、中程度から重い免疫不全の人たちを対象に3回の接種を標準化すべきだという見解を発表し、今後、さらに対象を広げるべきか検討していくとしています。

    WHOに助言する国際的な諮問委員会は10月11日、記者会見を開き、クラビオト委員長は、ファイザーやモデルナ、アストラゼネカなどの新型コロナウイルスワクチンについて、中程度から重い免疫不全の人たちは、これまでの2回の接種では十分な効果が得られず、重症化するリスクが高いとして3回の接種を標準化すべきだと述べました。

    また、中国の国有の製薬会社シノファームと、製薬会社シノバックのワクチンについては「調査したすべての証拠が、3回目の接種の必要性を示している」と述べ、中程度から重い免疫不全の人たちだけでなく、60歳以上のすべての人に3回接種することを標準化すべきだとしています。

    諮問委員会は今後、ファイザーやシノファームなどのワクチンについて、さらに対象を広げて追加の接種を勧めるべきか検討していくことにしています。

    新型コロナウイルスのワクチンは先進国を中心に3回目の接種が進む一方、WHOは10月7日時点でアフリカで接種を完了した人が5%に満たないとして、各国に対して、少なくとも年末までは待つよう呼びかけていて、供給量をいかに確保していくかが課題になっています。

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    北欧 若者のモデルナワクチン接種を中断 心筋炎などのおそれ(10/8)

    2021年10月8日

    北欧のスウェーデンやフィンランドなどは若者がモデルナの新型コロナウイルスワクチンの接種を受けたあと、ごくまれに心臓の筋肉などに炎症が起きるおそれがあるため、予防的な措置として若い世代への接種を中断すると発表しました。

    スウェーデンの保健当局は10月6日、若者がモデルナの新型コロナワクチンの接種を受けたあと、心臓の筋肉に炎症が起きる「心筋炎」や心臓を包む膜に炎症が起きる「心膜炎」のような副反応がごくまれに発生するおそれがあるとして、30歳以下の人への接種を当面、中断すると発表しました。

    接種によって影響を受けるリスクは非常に小さく、予防的な措置だと強調しています。

    今後はこの世代に対し、ファイザーのワクチンを接種していくということです。

    また、北欧のほかの国でも同様の動きが出ていて
    ▽デンマークは今後18歳未満への接種はファイザーに一本化するほか
    ▽フィンランドも30歳未満の男性へのモデルナワクチンの接種を中断することを明らかにしました。

    堀内ワクチン相「審議会では重大な懸念認められないと評価」

    堀内ワクチン接種担当大臣は、閣議のあとの記者会見で「厚生労働省の審議会の議論では、現時点で、新型コロナウイルスによるリスクと比較して、接種によるベネフィットが上回ると考えてよく、若年男性も含め、接種体制に直ちに影響を与える程度の重大な懸念は認められないと評価されている」と述べました。

    そのうえで「ワクチン接種に伴う副反応疑いの報告の状況を引き続き注視していくとともに、必要な情報発信をしていきたい」と述べました。

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    ファイザー ワクチン対象 5歳から11歳も許可申請(10/8)

    2021年10月8日

    アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックは、新たに5歳から11歳の子どもも新型コロナウイルスワクチンの接種の対象とするよう、アメリカのFDA=食品医薬品局に申請したと発表しました。

    ファイザーなどが開発したワクチンについて、アメリカでは16歳以上は正式に承認され、12歳から15歳には緊急使用の許可が出されていて、それより下の子どもも使用できるように臨床試験が行われています。

    ファイザーなどは10月7日、5歳から11歳の子どもも緊急使用の許可の対象に含めるようFDA=食品医薬品局に申請したと発表しました。

    ファイザーが発表した臨床試験の結果によりますと、ワクチンの成分の量を減らし、通常の3分の1にあたる10マイクログラムを21日間の間隔をあけて2回、接種した結果、2回目の接種から1か月後の中和抗体の値は、16歳から25歳のグループでみられたのと同じ程度に増加したということです。

    また、副反応も、16歳から25歳が対象となった臨床試験でみられたものとおおむね同様だったとしています。

    申請を受けて、FDAやCDC=疾病対策センターは今後、専門家の委員会を開いたうえで最終的な判断をすることになります。

    ファイザーは「感染する子どもの数が高い水準となるなか、今回の使用許可の申請は感染対策の重要な一歩だ」としています。

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    米ユナイテッド航空 ワクチン接種拒んだ社員593人を解雇へ(9/30)

    2021年9月30日

    アメリカの航空大手、ユナイテッド航空は、新型コロナウイルスのワクチン接種を義務づけたアメリカ国内の社員のうち、接種を拒んだ600人近くを解雇する手続きに入りました。

    ユナイテッド航空は8月、アメリカ国内を拠点とするすべての社員およそ6万7000人に対し、ワクチンを接種して証明書を提出するよう求めました。

    その結果、会社によりますと、健康上や宗教上の理由から免除を申請している社員を除き、593人の社員が接種を拒んだということで、会社はこの593人を解雇する手続きに入ったとしています。

    スコット・カービーCEOらが社員に宛てた文書では「接種を受けないことを決めた1%未満の社員については、残念ながら会社の方針で解雇の手続きを開始する。とても難しい判断だったが、私たちのチームの安全を守ることが常に最優先だ」と説明しています。

    航空業界では、香港に拠点をおくキャセイパシフィック航空も、9月、ワクチンを接種していない一部の乗務員の解雇を決めたと明らかにしています。

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    バイデン大統領 ワクチン3回目接種を公開 国民にも有効性訴え(9/28)

    2021年9月28日

    アメリカで製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種が始まったことを受けて、バイデン大統領はみずから接種する様子を報道陣に公開し、ワクチンの有効性を訴えて改めて国民に接種を強く促しました。

    アメリカでは、9月24日から製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチンについて、2回目の接種から少なくとも6か月がたった65歳以上の人や、18歳以上で重症化リスクが高い人、それに感染リスクが高い職場で働く医療従事者などを対象に3回目の接種が公式に始まりました。

    これを受けてバイデン大統領は9月27日、みずから3回目の接種の様子を報道陣に公開しました。

    バイデン大統領は「ワクチン接種を終えていれば新型コロナウイルスに感染したとしても重症化を防ぐことができるうえ、追加の接種でその状態を維持できる」と述べて、その有効性を訴えました。

    一方で、アメリカでは18歳以上の23%がまだ1回もワクチンを接種していないと指摘し「これらの人たちが国に深刻な損害をもたらしている。追加の接種は重要だが、何よりも重要なのはより多くの人が接種することだ。パンデミックは接種していない人たちによって起きている」と述べて、改めて国民に接種を強く促しました。

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    シンガポール ワクチン接種80%超も 感染増加で再び規制を強化(9/28)

    2021年9月28日

    新型コロナウイルスのワクチン接種を終えた人が人口の80%を超えるシンガポールでは、政府が行動制限の緩和をすすめる中、感染者が増加し、9月27日から再び規制を強化しました。

    シンガポールでは、新型コロナウイルスのワクチン接種を終えた人が人口の82%と世界的に高い水準となり、政府が、8月から行動制限の緩和をすすめてきました。

    しかし、その後、感染力の強い変異ウイルスの「デルタ株」が広がり、9月26日、一日の感染者数としてはこれまでで最も多い1939人の感染が確認されました。

    シンガポール政府は「過去28日の感染者の98%が軽症か無症状だ」として、ワクチン接種の効果は出ているとしていますが、今後、医療がひっ迫するような事態を防ぐため、9月27日から、飲食店での食事は1組当たり2人までに制限したほか、企業は原則在宅勤務とするなど再び規制を強化しました。

    一方、新たな感染者数が連日1万人を超えるタイでは、政府が9月27日、全土に出されている非常事態宣言を、2021年11月末まで延長するとともに、首都バンコクなどで、午後10時から午前4時まで夜間の外出を禁止する措置を継続する方針を明らかにしました。

    タイでは、ワクチンを2回接種した人が人口の26%にとどまっていて、政府が接種を急ぐとともに、警戒を強めています。

    感染拡大のタイに日本政府が酸素濃縮器を提供

    タイでも、感染力が強い「デルタ株」が広がっていて、この2か月あまり、1日の死者の数が100人から300人の日が続くなど深刻な状況となっています。

    このため、日本政府は、重症化した人の治療に使われる酸素濃縮器868台を緊急に航空機で輸送し、9月27日、タイ側に引き渡しました。

    日本政府は、これまでにおよそ165万回分のアストラゼネカのワクチンも無償でタイに提供していて、感染拡大の危機に直面しているタイへの支援を強化しています。

    タイのタクシー会社 稼働していない車を使い野菜を栽培

    タイでは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、夜間の外出や飲食店での酒の提供を禁止するなどの規制が続いていて、飲食業や観光業などに影響が広がっています。

    首都バンコクのタクシー会社では、9月から、稼働していないタクシーおよそ300台の屋根やボンネットで、従業員が、なすやとうがらしなどの野菜の栽培を始めました。

    収穫した野菜は、収入の減った運転手や従業員に配られるということです。

    タクシー会社の代表のターパゴーン・アサワルークンさんは「乗客がいないため、車を止めておかざるを得ず、多額の損害が出ている。政府には、少しずつ規制を解除し、ビジネスが続けられるようにしてほしい」と話していました。

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    米FDA ファイザーワクチンの3回目接種を許可 65歳以上など対象(9/23)

    2021年9月23日

    アメリカFDA=食品医薬品局は、9月22日、製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチンについて、65歳以上の人と、18歳以上で重症化リスクの高い人などを対象に、効果を高めるための追加の接種を行うことを許可しました。

    アメリカ政府は8月、新型コロナウイルスワクチンの効果が、時間がたつにつれて低下する可能性が高いとして、接種を終えてから一定の期間がたった人について、追加の接種を行う方針を示しています。

    9月17日、FDAの専門家委員会はファイザーのワクチンについて、65歳以上の人や、重症化リスクの高い人に対しては接種の利益がリスクを上回るとして、追加となる3回目の接種を可能にすることを推奨しました。

    この専門家委員会の推奨を受けて、FDAは9月22日、65歳以上の人と、18歳以上で重症化リスクの高い人、さらに感染リスクの高い職場で働く人なども対象に含めたうえで、3回目の接種を許可すると発表しました。

    追加の接種は、2回目の接種が終わってから少なくとも6か月たった人が受けることができます。

    ファイザーのワクチンは、16歳以上の人に対し2回の接種を行うことが正式に承認されていますが、3回目の接種についてはアメリカ政府が宣言した「公衆衛生上の緊急事態」の間にかぎり使用を認める「緊急使用の許可」に基づいて行われることになります。

    追加接種をめぐっては、アメリカの製薬会社モデルナも許可を申請していて、今後、FDAなどが検討することになっています。

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    米製薬大手J&J 1回接種型ワクチン “追加接種で高い有効性”(9/22)

    2021年9月22日

    アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンは9月21日、1回接種するタイプの新型コロナウイルスワクチンについて、追加の接種をすることで重症化などを防ぐ有効性が高まったとする臨床試験の結果を発表しました。

    ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンは2021年2月にアメリカのFDA=食品医薬品局が緊急使用の許可を出し、これまでにアメリカ国内で1480万回以上が接種されています。

    このワクチンの規定の接種回数は1回となっていますが、追加の接種によって効果が高まるかどうか臨床試験が行われていました。

    9月21日に会社側が発表した臨床試験の結果では、1回目の接種から8週間の間隔をあけて2回目を接種した場合、中程度から重い症状を防ぐ有効性は75%だったということです。

    抗体の値も1回目の接種後と比べて4倍から6倍に増えたということです。

    このほか1回目の接種からおよそ6か月後に2回目を接種した場合、抗体の値は12倍にまで増加したということです。

    ジョンソン・エンド・ジョンソンは今後、臨床試験のすべてのデータを公表するとしています。

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    ファイザー 5~11歳もワクチン接種対象に拡大 近く申請へ(9/21)

    2021年9月21日

    アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックは、今は新型コロナウイルスワクチンの接種の対象になっていない、5歳から11歳の子どもについても、ワクチン接種による中和抗体の増加や安全性が確認できたとして、この年齢層の子どもにも接種対象を拡大するよう、近く、アメリカのFDA=食品医薬品局に申請すると発表しました。

    ファイザーなどが開発したワクチンは、アメリカで16歳以上について正式に承認され、12歳から15歳に対しては緊急使用の許可が出されていますが、12歳未満の子どもも使用できるように、臨床試験が行われています。

    ファイザーなどは9月20日、5歳から11歳の2200人余りを対象にした臨床試験の結果、中和抗体の増加と安全性が確認できたと発表しました。

    それによりますと、臨床試験では、ワクチンの成分の量を減らし、通常の3分の1にあたる10マイクログラムを21日間の間隔をあけて2回接種した結果、2回目の接種から1か月後の中和抗体の値は、16歳から25歳のグループでみられたのと同じ程度に増加したということです。

    また副反応も、16歳から25歳が対象となった臨床試験でみられたものとおおむね同様だったとしています。

    ファイザーは、アメリカのFDAにこれらのデータを提出し、近く、5歳から11歳の子どもにも接種対象を拡大するよう申請するとしています。

    また、EU=ヨーロッパ連合をはじめ、各国の規制当局ともデータを共有するとしています。

    アメリカ小児科学会によりますと、アメリカで9月9日までの1週間に新型コロナウイルスに感染した子どもの数は、少なくとも24万3000人余りと、過去最も多い水準が続いています。

    また、CDC=疾病対策センターによりますと、変異ウイルスのデルタ株の拡大に伴い、入院する子どもの数が増えているというデータも報告されています。

    多くの地域で学校での対面授業が再開される中、ワクチンが接種できる年齢に達していない子どもを、どのように感染から守るかが課題となっています。

    加藤官房長官「有効性や安全性の適切な確認行う」

    加藤官房長官は、閣議のあとの記者会見で「対象を5歳から11歳に拡大する手続きがファイザー社からなされれば、医薬品医療機器総合機構において、有効性や安全性の適切な確認作業を行い、確認された場合には、臨時の接種の枠組みの対象を引き下げるかについて、厚生労働省の審議会で議論する手続きを経ていくことになる」と述べました。

    そのうえで「学校も再開する中で、子どもの感染に大変な関心があるが、一方でワクチンは有効性と安全性をしっかり確認していく必要がある。引き続き、厚生労働省で情報収集をしっかり行いながら、適切な対応を図っていきたい」と述べました。

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    イタリア 全労働者にワクチン接種証明などの所持義務づけへ(9/17)

    2021年9月17日

    イタリア政府は、新型コロナウイルスのワクチンの接種証明などの所持を、すべての労働者に義務づける方針を明らかにしました。対象は2300万人に上り、ワクチン接種を加速させるねらいがあります。

    イタリアのスペランツァ保健相らは9月16日夜に記者会見し、10月15日から、新型コロナウイルスのワクチン接種の証明や、検査による陰性証明の所持を、すべての労働者に義務づける法案を、近く議会に提出すると発表しました。

    対象は、公務員や民間企業の従業員、それに自営業者など合わせて2300万人に上り、所持していない場合は出勤停止の処分とし、悪質な場合は罰金も科すとしています。

    イタリアでは9月1日から学校の教職員や大学生に対してワクチン接種や陰性の証明を所持することが義務づけられているほか、レストランや美術館、長距離の交通機関などを利用する場合は、こうした証明の提示が義務づけられています。

    イタリアでこれまでにワクチン接種を完了したのは人口のおよそ68%で、スペランツァ保健相は会見で「すべての職場を安全にするとともに、ワクチン接種のキャンペーンを強力に進めるのがねらいだ」と述べ、ワクチン接種を加速させたいとの考えを示しました。

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    シンガポール 人口の80%ワクチン接種も感染者増加で3回目開始(9/15)

    2021年9月15日

    シンガポールでは、新型コロナウイルスのワクチンの接種を終えた人が、人口の80%を超えているものの、新たな感染者の増加傾向が続いていることから、60歳以上の人などを対象にした3回目のワクチン接種が始まりました。

    シンガポールでは、新型コロナのワクチンの接種が進み、接種を終えた人は、人口の81%と世界的にも高い水準になっています。

    しかし、感染力の強い変異ウイルス「デルタ株」が広がり、職場などで集団感染が発生していて、空港の検疫以外で見つかる、いわゆる市中感染者の1日当たりの数は、8月中旬ごろは50人以下でしたが、9月14日は832人と、増加傾向が続いています。

    このためシンガポール政府は、2回目を終えたあと、半年以上が経過している60歳以上の人などを対象にワクチンの3回目の接種、いわゆる「ブースター接種」を実施することを決め、9月15日から接種を始めました。

    シンガポール政府は「時間の経過とともに予想される免疫力の低下と結び付いて、高齢者は感染して重症化するリスクがあり、ワクチンによる保護効果を高いレベルに保つためにも、3回目の接種は必要だ」として、高齢者などに接種を呼びかけています。

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    イギリス 12~15歳の子どもにもワクチン1回接種へ(9/14)

    2021年9月14日

    イギリス政府は、新型コロナウイルスのワクチンについて、ロンドンのあるイングランドでは、来週から12歳から15歳の子どもも接種の対象とすることを、明らかにしました

    イギリスでは16歳以上には、ワクチンの接種が広く行われていますが、12歳から15歳については、接種は基礎疾患がある人など一部に限っていて、専門家の委員会も、この年代へのワクチン接種の恩恵は小さく、若い世代でまれに心筋炎の副反応が報告されたことなどから、接種を必ずしも推奨しないとしていました。

    これに対し、政府の首席医務官は9月13日、今後、冬にかけて感染が拡大し、学級閉鎖が相次ぐ事態を防ぐため、12歳から15歳の子どもについてもワクチンを1回接種すべきだとする見解を示し、イギリス政府はこの見解を受け入れることを明らかにしました。

    2回目の接種が必要かどうかは今後、判断するとしています。

    接種するのはファイザーのワクチンで、ロンドンのあるイングランドでは、すでに新しい学期が始まっている各学校で、来週から順次、接種を始めるということです。

    また、接種にあたっては保護者の同意を求めるとしています。

    ジャビド保健相は声明を発表し「接種を行うことで、若い人たちを感染から守るとともに、学校での感染を減少させ、生徒は学校で学び続けることができる」としています。

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    チリ 6歳以上の子どもにも中国製ワクチン接種開始(9/14)

    2021年9月14日

    南米のチリでは、感染力の強い変異ウイルスの影響で、新型コロナウイルスに感染する子どもが増えているとして、新たに6歳以上の子どもに対してワクチンの接種を始めました。

    南米のチリでは、中国製ワクチンを中心に接種がすすみ、18歳以上の接種率は80%を超えていて、2021年6月からは12歳以上の子どもに対しても接種を進めています。

    しかし、感染力の強い変異ウイルス「デルタ株」やコロンビアで最初に確認された「ミュー株」の影響で、このところ子どもの感染者が増えていることから、チリの保健当局は9月13日、6歳以上の子どもに対してもワクチンの接種を始めました。

    ワクチンは中国製のもので、チリの感染症対策の専門家は「中国で得られたデータから十分な安全性や効果が確認され、これまで国内でもほとんど問題が起きていない」としています。

    子どもへのワクチンの接種について南米では、ウルグアイも12歳以上に対してファイザー製ワクチンの接種を進めています。

    また、カリブ海のキューバでは先週から2歳以上の子どもに国産のワクチンの接種を始めています。

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    米NY ワクチン接種証明書の提示要求を義務化 違反は罰金に(9/14)

    2021年9月14日

    アメリカ・ニューヨークでは、飲食店や劇場などが利用客に対し、新型コロナウイルスのワクチン接種の証明書を提示するよう求めることが義務づけられ、違反した場合、罰金が科せられることになりました。

    罰金1000ドルから5000ドル

    ニューヨーク市では9月13日から、屋内の飲食店やスポーツジム、それに映画館や劇場、美術館といった施設に対し、12歳以上の利用客にワクチン接種の証明書の提示を求めることが義務づけられました。

    違反した場合、1000ドルから5000ドル、日本円でおよそ11万円から55万円の罰金が科せられます。

    また、証明書が提示できない利用客とは、合理的な対応について話し合うよう求めています。

    市内の老舗のステーキハウスでは、店員が訪れた客に接種を受けたことを証明するアプリの画面やカードの提示を求めていました。

    客の女性は「義務化はとてもいいことです。より安全だと感じられるので全米で義務化すべきだと思います」と話していました。

    店のマネージャーの男性は「義務化は最終的には命を救うことにつながるのでやるべきで、罰金も効果があると思います」と話していました。

    市民の間からは義務化は事実上、ワクチン接種の強制につながるなどとして反対の声もある中、ニューヨーク市としては義務化に踏み切ることで感染対策と経済の活性化を両立させたい考えです。

    ヨーロッパでは多くの国々が提示を義務づけ

    ヨーロッパでは、対象となる施設や罰則の有無などの違いはありますが、多くの国々が新型コロナウイルスのワクチン接種の証明や検査による陰性証明の提示を義務づけています。

    中でも、より多くの場所で証明の提示を求めている国のひとつがフランスです。フランスでは、2021年7月下旬から映画館や美術館などで、ワクチン接種の証明や検査による陰性証明の提示が義務づけられ、8月からは、飲食店をはじめ、飛行機や高速鉄道などの長距離の交通機関にも対象が拡大されました。

    ワクチン接種などの証明は、QRコードで発行され、スマートフォン上や印刷した紙で提示することで、速やかに確認できるようになっていて、EU=ヨーロッパ連合の加盟国などでも共通して利用できます。従わない場合の罰則もあり、証明を提示しなかったり、他人のものを使うなど不正を行ったりした客に対しては、少なくとも135ユーロ、日本円で1万7000円余りの罰金が科されます。

    また、確認を怠った施設側に対しては、最大で7日間の業務停止のほか、繰り返した場合には、1年の禁錮刑に加え、9000ユーロ、日本円でおよそ117万円の罰金が科される可能性があります。

    提示の義務化に対しては、事実上、接種の強要につながり個人の自由を奪うとして、導入前からフランス各地で抗議デモが起きるなど、強い反発も出ていますが、政府は、変異ウイルスによる感染拡大を抑えながら、飲食業や観光業などを回復させるためだとして理解を求めています。

    また、イタリアでも、フランスと同様に、飲食店や劇場、スポーツジムなど多くの人が集まる屋内の施設を対象に提示が義務づけられています。

    従わない場合は客と施設側の双方に少なくとも400ユーロ、日本円でおよそ5万2000円の罰金が科され、施設側が繰り返した場合は最大で10日間の業務停止が科される可能性があります。

    一方で、北欧のデンマークは、2021年4月からレストランなどを利用する際に、証明の提示を義務づけてきましたが、ワクチンの接種が進んでいることを理由に、9月10日から提示は必要なくなりました。

    また、イギリス政府は、ロンドンがあるイングランドで、9月末をめどに、ナイトクラブなど大勢の人々が集まる場所について証明の提示を義務づける方針を示していましたが、ワクチンを接種していない人に対する差別だ、などと反発する声も強まっていて、導入は見送られる見通しです。

    日本国内では基本的な考え方をまとめる

    社会経済活動の回復に向けて、日本政府は、ワクチンの「接種済証」などの利用について、基本的な考え方をまとめています。

    それによりますと、民間が提供するサービスなどでは幅広く活用が認められるとする一方、「接種済証」などを提示しない人に法外な料金を請求することなどは許されないとしています。

    また、就職や入学で接種を要件とすることや、接種を受けていないことで解雇や退職勧奨などを行うのは不当な差別的取り扱いにあたる可能性が高いなどとしています。

    一方、政府は、接種記録のQRコードをスマートフォンに表示できる専用のアプリを開発する方針で、マイナンバーカードを使って本人確認を行うことなどを検討しています。

    そして、年内にも、利用が可能になるように今後、自治体や企業から意見を聴くなどして、システムの構築を進めることにしています。

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    ブラジル 3回目のワクチン接種開始 「デルタ株」への対策急ぐ(9/7)

    2021年9月7日

    新型コロナウイルスに感染して亡くなった人が世界で2番目に多い、南米のブラジルで、3回目のワクチンの接種が始まり、ブラジル政府は国内で感染が広がる変異ウイルス「デルタ株」への対策を急いでいます。

    ブラジルで、感染力の強い新型コロナウイルスの変異ウイルス「デルタ株」の感染が広がる中、ブラジル政府は、2回のワクチン接種を完了している人に対して、3回目の接種を行うことを決め、9月6日、人口が最も多いサンパウロ州で接種が始まりました。

    中心都市のサンパウロ市内に設けられたドライブスルー形式の接種会場では、最初に対象となった90歳以上の人たちが次々に訪れて接種を受けていました。

    ブラジルでは、新型コロナウイルスの感染者が累計で2000万人を超え、死者は58万人余りと世界で2番目に多くなっています。

    当初はワクチンの確保が遅れていましたが、2021年6月ごろから供給が増え、これまでに2回接種した人は全人口のおよそ30%になっています。

    ブラジル政府は3回目の接種を進めるとともに、2回目を終えていない人に積極的な接種を呼びかけるなどして、経済の正常化に向けて対策を急いでいます。

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    「ワクチン3回接種が標準の可能性も」米ファウチ首席医療顧問(9/3)

    2021年9月3日

    アメリカ政府の首席医療顧問をつとめるファウチ博士は9月2日、新型コロナウイルスのワクチンの効果を長期にわたり高く維持する上で、現在、2回の接種が標準とされているワクチンについて、将来的に3回の接種が標準となる可能性があるとする見解を示しました。

    アメリカ政府は、新型コロナウイルスのワクチンについて、接種からの時間の経過や、変異ウイルスのデルタ株の拡大で効果が低下する懸念があるとして、2回の接種を終えてから一定の期間がたった人に対し、効果を高めるために3回目の接種を行う方針を示していて、規制当局の専門家委員会などで検討が進められています。

    これに関連して、アメリカ政府の首席医療顧問をつとめるファウチ博士は9月2日の会見で、「3回目の接種を開始したイスラエルでは、感染や重症化のリスクが大幅に下がるというデータが出ている」と述べ、追加接種は合理的な判断だと強調しました。

    そのうえで、現在、2回の接種が標準とされているワクチンについて「長期的に高い効果を維持するために3回の接種が標準となる可能性もある」との見解を示しました。

    ワクチンの追加接種はすでに一部の国で始まっていますが、WHO=世界保健機関は「世界的なワクチン供給に影響が出る」と実施を遅らせるよう求めているほか、EUの当局が「現状では明確な効果が示されておらず、一般の人に急いで行う必要はない」とするなど、実施をめぐってさまざまな議論が交わされています。

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    イスラエル 3回目ワクチン接種の対象を12歳以上に拡大(8/30)

    2021年8月30日

    イスラエル政府は新型コロナウイルスの感染者が増加する中、これまで30歳以上としてきた3回目のワクチン接種の対象を拡大し、12歳以上の人たちも含めると発表しました。ベネット首相は、重症化する患者の増加のペースが3回目の接種によって落ち着きつつあるとして、国民にさらなる接種を呼びかけています。

    イスラエルでは8月1日から、高齢者を中心に3回目のワクチン接種が始まり、2回の接種を終えた人の30%以上が3回目をすませました。

    そして、イスラエル政府は8月29日、これまで30歳以上としてきた3回目の接種の対象を拡大し、12歳以上の人たちも含めると発表しました。

    イスラエルでは、感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」の拡大に伴って、感染者や重症化する患者が増えています。

    しかし、連日増加していた1日当たりの重症化する患者の数は3回目のワクチン接種が進む中、この2週間は100人前後で推移しています。

    ベネット首相は8月29日の声明で「重症化する患者の増加のペースは落ち着きつつある」として3回目の接種による効果を強調し国民にさらなるワクチン接種を呼びかけています。

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    世界のワクチン接種回数 50億回に達するも 格差深刻に(8/25)

    2021年8月25日

    新型コロナウイルスのワクチンの接種回数が、世界で50億回に達したことがイギリス・オックスフォード大学の研究者などのまとめで分かりました。

    イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、世界全体の新型コロナウイルスのワクチンの接種回数は、具体的な内訳が確認できない国や地域を除いて、8月23日までに50億回に達したということです。

    ワクチンを少なくとも1回接種した人の割合は世界の人口の32.7%に上り、ワクチンの接種が完了した人の割合も世界の人口の24.6%となっています。

    また1日当たりの接種回数は3300万回以上に上っているということです。

    一方で、所得が低い国の間ではワクチンを少なくとも1回接種した人の割合は1.4%にとどまっているということで、ワクチンをめぐる格差が深刻になっています。

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    アメリカFDA ファイザーのワクチンを正式に承認(8/24)

    2021年8月24日

    アメリカFDA=食品医薬品局は8月23日、製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチンを、正式に承認しました。

    アメリカ政府の高官は、学校や企業などでのワクチンの義務化がさらに進むという見方を示しています。

    アメリカでは、ファイザーの新型コロナウイルスワクチンに対して、2020年12月「緊急使用の許可」が出され、すでに2億回以上が接種されています。

    このワクチンについてFDAは8月23日、ファイザーが提出したデータを審査した結果、正式に承認すると発表しました。

    FDAは、4万人以上を対象にした臨床試験の結果、新型コロナウイルスの感染症の発症を予防する高い効果と、安全性が確認されているとしています。

    承認の対象となるのは16歳以上で、12歳から15歳については引き続き緊急使用の許可にもとづく接種となっています。

    FDAは、今後も安全性の追跡調査を行うほか、世界的に広がる変異ウイルス「デルタ株」への効果についても検証していくとしています。

    アメリカ政府のマーシー医務総監は、ワクチンが正式に承認されることで、安全性に懸念を持っていた人の接種を後押しする効果や、学校や企業によるワクチン接種の義務化の動きが進むという見方を示していて、今後、接種のペースが加速するか注目されています。

    新型コロナウイルスのワクチンについては、アメリカの製薬会社モデルナも正式な承認を求める申請を行っていて、現在審査が行われています。

    バイデン大統領「直ちに接種を」

    これについてバイデン大統領は「ワクチンが正式に承認されないかぎりは接種しないとしていた人たちに告げたい。今がそのときであり、きょう直ちに接種してほしい。一刻もむだにしてはいけない」と述べて、ワクチンを接種していない人たちに対し、接種を呼びかけました。

    アメリカでは8月22日の時点で、人口の51.5%にあたる、およそ1億7080万人が接種を終えていて、バイデン政権は今回の正式承認を受けて接種率の向上に期待を示しています。

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    台湾の製薬会社開発のワクチン 現地で接種開始(8/23)

    2021年8月23日

    台湾当局は、台湾の製薬会社が開発した新型コロナウイルスワクチンの接種を開始し、蔡英文総統が率先して接種を受けて安全性と有効性をアピールしました。

    このワクチンは台湾の製薬会社「メディジェン・ワクチン・バイオロジクス」が開発した「組み換えたんぱくワクチン」というタイプのものです。

    台湾当局が7月、20歳以上の人を対象とした緊急使用を許可し8月23日、接種を始めました。

    最終段階の臨床試験前までのデータをもとに緊急使用が許可されたため、野党などから疑問や批判の声が出ていますが、蔡英文総統が率先して接種を受けて、その様子をSNSのライブ配信で公開し、安全性と有効性をアピールしました。

    台湾では先週末までにワクチンを1回打った人はおよそ40%、2回打った人はおよそ3%にとどまっていて、当局は海外からワクチンの調達を急ぐとともに、台湾製ワクチンの投入によって接種を加速したい考えです。

    一方、台湾では今のところ感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」は広がっておらず、海外から来た人などを除く域内での新規感染者数は今月に入ってから1桁に収まる日が多くなっています。

    このため台湾当局は8月24日以降、1か所に集まることができる人数の上限を、屋内では現在の50人から80人に、屋外では現在の100人から300人に、それぞれ緩和することにしています。

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    ワクチン追加接種の動き 世界で相次ぐ “デルタ株”感染拡大で(8/19)

    2021年8月19日

    世界各国で変異ウイルスの「デルタ株」の感染拡大が続く中、ワクチンの接種が進んでいるアメリカやヨーロッパ、それに中東の国などでワクチン接種が完了した人を対象に、追加の接種を行う動きが相次いでいます。

    【イスラエル】
    16歳以上の8割以上が2回のワクチン接種を終えているイスラエルでは、一時は1日の新規感染者が1桁にまで減りましたが、感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」の拡大に伴って、再び感染者が増えたため、8月から50歳以上の人を対象に3回目の接種を始めています。

    【イギリス】
    イギリスでは、北半球の冬を前に「ワクチンの効果を保つため」として、2021年9月から3回目となる追加の接種を始める計画を明らかにしています。

    対象となるのは、まず、
    ▽高齢者施設の入居者や、
    ▽70歳以上の高齢者、
    ▽医療従事者など感染や、重症化のリスクが高いとされる人たちで、
    その後、
    ▽50歳以上のすべての人や、
    ▽16歳から49歳までのうち、重症化のリスクが高いとされる人たちなどが予定されています。

    【アメリカ】
    アメリカは8月18日、ファイザーや、モデルナのワクチンの2回目の接種から8か月がたった人を対象に9月から3回目の接種を行う方針を示しました。

    その理由として、
    ▽ワクチン接種から時間がたつと、感染や発症を防ぐ効果が低下し、
    ▽中でもデルタ株に対して、そうした効果が低下するとみられること、
    ▽また、3回目の接種により、ウイルスの働きを抑える「中和抗体」の値が大きく上昇するという研究結果が得られていることなどをあげています。

    3回目の接種は、医療従事者や高齢者など、感染や重症化のリスクが高い人から始める見通しで、今後、接種の許可や推奨を行うFDA=食品医薬品局や、CDC=疾病対策センターの専門家の委員会で、最終的に追加接種を行うべきかどうか判断することにしています。

    【欧州】
    ドイツや、フランス、スウェーデンでも、2回のワクチン接種を終えた高齢者などを対象に秋以降、追加でワクチン接種を行うことを決めています。

    【南米・中東】
    南米のチリやウルグアイ、中東のバーレーンやアラブ首長国連邦でも、追加の接種を始めています。

    【WHO】
    こうした動きについて、WHO=世界保健機関は、発展途上国へのワクチンの供給が進んでいない中で、先進国が3回目の接種を始めると、ワクチン供給に影響が出るとして、9月末までは追加の接種を行わないよう求めていて、世界的な供給への懸念も議論となっています。

    追加接種の意義

    新型コロナウイルスワクチンの2回目の接種から8か月が経過した人を対象に、追加の接種を行う理由について、CDCのワレンスキー所長は、時間の経過とともにワクチンの効果が低下していく可能性をあげています。

    CDCによりますと、ニューヨーク州の保健当局がワクチン接種を完了した、およそ1000万人を対象に調べたところ、ワクチンが新型コロナウイルスの感染を防ぐ効果は、2021年5月上旬から7月中旬の間に91.7%から79.8%に低下したということです。

    また、ワレンスキー所長は、感染力の強い変異ウイルス「デルタ株」に対して、ワクチンの効果が低下している可能性を指摘しています。

    アメリカ政府の首席医療顧問をつとめるファウチ博士は、ワクチンの追加接種で得られる効果について、
    ▽ウイルスの働きを抑える中和抗体の値が上昇し、効果を持続させること、
    ▽これによって、デルタ株に対しても感染や発症を防ぐ効果が高まるとする見方を示し、追加接種の意義を強調しています。

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    米ニューヨーク ワクチン接種証明書 提示義務化へ移行期間に(8/18)

    2021年8月18日

    アメリカ・ニューヨーク市は飲食店などを利用する際に、新型コロナウイルスのワクチン接種の証明書の提示が義務化されるのを前に、提示が求められる移行期間に入りました。

    感染対策を強化することで経済活動の再開を進める狙いです。

    新たな感染者が増加傾向にあるニューヨーク市では9月13日から屋内の飲食店やスポーツジム、それに映画館や劇場、美術館といった施設で12歳以上の利用者を対象にワクチン接種の証明書の提示が義務づけられます。

    これを前に8月17日からは移行期間として証明書の提示が求められるようになり、市内のレストランでは訪れた客がさっそく接種を受けたことを証明するカードやアプリの画面を見せて店内に入っていました。

    客の30歳の女性は「義務化には賛成です。店内の全員が接種済みと知っていればマスクも外しやすい」と話していました。

    市によりますと日本など国外でワクチンを接種した人は、
    ▽氏名
    ▽生年月日
    ▽ワクチンの種類
    ▽接種した日や場所
    が記載された公的な記録の提示が求められます。

    義務化したあとは違反した場合に1000ドル、日本円にしておよそ11万円の罰金も設け、感染力の強い「デルタ株」への対策を強化することで経済活動の再開を進める狙いです。

    ただ、市民からは反発の声も出ていて義務化に反対するレストランの経営者は「時期尚早だ。ワクチンを接種するかどうかは自分で決める権利があるべきで顧客を失うことを恐れている」と話していました。

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    チリ 欧米製ワクチンを追加接種 “中国製ワクチンの効果が低下”(8/12)

    2021年8月12日

    新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいる国の1つ、南米のチリでは、大半の人に使われた中国製ワクチンの効果が低下しているとして、新たに欧米製のワクチンの追加接種に乗り出しました。

    チリではすでに人口の3分の2にあたる人たちが2回のワクチン接種を終え、このうち7割以上の人に中国の製薬会社シノバックが開発したワクチンが使われました。

    チリ政府はこのワクチンについて、「発症を予防する効果が低下している」として、8月11日、追加のワクチン接種を始めました。

    2021年3月までに接種を完了した高齢者などが対象で、今回は▽アメリカのファイザーとドイツのビオンテックが共同開発したワクチンと、▽イギリスのアストラゼネカなどが開発したワクチンが使われます。

    チリでは隣国のペルーで最初に報告された変異ウイルス「ラムダ株」の感染が広がるなどしてこれまでに160万人あまりの感染が確認され、3万6000人以上が死亡しています。

    南米各国では感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」の感染の確認も増えていて、ウルグアイも中国製ワクチンの接種を完了した人を対象にファイザー製のワクチンの追加接種を決めるなど、警戒を強めています。

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    フランス ワクチン接種証明の提示義務化始まる 市民から反発も(8/10)

    2021年8月10日

    変異ウイルスの「デルタ株」の感染拡大を受けてフランスでは、飲食店などを利用する際に新型コロナウイルスのワクチン接種の証明や陰性証明などの提示の義務化が始まりました。

    義務化をめぐっては国論を2分する論争になっていて、市民の間からは反発の声も聞かれました。

    フランス政府は8月9日、飲食店のほか飛行機や高速鉄道などの利用者に、ワクチン接種の証明や検査による陰性証明などの提示の義務化を始めました。

    健康上の理由で接種を受けられない場合は、医師が発行する証明で代用できるということです。

    首都パリの飲食店では、早速、利用者たちがスマートフォン上で接種を受けたことを証明するQRコードを店員に示し、店内に入っていました。

    利用者の27歳の女性は「新型コロナによる厳しい状況から抜け出すためには不可欠な措置です」と話していたほか、飲食店の店長の男性は「一人一人をチェックするのは簡単ではありませんが、従業員の安全を守ることにもつながります」と話していました。

    義務化をめぐっては、選択の自由を奪うなど反発の声も相次ぎ、国論を2分する論争になっていて、義務化に反対している21歳の女性は「義務化はフランスが重きを置いてきた自由を崩壊させるものです。事実上接種を強要するもので、異常なことです」と話していました。

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    アメリカ すべての軍人に新型コロナワクチンの接種義務化へ(8/10)

    2021年8月10日

    アメリカ政府は、すべての軍人に対して新型コロナウイルスのワクチン接種を義務づけることにしました。

    これは、アメリカ国防総省が8月9日に発表しました。

    それによりますと、新型コロナウイルスのデルタ株の感染者急増を踏まえ、9月中旬までに軍人のワクチン接種を義務化するということです。

    また、ワクチンは現在、緊急使用許可に基づいて接種が行われていますが、FDA=アメリカ食品医薬品局の正式な承認が出た場合は、9月中旬を待たずに速やかに義務化するとしています。

    オースティン国防長官は、国防総省の職員に対し「国を守るためには健康で準備の整った部隊が必要だ」とするメッセージを出し、接種の必要性を強調しました。

    バイデン大統領は7月に、連邦政府の職員にワクチン接種か定期的な検査を義務づけると発表し、国防総省に対して、軍人への接種義務化も検討するよう指示していました。

    国防総省の関係者によりますと、現在、軍人の73%が少なくとも1回、ワクチンを接種しているということですが、任務中は長期間、共同生活を送ることから、より踏み込んだ対応を求める声も上がっていました。

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    モデルナ “追加のワクチン接種必要”「デルタ株」など拡大で(8/6)

    2021年8月6日

    アメリカの製薬会社モデルナは、開発した新型コロナウイルスワクチンについて、感染力が強い変異ウイルスの「デルタ株」などの拡大により今後、追加のワクチン接種が必要になるとする見解を明らかにしました。

    モデルナは8月5日、新型コロナウイルスワクチンの有効性や、変異ウイルスに対応した新たなワクチンの開発状況についての資料を公表しました。

    それによりますと、接種から6か月後のモデルナのワクチンの発症を防ぐ有効性は93%と、高い水準が維持されていることが確認されたとしています。

    一方で、感染力の強い変異ウイルスの「デルタ株」など変異したウイルスが拡大する中「今後ワクチンの有効性は低下していくだろう」として、2回の接種を終えた人にも、ことしの秋以降、3回目の接種が必要になるとする見解を明らかにしました。

    追加の接種をめぐっては、イスラエルやドイツ、フランスなどが高齢者などを対象に実施することを決めている一方、WHO=世界保健機関は、ワクチンの接種が進んでいない途上国への供給に影響が出るとして、来月末まで行わないよう求めていて、議論になっています。

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    欧州 ワクチン接種証明など 提示義務化の動き広がる(8/2)

    2021年8月2日

    変異ウイルスの「デルタ株」の感染拡大を受けて、ヨーロッパでは、レストランなどの施設を利用する際に、ワクチン接種の証明や検査による陰性証明の提示を義務づける動きが広がっています。

    フランス 接種証明や陰性証明の提示 義務化

    このうち、フランスのマクロン政権は、多くの人が出入りする施設について、利用者にワクチン接種の証明や検査による陰性証明の提示を義務づけました。

    フランスでは、2021年6月末に2000人前後だった1日の感染者数が、7月末には2万5000人を超える日も出ていて、その80%以上がデルタ株です。

    保健当局は、バーやナイトクラブなど多くの人で混み合い、対策が取りにくい場所で感染が広がっているとしています。

    証明の提示の義務化は、こうした状況を受けて7月21日に美術館などの文化施設で始まり、8月9日からはその対象がレストランなど飲食店のほか、飛行機や高速鉄道など長距離の交通機関、それに救急を除く医療機関にも拡大される予定です。

    当局による取り締まりで、利用者による証明の提示が徹底されていないことが分かった場合には、利用者ではなく、施設側に罰金が科されます。

    また、6月半ばからワクチン接種の対象となった12歳から17歳までについては、接種が進んでいないとして、9月末から証明提示の義務化の対象に加えるとしています。

    一方で教育省は、中学校や高校で新学期に入る9月以降、クラスで感染者が出た場合、同じ教室でそれまでにワクチン接種を終えた生徒はそのまま授業を受けられるものの、接種を終えていない生徒については在宅でオンラインの授業に切り替えるとしています。

    こうした措置に対してフランス国内では「ワクチン接種の事実上の強制で選択の自由を奪っている」とか「接種をしない人の差別につながる」といった反発の声が相次いでいます。

    7月31日には首都のパリをはじめマルセイユ、リヨンなど国内各地で抗議デモが行われ、このうちパリでは、参加した人たちが「自由を!」などと叫びながら市内を練り歩きました。

    内務省のまとめによりますと、この日のデモに参加した人は全国で20万人余りに上り、パリでは警察との小競り合いも起きました。

    これに対して政府の報道官は「この措置によって多くの命が救われる。自由を守り国をオープンな状態にする最善の方法だ」として理解を求めています。

    イタリアなど欧州各国でも証明提示の義務化 広がる

    証明の提示を義務づける動きは、適用の対象となる施設などに違いはあるもののヨーロッパ各国に広がっていて、このうちイタリアでは8月6日から飲食店やスポーツジム、文化施設などで始まる予定です。

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    感染再拡大のイスラエル 3回目のワクチン接種始まる(8/2)

    2021年8月2日

    中東のイスラエルでは、感染力が強い変異ウイルスの影響で新型コロナウイルスの感染者が再び増加していて、イスラエル政府は8月1日から、60歳以上の人への3回目の接種を始めました。

    イスラエルでは、16歳以上の8割以上が2回のワクチン接種を終え、一時は、1日の新規感染者が1桁にまで減りましたが、感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」の影響で再び増加し、連日2000人以上の感染者が出ています。

    このため、イスラエル政府は、接種を終えていても重症化するケースが目立つとして、60歳以上の人に対し、3回目の接種を行うことを決め、8月1日、対象者への接種が始まりました。

    イスラエルの保険制度を担う団体の1つ「クラリット」が運営するエルサレムの接種会場では、事前に予約した人たちが訪れ、看護師などがワクチンを接種していました。

    接種を終えた女性は「感染者が増えている状況を心配していましたが、3回目の接種については、専門家の意見をもとに決められているので不安はありませんでした」と話していました。

    人口が930万人のイスラエルでは、8月1日時点の重症患者の数は212人と、1か月で180人以上増加しています。

    3回目の接種をめぐっては、イギリス政府も70歳以上の高齢者などを対象に9月から接種を始める計画で、日本でも、河野規制改革担当大臣が、来年、3回目の接種を行うことになるのではないかとの見方を示しています。

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    米FDA J&Jワクチン情報に警告追加 ギラン・バレー症候群受け(7/14)

    2021年7月14日

    FDA=アメリカ食品医薬品局は7月12日、製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンを接種した人から手足のまひなどが起きる「ギラン・バレー症候群」が報告されたとして、製品情報に警告を追加しました。
    FDAは「引き続き、ワクチンの接種による利益はリスクを上回る」として、接種の推奨は変えていません。

    FDAは7月12日、製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンの製品情報に、接種した人から「ギラン・バレー症候群」の報告があったとする警告を追加しました。

    「ギラン・バレー症候群」は、免疫が自分の神経細胞を攻撃するために、手足のまひなどが起きる病気で、FDAは毎年、アメリカ国内で3000人から6000人が発症していると推定しています。

    FDAによりますと、アメリカではジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンがおよそ1250万回接種された時点で、接種後の健康への影響を自主的に報告するシステムを通じて、「ギラン・バレー症候群」の暫定的な報告が100件あったということです。

    FDAは「今ある証拠は、このワクチンとの関連を示唆しているが、因果関係を証明するには十分ではない」としています。

    そのうえで「引き続き、ワクチンの接種による利益はリスクを上回る」として接種の推奨は変えていません。

    FDAとCDC=疾病対策センターは、今後、同様の報告がないか監視するとともに、専門家による分析を進めるとしています。

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    仏製薬大手サノフィ 最終段階のワクチン臨床試験 日本でも開始(7/14)

    2021年7月14日

    フランスの製薬大手サノフィは、開発中の新型コロナウイルスのワクチンを人に投与して有効性や安全性を確認する最終段階の臨床試験を、日本国内でも始めたと発表しました。臨床試験は日本を含む世界各国で行われ、結果を踏まえて承認申請を行うとしています。

    サノフィの発表によりますと、最終段階の臨床試験は国内の5か所の医療機関を含む、アメリカなど世界各国で3万5000人以上を対象に行う計画で、日本国内でも7月12日、始まりました。

    開発するワクチンは「遺伝子組み換えたんぱく質ワクチン」で、ウイルスの表面にあるたんぱく質に似たものを人工的に作って投与して、体内でウイルスを攻撃する抗体を作り出します。

    臨床試験では、従来型のウイルスに対応したものと、南アフリカで確認された変異ウイルス『ベータ株』に対応したものの2種類のワクチンについて、効果の無い偽の薬と比較して有効性や安全性を確認する計画です。

    会社では、臨床試験の結果を踏まえて日本国内でも承認申請を行うとしていて、実用化できた場合は、岐阜県にある工場での生産を検討しています。

    サノフィは「ワクチンをできる限り早期に届けられるよう、製造準備も進めていく」としています。

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    イスラエル ワクチン予防効果64%に減少 変異株との関連指摘(7/6)

    2021年7月6日

    中東イスラエルの保健省は7月5日、新型コロナウイルスのワクチンによる発症を予防する効果が64%に減少したと発表しました。
    7月5月時点での効果は94%余りだったということでインドで確認された変異ウイルスの感染拡大との関連も指摘されています。

    イスラエルでは16歳以上の人口の8割余りが製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンを接種し、6月中旬までは1日の新規感染者数が1桁となる日もありました。

    しかし、6月下旬以降インドで確認された変異ウイルス「デルタ株」による感染が広がり1日当たりの新規感染者数は平均でおよそ260人にまで増え、5日には507人の感染が確認されました。

    こうした中、イスラエルの保健省は6月6日以降の感染状況を調べた結果を発表し、ワクチンによる発症を予防する効果が64%に低下したと発表しました。

    現地メディアによりますと、2021年5月時点では94.3%だったということです。

    これについて保健省は「この低下は、デルタ株の感染拡大と同時に観測された」としていて変異ウイルスとの関連も指摘しています。

    一方で重症化を予防する効果については前回と同じ水準で93%と推定されるとしています。

    イスラエルでは一度は屋内でのマスクの着用義務が解除されましたが、6月25日以降再び屋内での着用が義務づけられていて、イスラエル政府は空港での感染対策の徹底や12歳から15歳へのワクチン接種を呼びかけています。

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    英 9月から3回目のワクチン接種 高齢者や医療従事者など対象に(7/1)

    2021年7月1日

    イギリス政府は、新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人にさらに3回目の接種を行うことについて、70歳以上の高齢者や医療従事者など感染のリスクが高い人を対象に2021年9月から始める計画を明らかにしました。

    イギリスでは、ワクチンの接種が2020年12月から進められていて、ことし夏の終わりには18歳以上の多くが2回の接種を完了する見通しです。

    政府は、冬を前に、新たな変異ウイルスに対応し、ワクチンの効果を長続きさせるため、3回目となる追加の接種を、2021年9月から始める計画を明らかにしました。

    最初に対象となるのは、高齢者施設の入居者や70歳以上の高齢者、医療従事者など感染のリスクが高いとされる人たちです。

    その後、50歳以上のすべての人や、16歳から49歳までのうち、感染のリスクが高いとされる人たちなどが予定されています。

    具体的にどのワクチンを使うのかはまだ決まっていません。

    今後、感染対策の規制がさらに緩和されることなどからことしの冬はインフルエンザの流行が例年よりも広がるという見方もあり、追加の接種とともに、インフルエンザのワクチン接種も行うということです。

    ジャビド保健相は「2020年12月から続くワクチン接種計画は、この国における自由を取り戻した。今回の計画は、その自由を守るためのものだ」とコメントしています。

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    モデルナ ワクチンは「デルタ株」にも有効と発表(7/1)

    2021年7月1日

    アメリカの製薬会社モデルナは日本やアメリカで接種されている自社の新型コロナウイルスワクチンが、インドで確認された変異ウイルスにも有効であることを示す研究結果が得られたと発表しました。

    モデルナは6月29日、自社のワクチンを接種した人について、ウイルスの働きを抑える「中和抗体」の値が複数の変異ウイルスに対してどの程度変化するかを実験した結果を発表しました。

    実験は2回のワクチン接種を終えた人8人の血液を使って行われました。

    その結果、インドで確認された変異ウイルス「デルタ株」に対しては、従来のウイルスの場合と比べ、中和抗体の値はおよそ半分に、ブラジルで確認された「ガンマ株」に対してはおよそ3分の1に減少したものの、「減少の幅は大きくない」としています。

    この結果についてモデルナのステファン・バンセルCEOは「新たなデータはモデルナのワクチンは新たに確認された変異ウイルスにも有効であるという私たちの確信を裏付けるものだ」と述べています。

    モデルナは新たな変異ウイルスに対応した追加のワクチンの開発も進めていて、「今後もパンデミック対策を追求する」としています。

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    “違う種類のワクチン接種で強い免疫反応” 英研究グループ(6/29)

    2021年6月29日

    ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンとアストラゼネカなどが開発したワクチンを1回目と2回目で種類をかえて接種したところ、強い免疫反応が得られたとする研究結果をイギリスのオックスフォード大学などの研究グループがまとめました。研究グループは「ワクチンの接種に柔軟性をもたせられる可能性がある」としています。

    研究グループは、この2つのワクチンを組み合わせて接種した場合などの効果をみるため、50歳以上の男女830人を対象にことし2月から臨床試験を行いました。

    オックスフォード大学が一部の結果として6月28日に発表した内容によりますと、1回目にアストラゼネカ、4週間をおいて2回目にファイザーのワクチンを接種した場合、順番をかえた場合よりもウイルスを攻撃する「抗体」や「T細胞」という免疫細胞がより強く誘導されたということです。

    またいずれの場合も、アストラゼネカのワクチンを2回接種した場合より免疫反応は強かったということです。

    一方、発表では副反応などについては直接触れておらず、詳しい研究結果は論文として医学雑誌で発表する方向で作業を進めているとしています。

    今回の結果について、研究グループの責任者でオックスフォード大学のマシュー・スネイプ博士は「イギリスや世界で進むワクチン接種に柔軟性をもたせられる可能性がある」としています。

    加藤官房長官「積極的に推奨する状況にもないと承知」

    加藤官房長官は、午後の記者会見で「現在、わが国で薬事承認されているワクチンは各社の治験で同じワクチンを2回接種した場合の有効性と安全性が確かめられているもので、現時点で1回目と2回目とで異なるワクチンを接種した場合の有効性と安全性に関するデータを十分に得られている状況にはなく、異なるワクチンの使用を積極的に推奨する状況にもないと承知をしている。引き続きワクチンについての情報をしっかりと把握し、それぞれの国の動向を注視していきたい」と述べました。

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    CDC 心筋炎「接種と関連の可能性」“恩恵はリスク上回る”声明(6/24)

    2021年6月24日

    アメリカのCDC=疾病対策センターは、ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスワクチンとモデルナのワクチンを接種した、主に若い世代で、心臓の筋肉に炎症が起きる「心筋炎」などの症状が報告されていることについて「ワクチンの接種と関連している可能性がある」とする見解を明らかにしました。一方で、CDCやアメリカ厚生省などは、ワクチンでもたらされる恩恵はリスクを上回るとする声明を共同で出し、引き続き若い世代も接種するよう呼びかけました。

    CDCは6月23日、外部の専門家による委員会で、接種後の健康への影響を自主的に報告するシステムを通じて、ファイザーとモデルナのワクチンの接種後に「心筋炎」や心臓を包む膜に炎症が起きる「心膜炎」の症状を示したという暫定的な報告が、6月11日までに1226人から寄せられたと公表しました。

    これらの症状はワクチンを接種していなくても起きることがありますが、主に10代から20代の若い世代で通常想定されるよりも報告数が多いことがわかり、特に女性より男性で、2回目の接種のあとに多いということです。

    一方、報告のうち、CDCの基準で症状が確認できた29歳以下の323人について経過を調べたところ、入院した309人のうち9人は6月11日の時点でも入院中でしたが、295人はすでに退院し、このうち79%の218人は回復したことを確認したということです。

    ファイザーとモデルナのワクチンはこれまでにアメリカで合わせて3億回以上接種されていて、CDCは、39歳以下での2回目の接種後の心筋炎などの頻度は100万回当たり12.6例程度だと分析しています。

    CDCの専門家は「ワクチンの接種と関連している可能性があるが発生はまれだ」との見解を示し、今後もデータの収集と分析を進めるとしています。

    今回の発表に合わせてCDCやアメリカ厚生省、それに複数の医療の専門団体は「こうした症状は極めてまれで、若い世代ではほとんどが軽い症状にとどまっている。ワクチンは自分と周囲の人間を守り、その恩恵はリスクを上回る」とする声明を共同で出し、引き続き若い世代も接種するよう呼びかけました。

    国内の状況は

    厚生労働省によりますと、国内では、6月13日の時点で、ファイザーの新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人のうち25歳から72歳の男女11人に心筋炎や心膜炎の症状が確認されています。

    接種を受けた人は1714万人余りで、およそ156万人に1人の割合となっています。

    このうち72歳の女性が死亡し、接種との因果関係については「評価不能」としています。

    11人のうち、9人は2回目の接種のあとに発症し、8人は男性だということです。

    一方、モデルナのワクチンの接種を受けた人で、6月13日までに症状が報告された人はいませんでした。

    厚生労働省は「現時点では接種による重大な懸念は認められず、メリットが上回る」として、国内外の情報を注視しつつ、接種を進める方針を決めています。

    一方で「正確な比較は困難だが、若年の男性では接種を受けた人のほうが発症する頻度が高い可能性がある」として接種後に胸の痛みや息苦しさなどを感じた場合は積極的に医療機関を受診するよう呼びかけています。

    専門家「メリット考えると接種控えるようなものではない」

    アメリカで新型コロナウイルスのワクチンを接種した主に若い世代で心臓の筋肉に炎症が起きる「心筋炎」などの症状が報告されていることについて、ワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は次のように話しています。

    「CDCの発表では、39歳以下での心筋炎などの頻度は100万回当たり12人程度と頻度はわずかに高いように思う。免疫の反応によって炎症を起こすたんぱく質が多く出ている可能性がある。

    ただ、心筋炎はインフルエンザなどのウイルス感染症でも起こることがあるが、ウイルスに感染して心筋炎が起こる場合よりも重症化はせず、軽い症例が多いと考えられる。

    深刻な副反応かどうかは今後も注意して見ていかなければならないが、重症化や感染を予防するワクチンのメリットを考えると現時点では接種を控えるようなものではないと考えられる。

    ワクチンの接種自体は個人の意思に委ねられるべきだが、正しい情報が一人ひとりにきちんと伝わるようにする必要がある」。

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    イスラエル“マスクなし”に 生活規制ほぼなくなる(6/15)

    2021年6月15日

    新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中東のイスラエルでは、6月15日から屋内でのマスクの着用義務が解除されました。国内で生活するうえでの規制はほぼなくなり、住民は以前の生活を取り戻しつつあります。

    16歳以上の人口の8割以上がワクチン接種を終えたイスラエルでは、一日の新規の感染者数が平均で12人にまで減少し、6月からは集会の際の人数制限や、接種の証明書の提示義務がなくなりました。

    さらにイスラエル政府は6月15日、国際線の利用や、ワクチンを接種していない人が病院や高齢者施設を訪れる場合を除き、屋内でのマスクの着用義務を解除しました。

    エルサレムのショッピングモールでは、ほとんどの人がマスクをせずに買い物や食事を楽しんでいました。

    妻と買い物に訪れた73歳の男性は「ほとんどの人がワクチンを接種し、感染者も少なくなっているので、マスクをしなくても安心です。うれしいですし、大丈夫だと感じています」と話していました。

    また、18歳の店員の男性は「店内で一日8時間もマスクを着けているのは大変だったのでうれしいです。ワクチンも接種しているので特に不安はありません」と話していました。

    イスラエルでは入国の際に原則、ワクチン接種が求められるなど、水際対策は残っていますが、国内で生活するうえでの規制はほぼなくなったことで、移動や買い物などが自由にできるようになり、住民は感染が広がる前の生活を取り戻しつつあります。

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    G7今夜開幕 ワクチン10億回分提供で合意へ 中国対抗のねらいも(6/11)

    2021年6月11日

    6月11日に開幕するG7サミット=主要7か国首脳会議で議長国を務めるイギリスは、新型コロナウイルスの感染拡大を収束させるため、G7として少なくとも10億回分のワクチンを提供できるようにすることで合意する見込みであることを明らかにしました。

    G7サミットはイギリス南西部のコーンウォールで現地時間の6月11日午後、日本時間の6月11日夜開幕し、各国の首脳がおよそ2年ぶりに対面で意見を交わします。

    議論の柱の1つとなるのは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を収束させるため、ワクチンの供給でどのように協力を進めるかです。

    この点について議長国のイギリスは、来年中に感染拡大を収束させるため、G7として少なくとも10億回分のワクチンを提供できるようにすることで合意する見込みだと明らかにしました。

    サミットに先立ってイギリスのジョンソン首相は来年末までに世界のすべての国でワクチンを接種できるよう各国に協力を呼びかける考えを示していて、イギリスは少なくとも1億回分を提供するとしています。

    ワクチンの提供をめぐってはアメリカも5億回分のワクチンを途上国などに提供すると発表していますが、この10億回分に含まれるのかはわかっていません。

    一連の動きには、積極的な供給によって対外的な影響力を強めるいわゆる「ワクチン外交」を展開する中国などにG7として対抗するねらいもあるとみられます。

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    バイデン大統領 ワクチン5億回分 途上国などに提供計画 発表へ(6/10)

    2021年6月10日

    アメリカのホワイトハウスは、バイデン大統領が6月11日から開かれるG7サミット=主要7か国首脳会議に合わせて、新型コロナウイルスのワクチン5億回分を、途上国など100近くの国々に提供する計画を発表すると明らかにしました。

    ホワイトハウスは6月10日、声明を出し、初めての外国訪問でイギリスを訪れているバイデン大統領がG7サミットに合わせて、新型コロナウイルスのワクチン5億回分を途上国など、92か国とAU=アフリカ連合に提供する計画を発表すると明らかにしました。

    ワクチンはアメリカの製薬大手ファイザーから購入し、5億回分のうち2億回分はことしの年末までに、残りの3億回分は来年の上半期中に届けられるということです。

    ホワイトハウスは「今回の提供は1か国によるワクチンの提供では最大のものだ。ワクチン接種を広めるために、世界の民主主義国が連携していく基盤になる」としています。

    バイデン大統領はG7サミットで各国にも協力を呼びかけると見られていて、価値観を共有する同盟国や友好国と連携することで、積極的な供給を通じた「ワクチン外交」を展開する、中国やロシアに対抗したいねらいがうかがえます。

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    台湾 新型コロナ感染確認 1か月たらずで1万人以上に急増(6/7)

    2021年6月7日

    台湾で新型コロナウイルスの感染が確認された人は、この1か月たらずで1万人以上増えていて、当局は屋内での集まりなどを規制する警戒措置を、さらに2週間延長することを決めました。

    台湾では海外から到着した人などを除いた域内での新型コロナウイルスの感染確認が、5月10日までは累計で100人に満たなかったのに対し、それから6月7日までの1か月たらずで1万200人余りに急増しています。

    内閣にあたる行政院は6月7日「感染の広がりがまだ落ち着いていない」として、警戒レベルを4段階の上から2番目に維持する期間を、さらに2週間延長して6月28日までとすることを決めました。

    延長は2回目で、屋内で5人以上、屋外で10人以上集まることを禁じたり、学校での対面の授業を停止したりする措置が続くことになります。

    台湾では今週末から旧暦5月5日の端午節の連休に入りますが、当局は帰省や旅行を極力控えるよう呼びかけています。

    鉄道当局によりますと、連休期間中の在来線の指定席の予約切符13万6000枚のうち8割近い10万7000枚が、6月7日朝までにキャンセルされたということです。

    当局はワクチン接種を急いでいて、日本から提供された124万回分について、来週から75歳以上の人などへの接種を始めることにしています。

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    WHO 中国「シノバック」のワクチンを緊急使用リストに追加(6/2)

    2021年6月2日

    WHO=世界保健機関は中国の製薬会社シノバックの新型コロナウイルスのワクチンを緊急使用のリストに加えました。中国のワクチンがリストに加えられるのは2例目です。

    WHOは6月1日、中国の製薬会社シノバックが開発した新型コロナウイルスのワクチンを緊急使用のリストに加えたと発表しました。

    これによりシノバックのワクチンはWHOなどが主導する国際的な分配の枠組み「COVAXファシリティ」を通じて各国に供給できることになるほかワクチンの審査体制が整っていない途上国などが自国で緊急使用を承認する際の目安にもなる見通しです。

    中国のワクチンがWHOの緊急使用のリストに加えられるのは、5月の中国国有の製薬会社シノファームのワクチンに続いて2例目です。

    リストにはこれ以外に、ファイザーとビオンテックのワクチン、アストラゼネカとオックスフォード大学のワクチン、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン、モデルナのワクチンがすでに含まれていて、WHOは有効性と安全性が確認できたワクチンを今後もリストに追加しCOVAXの枠組みで途上国などへの分配を加速させていきたい考えです。

    「シノバック」のワクチンとは

    今回WHOが緊急使用のリストに新たに加えた中国の製薬会社シノバックの新型コロナウイルスのワクチンはウイルスを加工して毒性をなくした「不活化ワクチン」というタイプのものです。

    中国政府は安全性や有効性の基準に達したとして、ことし2月にこのワクチンの中国国内での使用を承認しています。

    またWHOに助言する諮問委員会はことし4月、トルコ、チリ、インドネシア、ブラジルでそれぞれ行われた臨床試験で、51%から84%の確率で発症を防いだとするデータを公表しています。

    また接種した場合接種した部分への痛みのほか、頭痛、けん怠感などの副反応が起きることがあるもののほとんどが軽度から中等度だとしています。

    シノバックのワクチンは2度から8度で保管できるため、輸送や管理も容易で途上国も導入しやすいことが利点だとされています。

    シノバックによりますと、5月末時点で中国を含むおよそ40の国と地域に合わせて6億回分のワクチンを供給しているということです。

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    コロナワクチン 少なくとも1回接種した人 世界全体で10%超える(5/27)

    2021年5月27日

    新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも1回接種した人の割合が世界全体で10%を超えたことがイギリス・オックスフォード大学の研究者などのまとめでわかりました。

    イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、世界全体で新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも1回接種した人の割合は具体的な内訳が確認できない国や地域を除いて5月25日の時点で10.1%と、10%を超えました。

    主な国では中東のイスラエルが62.9%、イギリスが56.3%、モンゴルが56.2%、カナダが52.8%、アメリカが49.1%となっています。

    また、2回接種することになっているワクチンを2回とも接種するなど接種が完了した人の割合は主な国でイスラエルが59.2%、バーレーンが43.1%、チリが40.6%、アメリカが39.2%となっています。

    世界では途上国を中心にワクチンの接種が進んでいないことが課題となっていて、WHO=世界保健機関は2021年9月までにすべての国で人口の少なくとも10%がワクチンの接種を終えられるよう、先進国などに対し公平な配分に協力するよう呼びかけています。

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    米CDC 新型コロナワクチン接種後の感染は約0.01%「高い効果」(5/26)

    2021年5月26日

    アメリカCDC=疾病対策センターは、2021年1月から4月30日までに新型コロナウイルスワクチンの接種を完了したあとに感染した人は、およそ1億人のうち0.01%だったとする調査結果を公表しました。

    CDCが5月25日に公表した報告書によりますと、2021年1月から4月30日までにアメリカで使用が許可されている3種類の新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人は、およそ1億100万人でした。

    CDCが各州などの保健当局のデータを基に集計したところ、接種を完了したあとで感染したと報告された人は、およそ0.01%に当たる1万262人だったということです。

    このうち、医療機関に入院したのは995人、死亡したのは160人で、死亡した人の年齢の中央値は82歳でした。

    一方、入院した人の中には、新型コロナウイルスの症状がなく別の理由で入院したあと、感染が確認されたケースもあったということです。

    CDCの調査チームは、実際の接種後の感染者は報告より多い可能性があるとしながらも、「アメリカで接種されているワクチンは高い効果を示している」として、引き続きワクチンの接種を推奨していくとしています。

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    インドネシア 企業がワクチン独自購入 不公平感生むと懸念の声(5/18)

    2021年5月18日

    インドネシアでは新型コロナウイルスワクチンを、企業が独自に購入して接種を進める取り組みが始まり、専門家からは政府が進める接種を待つ人たちとの間で、不公平感を生むなどと懸念の声も出ています。

    インドネシアは新型コロナウイルスの感染者が170万人余りと、東南アジアで最も多く、政府は2021年1月から医療従事者や高齢者などを優先して、ワクチン接種を進めています。

    4月までには対象となるおよそ4000万人の接種を完了させる計画でしたが、まだ終わっていません。

    こうした中、経済団体が主導して企業が資金を出し合って、独自に購入したワクチンを従業員らに接種する取り組みが5月18日から始まり、首都ジャカルタ近郊にある製紙会社の工場ではおよそ4000人を対象に接種が行われました。

    製紙会社の代表は「従業員への接種を早く進め、企業活動が通常に戻ることを期待している」と話していました。

    接種には中国国有の製薬会社シノファームが開発したワクチンが使われ、これまでに2万2700社余りがこの取り組みに参加しているということです。

    現地在住の外国人もこの取り組みを通じて接種が受けられることから、日系企業の中でも参加を検討する動きが出ています。

    しかし、この取り組みについて専門家などからは「政府が進める接種を待つ人たちとの間で不公平感が生まれる」とか「ワクチンが不正に売買される可能性がある」などとして懸念の声も出ています。

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    EU医薬品規制当局 「ファイザーワクチン 1か月間の保存可能」(5/18)

    2021年5月18日

    アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンに関して、EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は、通常の冷蔵庫の温度で保存可能な期間をこれまでの5日間から1か月間とする新たな指針を示しました。製薬会社側は新たなデータに基づく結果だとしています。

    EUの医薬品規制当局のEMA=ヨーロッパ医薬品庁は5月17日、ファイザーとドイツの製薬会社ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンに関して「保存条件の変更を推奨する」とする新たな指針を示しました。

    それによりますと、解凍した未開封のワクチンを通常の冷蔵庫と同じ程度の2度から8度に保って保存できる期間をこれまでの5日間から1か月=31日間に大幅に延ばしています。

    EMAは、製薬会社側から新たに提出されたデータを分析した結果だとしていて、ビオンテックも声明で「保存条件の変更は1か月間品質が保たれると裏付けた新たなデータに基づくものだ」と明らかにしました。

    EUでは、夏までに域内の成人の7割のワクチン接種を目標に掲げていますが、これまでに少なくとも1回、接種した人の割合は36%となっていることから一層の接種を促していて、EMAは「保存と取り扱いの柔軟度が高まることで、EU加盟国でのワクチンの接種計画と輸送に重要な効果をもたらす」としています。

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    英 ワクチン接種進み飲食店の屋内営業 5か月ぶりに再開(5/18)

    2021年5月18日

    ヨーロッパの各地で今週、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済活動の制限が相次いで緩和されるなか、イギリスでもロンドンで飲食店の屋内での営業が5か月ぶりに認められるなど活動再開の動きが本格化しています。

    ロンドンを含むイングランドでは感染状況が改善し、ワクチンの接種が進んでいることを受けて5月17日、飲食店の屋内での営業が再開されました。

    ロンドンで屋内での営業が認められるのは2020年12月以来、およそ5か月ぶりで、中心部にあるレストランは消毒を徹底するなどの対策を取りながら客を迎えていました。

    店の責任者は「リラックスしながら食事をすることがずっとできなかったので、ここに戻ってきてもらいたい。ただ、感染防止に気を配る必要があり、以前と全く同じ状況で楽しむのは難しいでしょう」と話していました。

    この日は、映画館なども営業を再開したほか、渡航先を限って国外への観光旅行も認められ、活動再開の動きが本格化しています。

    一方で、一部の地域ではインドで確認された変異ウイルスが広がり、今回の緩和がまた感染の拡大につながらないか懸念も出ていて、ジョンソン首相は今後の制限の緩和に関しては遅れることもありうるという認識を示しています。

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    EU ワクチン接種進み ユーロ圏の経済成長率予測を上方修正(5/13)

    2021年5月13日

    ドイツやフランスなどユーロ圏の経済についてEU=ヨーロッパ連合は、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいることなどを受けて、2021年の経済成長率の予測を4.3%に上方修正しました。

    EUの執行機関にあたるヨーロッパ委員会は5月12日、ユーロ圏19か国の経済について最新の見通しを発表しました。

    それによりますと、ことし1年間のGDP=域内総生産の伸び率は前の年に比べて4.3%になると予測していて、ことし2月の見通しの3.8%から上方修正しました。

    これは新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、経済活動が再開に向けて動きだしていることを受けたもので、世界経済の回復にともなう輸出の伸びが成長を支えるとしています。

    国別の成長率はフランスが5.7%、イタリアが4.2%、ドイツが3.4%などと見込んでいます。

    ユーロ圏では、依然として感染拡大の影響が続いていて先行きは不透明ですが、ヨーロッパ委員会のジェンティローニ委員は会見で「ことしと来年は力強く回復し、各国の経済は遅くとも来年の終わりまでに感染拡大前の水準に回復するかそれを超えるだろう」と述べました。

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    政府 ワクチン分配の国際的枠組みに7億ドル程度 拠出で調整(5/12)

    2021年5月12日

    政府は、ワクチンを分配する国際的枠組み「COVAXファシリティ」に7億ドル程度を新たに拠出する方向で調整に入り、6月、日本が国際団体と共催する首脳級会合「ワクチンサミット」で菅総理大臣が方針を表明することにしています。

    新型コロナウイルスのワクチンを分配する国際的枠組み「COVAXファシリティ」は、ことし中に途上国の人口の30%に当たる18億回分のワクチンを供給する目標を掲げていますが、必要となる資金83億ドルのうち17億ドルが不足しています。

    このため政府は、感染の収束に向けては途上国を含む世界全体へのワクチン普及を一層、後押しする必要があるとして「COVAX」に対し、すでに拠出している2億ドルに加え7億ドル程度を新たに拠出する方向で調整に入りました。

    そして、6月2日に途上国でのワクチン普及に取り組む国際団体「Gaviワクチンアライアンス」と、日本が共催するオンラインの首脳級会合「ワクチンサミット」で菅総理大臣が追加拠出の方針を表明することにしています。

    政府は今後、各国に対し「ワクチンサミット」への参加とともに「COVAX」への資金拠出の協力を呼びかけていくことにしています。

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    アメリカの大学 コロナワクチン“接種の義務化” 対応分かれる(5/12)

    2021年5月12日

    アメリカの大学では、新型コロナウイルスワクチンの接種を対面での授業への出席の条件にするかどうかで対応が分かれています。300を超える大学が対面授業を希望する学生に接種を義務付けるとする一方、一部の州は大学が学生に接種歴の提示を求めることを禁じる方針を示し、そうした州では一度決めた“接種の義務化”の方針を撤回する大学も出てきています。

    アメリカでは、2021年3月、およそ7万人の学生が在籍するニュージャージー州の州立大学ラトガース大学が、新学期が始まる9月以降、対面での授業を受ける学生に対し、新型コロナウイルスワクチンの接種を必須とすると発表しました。

    その後、ハーバード大学などのいわゆる名門校や州立の大規模な大学などにも同様の動きが広がり、教育専門メディアの集計では、5月10日までにいわゆる“接種の義務化”を表明した大学は、300校以上に上っています。

    一方、一部の州では、公立か私立かを問わず、州から運営資金を受け取っている大学が学生に接種歴の提示を求めることを事実上、禁じる方針を州知事が示し、これを受けてテキサス州や、アイオワ州の州立大学は“接種の義務化”は行わないと発表したほか、私立大学の中には、一度発表した“接種の義務化”の方針を撤回する大学も出ています。

    接種を対面授業の条件とする大学でも、健康や宗教上の理由で接種できない場合は例外として扱うところがほとんどですが、アメリカでは接種するかどうかは個人の意思で決めることだとして、事実上の“接種の義務化”への反発も根強く、大学の対応にも影響しています。

    アメリカでは2020年、対面授業を再開した複数の大学で学生の間で感染が広がったケースが報告され、大学によっては対面とオンラインの授業を組み合わせたり定期的にウイルスの検査をしたりするなどの対策をとっています。

    学生からは新学期が始まる秋から対面授業を再開することを望む声が強まる一方、寮などで生活する学生が多いことから、そのままでは再び大学で感染が広がるおそれがあるという指摘もあり、どのように学生の安全を確保するのかが課題となっています。

    “義務化”見送った大学は

    中西部アイオワ州のレイノルズ知事は、州の資金を得ている機関が新型コロナウイルスワクチンの接種歴の提示を求めることを事実上、禁止する方針を示し、5月、法案が州議会で可決されました。

    こうした動きを受けて、アイオワ州の3つの州立大学の運営方針を決める理事会は4月、運営する大学ではいわゆる“接種の義務化”は行わないと表明しました。

    州立大学の1つ、およそ1万人の学生が在籍するノーザンアイオワ大学では、2020年8月に対面授業を再開したあと、学生などが多く住む自治体で新型コロナウイルスの陽性率が40%近くに達するなど、感染が拡大し、地元メディアは、学生がキャンパスの外で飲食したり、パーティを開いたりしたことが原因の一つではないかという見方を伝えました。

    大学は一部の授業をオンラインに戻したり、密集を避けるため大型の部屋で授業を行ったりするなどの対応をとりましたが、秋からの新学期を前に、どのように感染の拡大を防ぎ、対面授業を再開するのか課題になっていて、学生や職員が簡単に接種できるようキャンパス内に接種会場を設けたり、ウイルス検査の態勢を整えたりして新学期に備えています。

    大学で健康管理を担当するシェリー・オコネルさんは「出身地など大学の外で接種する学生もいるので、接種済みの学生の割合を把握するのは難しいが、大学としては接種を強く推奨している」と話しています。

    また、マーク・ヌーク学長は「職員や学生どうしが交流し、学ぶ場を提供するのは大学の最優先の役割だ。いわゆる“接種の義務化”はできないが、多くの学生はワクチンによって安全と健康が守られることを理解していると思うので、接種が進むことを期待している」と述べたうえで「はしかや風疹のようなワクチンは公立学校でも事実上義務化されているが、新型コロナウイルスワクチンは新しく、まだ信頼していない人もいる。接種を義務化するには時間がたって信頼が醸成されるのを待つことが必要ではないか」と話していました。

    一方、学生からは「州立大学で接種を出席の条件とすることが見送られたのは残念だ」という声や、「全員がワクチンを接種していることがわかれば、より安心できる」といった声が出ていました。

    “義務化”撤回の大学も

    一度はワクチンの接種の事実上の義務化を決めたものの、方針の転換を余儀なくされた大学もあります。

    テキサス州の私立、セントエドワーズ大学は、感染が深刻化した2020年の春以降、授業の9割をオンラインで行っています。

    ごく一部の対面授業でも、学生に毎週、PCR検査で陰性を確認するなどの対応をとってきましたが、陽性者が後を絶たず、対応に限界を感じていました。

    このため大学は、全面的な対面授業の再開にはワクチンの接種が不可欠だとして、ことし3月、新学期が始まる秋以降、学生や教授などに事実上、接種を義務化する方針を打ち出しました。

    しかし、その直後、保守的な価値観を重視する共和党のアボット知事が、州から資金を得ている大学などの機関がワクチンの接種証明を求めることを禁止するという命令を出したため、大学は“義務化”の方針をやむなく撤回しました。

    この大学で感染対策を担当するジャスティン・スローンさんは「学生たちは対面授業の再開を望んでいる。ワクチン接種とPCR検査の両輪で感染対策を行うことが学内の健康を維持する上で重要な戦略になると思う」と話しています。

    接種した学生に就学援助も

    ニュージャージー州の州立ローワン大学は5月6日、新型コロナウイルスワクチンの接種を対面授業への出席の条件にするとともに、接種した学生には最大1000ドルの就学援助を行うと発表しました。

    接種の証明書などを提出した学生は学費が500ドル減額され、寮に住む場合は、寮の費用が学費とは別に500ドル減額されます。

    大学にはおよそ2万人の学生が在籍していて、大学はかかる費用は全体で700万ドルから1000万ドルと想定しています。

    キャンパスには学生が接種を受けるための会場も設けられ、学生は予約なしで接種を受けることができます。

    ローワン大学のアリ・フーシュマン学長は「学生にとってキャンパスで人と会いながら学ぶことはとても重要だ。学生の中には経済的な苦労をしながら通う学生もいるので、学費や寮の費用の援助は接種率の向上だけでなく、就学の支援につながる」と話しています。

    一方で、宗教上の理由や、健康上の理由などで接種しない学生は例外が認められているとして「ワクチン接種は自主的な選択によるべきで、強制にならないようにしたい。支援が得られることを知ったうえで、ワクチンについて改めて学んでもらい、選択してほしい」としています。

    接種を促すために学生を支援する動きは、いわゆる“接種の義務化”を見送った大学でも行われていて、ミシガン州のウェイン州立大学では接種した学生に食堂で使える10ドル分のクーポンを配っているほか、ノースカロライナ州立大学グリーンズボロ校では、接種した学生を対象に「宝くじ」を行い、当選者は寮の費用が無料になったり、地元の飲食店で使えるクーポンを受け取ったりしたということです。

    ワクチンめぐる考え方は

    州の機関や、州の資金を得ている組織に対し、ワクチンの接種歴の提示を求めることを禁止する知事令を出したテキサス州のアボット知事は「ワクチンは安全で効果的だが自主的なもので、強制されるものではない。政府が人々に対し、日常の生活を送るためにワクチンの接種証明や、個人的な健康の情報を開示することを求めるべきではない」と理由を述べています。

    一方、いわゆる“接種の義務化”を決めたニュージャージー州の州立ラトガース大学公衆衛生大学院のペリー・ハルキータス教授は「ワクチンを接種しないという個人の権利は大事だが、ほかの人を病気から守るという公共の利益も重要だ。ワクチンを接種しないという権利を行使することが、ほかの人々の健康に影響を与えるおそれがある以上、一部の権利を失うことになると理解すべきだ」としたうえで、いわゆる“接種の義務化”は対面授業を再開する上で合理的な判断だと指摘しています。

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    ファイザーなどが開発のワクチン 12~15歳も許可へ 米FDA(5/11)

    2021年5月11日

    FDA=アメリカ食品医薬品局は5月10日、製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスワクチンについて、緊急使用の許可の対象を12歳から15歳の子どもにも拡大すると発表しました。

    ファイザーとドイツの企業ビオンテックが開発した新型コロナウイルスワクチンは、アメリカでは16歳以上を対象に緊急使用の許可が出されていますが、対象の拡大を目指し、15歳以下の子どもについても臨床試験が進められています。

    ファイザーは、このうち12歳から15歳について、ワクチンの接種後に新型コロナウイルスによる症状が確認された人はいなかったなど、効果と安全性を示す結果が得られたとして、4月、FDAに対象年齢の拡大を申請していました。

    FDAは5月10日「審査の結果、使用できる年齢を12歳以上に変更する」として、緊急使用の許可の対象を12歳から15歳の子どもにも拡大すると発表しました。

    FDAは「今回の決定は、若い世代を新型コロナウイルスの感染症から守るうえで重要なステップだ」とコメントしています。

    ファイザーは11歳以下を対象にした臨床試験も行っていて、2021年9月にも緊急使用の許可の対象を拡大するよう申請する方針を明らかにしているほか、別の製薬会社モデルナと、ジョンソン・エンド・ジョンソンもそれぞれ、17歳以下の臨床試験を進めています。

    国内の接種対象拡大の見通しは

    加藤官房長官は、5月11日午後の記者会見で「FDA=アメリカ食品医薬品局に提出された、12歳から15歳の接種にかかるデータに基づき、国内で医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構に、添付文書の改訂に向けた相談がファイザー社から行われると承知している」と述べました。

    その上で「今後、添付文書の改訂により、新たな接種対象者が12歳から15歳に拡大された場合には、ファイザー社の臨時接種の枠組みの対象を12歳以上に拡大するかどうかについて、別途、厚生労働省の審議会で議論いただくことになる」と述べました。

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    EU アストラゼネカのワクチン 6月以降の追加注文せず(5/10)

    2021年5月10日

    EU=ヨーロッパ連合で新型コロナウイルスのワクチンの調達を担当する委員は、供給が大幅に遅れているアストラゼネカなどが開発したワクチンについて、6月以降の追加注文をしなかったことを明らかにしました。

    EUのブルトン委員は5月9日、フランスのラジオ局の番組に出演し、新型コロナウイルスのワクチンに関する質問に答えました。

    この中でブルトン委員は供給が大幅に遅れているアストラゼネカのワクチンについて「6月以降の追加の注文をしなかった」と述べ、契約上、供給が完了する6月以降は購入しないことを決めたと明らかにしました。

    EUはこれまでアストラゼネカに対し、供給の遅れに対応するよう求めてきましたが、満足できる回答が得られなかったとして、4月、契約違反を理由に法的な手続きを始めています。

    一方で、ブルトン委員は「アストラゼネカのワクチンは輸送と温度管理が容易だという利点がある」と述べ、状況によっては今後、再び購入する可能性も排除しませんでした。

    またEUとして、最大18億回分のワクチンを追加購入すると発表したファイザーについて、ブルトン委員は「第2世代のワクチンを手がけている。2度の接種が必要なくなる」と述べ、1回の接種ですむ新たなワクチンの開発に期待を寄せました。

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    復活のニューヨーク ワクチン普及で街に活気が(5/8)

    2021年5月8日

    アメリカで一時新型コロナウイルスの感染拡大が最も深刻だったニューヨークでは、ワクチンの普及などを受けて経済活動を再開する動きが本格化していて、街は活気を取り戻しつつあります。

    ニューヨーク市のデブラシオ市長は4月29日の記者会見で「7月1日にニューヨーク市を完全に元に戻す準備ができている。われわれにはトンネルの終わりにある光が見える」と述べました。

    これに対してニューヨーク州のクオモ知事は「必要なことをすればもっと早い再開もありうる」と話しています。

    映画館や飲食店 客席数の制限なくなる

    ニューヨークではワクチンの普及や感染者の減少に伴って再開の動きが本格化していて、5月19日からは飲食店、小売店、美容院や映画館などの客席数制限は原則なくなり、観光名所として知られるタイムズスクエアでは人通りや交通量も増えています。

    アメリカ各地から訪れる観光客の姿も見かけるようになり、中西部ミシガン州から来た女性は「これから自由の女神を見て美術館にも行く予定です」と話していました。

    マンハッタン中心部の公園では5月3日からプロのミュージシャンによる演奏を楽しむ催しが始まり、訪れていた地元の男性は「こうした催しを楽しむことができるようになりとても感動しています」と話していました。

    ニューヨークの魅力のひとつとされるエンターテインメント産業ではブロードウェイのミュージカルの再開が最も難しいとされ、2020年3月から休演が続いていますが、2021年9月中旬から再開されることが決まりました。

    俳優のロー・ハートランフさんは「2020年は9回しか公演できず落ち込みましたが、今は再開が決まりとても興奮しています。最高のパフォーマンスを披露したいです」と話していました。

    一時はロックダウンも… 観光客にもワクチン接種へ

    ニューヨークで新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化したのは2020年3月。

    ニューヨーク市では1日に1700人を超す感染者が確認されるようになり、3月22日には経済活動を厳しく制限するいわゆるロックダウンに踏み切りました。

    この措置により、警察や医療関係者など一部の仕事を除いて社員や従業員などの出勤が禁じられたほか、住民は外出を控え自宅にとどまるよう求められました。

    しかし感染拡大は深刻化し、増える感染者に対応するため大規模なイベントなどを行う施設が臨時の病院として改装され、セントラルパークにも患者を受け入れるためのテントが設置されました。

    4月にはニューヨーク州で1日の死者が799人に上りました。

    その後、マスクの着用と、人と人とが一定の距離を取る「ソーシャル・ディスタンシング」が浸透したこともあり、感染拡大のピークは過ぎ、段階的に経済活動が再開されます。

    しかし2021年1月には再び感染拡大が深刻化し、ニューヨーク市で1日に確認された感染者は疑いも含めると7991人と過去最多となりました。

    これを受け感染防止対策の徹底が再度はかられ、ワクチン接種も始まる中で感染者は徐々に減り始め、最近では市の感染者の数は1日あたり1000人前後となっています。

    ニューヨーク市の人口はおよそ840万人ですが、これまでの感染者は疑いも含めると93万5000人、亡くなった人はおよそ3万2000人にのぼっています。

    デブラシオ市長は大幅に減った観光客を呼び戻すため、観光客に対してワクチン接種の機会を設ける計画を発表していて、州が承認すればタイムズスクエアなどの観光地に移動式の接種施設を設け、1回の接種で完了するジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンを使用するということです。

    ワクチン接種は人口の4割 最大15万円の給付も

    アメリカで景気回復が加速し経済活動正常化の目標が明確になっている背景には、ワクチンの普及と大規模な経済対策があります。

    経済対策ではバイデン政権発足後、1人あたり最大15万円の現金が給付されました。

    この結果、消費意欲が刺激され、3月の小売売上高は前の月に比べて9.8%の大幅な伸びを記録しています。

    またワクチン接種も進む中で国内旅行など人の移動も活発になり、5月2日の日曜日、全米の空港を利用した人の数は162万人まで上昇しました。

    これはアメリカで非常事態宣言が出された前日にあたる2020年3月12日以来の多さです。

    さらにバイデン政権では中小の飲食業を支援するため、5月から従業員の給与の支払いや家賃補助に充てられるよう日本円で3兆円規模の対策を始めていて、数千の飲食店があるニューヨークにとっては大きな支援になると期待されています。

    ワクチンの接種はペースの鈍化も指摘されていますが、5月7日現在、接種を終えた18歳以上の人は全米で1億900万人あまり、接種率は42.6%となっていて、ニューヨーク市も42%とほぼ同じ水準となっています。

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    英政府の諮問委 40歳未満にアストラゼネカのワクチン推奨せず(5/8)

    2021年5月8日

    新型コロナウイルスのワクチンに関して、イギリス政府の諮問委員会は40歳未満の人に対してアストラゼネカの代わりに他社のワクチンの接種を勧めると発表しました。血栓が生じる極めて小さいリスクへの予防的な措置だとする一方、ほとんどの人にとって接種の利益がリスクを上回るとしています。

    イギリス政府の諮問委員会は5月7日、40歳未満の人に対してアストラゼネカなどが開発したワクチンの代わりに他社のワクチンの接種を勧めると発表しました。

    これまでは、30歳未満の人に対して同様の内容を推奨していましたが、今回、対象となる年齢を10歳引き上げました。

    理由について諮問委員会は、接種後に血栓が生じる極めて小さいリスクへの予防的な措置だとするとともに、今後、数か月にわたりワクチンを確保できる見通しがたったためだとしています。

    一方、諮問委員会では、アストラゼネカのワクチンに関して血栓などの事象は、極めてまれだと繰り返し指摘したうえで「ほとんどの人にとって重症化や死亡を防ぐ利益があらゆるリスクをはるかに上回る」と強調しています。

    ヨーロッパでは、アストラゼネカのワクチンに関して、接種後に血栓が確認された例が報告されたことを受け、若い世代に対して接種を控える動きも出ています。

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    WHO 中国 シノファーム製のワクチンを緊急使用のリストに追加(5/8)

    2021年5月8日

    WHO=世界保健機関は、中国国有の製薬会社シノファームの新型コロナウイルスのワクチンを緊急使用のリストに加え、シノファームに対し国際的な分配の枠組みへの協力を求めました。

    WHOのテドロス事務局長は5月7日、中国国有の製薬会社シノファームが開発したワクチンを緊急使用のリストに加えたと発表しました。

    リストには、これまでにアメリカのファイザーなど欧米の製薬会社などが開発したワクチンが加えられていますが、欧米以外では初めてです。

    これにより、シノファームのワクチンは、WHOなどが主導する国際的な分配の枠組み「COVAXファシリティ」を通じて各国に供給できることになり、WHOはシノファームに対しCOVAXへの協力を求めました。

    COVAXは、6月までに分配する予定のワクチンの7割余りをインドで製造されるアストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンに頼っていますが、インド国内の感染状況の悪化を背景に供給が大幅に遅れています。

    WHOとしては、シノファームのワクチンのリストへの追加で、途上国へのワクチンの分配を加速させたい考えです。

    COVAXの厳しい現状

    WHO=世界保健機関などが主導するワクチンを公平に分配する枠組み「COVAXファシリティ」は2021年2月、6月までに世界145の国と地域に3億回分を超えるワクチンを分配する計画を発表しました。

    しかし、COVAXが5月7日までに分配できたワクチンは、121の国と地域に対して5400万回分余りで、分配は当初の計画よりも大幅に遅れています。

    COVAXでは、6月までに分配する予定のワクチンの7割余りをインドの工場で製造されるアストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンに頼っていますが、インドでの感染状況の悪化を背景に、COVAXへの供給は滞っています。

    遅れを取り戻そうと、COVAXは5月3日、アメリカの製薬会社モデルナから5億回分のワクチンの供給を受ける契約をしたと発表しましたが、供給が始まるのは2021年の後半の見通しです。

    WHOとしては、COVAXで分配できるワクチンの種類を増やそうと、世界各地で開発されたワクチンについて、緊急使用のリストに加えることができないか、有効性や安全性の審査を進めています。

    シノファーム製のワクチンとは

    今回、WHOが緊急使用のリストに加えた新型コロナウイルスのワクチンは、中国国有の製薬会社シノファームが開発したワクチンのうち傘下にある北京の研究所が開発したものです。

    このワクチンは、感染する能力を失わせたウイルスを使う「不活化ワクチン」というタイプで、中国政府は2020年12月に安全性や有効性の基準に達したとして、中国国内での使用を承認しています。

    WHOに助言する諮問委員会は、複数の国で行われた第3段階の臨床試験の結果、このワクチンの有効性について、78.1%だったとするデータをホームページ上に公表しています。

    また接種した場合、接種した部分への痛みや頭痛、けん怠感といった副反応が起きることがあるものの、ほとんどが軽度から中等度だとしています。

    中国メディアによりますと、このワクチンは2度から8度という温度で保管できるため、輸送や保管も容易で途上国も導入しやすく、すでに45の国や地域で使用が認められているということです。

    中国ではこのワクチンのほか、シノファームの別の研究所が開発したワクチンや製薬会社のシノバックが開発したワクチンなどが承認され、大規模な接種が行われていて、5月6日までの国内の接種回数は、延べおよそ3億回に上っているとしています。

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    モデルナ 自社ワクチン 12~17歳の臨床試験で有効性96%と発表(5/7)

    2021年5月7日

    アメリカの製薬会社モデルナは、12歳から17歳の子どもを対象にした、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験の初期的な分析の結果を発表し、少なくとも1回、接種を受けた人での有効性は96%だったと明らかにしました。

    モデルナの開発したワクチンは、アメリカでは18歳以上を対象に、FDA=アメリカ食品医薬品局の緊急使用の許可が出されていますが、接種対象の拡大を目指して12歳から17歳の3200人余りを対象に、臨床試験が行われています。

    モデルナは5月6日、初期的な分析結果として少なくとも1回の接種を受けた人での有効性は、96%だったと発表しました。

    安全性については接種を受けたところの痛みや、頭痛や発熱が報告されているものの、深刻な健康への影響は確認されていないということです。

    モデルナは今後、さらにデータを蓄積したうえで、規制当局と接種の対象となる年齢の拡大について話し合うとしています。

    このほかモデルナは、変異ウイルスに対応するためにワクチンを追加で接種した研究の結果も発表しました。

    それによりますと、モデルナのワクチンの2回の接種を終えて、半年から8か月たった人に同じワクチンや、変異ウイルスに対応して新たに開発したワクチンを追加で接種したところ、いずれの場合も南アフリカやブラジルで最初に見つかった変異ウイルスに対する抗体の値が上昇したということです。

    この結果についてモデルナは「追加の接種によって変異ウイルスに対する予防効果を得るという戦略に自信を深めた」としています。

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    EU 域外へのワクチン輸出 全体の4割が日本向けで最多(5/7)

    2021年5月7日

    新型コロナウイルスワクチンの域外への輸出を許可制としているEU=ヨーロッパ連合は、これまでにおよそ1億7800万回分の輸出を許可し、全体のおよそ4割が日本向けだと明らかにしました。

    EUは2021年1月、新型コロナウイルスのワクチンの供給に不安が高まったことを受けて、域外に輸出する際には事前に許可を得ることを義務づける措置を導入しています。

    EUの執行機関、ヨーロッパ委員会は5月6日、この措置のもとでの輸出の状況を公表し、5月3日までに45の国と地域向けにおよそ1億7800万回分の輸出を許可したとしています。

    最も多いのが日本で、全体の4割にあたるおよそ7200万回分となっています。

    次いで、イギリス向けのおよそ1850万回分、カナダ向けのおよそ1840万回分となっています。

    また、輸出の許可は854件となっている一方、却下したのは1件にとどまっているとして、許可制の目的は域内で製造されたワクチンの流通状況を把握するためであり、規制するためではないとの立場を改めて強調しました。

    ワクチンを世界に行き渡らせるには依然、課題が多く、低価格のジェネリックワクチンを自由に生産できるようワクチンの特許権を一時停止すべきかどうかも国際的に議論されています。

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    米がワクチン特許権 停止の支持表明 供給拡大のため方針見直す(5/6)

    2021年5月6日

    新型コロナウイルスのワクチンを途上国が十分に確保できていない中、WTO=世界貿易機関では、供給を拡大するためにワクチンの特許権を一時的に停止すべきかどうか協議されています。
    これについて、アメリカ政府は、これまでの方針を見直して特許権の停止を支持すると表明し、協議が前進するか注目されます。

    ワクチンに関する特許権の扱いは、現在、WTOで議論されていて、南アフリカとインドが低価格のジェネリックワクチンを自由に生産できるよう、特許権を一時的に停止することを提案し、ワクチンを十分に確保できていない途上国の間で支持が広がっています。

    これに対して、ワクチンを開発した大手製薬会社を抱えるアメリカやヨーロッパなどの先進国は、特許権を停止すれば将来の技術革新に支障が出るとして慎重な姿勢を示し、協議は難航しています。

    こうした中、アメリカのバイデン政権で貿易政策を担当するタイ通商代表は、5月5日に発表した声明で「パンデミックを終わらせるために特許権の停止を支持する」と述べ、これまでの方針を見直すと表明しました。

    ただ、WTOは全会一致が原則で、タイ通商代表は「問題の複雑さを考えれば、交渉には時間がかかる」とも指摘しています。

    世界でワクチン普及の格差が開き、途上国の反発が強まる中、今回、アメリカが歩み寄ったことでほかの先進国も特許権の一時停止に賛同し、停止の方向に協議が進むか注目されます。

    WHOは歓迎の姿勢

    WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は5月5日、ツイッターに「世界規模の公衆の難題に取り組むアメリカのリーダーシップの強力な例だ」と書き込み、歓迎する姿勢を示しました。

    新型コロナウイルスのワクチンの供給が途上国を中心に依然として十分でない中、テドロス事務局長は2021年3月の会見で、世界各地で広く生産できるようワクチンに関する特許権の保護を一時的に停止すべきだと主張していました

    ワシントンではワクチン供給拡大求めるデモ

    アメリカの首都ワシントンの連邦議会近くでは5月5日、およそ150人が集まり、新型コロナウイルスで打撃を受けている途上国へのワクチン供給を拡大するよう求めるデモを行いました。

    集まった人たちは「皆にワクチンを」などと書かれたプラカードを手に、感染拡大を抑えるためにはワクチンにかかわる特許権の保護を一時停止させ、途上国でもワクチンを生産できるようにしなければならないなどと声を上げていました。

    デモに参加したインド系アメリカ人の女性は「アメリカには大きな責任がある。他の国でもワクチンが生産できるようにするためにワクチンの特許を開放すべきだ」と話していました。

    製薬会社などの団体「間違った解決案」

    スイスのジュネーブに本部がある製薬会社などで構成されるIFPMA=国際製薬団体連合会は5月5日、アメリカ政府がワクチンの特許権の停止を支持すると表明したことについて「アメリカ政府の決断には失望させられた」としたうえで「特許権の停止は複雑な問題に対して間違った解決案だ」と述べています。

    さらに「ワクチンの特許を停止しても生産量が増えるわけでも、世界的な健康危機に立ち向かう実用的な策を提供するわけでもない」として、貿易障壁の解消やワクチンの原材料不足などの課題から目をそらすことになり、逆に混乱を招くおそれがあると指摘しています。

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    カナダ ファイザー製ワクチンを12~15歳の子どもにも使用許可(5/6)

    2021年5月6日

    カナダの保健当局は5月5日、アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックの新型コロナウイルスワクチンについて、新たに12歳から15歳の子どもにも使用することを許可すると発表しました。

    ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスワクチンはアメリカやカナダなどでは16歳以上を対象に使用の許可が出されていますが、対象の拡大を目指し、15歳以下の子どもについても臨床試験が進められています。

    このうち12歳から15歳に関しては2021年3月、ワクチンの接種後に新型コロナウイルスによる症状が確認された人はいなかったなどとする結果が発表されています。

    これを受けて、カナダの保健当局は5月5日、「科学的な証拠を検討した結果、12歳から15歳に対しても安全で効果的だと判断した」として、使用を許可すると発表しました。

    アメリカやカナダでは安全に、対面での授業を再開するために、子どもへのワクチン接種の拡大が課題とされています。

    アメリカでも、バイデン大統領が5月4日「規制当局の許可が出れば、すぐに全米の薬局などで接種ができるようにする」と述べていて、12歳から15歳の子どもへの接種について近く、緊急使用の許可の判断が出る見通しです。

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    デンマーク ジョンソン&ジョンソンのワクチン使用とりやめ(5/4)

    2021年5月4日

    アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスのワクチンについて、北欧のデンマークは、接種後にまれな血栓が確認された症例が報告されたことなどを受けて、このワクチンの使用をとりやめると発表しました。

    ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンをめぐっては、EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局が4月、接種後に脳などの血管が詰まる血栓が確認された症例について「ごくまれな副反応として記載されるべきだ」とする結論をまとめる一方「このワクチンによる利益は副反応のリスクを上回る」としています。

    デンマークの保健当局は5月3日、独自に検討を進めた結果、デンマークでは感染状況がある程度抑えられていることや、そのほかのワクチンの接種が進んでいることなどを踏まえ、このワクチンを使用する計画をとりやめると発表しました。

    デンマークは、接種後に血栓が確認された例が報告されたことを受け、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種をすでに中止していて、保健当局は今回の決定によって、ワクチンの接種計画が最大で4週間遅れるという見通しを示しました。

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    余ったコロナワクチン どう対応? 海外の取り組みは(5/2)

    2021年5月2日

    大型連休中もワクチンの接種が進んでいますが、一方で、余ったワクチンが捨てられるケースも報告されています。海外ではどう対応しているのか、各国の取り組みです。

    フランス 対象外でも会場の外で待つ人に接種

    ワクチンが余って捨てられるケースはフランスでも問題になっています。

    4月、医師が使い切れなかったワクチンを廃棄する動画を投稿したところ大きな反響を呼びました。

    毎日2000人近くに接種を行っているパリ郊外の会場では、予約をした人の8%ほどが来場せず、ワクチンの余りが出ます。

    現在、国が定める接種の対象者は原則として55歳以上ですが、余ったワクチンは廃棄しないで済むよう、対象者でなくても会場の外で待つ人に接種しているといいます。

    余ったワクチンの接種を求めて待っていた45歳の男性は「ここに来るのはきょうで3日目です。地方に住む両親と22か月、会うことができていないので、接種をして、安心して会いに行きたいのです」と話していました。

    また「子どもが欲しいのですが、妊娠の前にワクチンを打っておきたいと思います」と話す若い女性もいました。

    接種希望者と薬局などをつなげるサイトも

    フランスでは薬局などでも接種できますが、少人数分でも余ったワクチンをむだにしないよう、接種希望者と薬局などをつなげるサイトも登場しました。

    「Covidliste(コビッドリスト)」というサイトでは、薬局などがワクチンの種類や人数、地域などの情報を入力すると、事前に登録している希望者の中から、条件にあてはまる人にメッセージが送られます。

    パリ市内の薬局では朝、サイトで3人を募集したところすぐに見つかり、ワクチンを使い切ることができました。

    接種を受けた女性は「打ちました。初めての接種です。うれしいです」と話し、薬剤師の女性は「素晴らしいですね。このサイトのおかげでむだを出さずに済みます」と話していました。

    このサイトは3月末に開設されてからSNSや口コミで評判が広がり、1か月で接種を希望する80万人が登録しました。

    接種を行う1000以上の薬局などと提携しこれまでに5000人が余ったワクチンの接種を受けたといいます。

    サイトを開発したマルタン・ダニエルさんは、「私たちのプラットフォームによってワクチン100人分が余っていれば、少なくとも60人の希望者は確保できます」と話していました。

    ドイツ 接種希望者の名簿を作成

    ドイツでは2020年12月、新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まり、4月からはかかりつけ医のもとでも接種を受けられるようになりました。

    政府は現在、年齢などで接種の対象者の優先順位を設けていますが、予約が急にキャンセルされるなどしてワクチンが余った場合、廃棄を避けるためであれば、優先順位どおりではない接種も認めるとしています。

    ベルリン市内にある診療所では、4月30日、接種の予約が1件、急にキャンセルされ、近くのスーパーで働く38歳の女性が代わりに接種を受けに訪れていました。

    女性は「電話をもらって5分ほどで駆けつけました。接種を受けたい人がより早く接種できる可能性があり、すばらしいことです」と話していました。

    この診療所では、接種を希望する人のリストをワクチンの種類別に作成し、ワクチンが余った場合は、リストの中から優先順位が高い順に電話をかけて、すぐ来られる人に接種しています。

    接種を始めてからおよそ1か月間で、急なキャンセルは3回あったものの、いずれもほかの希望者に接種し、廃棄せずに済んでいるということです。

    診療所の担当者は「接種を受けたいという問い合わせは非常に多く、ワクチンを捨てることなくすべて打つことができている」と話していました。

    ドイツでは4月30日の時点で少なくとも1回、接種を受けた人は2200万人を超え、人口のおよそ27%となっています。

    政府は2021年9月までに子どもを除くすべての市民にワクチンを行き渡らせるとしています。

    韓国 “キャンセル待ち” 名簿を作成

    2021年2月から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった韓国では、接種を予約していた人が体調不良などで急きょキャンセルした場合、余ったワクチンをほかの人に接種することでむだにしないようにする取り組みが行われています。

    韓国の疾病管理庁は3月から、接種を行う全国の2200あまりの医療機関に対して、予約のキャンセルなどで余ったワクチンの接種を希望する、いわゆる「キャンセル待ち」の人の名簿を作成するよう求めています。

    また名簿に記載されている人の中に当日、接種を受けられる人がいない場合、ほかの目的で医療機関を訪れた人や付き添いの人などに接種することも認められているということです。

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    WHO 米モデルナ社製ワクチン 緊急使用リストに追加(5/1)

    2021年5月1日

    WHO=世界保健機関は、アメリカの製薬会社モデルナが開発した新型コロナウイルスのワクチンを緊急使用のリストに加えました。ワクチンを公平に分配する国際的な枠組み「COVAXファシリティ」で分配できるワクチンの種類が増えることになります。

    WHOは4月30日、COVAXが開発を支援してきたモデルナのワクチンを緊急使用のリストに加えたと発表しました。

    これによって、ファイザーなどのワクチン、アストラゼネカなどのワクチン、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンに加えて、今後はモデルナのワクチンもCOVAXで分配できることになります。

    COVAXは、2021年上半期に世界145の国と地域に3億回分余りのワクチンを分配する計画を発表しています。

    しかし、インドで感染状況が悪化する中、インドの工場で製造されるアストラゼネカなどのワクチンの供給が大幅に遅れていて、4月29日時点で分配できたのは121の国と地域で4900万回分余りにとどまっています。

    こうした中、今回、モデルナのワクチンが緊急使用のリストに加えられたことで、各国にワクチンの分配が進むことが期待されています。

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    レイズ 筒香が新型コロナワクチンの副反応で けが人リストに(4/30)

    2021年4月30日

    大リーグのレイズは4月29日、筒香嘉智選手が新型コロナウイルスのワクチンによる副反応のため、けが人リストに入ったと発表しました。

    球団によりますと、筒香選手は4月28日にワクチンを接種したあと、アスレティックス戦に先発出場し、3打席とも三振に倒れて途中で交代しました。

    翌日の4月29日、筒香選手は気分の悪い状態だったことから、球団はワクチンの副反応のためけが人リストに入ったと発表しました。

    大リーグのけが人リストは通常、最短でも10日間ですが、ワクチンの副反応でリストに入った場合は、回復次第、いつでも復帰できることになっていて、球団は筒香選手が30日にも復帰する可能性があるとしています。

    大リーグは多くのチームで選手やスタッフのワクチン接種が進んでいますが、日本選手が副反応でけが人リスト入りするのは筒香選手が初めてです。

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    米製薬会社 モデルナ “ワクチン生産量増を目指し設備投資”(4/30)

    2021年4月30日

    アメリカの製薬会社モデルナは、新型コロナウイルスワクチンの需要は、2022年以降も続くとして、生産量を2022年に最大30億回分まで増やすことを目指して設備投資を行うと発表しました。
    モデルナのワクチンは日本では現在承認申請中です。

    モデルナは、開発した新型コロナウイルスワクチンについて、これまで「7億回分から10億回分」としていたことしの供給量を「8億回分から10億回分」に増やすとする見通しを4月29日、明らかにしました。

    さらにワクチンの効果を維持するために、追加の接種が必要になるとみられることなどから、2022年、最大で30億回分生産することを目指して設備投資を行い、アメリカやヨーロッパでの生産を増やすとしています。

    モデルナは「接種から12か月後に有効性が低下することを示す研究結果が出てきているほか、変異ウイルスが一度感染した人や接種を終えた人に感染するケースにも対応する必要があり、将来的に変異ウイルスに対応したワクチンの追加の接種が必要になる可能性がある」として、ワクチンの需要は引き続き、高い状態が続くとしています。

    このほか、2度から8度という冷蔵庫の温度で、現在は最長1か月としているワクチンの保存期間は、最長3か月まで延ばすことができることが新たなデータからわかったとして、扱いやすくなることから今後、より小規模な診療所などでも接種が容易になるとしています。

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    仏 外出や営業の制限などを段階的にほぼすべて解除する方針(4/30)

    2021年4月30日

    フランスのマクロン大統領は、新型コロナウイルスの感染対策として行ってきた外出や飲食店の営業の制限などを5月3日から2か月近くかけて、段階的にほぼすべて解除する方針を明らかにしました。

    フランスでは、変異ウイルスの感染拡大を受け、4月初めから全国で外出や小売店の営業を制限してきましたが、感染が抑えられているとして、5月3日からは自宅から10キロ以内としてきた移動の制限を解除するとしています。

    さらにマクロン大統領は4月28日夜、地元紙のインタビューに応じ、ほぼすべての制限を5月3日から6月末にかけて段階的に解除する方針を明らかにしました。

    5月19日からは飲食店の屋外での営業をおよそ6か月ぶりに認めるほか、小売店の営業制限も解除され、博物館や劇場、映画館などは人数を制限して再開できます。

    また、夜間の外出制限も開始時間を2時間遅らせ午後9時からとし、6月末には完全に撤廃します。

    一方で、感染状況が悪化した地域については制限の解除を止める考えも示しました。

    マクロン大統領は「前回、制限を導入した2020年10月との最大の違いは、危機からの脱出を可能にするワクチンがあることだ」と強調しました。

    ただ、フランスでは依然として変異ウイルスによる感染が広がり、1日の感染者数が3万人を超える日も出ていて、各地の病院でつくる連盟は「感染拡大が制御されている状態とは程遠い」と指摘しています。

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    英政府 変異ウイルスに備え ワクチン6000万回分を追加確保(4/29)

    2021年4月29日

    イギリス政府は2021年の秋から始める新型コロナウイルスワクチンの追加の接種に合わせて、ファイザーなどが開発したワクチン6000万回分を確保したと発表し、新たな変異ウイルスへの備えを進めています。

    イギリスでは新型コロナウイルスの3種類のワクチンの接種が進められていて、これまでに人口のおよそ半数が接種を1回受けています。

    イギリス政府はすでに8種類、4億回分以上のワクチンを確保していますが、4月28日、ファイザーなどが開発したワクチンを新たに6000万回分確保したと発表しました。

    ハンコック保健相は「今後の最も大きなリスクは変異ウイルスだ」として、今回の確保は新たな変異ウイルスに備えるためだとしています。

    イギリス政府は感染のリスクが高い人たちを守るため、ことしの秋から追加のワクチン接種を行う計画で、今後詳細を明らかにするとしています。

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    米 ワクチン接種ペース鈍化 接種ためらう人 否定的な人が約4割(4/29)

    2021年4月29日

    新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人が人口の30%に迫るアメリカでは、このところ接種のペースが鈍化していて、接種をためらう人たちに働きかけて接種率を高めることが課題になっています。

    人口の29.5%が接種完了

    アメリカではこれまでに2億3400万回余りの新型コロナウイルスワクチンが接種され、人口の29.5%にあたる9800万人余りが接種を完了しています。

    しかし1日当たりの接種回数は今月中旬に1週間の平均で320万回に達したものの、その後鈍化し、4月23日の時点で247万回に減少しています。

    複数の専門家は65歳以上の高齢者などへの接種が一とおり行き渡り、需要が減少していることが背景にあると指摘していて、実際に追加の供給を辞退する自治体も出ています。

    社会全体で感染を抑えるには接種率をさらに高める必要があると考えられていますが、民間の世論調査では接種をためらう人や否定的な人が全体の37%に上っていて、こうした人たちに働きかけて接種率を高めることが課題になっています。

    ラトガース大学公衆衛生大学院のペリー・ハルキータス教授は「接種を求められることを権利や自由の侵害だとして政治的な問題だととらえる人もいて、接種率を上げることをより困難にしている」と指摘しています。

    そのうえで「接種をためらう人たちの住む地域や社会的な背景に応じたきめ細かい働きかけが必要になってくる」と話しています。

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    米 バイデン大統領 インドにワクチン提供の考えを示す(4/28)

    2021年4月28日

    新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増加し、医療体制が危機的な状況に陥っているインドに対して、アメリカのバイデン大統領は、医療用の酸素などに加えてワクチンも提供したいという考えを示しました。

    インドではこのひと月余りで新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増加し、首都ニューデリーでは医療用の酸素が大幅に不足するなど、医療体制が危機的な状況に陥っています。

    バイデン大統領は4月27日、ホワイトハウスで記者団に対し「インドが必要なひととおりの支援を直ちに送る」と述べ、抗ウイルス薬「レムデシビル」やワクチンの製造に使う装置の部品を提供すると明らかにしました。

    さらに、前日に行ったインドのモディ首相との電話会談について「ワクチンそのものをインドに送ることができる時期について話し合った。私はそうするつもりだ」と述べ、すでに明らかにしている医療用の酸素などに加えてワクチンも提供したいという考えを示しました。

    アメリカは、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンおよそ6000万回分を必要な国に提供する方針をすでに明らかにしていますが、提供先は検討中だとしています。

    インドに対してはイギリスなど各国や企業が支援を本格化させています。

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    米 “接種完了した人 屋外ではマスク着けなくてもよい”新指針(4/28)

    2021年4月28日

    アメリカ政府は、新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人は混雑するイベントを除いて、屋外ではマスクを着けなくてもよいとする新たな指針を明らかにしました。バイデン大統領は「接種すればより多くのことをより安全にできる」と述べ、ワクチンを接種するよう呼びかけました。

    アメリカのCDC=疾病対策センターは、2回接種することになっているワクチンを2回とも接種するなどアメリカで接種が完了した人が人口の30%近くに達したとして、4月27日、マスクの着用に関する新たな指針を発表しました。

    これまでは接種の有無にかかわらず屋外でもマスクを着け、人との距離を取るべきだとしてきましたが、新たな指針では、接種を完了した人は、接種していない人を含む少人数の屋外の集まりや会食に参加する際はマスクを着ける必要はないとしています。

    一方、屋外のライブやパレード、スポーツ観戦など大勢の人が集まるイベントに行く場合はマスクを着用したほうが安全だとしています。

    また接種が完了していない人は、接種が完了した人との少人数の集まりなどを除いて、屋外であっても引き続きマスクを着ける必要があるとしています。

    CDCのワレンスキー所長は「これまでの研究で新型コロナウイルスの感染は多くの場合、屋内で広がることがわかっている。一般的に接種が完了していれば屋外での活動にマスクは不要だ」としたうえで「この先接種する人の割合が増えて状況が改善すればパンデミックの前のように行動できるようになる」と述べ、ワクチンを接種していない場合は接種が完了するまでマスクの着用を続けるよう求めました。

    これについてバイデン大統領はホワイトハウスで演説し「接種を完了したらきょう以降、友人と公園で集まったりピクニックに行ったりする場合マスクを着けなくてよい」と強調しました。

    そのうえで「接種すればより多くのことをより安全にできる。これこそが接種すべき大きな理由だ」と述べ、ワクチンを接種するよう重ねて呼びかけました。

    アメリカでは接種が完了した人は人口の30%近くになっていますが、州によっては接種をためらう人の割合が高い地域もあり、課題となっています。

    バイデン大統領としては、マスクの着用義務の緩和によってワクチンを接種するメリットを強調するとともに、4月29日の政権発足100日を前に感染対策の成果をアピールするねらいもあるとみられます。

    新指針 好意的に受け止める声

    マスクの着用に関する新たな指針について、首都ワシントンでは好意的な声が相次いで聞かれました。

    このうち60代の男性は「すばらしいことです。残念なことに接種をためらう人はまだ多いので、マスクをせずに済むとわかれば、接種を後押しすることにつながると思います」と話していました。

    また20代の女性は「人々が気を緩めず、新型コロナウイルスを深刻に受け止め続けるのであればよいことだと思います。経済が再開し、マスクなしで人の顔が見られるようになるといいです」と話していました。

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    ワクチン接種 注射器の確保が課題 ユニセフは10億本支援計画(4/25)

    2021年4月25日

    世界各地で新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、接種に使う注射器の需要が急増していますが、途上国を中心に自国で製造できない国も多く、ワクチンとともに注射器の確保が課題になっています。こうした中、ユニセフ=国連児童基金は、注射器不足で接種ができない状況を回避しようと、年末までに世界およそ100の国と地域に合わせて10億本を供給する支援に乗り出しています。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、各国が個別に調達しているのに加えて、国連などが主導する国際的な枠組み「COVAXファシリティ」だけでも、年内に20億回分を供給することにしていて、世界で接種が進められています。

    これに伴い、接種に使う注射器の需要が急増していますが、アフリカなどの途上国では自国で製造できない国も多くあります。

    ユニセフでは、新型コロナウイルスの感染拡大前から、はしかなどのワクチン接種に使うため、年間6億本から8億本の注射器を途上国を中心に支援していて、2021年は合わせて20億本近くが必要になると見込んでいます。

    このため、ワクチンが届いても注射器不足で接種ができない状況を回避しようと、年末までに世界およそ100の国と地域に合わせて10億本を供給する支援計画に乗り出し、2021年2月、最初の支援国として世界最貧国の1つ、アフリカ西部のサントメ・プリンシペにも届けられました。

    ただ、ユニセフでは、注射器の供給が世界的に厳しく、ワクチンの効果や接種回数なども明確に定まらない中で、長期の分配計画を立てるのは難しいとしていて、ワクチンに加えて、注射器をどう確保するかが世界的な課題になっています。

    注射器不足のアフリカでは

    アフリカ西部のサントメ・プリンシペは、大西洋に浮かぶ主に2つの島からなる人口およそ22万の国で、これまでに2200人余りが新型コロナウイルスへの感染が確認され、35人が亡くなっています。自然に恵まれたカカオ豆の産地ですが、国連によると世界最貧国の1つで、新型コロナウイルスのワクチンは国連が主導する国際的な枠組みが頼りです。

    ところが、ワクチンの供給を受けるに当たり、接種に欠かせない注射器が不足していることが課題となりました。

    このため、2021年2月、ユニセフ=国連児童基金から無償で注射器の提供を受けました。

    ユニセフでは2021年中に、注射器の製造や確保ができない世界の100の国と地域に合わせて10億本を支援する計画で、サントメ・プリンシペが注射器の支援を受けた最初の国の1つとなりました。

    その後、2万4000回分のワクチンが届き、3月15日から、提供された注射器を使って接種が始まりました。

    これまでに医療関係者など1万2000人に対して1回目の接種が終わり、5月2回目の接種が行われる予定です。

    首都サントメにある保健省が所管する医療品の倉庫には、2回目の接種に使う注射器も保管されていました。

    この注射器は1度しか使用することができない使い捨てです。

    サントメ・プリンシペでは今後も、国際的な枠組みを通じて、人口の20%に相当する人たちへ接種できるだけのワクチンを受け取ることになっていますが、ワクチンに加えて、注射器の確保が引き続き課題になっています。

    これについてネベス保健相は、NHKとのインタビューで「世界的に注射器の確保が難しいことは理解している。しかし、ワクチンがあったとしても、注射器がなければ、接種を進めることができない。2つは密接につながっていて、注射器の確保はワクチン確保と同様に重要だ」として、国際的な支援の必要性を訴えました。

    インドの注射器メーカーは増産体制

    インドでは国内外の大手製薬会社が生産拠点を設けていることから、新型コロナウイルスの感染が拡大する前は、世界のワクチンの6割を生産する「ワクチン大国」で、関連する医療器具の生産も盛んです。

    ニューデリー近郊にある大手医療器具メーカーでは、新型コロナウイルスのワクチンを接種するための注射器の生産を急ピッチで進めています。

    注射器は、インド国内だけでなく、日本に輸出されるほか、ユニセフ=国連児童基金を通じて各国に提供する予定です。

    ただ、現在の生産体制では世界的な需要の高まりに対応できないことから、日本円で15億円余りを投じて製造ラインを増設し、24時間フル稼働させて生産を強化しています。

    その結果、年間5億本だった生産量をこれまでに9億本に増やし、2021年9月までには、12億本に増やす計画です。

    しかし、世界で感染が広がる中、インドと各国とのヒトやモノの移動が制限されているため、増産に必要な設備の輸入や技術者の入国に影響が出ていて、増産計画は数か月の遅れが出る見込みだということです。

    大手医療器具メーカーのラジブ・ナス社長は「注射器の在庫がなくならないように最大限製造能力をあげています。インドの社員が機器の設置などを行っているため、1、2週間で終わる作業が1か月かかることもある」と話していて、感染拡大による影響が懸念されています。

    ユニセフ「需要見通せず」

    注射器の需要が高まっていることについて、ユニセフで注射器の分配を担当するロバート・マシューズ氏はNHKとのインタビューで「スペインや中東、インドなどの製造者と契約を結んで、注射器の生産体制を強化している。今すぐに、どれだけの注射器が必要かというだけでなく、今後数年かけてどのくらいの需要があるのか予測していかなければならない」と話していました。

    またマシューズ氏はワクチンについて「今後も追加で毎年接種し続けなければならないのか。または、1回や2回だけの接種で効果があるのか、これらの問いに対する答えはいまだにない」と述べ、不確定要素が多い中、今の段階で長期的な注射器の分配計画を作っていくのは難しいとの見方を示しました。

    世界のワクチンの接種状況

    イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、世界で新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも1回接種した人の数が人口に占める割合は、主な国で、
    ▼中東のイスラエルが62.1%、
    ▼イギリスが49.2%、
    ▼チリが41.4%、
    ▼アメリカが40.6%で、世界全体では6.9%となっています。

    また、2回接種することになっているワクチンを2回とも接種するなど、接種が完了した人の割合は、
    ▼イスラエルが57.8%、
    ▼チリが31.5%、
    ▼バーレーンが29.8%、
    ▼アメリカが26.7%となっています。

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    アメリカ 製薬大手J&Jのワクチン 接種再開認めると発表(4/24)

    2021年4月24日

    アメリカCDC=疾病対策センターと、FDA=食品医薬品局は4月23日、接種後にまれな血栓症が起きた症例が報告されたために、接種が一時停止されていたアメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンについて、接種の再開を認めると発表しました。

    アメリカCDCとFDAは4月13日、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンの接種を受けた人の中に脳などの血管が詰まる、まれな血栓症が報告されたとして、各州に対し 接種の一時停止を求めました。

    CDCは4月23日、この症例について検討する専門家の委員会を開催し、これまでに接種されたおよそ798万回のうち、ワクチンとの関連が疑われる血栓症の症例は15例だったなどとする調査結果が報告されました。

    こうしたデータをもとに専門家が接種の再開について検討した結果、委員会は「極めてまれに重症の血栓症が起きるリスクがある」と注意喚起をしたうえで、接種を再開するべきだとする結論をまとめました。

    これを受けて、CDCとFDAは共同で声明を発表し、「ワクチンの接種による利益はリスクを上回る」として、医療機関などに、血栓症の対処法などについて周知したうえで接種の再開を認めると発表しました。

    CDCのワレンスキー所長は会見で「ワクチンの接種によって入院する人や死者を減らす利益は大きい」と述べ、改めてアメリカ国民にワクチンの接種を呼びかけました。

    「症例を早期に発見・対処できること周知する」

    CDCとFDAが、接種の再開を認めたことを受けて、ジョンソン・エンド・ジョンソンは「1回の接種で済み、輸送が簡単でかつ予防効果が証明されているこのワクチンは、世界中の人の健康と安全を守ることができる。世界各国の保健当局と連携して医療の専門家や一般の人に対して、このまれな症例が早期に発見可能で対処もできることを周知していく」とする声明を発表しました。

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    ワクチン接種進むイスラエル 10か月ぶり1日の死者数がゼロに(4/24)

    2021年4月24日

    新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、感染者が減っている中東のイスラエルでは4月22日、感染して死亡した人は1人も報告されず、2020年6月以来およそ10か月ぶりにゼロとなりました。

    イスラエルではこれまでに人口の54%にあたる500万人が新型コロナウイルスワクチンの2回の接種を終えていて、2021年1月には1万人を超えていた1日の新規感染者数は、現在100人前後で推移しています。

    イスラエル政府が公開しているデータによりますと、4月23日午後8時現在で、22日に死亡した人は1人も報告されず、2020年6月以来およそ10か月ぶりに、1日の死者の数がゼロとなりました。

    イスラエルでは、これまでにおよそ6300人が新型コロナウイルスに感染して死亡していて、2021年1月の最も多いときでは1日に77人が亡くなりました。

    ワクチンの効果について、イスラエルの保健省は2021年2月、感染して死亡した人の数は、2回目のワクチン接種の2週間後には、接種しなかった人に比べて98.9%少なくなったという分析を明らかにしています。

    イスラエル政府は4月20日、各国政府に先んじて2022年のワクチンの供給を受けることでアメリカの製薬大手、ファイザーと合意したと発表していて、さらなるワクチンの確保にも乗り出しています。

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    インド 新型コロナ 新規感染者30万人超え 1日では世界最多に(4/22)

    2021年4月22日

    新型コロナウイルスの感染が急速に拡大しているインドで、1日の新たな感染者が初めて30万人を上回り、1日当たりの感染者としては世界で最も多くなったということです。

    インド政府は4月22日、新たに31万4835人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表しました。

    インドで1日の感染者が30万人を超えるのは初めてで、ロイター通信は、1日の感染者としては、アメリカでことし1月に確認されたおよそ30万人を上回り、世界で最も多いと伝えています。

    また、1日の死者も国内では、これまでで最も多い2104人になりました。

    首都ニューデリーや最大の商業都市ムンバイでは、病床の空きがほとんどなく、医療用の酸素も不足するなど、医療体制はひっ迫した状態だということです。

    モディ首相は4月20日に行った演説で、経済への影響を考慮して、厳しい外出制限措置は最後の手段にすべきだと述べていますが、すでにニューデリーやムンバイなどでは、それぞれの地方政府の判断で厳しい外出制限が始まっています。

    また、ワクチンを少なくとも1回接種した人は、人口の1割未満にあたる1億人余りとなっていて、政府は5月から接種対象を、これまでの45歳以上から18歳以上に拡大し、ペースを加速させる考えですがワクチンの不足も懸念されていて、課題も残っています。

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    バイデン大統領 ワクチン2億回分の接種 前倒しで達成見通し(4/22)

    2021年4月22日

    アメリカのバイデン大統領は、政権発足から100日で達成を目指すとしていた、新型コロナウイルスワクチンの2億回分の接種を、前倒しで達成できる見通しだと発表しました。今後、接種のさらなる拡大を目指し、企業の従業員が接種を受けやすくする仕組みを導入することを明らかにしました。

    バイデン大統領は4月21日、ホワイトハウスで会見し、来週29日の就任100日までの達成を目指すとしていた、新型コロナワクチンの国内での2億回分の接種を、前倒しで達成できる見通しだと発表しました。

    アメリカでは接種が急速に進んでいて、CDC=疾病対策センターによりますと21日の時点で、少なくとも1回の接種を受けた人の割合は65歳以上で80.6%、18歳以上でも51.5%となっています。

    そして今後、接種のさらなる拡大を目指し、企業の従業員が接種を受けやすくする仕組みを導入することを明らかにしました。

    バイデン大統領は「ワクチン接種という愛国的な義務を果たすために、給与が減るようなことがあってはならない」と述べ、9月末までの間、従業員が500人未満の企業に対し、従業員が接種のために仕事を休むなどした際の給与に相当する税金を控除するとしています。

    そのうえで「いま気を緩めれば、ウイルスはわれわれがこれまでに成し遂げた前進を消し去ってしまうだろう」と述べ、引き続きマスクを着用するなど感染対策の徹底を呼びかけました。

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    EU当局 J&Jワクチン「ごくまれな副反応として記載すべき」(4/21)

    2021年4月21日

    EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は、アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンの接種後に脳などの血管が詰まる、血栓が確認された症例について「ごくまれな副反応として記載されるべきだ」とする結論をまとめました。一方で「このワクチンによる利益は副反応のリスクを上回る」と強調しています。

    このワクチンの接種はヨーロッパでは本格的には始まっていませんが、アメリカでは700万人以上が接種していて、接種後、脳の血管などに血栓が確認されたという報告が8例あり、このうち1人が死亡しています。

    調査を行ったEMA=ヨーロッパ医薬品庁は4月20日「これらの症例はごくまれなワクチンの副反応として記載されるべきだ」とする結論をまとめました。

    血を固まらせる役割を担う血小板が減る一方で血の塊ができるというまれな症状で、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種後に報告された血栓の症例と似ているとしています。

    免疫反応によるものと考えるのが妥当だとしていますが、詳しい原因はわかっていないということです。

    8例はいずれも60歳未満で接種後3週間以内に起き、多くは女性でしたが、現時点では特定の年代や性別でリスクが高まるのかは確認されていないとしています。

    EMAは「このワクチンによってもたらされる利益は副反応のリスクを上回る」として、接種が進められることを前提に、接種後、3週間以内に息切れや胸の痛み、脚のむくみなどの症状がみられた場合は、ただちに医療機関を受診する必要があるとしています。

    ジョンソン・エンド・ジョンソン「医療従事者に注意喚起を行う」

    EMA=ヨーロッパ医薬品庁の発表を受けて、ジョンソン・エンド・ジョンソンは「まれに起きる健康に害のある出来事として、医療従事者に血栓症の診断や対処法に関する注意喚起を行う」とする声明を出しました。

    声明では「製品を使う人の安全と安心は私たちの最優先事項だ。1回の接種で済み、簡単に輸送できるワクチンがもたらす利益を私たちは信じている。今後も安価なワクチンの公平な分配に尽力する」としています。

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    米CDC J&Jワクチンで緊急委員会 接種継続か議論も結論出ず(4/15)

    2021年4月15日

    アメリカで製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンを接種した人の中でまれな血栓症の患者が複数報告されたことを受けて、アメリカCDC=疾病対策センターは緊急の専門家委員会を開き、接種を続けるかどうかについて議論しましたが、結論は出ず、来週以降、再度委員会を開いて判断することになりました。

    ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンは接種を受けた後で脳の静脈に血栓ができる、まれな種類の血栓症の報告が6例あったことが明らかになり、CDCとFDA=アメリカ食品医薬品局が接種を行う各州に対して調査が終わるまで、接種を一時、停止するよう求めています。

    CDCは4月14日、今後もこのワクチンの接種を推奨するかどうか検討するため、緊急の専門家の委員会を開き、意見を求めました。

    委員会では、血栓症になった人の年齢が比較的若いことから年齢を限定して接種を再開することなどが議論されましたが、「より多くのデータがそろうのを待つべきだ」という意見が多数を占めたため、この日の委員会では結論を出さず、データが集まるのを待って来週以降、再度議論したうえで判断することになりました。

    このため、アメリカでのジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンの接種の一時停止は、しばらく続く見通しです。

    CDC所長“接種再開は科学的調査に基づき判断”

    CDCのワレンスキー所長は14日に開かれた記者会見で、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンの接種を一時停止するという判断について「720万回以上接種されている中で6例しか報告されておらず、極めてまれにしか起こらないものと考えているが、発見しづらい可能性もあるため、ほかにも症例がないか、医療機関などからのデータの収集を急ぐ」と述べ、接種を再開するかどうかは科学的な調査に基づいて判断すると強調しました。

    そのうえで「アメリカで接種されているほかの2種類のワクチンはこのワクチンとタイプが違い、血栓症の報告はない」として、ファイザーなどのワクチンに同様の懸念はないとしたうえで、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンの接種を予約した人は別のワクチンにかえられるよう、各州の保健当局などと調整するとしています。

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    J&Jワクチン 南アフリカやスウェーデンは接種一時停止の方針(4/15)

    2021年4月15日

    アメリカで製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスのワクチンを接種した人の中でまれな血栓症の患者が複数報告されたことを受けて、南アフリカやスウェーデンはこのワクチンの接種を一時停止する方針を示しました。

    ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンについてアメリカのCDC=疾病対策センターとFDA=食品医薬品局は、国内でこのワクチンを接種した人の中で、脳の静脈に血栓ができる、まれな種類の血栓症の報告が6例あったことを明らかにし、接種を行う各州に対して調査が終わるまで、接種を一時、停止するよう求めています。

    これを受けて、このワクチンの接種をすでに始めている南アフリカは、ワクチンと血栓症との因果関係が解明されるまで接種を一時、停止することを明らかにしました。

    また、近く本格的に接種が始まるヨーロッパでは、北欧のスウェーデンの保健当局がアメリカなどでの調査の結果が出るまで接種を始めない方針を示し、イタリアの保健当局も同様の対応を打ち出しています。

    一方でフランスは、これまでに届いた20万回分について来週から予定通り接種を進めるとしていて対応が分かれています。

    ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンをめぐりEMA=ヨーロッパ医薬品庁も接種と血栓との関係を調べていて来週にも調査結果を公表する見通しです。

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    デンマーク アストラゼネカなどが開発のワクチンを使用中止に(4/15)

    2021年4月15日

    北欧のデンマークは、アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、接種後に血栓が確認された例が報告されたことを受け、このワクチンの使用を中止することを明らかにしました。

    アストラゼネカなどが開発したワクチンをめぐっては、EMA=ヨーロッパ医薬品庁が4月7日、接種と、接種後に確認された血栓に関連性がありうるとする調査結果を発表し、ヨーロッパでは接種に年齢制限を設けるなどの動きが出ています。

    デンマークの保健当局は4月14日、独自に検討を進めた結果、副反応のリスクがありうるとしてこのワクチンの使用を中止し、ファイザーなどのワクチンによる接種を進めていくことを明らかにしました。

    地元メディアは今回の決定によって、接種計画が数週間遅れるという見通しを伝えています。

    アストラゼネカのワクチンについてEMAは、接種による利益がリスクを上回るとして今後も接種を進めることが重要だという見解を示していますが、デンマークの保健当局は、感染状況がある程度抑えられていることや、感染した場合に重症化するリスクの高い高齢者の多くがすでに接種を受けていることなどを考慮した上での判断だと説明しています。

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    仏 ワクチン2回目までの間隔 最大6週間に延長 1回目をより多く(4/15)

    2021年4月15日

    フランス政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けてアメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンについて、少なくとも1回は接種した人を増やすため、2回目までの間隔を最大6週間に延ばしました。

    フランスでは新型コロナウイルスの感染が拡大し、死者は10万人に迫っていて、4月から3度目となる外出制限を全土で行うとともに、大規模な会場を各地に設けてワクチン接種を加速させています。

    フランス政府は4月14日、ファイザーのワクチンについて1回目と2回目の接種の間隔を最大で4週間から、6週間に延ばしました。

    できるだけ早く多くの人が1回目の接種を受けられるようにするのがねらいです。

    フランスはこれまでに人口の17.4%にあたる1160万人を超える人が1回目の接種を終えていますが、今回の変更で、5月後半には1回目の接種を受けられる人が180万人増えるとしています。

    このワクチンについて製薬会社では、接種の間隔を3週間としていますが、ヨーロッパでは間隔を延ばす動きが相次いでいます。

    2回目の接種の時期について、イギリスは遅くとも12週間後までとしてきたほか、ドイツでは専門家委員会が6週間後に行うよう勧告し、イタリアでは最大で6週間後まで延ばせるようになっています。

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    米 J&Jワクチン接種の一時停止求める “血栓症”の複数報告で(4/14)

    2021年4月14日

    アメリカCDC=疾病対策センターとFDA=食品医薬品局は、4月13日、共同で声明を発表し、製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンを接種した人の中でまれな血栓症の患者が複数報告されたとして、調査を終えるまで各州にこのワクチンの接種を一時停止するよう求めました。

    ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは2021年2月にFDAから緊急使用が許可され、これまでにアメリカで680万回以上接種されています。

    CDCとFDAは4月13日、共同で声明を発表し、アメリカ国内でこのワクチンを接種した人の中で、脳の静脈に血栓ができる、まれな種類の血栓症の報告が6例あったことを明らかにしました。

    患者は18歳から48歳のいずれも女性で、接種後6日後から13日後に発症したということです。

    また、血液の成分の1つ、血小板が減っていたということです。

    血小板の減少は、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスワクチンを接種したあとに血栓が確認された患者でも報告されています。

    CDCは14日、このワクチンについての緊急の専門家会議を開き、これらの症例について検討するほか、FDAも分析を行うことにしていて、接種を行う各州に対し、これらの調査が終わるまで、このワクチンの接種を一時、停止するよう求めています。

    FDAの幹部は電話で会見し「アメリカにとってワクチンの安全は最優先の事柄で、深刻に受け止めているがこれらの症状は極めてまれだと考えている」と話しています。

    一方、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、今回の措置を受けて「私たちは製品を使う人の安全と安心を最優先に考えている。医療の専門家や保健当局と連携しつつ、医療従事者や国民に情報を公開していく」とコメントしています。

    加藤官房長官「厚生労働省でも情報収集」

    加藤官房長官は午前の記者会見で「現在、厚生労働省でも情報収集を図っている。日本では今、国内の治験が実施されており、承認に向けての準備中と承知しているが、申請がなされれば、国内で医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構で、今回の情報も含めた最新の科学的知見に基づき、安全性、有効性を判断していくことになると思う」と述べました。

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    イギリス ワクチン接種の対象を40代以下に(4/14)

    2021年4月14日

    イギリスでは、50歳以上などを対象に優先的に進めていた新型コロナウイルスのワクチンの1回目の接種がほぼ終わったことから、今後、対象を40代以下に広げて進めることになりました。

    イギリスでは2020年12月から、ウイルスに感染した場合にリスクが高い医療従事者や50歳以上を優先して、4月中旬までにワクチンの接種を1回行うことを目標に計画を進めてきました。

    イギリス政府は4月13日、対象としてきたおよそ3200万人への接種をほぼ終えたと発表し、このうち人口の多くを占めるロンドンのあるイングランドでは50歳以上のおよそ95%が接種を受けたということです。

    今後は対象を40代以下に広げることにしていて、2021年7月末までには18歳以上のすべての人に1回の接種を行いたいとしています。

    イギリスでは、変異ウイルスの感染拡大で1日の新規感染者数が一時6万人を超えていましたが、その後大きく改善し、4月12日からは小売店の営業が再開するなど、感染対策が段階的に緩和されています。

    ジョンソン首相は4月13日、ワクチンの接種が順調に進んでいることを歓迎しながらも「感染者がここまで大きく減ったのは、厳しい感染対策によるところが大きい。規制が緩和されれば感染が拡大するのは避けられない」などと述べ、接種に過度な期待を持つことなく、市民みずから気をつけて行動する必要があると注意を促しました。

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    イラン 東京五輪・パラ出場予定選手に特例でワクチン優先接種(4/14)

    2021年4月14日

    中東のイランで、東京オリンピック・パラリンピックに出場する予定の選手らに対し、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。イランでは感染が拡大する中、国民のほとんどがワクチンを接種しておらず、特例として認められた形です。

    対象は300人近く

    イランの首都テヘランでは4月13日、東京オリンピック・パラリンピックに出場する予定の選手やコーチ、それに取材で同行する記者など300人近くを対象に新型コロナウイルスのワクチン接種が行われました。

    会場にはバスケットボールや空手、テコンドーなどの選手らが次々に訪れ、ひとりずつワクチンの接種を受けていました。

    選手たちは今後1か月以内に2回目の接種を行うということです。

    21歳の空手の女子選手は「感染が気がかりだったが、心を落ち着けて試合に向かうことができる。オリンピックではベストな結果を勝ち取りたい」と話していました。

    また、32歳のテコンドーの男子選手は「安心して練習に励むことができる。ワクチンの接種は良いことだ」と話していました。

    イランでは1日あたりの新規感染者数が、4月13日には2万4000人を超え、これまでで最も多くなっていますが、ほとんどの国民はワクチンを接種しておらず、東京オリンピック・パラリンピックに出場する選手らへの接種は特例として認められた形です。

    イラン国民 ワクチン接種に理解示す

    東京オリンピック・パラリンピックに出場する選手らへのワクチン接種についてイランでは国民からは理解を示す声が聞かれます。

    首都テヘランに暮らす58歳の男性は、「選手たちはワクチンを接種し、安心して大会にのぞみよい成果を持ち帰ってほしい」と話しています。

    また、39歳の会社員の女性は、「世界中でアスリートたちも新型コロナウイルスに感染しているわけで、選手たちの安心のためにも、接種すべきだ」と話していました。

    35歳の男性は「確かに選手たちは接種の優先順位のトップに入ってなかったかもしれないが国際的な大会に出場するのだから、ワクチン接種は正しいと思う」と話し、選手たちへのワクチン接種に理解を示していました。

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    イスラエル 15歳以下へワクチン接種進める方針示す(4/13)

    2021年4月13日

    新型コロナウイルスのワクチンの接種が世界的に速いペースで進むイスラエルでは、人口の半数がすでに2回の接種を終え、感染者や死者の数が減少傾向となっていて、経済活動の再開が進んでいます。イスラエル政府は15歳以下への接種も進める方針を示していて、今後、多くの人が免疫を持つことで大きな流行を防ぐ、いわゆる「集団免疫」を獲得できるかが焦点です。

    集団免疫獲得できるか焦点

    イスラエルでは2020年12月に新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まり、イスラエル政府によりますとこれまでに人口の52%にあたる492万人が2回の接種を受け、60歳以上で8割以上、20代で6割以上が接種を終えています。

    接種が進む中、感染者数は減少し、2021年1月中旬に1万人を超えていた1日の新規感染者数は、現在およそ200人前後で、重症患者や死者の数も減少傾向となっています。

    ただ、イスラエル保健省は11日、ワクチン接種によって多くの人が免疫を持つことで大きな流行を防ぐ、いわゆる「集団免疫」には現時点では至っていないとの考えを示しました。

    そして、人口のおよそ3割が15歳以下で、接種対象ではないとしたうえで「集団免疫を獲得するには、一定数の子どもへの接種が必要だ」と述べ、規制当局による許可が下り次第、12歳から15歳への接種を行う方針を明らかにしました。

    15歳以下への接種をめぐっては、アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックが12歳から15歳への接種について安全性と有効性が確認できたとして、アメリカの規制当局に使用許可の拡大を申請したと発表しています。

    ただ、イスラエルでは、接種を終えた保護者でも、子どもへの接種については慎重な考えを示す人がいることから、専門家は、接種を進めるには政府による透明性の高い説明が不可欠になると指摘しています。

    イスラエルでは2021年2月、接種を終えたことを示す証明書「グリーン・パス」を導入し、証明書を示すことを条件に店内での飲食やイベントへの参加を認めるなど、経済活動の再開が進んでいて、今後15歳以下への接種によって集団免疫を獲得できるかが焦点となっています。

    保護者の反応はさまざま

    イスラエル保健省は、12歳から15歳を対象に新型コロナウイルスのワクチンを接種する方針を示していますが、保護者の反応はさまざまです。

    エルサレムに住むペリー・メンデルボイムさんは、妻や17歳の娘とともに、2回のワクチン接種を終え、家族はイベントに参加したり、ロックコンサートを楽しんだりしているということです。

    メンデルボイムさんは15歳以下への接種が始まれば、13歳の息子にも接種をさせたいと考えていて「専門家や医師が安全だと認めれば、接種を受けさせたい。みんなが通常の生活に戻るために必要であれば、仕方がないと思います」と話していました。

    一方、同じエルサレムに住むイファット・コーヘンさんも、夫とともに2回の接種を終えていますが、12歳と14歳の子どもたちへの接種には、慎重な考えです。

    コーヘンさんは「ほかの国も子どもへの接種を行うのであれば、接種を受けさせるかもしれませんが、ファイザーだけが安全という段階では、当面は待ちたいです」と話していました。

    保健省「集団免疫まだ至らず」

    イスラエル保健省で公衆衛生部門のトップを務めるシャロン・アルロイプライス氏は、4月11日NHKとのインタビューに応じました。

    この中でアルロイプライス氏はワクチン接種によって多くの人が免疫を持つことで大きな流行を防ぐ、いわゆる「集団免疫」について「マスクや接種証明書などの制限がなく人々が出歩くことができ、学校も完全に再開し、すべてが以前のような状況になれば、集団免疫を獲得したことになるのであろうが、そのような状態ではない」と述べ、現時点では至っていないとの考えを示しました。

    アルロイプライス氏は集団免疫を獲得するには、15歳以下の人口の一部もワクチン接種を受ける必要があるという考えを示し、省内に外部の小児科医や感染症の専門家などで構成する特別チームをすでに立ち上げ、接種の方針などについて協議を進めているとしたうえで、規制当局による許可が下り次第、12歳から15歳への接種を行う方針を明らかにしました。

    また、15歳以下への接種に慎重な考えを持つ保護者がいることについても理解を示し「接種を義務化することはなく、最後は保護者の選択だ。保健省としては、これまで同様、ワクチンが安全で効果があるというデータを科学的に示していきたい」と説明責任を果たすことを強調しました。

    医療保険機構「透明性の高い説明が不可欠」

    イスラエルでワクチン接種を担う医療保険機構の幹部、ラン・バリサー氏は4月11日、NHKのインタビューに応じ、15歳以下への接種を進めるには政府による透明性の高い説明が不可欠になると指摘しました。

    バリサー氏は、イスラエルで感染者などが減少傾向となっていることについて、優先的に接種が行われた60歳以上で感染者の割合が先に減少し、若い世代の感染もその数週間後に接種が始まり減少傾向に転じたとして、ワクチン接種が大きく影響しているとの見方を示しました。

    ただ、イスラエルでは多くの人が免疫を持つことで大きな流行を防ぐ、いわゆる「集団免疫」の獲得には至っていないとし、現在の減少傾向はワクチン接種に加え、マスクの着用などの感染予防対策によるもので、状況によっては再び感染が拡大する可能性もあると分析しています。

    バリサー氏は集団免疫を獲得するには、15歳以下への接種も必要だとの考えを示し「政府には極めて高い透明性が求められる。わかっていることと、わかっていないことを明確にして論理的な説明を行い、あらゆる科学的なデータや、専門家のアドバイスに基づいて、保護者が接種の是非について判断できるようにするべきだ」と指摘しました。

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    新型コロナ ワクチン 世界で4億人超が1回以上接種(4/12)

    2021年4月12日

    世界で新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも1回接種した人の数は4億人を超えています。

    イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、世界で新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも1回接種した人の数は、具体的な内訳が確認できない国や地域を除いて、4月10日の時点で、4億3096万人となっています。

    このうち最も多いのは
    ▽アメリカで1億1714万人、次いで、
    ▽インドが8889万人
    ▽イギリスが3201万人
    ▽ブラジルが2051万人となっています。

    また、少なくとも1回接種した人が人口に占める割合は、
    ▽中東のイスラエルが61.4%
    ▽イギリスが47.1%
    ▽チリが38.5%
    ▽アメリカが35%で、世界全体では5.5%となっています。

    このうちファイザーなどが開発したワクチンの接種が2020年12月に始まったイスラエルでは、新たな感染者数の減少傾向が2か月以上続いていて、ジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、4月11日の時点の1日当たりの新たな感染者数は120人となっています。

    また、このワクチンの接種を世界で最も早く始めたイギリスでも新たな感染者数の減少傾向が続いていて、人口の大部分を占めるイングランドでは、1回目の接種を受けた人は60歳以上の95%にのぼっています。

    このほか、2回接種することになっているワクチンを2回とも接種するなど、接種が完了した人の割合は、
    ▽イスラエルが56.9%
    ▽チリが24.3%
    ▽バーレーンが22.1%となっています。

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    韓国 アストラゼネカのワクチン 30歳未満除外し接種再開へ(4/11)

    2021年4月11日

    ワクチンの接種と、接種後に確認された血栓に関連性がありうるとする調査結果が出たアストラゼネカなどの新型コロナウイルスワクチンについて、韓国政府は、30歳未満を除外したうえで見合わせていた接種を再開することを決めました。

    イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンをめぐっては、EMA=ヨーロッパ医薬品庁が4月7日、ワクチンの接種と、接種後に確認された血栓に関連性がありうるとする調査結果を出しました。

    このワクチンについて韓国政府は、60歳未満の接種を見合わせ、専門家らの意見も踏まえて対応を検討してきましたが、4月11日午後記者会見し、4月12日から接種を再開すると発表しました。

    EMAやイギリスの規制当局がワクチンによる利益のほうがリスクを上回るとしていることなどを踏まえ、接種を進め、死者や感染者を減らすことが何より重要だと判断したとしています。

    ただ、30歳未満は、接種のリスクと比べて利益が大きくないとして、このワクチンの接種の対象からは除外されるということです。

    また、血栓を早期に発見し、治療するための仕組みをつくり、迅速な情報共有を進めていくとしています。

    韓国では、これまでに115万人以上が少なくとも1回の接種を受け、使用されたワクチンの75%がアストラゼネカとなっています。

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    ワクチン接種進むイギリス 感染状況改善し高齢者の活動活発に(4/10)

    2021年4月10日

    イギリスでは、新型コロナウイルスのワクチンの接種が高齢者などを優先に進められています。すでに人口の半数近い3100万人以上が1回目の接種を受けていて、感染状況の改善で厳しい外出制限が段階的に緩和される中、高齢者の日常生活も徐々に戻り始めています。

    イギリスでは2020年12月から高齢者などを優先にワクチンの接種が始まり、これまでに人口のおよそ47%に当たる3100万人以上が1回目の接種を受けています。

    人口の大部分を占めるイングランドでは、1回目の接種を受けた人は60歳以上の95%に上るなど接種は順調に進んでいます。

    現在、イギリスで接種されている3種類のワクチンのうち、ファイザーとビオンテックが開発したワクチンとアストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンについて、イングランドの保健当局は2021年2月中旬までのデータを分析しました。

    その結果、80歳以上の高齢者が重症化して入院することを防ぐ効果は1回目の接種から3、4週間の時点で80%を超えるとしています。

    また、3月末までにワクチンを接種した人のデータを分析したところ、60歳以上の人およそ1万人が死亡するのを防ぐことができたとしています。

    イングランドの保健当局の統計では、65歳以上の1日の入院患者数は1月中旬には700人を超えていましたが、厳しい外出制限などの効果もあって3月初めにはおよそ7分の1まで減少しています。

    ウイルスに感染してこれまでに12万人を超える人が亡くなっているイギリスでは、厳しい外出制限などの規制がたびたび導入されてきました。

    特に感染した場合のリスクが高い高齢者からは、ワクチン接種によって「守られていると感じる」とか、「ウイルスを怖がらずに自信をもって行動できるようになった」などという声が聞かれます。

    イギリスでは、ここ数か月で感染者が大きく減少し、ワクチンの効果が確認されていることも受け、3月からは厳しい規制が段階的に緩和されていて、町なかや公園を家族や友人と散歩したり、スポーツを楽しんだりと高齢者の行動も活発になっています。

    一方で政府は、ワクチンの効果を過信せず、引き続き、手洗いをしたり人との距離を取ったりするなど個人の対策の徹底を呼びかけています。

    国外旅行の再開に期待

    ワクチンの接種が広がるにつれてイギリスの人たちの間で関心が強まっているのが国外への旅行です。

    今はまだ原則として禁止されていますが、再開を見越して予約をする人たちもいて、業界団体によりますと、接種が進んだ世代の人たちが多いといいます。

    イギリス南部に住む70歳代のスティーブ・ルイスさんもそのひとりで、6月にギリシャ旅行を予定しています。

    ルイスさんは「2回目のワクチン接種は4月29日の予定です。そこから旅行まで2か月あるので、効果が出るまでには十分だと思います」と話していました。

    ただ旅行先の国の多くは、まだワクチン接種がイギリスほど進んでいません。

    英国旅行業協会の広報担当者、ショーン・ティプトンさんは「旅行に求められるのは安全ですから、ワクチンの接種がイギリスだけでなく世界各地の旅行先に広がることが非常に重要です」と話していて、感染拡大前のように多くの人が国外旅行に出かける状態になるまでには時間がかかるという見方を示しています。

    ロンドンでは段階的に規制緩和 日常戻り始めた高齢者

    感染状況の改善に加え、ワクチンの接種が順調に進んでいることからロンドンでは2020年12月下旬から続いてきた厳しい規制の段階的な緩和が進められています。

    これに合わせ、買い物などのために街を歩いたり、公園を家族や友人と散歩したりする高齢者の姿も目立つようになりました。

    ロンドン中心部の公園を散歩していたいずれも73歳の夫婦は「気持ちが少し楽になった気がする。ニュースでも感染状況が改善していると伝えられていて、よかった。孫にも8か月くらい会っていないし、6人目の孫がきのう生まれたので早く会いたい」などと話していました。

    規制の緩和を受けて2週間ほど前から再開したロンドンにあるテニスクラブではワクチンを接種した60歳以上の高齢者たちがプレーを楽しんでいました。

    71歳の男性は「厳しい外出制限のためにここでテニスをプレーできないのが本当に残念だった。ふだんできていたことが突然できなくなってしまった」と振り返ったうえで、「接種したことで守られているように感じる。自信をもって行動できる。4月予定している2回目の接種が楽しみだ」と明るい表情で話しました。

    また、83歳の女性は「テニスをしたり、皆で集まったりしたいとずっと願っていた。接種したことで守られていると感じるけれど食料品は配達で購入し、マスクも着用するなど気をつけている。少しずつ日常が戻ってきてほしい」と話していました。

    高齢者たちは、プレーの合間には、ベンチに座りおしゃべりをするなど、これまでのオンラインの会話とは違った久しぶりのひとときを堪能していました。

    2020年、ウイルスに感染し、抗体が確認されているものの医師の勧めで接種した73歳の女性は「2倍の防御があるように感じる。20年以上、毎年、ポルトガルに旅行してきたので、早く行きたい」と話し、現在は禁止されている海外への観光旅行への期待を語っていました。

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    “アストラゼネカのワクチン接種で血栓” 医学雑誌に論文掲載(4/10)

    2021年4月10日

    アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種後に血栓などが確認された症例を調べた結果、血栓はワクチンの接種によって生じたとみられるとする研究結果を海外の2つの研究グループがそれぞれまとめ、4月9日、論文がそろってアメリカの医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載されました。

    このうちドイツとオーストリアの研究グループは、接種後に脳の血管が詰まるなど血栓による病気を発症したり、その疑いがあると診断されたりした28人の血液を調べたところ、血を固める役割を担う血小板の働きを高める抗体の量が全員増えていたとする研究結果をまとめました。

    またノルウェーの研究グループも、接種後に血栓の症状を示した5人の血液を調べたところ、全員血小板が減る一方、血小板の働きを高める抗体の量は増えていたとする研究結果をまとめました。

    血を固まりにくくする薬を投与した結果、血小板が減る一方、逆に血栓ができて血管が詰まる病気は「ヘパリン起因性血小板減少症」と呼ばれ、まれに起きることが知られていますが、いずれの研究でも血栓ができる前には血を固まりにくくする薬は投与されていなかったということです。

    2つの研究グループは、抗体の特徴などからワクチンの接種によってこの病気と似た現象が起きたとみられるとしています。

    イギリスでは3月末までにこのワクチンが2020万回分接種され、接種後に血小板の減少とともに血栓が確認された人は79人に上り、19人が死亡したと報告されています。

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    J&Jのワクチン「接種後に血栓 複数例確認」 EUが調査開始(4/10)

    2021年4月10日

    EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は、アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、接種したあとに血栓が確認された例が複数あったとして、調査を始めたことを明らかにしました。
    一方で「現段階では接種と血栓に関係があるかどうかは不明だ」としています。

    EMA=ヨーロッパ医薬品庁は4月9日、ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した新型コロナウイルスのワクチンを接種したあとに、血の塊である血栓ができたり、血管が詰まったりしたことが確認されたという報告について、調査を始めたと発表しました。

    血小板の減少を伴う症状の重い血栓の報告が4例あり、1例は臨床試験で、3例は3月接種が始まったアメリカでそれぞれ確認され、このうち1人が死亡したということです。

    EMAは「現段階では接種と血栓に関係があるかどうかは不明だ」としています。

    EMAによりますと、現在、このワクチンが緊急使用の許可のもとで使われているのはアメリカだけで、EUでは販売許可は出ているものの、まだ接種は始まっていないということです。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、EMAが4月7日、アストラゼネカなどが開発したワクチンと血栓の間に関連性がありうるとする調査結果を発表し、各国で年齢制限を設けるなど対応が相次いでいます。

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    ファイザー ワクチンの緊急使用許可 12~15歳への拡大を申請 (4/10)

    2021年4月10日

    アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックは、現在、新型コロナウイルスワクチンの緊急使用の許可の対象になっていない12歳から15歳の子どもについても、安全性と有効性が確認できたとして、アメリカの規制当局に対し、使用の許可を拡大するよう申請したと発表しました。

    ファイザーなどが開発したワクチンは、現在、16歳以上を対象に緊急使用の許可が出されていますが、15歳以下の年齢の子どもでも使用できるように、臨床試験が行われています。

    3月31日に公表された12歳から15歳を対象にした臨床試験の結果、ワクチンを接種したグループでは新型コロナウイルスによる感染症を発症した子どもはいなかったほか、副反応も、16歳から25歳が対象となった臨床試験でみられたものと、おおむね一致したとされています。

    会社は、12歳から15歳については安全性と有効性が確認できたとして、アメリカの規制当局に対し、使用の許可を拡大するよう申請したと発表しました。

    アメリカでは、学校での対面授業を再開するうえで子どもへのワクチンの接種が課題とされていて、CDC=疾病対策センターのワレンスキー所長は4月7日、アメリカメディアでのインタビューで「FDAの許可が出れば、5月中旬には12歳から15歳への接種が可能になる」という見通しを示しています。

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    “アストラゼネカなど開発ワクチンと血栓に関連性”で各国対応(4/9)

    2021年4月9日

    EMA=ヨーロッパ医薬品庁が、アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスワクチンの接種と、接種後に確認された血栓に関連性がありうるとする調査結果を発表したことを受け、接種に年齢制限を設けるなど各国の対応が相次いでいます。

    アストラゼネカなどが開発したワクチンをめぐっては、接種後に血栓などが確認された例が報告されていて、EMA=ヨーロッパ医薬品庁は現地時間の4月7日、ワクチンと血栓の間に関連性がありうるとの認識を示しました。

    これを受けてイタリアはアストラゼネカのワクチンの接種を60歳以上に限るとし、すでに1回接種している場合は60歳未満でも2回目の接種を進めるとしています。

    また、スペインもアストラゼネカのワクチンの接種は60歳から65歳の人たちに限ると発表しました。

    さらにオーストラリアは、50歳未満の人に対しては禁止はしないもののファイザーのワクチンを優先して接種するよう推奨すると発表しました。

    ただし50歳未満でもすでに1回接種していて深刻な副反応が出ていなければ2回目の接種を受けられるとしています。

    このほかイギリスの当局も4月7日、記者会見し、血栓が確認された例について検証を進めた結果、30歳未満に対しては別のワクチンの接種を勧めると発表しました。

    ただ、イギリスとEUいずれの規制当局も、接種による利益がリスクを上回るとして今後も接種を進めることが重要だとの見解を示しています。

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    アストラゼネカワクチン “利益”と“リスク”は?(4/8)

    2021年4月8日

    イギリスの製薬大手、アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチン。日本国内でも使用に向けた承認申請が行われています。血栓との関係が指摘されていますが、実際のところどうなのでしょうか。

    世界70超の国と地域で使用 日本でも承認申請中

    アストラゼネカのワクチンは「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれるタイプで、新型コロナウイルスのたんぱく質を作る遺伝子を無害な別のウイルスに組み込み、そのウイルスごと投与します。

    世界の70を超える国と地域で使われ、アストラゼネカは日本政府との間で6000万人分を供給する契約を結び、厚生労働省に対して承認を求める申請を行っています。

    接種後に「血栓」報告 接種見合わせの動きも

    このワクチンをめぐって2021年3月、EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局などから接種後に血の塊、「血栓」などが確認されたケースが報告され、ドイツやフランスなどヨーロッパ各国で予防的な措置として一時、接種を見合わせるなどの動きが出ました。

    接種のメリットが感染リスクを上回る

    これについてEMA=ヨーロッパ医薬品庁の調査結果が2021年4月7日公表されました。

    EMAによりますと接種後に血栓が起きたケースの多くは1回目の接種から2週間以内の60歳未満の女性で報告されているということです。

    ワクチンの免疫反応が関係している可能性はあるものの非常にまれなため、新型コロナウイルスに感染するリスクを考えると接種するメリットのほうが上回るとしています。

    また、イギリスの規制当局の調査では2021年3月末までにイギリスで行われた2020万回分の接種のうち、接種後に血栓が確認されたのは79人で、このうち19人が死亡していました。

    死亡した19人のうち50歳未満が11人、この中の3人は30歳未満でした。

    各国は接種年齢を制限

    こうした調査結果を受けて、各国はどのように対応しようとしているのでしょうか?

    イギリス政府は30歳未満に対しては別のワクチンの接種を勧めると発表しました。

    さらにイタリアではアストラゼネカのワクチンについて接種を60歳以上に限ると発表しました。ただ、1回目の接種を受けた人については60歳未満であっても2回目の接種を進めるとしています。

    また、スペインでも60歳から65歳の人たちに限ると発表しました。

    このほかフランスが55歳以上に、ドイツが60歳以上に接種を進める方針を明らかにしています。

    WHO「死亡リスクと比較して評価を」

    イギリスの規制当局の調査結果から血栓が起きるリスクは100万人に4人程度、また、死亡するリスクは100万人に1人程度となります。

    これについてWHO=世界保健機関は声明を発表し、より詳細な研究が必要だと指摘したうえで、「まれな有害事象は、新型コロナウイルスに感染して亡くなるリスクと比較して評価されなければならない」としています。

    専門家「リスクできるだけ避けるべき 日本も慎重に検討を」

    ワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「因果関係があるのかは慎重に見なければいけないが、リスクはできるだけ避けるべきで、原因がはっきりするまでは接種の対象となる年齢を制限するといった各国の対応は妥当だと思う。今後、日本でも慎重に検討する必要があるだろう」と話していました。

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    ワクチン免疫効果「少なくとも半年は持続」米・ファウチ博士(4/8)

    2021年4月8日

    アメリカ政府で新型コロナウイルス対策に関わるファウチ博士はワクチンによる免疫の効果について「さまざまな研究から少なくとも半年は持続する」との見方を示しました。

    アメリカ政府の首席医療顧問をつとめるアンソニー・ファウチ博士は4月7日に会見し、新型コロナウイルスに対する免疫の働きについて「かなりの量の研究データが集まり感染を防げる期間についてより詳しくわかってきた」と述べました。

    そして、製薬会社モデルナのワクチンの2回の接種を終えた人を対象にした研究の結果、ウイルスの働きを抑える抗体の値はすべての年代で少なくとも半年にわたり高い水準で持続したとして「ほかのワクチンでも同様の結果となると考えられる」との見方を示しました。

    そのうえで今後、追加の接種によって免疫の持続期間がさらに延びるかどうかや、変異ウイルスに対しても同様の働きが維持されるかどうか確かめることが課題になると述べました。

    ワクチンの効果の持続期間については3月、製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンについても2回目の接種から半年後までの有効性が91.3%だったとする分析結果が発表されています。

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    アストラゼネカ ワクチン “接種後の血栓に関連性”EU規制当局(4/8)

    2021年4月8日

    EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は、アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスワクチンの接種と接種後に確認された血栓に関連性がありうるとする調査結果を発表しました。またイギリスの当局も血栓が確認される例について検証を進めた結果、30歳未満に対しては別のワクチンの接種を勧めると発表しました。ただ、いずれの規制当局もワクチンによる利益の方がリスクを上回るとして今後も接種を進めることが重要だとの見解を示しました。

    アストラゼネカとオックスフォード大学が共同で開発したワクチンをめぐっては接種後に血栓などが確認された例が報告されています。

    これについて調査を進めてきたEMA=ヨーロッパ医薬品庁は4月7日、記者会見を開き、血栓について「アストラゼネカのワクチンの副反応のリストに加えられるべきだ」としてワクチンとの間に関連性がありうるとの認識を示しました。

    EMAが調査した血栓の症例の多くは接種から2週間以内の60歳未満の女性で、脳や腹部の静脈などに確認されているということですが、特定の年齢や性別による偏りを示すものは今のところないとしています。

    また、イギリスの規制当局と独立委員会の担当者らも4月7日に記者会見し、若い層ではわずかではあるものの有害事象が起こる割合が高いと指摘したうえで、30歳未満に対してはアストラゼネカのワクチンではなくファイザーなど別のワクチンを使用するよう勧めることを明らかにしました。

    イギリスの規制当局によりますと、血栓が確認されるリスクは100万人のうちおよそ4人の割合で極めてまれだということで、イギリスとEUいずれの規制当局も接種による利益がリスクを上回るとして今後も接種を進めることが重要だとの見解を示しました。

    WHO「リスクと比較して評価」

    EUとイギリスの規制当局などの調査結果を受けて、ワクチンの安全性について調べているWHO=世界保健機関の国際諮問委員会は4月7日に声明を発表し、現時点の情報ではワクチンの接種と血栓について関連性がありうると考えることは妥当だとする一方、まだ確定したわけではなくより詳細な研究が必要だと指摘しています。

    そのうえで「まれな有害事象は新型コロナウイルスに感染して亡くなるリスクと比較して評価されなければならない」としています。

    アストラゼネカ “検証進める”

    アストラゼネカは4月7日に声明を発表し、血栓を非常にまれな副反応としてリストに加えるよう求められたとしてこれに協力していく方針を示しました。

    そして血栓が確認された個別の例について、状況や考え得るメカニズムの検証をすでに進めているとしています。

    一方でアストラゼネカは「それぞれの当局はワクチンが新型コロナウイルスによる重症化に対し高い効果があり利益がリスクを上回っていることを改めて確認している」としています。

    伊・スペイン 60歳以上に限る

    イタリアの保健当局は4月7日に記者会見を行い、アストラゼネカなどが開発したワクチンについて接種を60歳以上に限ると発表しました。

    ただ、ワクチンの接種による利益はリスクを上回るとして、アストラゼネカのワクチンの1回目の接種を受けた人については60歳未満であっても2回目の接種を進めるとしています。

    また、スペインも4月7日夜に保健相が会見し、アストラゼネカのワクチンの接種は60歳から65歳の人たちに限ると発表しました。

    ヨーロッパではこのほか、3月からフランスが55歳以上に、ドイツが60歳以上に接種を進める方針を明らかにしています。

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    米「ワクチンパスポート」導入に否定的(4/7)

    2021年4月7日

    新型コロナウイルスのワクチンを接種したことを示す証明書について、アメリカ・ホワイトハウスの報道官は接種しない人に不利益が生じるおそれがあるとして導入に否定的な考えを示しました。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、中東のイスラエルなどで接種したことを示す証明書が発行され、スポーツジムやイベント会場での提示が義務づけられていて、EU=ヨーロッパ連合も導入を検討しています。

    「ワクチンパスポート」などと呼ばれるこうした証明書について、ホワイトハウスのサキ報道官は、4月6日の会見で「アメリカ政府は国民に証明書の保有を義務づける制度を支持しない」と述べ、連邦政府としては導入に否定的な考えを示しました。

    その理由についてサキ報道官は「国民のプライバシーと権利は保護され、そうした制度によって人々が不当に扱われることがないようにすべきだ」と述べ、接種を選択しなかった人に不利益が生じるおそれがあるためだとしています。

    一方、アメリカでは州によっては独自の対応をとるところもあり、東部ニューヨーク州では実験的な運用が行われるなど、導入の是非をめぐる議論が活発になっています。

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    英 アストラゼネカのワクチン 17歳以下の臨床試験停止(4/7)

    2021年4月7日

    イギリスのオックスフォード大学は、アストラゼネカと開発した新型コロナウイルスのワクチンで、接種後に血栓が確認された例が報告されていることを受け、さらなる情報が得られるまで17歳以下を対象に行ってきた臨床試験をいったん停止することを明らかにしました。

    オックスフォード大学がアストラゼネカと共同で開発したワクチンをめぐっては、成人が接種を受けた後に血栓が確認された例がヨーロッパ各国で報告されています。

    オックスフォード大学は17歳以下を接種の対象に含められるかを検証する臨床試験をことし2月からイギリス国内で始めていましたが4月6日、いったん停止することを明らかにしました。

    大学は声明で「臨床試験の安全性への懸念はない」と強調した上で、まれなケースとして血栓などの例が報告されていることを受け、規制当局からさらなる情報が得られるまでは臨床試験は進めないとしています。

    このワクチンをめぐってEUの規制当局は3月、「安全で効果的なワクチンで、人々を守るメリットはリスクを上回る」との見解を発表した上で引き続き調査を進めていて、近く、結果を公表する見通しです。

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    米 ワクチン目標前倒し 4月19日までに18歳以上全員を接種対象に(4/7)

    2021年4月7日

    アメリカのバイデン大統領は新型コロナウイルスのワクチン接種の目標を前倒しし、4月19日までに対象を18歳以上のすべての人に拡大すると明らかにしました。

    バイデン大統領は4月6日、ホワイトハウスで演説し、自身の就任後の新型コロナウイルスのワクチンの接種回数が1億5000万回に上ったと成果を強調しました。

    そのうえで「4月19日までにこの国のどこでも18歳以上のすべての人が接種の対象になる」と述べ、4月19日までに全米での接種の対象を18歳以上のすべての人に拡大すると明らかにしました。

    アメリカでは、2020年12月から接種が始まり、医療従事者や高齢者から基礎疾患のある人などへと、州ごとに接種の対象が順次、拡大されてきました。

    バイデン大統領はこれまで5月1日までには接種の対象を18歳以上に拡大するとしていてこれを10日余り前倒しした形です。

    一方、変異ウイルスが急速に広がり、感染状況は依然として深刻だとして「まだやるべきことがある。手を洗い、人との距離を保ってほしい」と述べました。

    そのうえで、保守層を中心にワクチンの接種をためらう人たちがいることを念頭に「どうかワクチンを接種してほしい」と呼びかけました。

    アメリカ政府は1日300万回のペースでワクチンの接種を進めていて、これまでに人口の5人に1人にあたる6300万人余りが接種を完了しています。

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    米長官 ワクチン供給で同盟国などと連携強化の方針 中ロに対抗(4/6)

    2021年4月1日

    アメリカのブリンケン国務長官は発展途上国などへの新型コロナウイルスワクチンの安定供給に向け、同盟国などとの連携を強化する方針を示しました。各国への積極的な供給を通じた「ワクチン外交」を展開する中国やロシアを念頭に、対抗する姿勢を打ち出した形です。

    ブリンケン国務長官は4月5日、新型コロナウイルスへのアメリカ政府の対応について国務省で演説しました。

    このなかで「パンデミックを終わらせるためには、世界が一丸となって取り組まなければならない。そのためにはアメリカが行動を起こし、主導しなければならない」と述べ、世界的な感染拡大の収束のためにアメリカが主導的な立場をとる考えを強調しました。

    そして3月初めて行った日本とアメリカ、オーストラリア、インドの4か国の枠組みによる首脳会合で、ワクチンの生産や供給の協力で合意したことを「よい例だ」と指摘しました。

    そのうえで「世界のパートナーと協力してあらゆる場所のすべての人に十分なワクチンが提供されるようにする」と述べ、発展途上国などへのワクチンの安定供給に向け、同盟国や友好国との連携を強化する方針を示しました。

    各国へのワクチンの供給をめぐっては、中国やロシアが積極的な供給を通じた「ワクチン外交」を展開しています。

    ブリンケン長官は「われわれはワクチンと引き換えに政治的な利益を求めることはしない」とも述べていて、中国やロシアを念頭に、ワクチン外交で対抗する姿勢を打ち出した形です。

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    インド 感染再拡大でワクチン接種の対象を45歳以上に引き下げ(4/1)

    2021年4月1日

    インドで新型コロナウイルスの感染が再び拡大していることなどを受け、インド政府は4月1日からワクチン接種の対象を45歳以上に引き下げ、接種のペースを早めることにしています。

    インドでは2月下旬以降、新型コロナウイルスの感染が再び拡大していて、4月1日に発表された新たな感染者は7万2330人と、2020年10月中旬以降、最も多くなりました。

    こうした中、インド政府は1日からワクチン接種の対象を45歳以上のすべての人に拡大し、首都ニューデリーの病院には、新たに対象となった人々が次々と訪れ接種を受けていました。

    接種を受けた49歳の女性は「きょうから自分の年齢でも受けられるようになったので、すぐに申し込んで来ました。接種を受けてほっとしていますが、感染対策は続けようと思います」と話していました。

    インド政府は、夏までに3億人に接種する計画ですが、接種会場の不足などから、これまでに少なくとも1回の接種を受けた人は人口のおよそ4%にあたる5500万人にとどまり、計画の遅れも指摘されています。

    一方、WHO=世界保健機関などが主導するワクチンの公平な分配を目指す「COVAXファシリティ」は、インド国内での需要の高まりを受け、インドで製造されているアストラゼネカなどのワクチンの供給に遅れが出る見通しを示していて、今回の接種対象の拡大によって途上国を中心に接種がさらに遅れるおそれがあります。

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    内戦長期化の中東イエメン 新型コロナワクチンが初めて到着(4/1)

    2021年4月1日

    内戦が長期化して医療体制が崩壊状態にある中東イエメンに新型コロナウイルスのワクチンが初めて到着し接種が始まることになりました。ただ、電力インフラや物流網の荒廃など課題は多くワクチンの普及には時間がかかるものとみられます。

    イエメンではハディ政権と反政府勢力フーシ派との間で6年以上内戦が続いていて、医療スタッフが国外に流出するなど医療体制が崩壊状態にある中ことし2月以降、新型コロナウイルスの感染の広がりが確認されています。

    こうした中、政権が拠点を置く南部アデンに3月31日、新型コロナウイルスのワクチン36万回分が航空機で到着しました。

    到着したのはWHO=世界保健機関などが主導するワクチンの公平な分配を目指す「COVAXファシリティ」のもとで供給されたワクチンで、イエメン国内にワクチンが到着するのはこれが初めてです。

    イエメン政府は近く接種を始めることにしていますが、6年以上続く内戦の影響でワクチンの温度管理に不可欠な電力インフラや物流網が荒廃していてワクチンの普及には時間がかかるものとみられます。

    イエメン保健省の担当者はNHKの取材に対し「感染拡大の懸念は高まっており、太陽光発電などを使いどうにかワクチンを各地に供給させたい」と話していました。

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    米ファイザーワクチン 12歳~15歳“安全性と有効性 確認”(4/1)

    2021年4月1日

    アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックは現在は接種の対象になっていない12歳から15歳の子どもで新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験を行った結果、安全性と有効性が確認されたと発表しました。

    ファイザーなどが開発したワクチンは現在は16歳以上が対象ですが、両社はこのワクチンが子どもでも安全で有効か確かめるためアメリカ国内の12歳から15歳の2260人を対象に臨床試験を行い、その結果を3月31日に公表しました。

    それによりますと、
    ▽「プラセボ」と呼ばれる偽薬を投与した1129人のグループでは18人に新型コロナウイルス感染症の症状が確認された一方、
    ▽ワクチンを接種した1131人のグループでは症状が確認された人はいなかったということです。

    また副反応も16歳から25歳が対象となった別の臨床試験でみられたものとおおむね一致したとしています。

    新型コロナウイルスワクチンの子どもへの接種をめぐっては、
    ▽ファイザーが生後6か月から11歳を対象にした臨床試験をすでに始めているほか、
    ▽アメリカの製薬会社モデルナも生後6か月から18歳未満を対象にした臨床試験を、
    また、
    ▽イギリスの製薬大手アストラゼネカとワクチンを開発したオックスフォード大学も6歳から17歳を対象にした臨床試験を行っています。

    ファイザーとビオンテックは今回のデータをFDA=アメリカ食品医薬品局とEMA=ヨーロッパ医薬品庁に提出し、緊急使用の許可を申請する方針です。

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    ロシア製コロナワクチン購入を主導のスロバキア首相 辞任(3/31)

    2021年3月31日

    ヨーロッパのスロバキアでは、首相が主導してロシア製の新型コロナウイルスのワクチンを購入したのに対し、決定のプロセスが不透明だなどとして政権内からも批判が高まり、首相が辞任する事態となりました。

    スロバキアのマトビッチ首相はみずからが主導して、3月、ロシア製のワクチン「スプートニクV」を200万回分購入しました。

    これに対し、政権内で連立を組むほかの政党からは、購入のプロセスが不透明だとかEU=ヨーロッパ連合がまだ許可を出していない「スプートニクV」の接種は時期尚早だなどと批判が相次ぎました。

    その結果、首相に近い保健相など複数の閣僚が辞任に追い込まれ、3月30日には、こうした政局の混乱の責任を取るとしてマトビッチ首相も辞任する事態となりました。

    スロバキアでは、新型コロナウイルスの感染が深刻化していて、人口当たりの死亡率が世界でも最悪の水準となっています。

    EU域内でワクチンの供給の遅れが問題となる中、ロシアは「スプートニクV」の売り込みを強めていて、ハンガリーが独自の基準で接種を始めたほかイタリアやドイツ、オーストリアなども関心を示しています。

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    アストラゼネカのワクチン 原則60歳以上に接種方針 ドイツ政府(3/31)

    2021年3月31日

    ドイツ政府は、アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、接種した60歳未満の人たちに血栓が確認された例が新たに報告されたことを受けて、今後は、原則として60歳以上に限って接種を進める方針を示しました。

    ドイツのメルケル首相は3月30日、記者会見し、アストラゼネカなどが開発したワクチンについて、接種した60歳未満の人たちに血栓が確認された例が新たに報告されたことから、専門家でつくる委員会の勧告にしたがい、原則として60歳以上の人に限って接種を進めると発表しました。

    このワクチンをめぐっては3月に入って、接種後に血栓が確認された例があるなどとしてヨーロッパ各国で一時接種を見合わせる動きが相次ぎましたが、調査したEMA=ヨーロッパ医薬品庁が「安全で効果的なワクチンで人々を守るメリットはリスクを上回る」との見解を発表し、ドイツやフランスなどは3月19日から接種を再開していました。

    たびたび接種の方針が変わることついてメルケル首相は「透明性をもつことが最善の手段だ」と述べ、専門家の意見を聞きながら柔軟に対応し、そのつど情報を公開するとして、理解を求めました。

    アストラゼネカのワクチンについてはフランスが55歳以上に接種を限定しているのに対し、イタリアは18歳以上を対象にするなどヨーロッパ各国で対応が分かれています。

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    アフリカで活発化 中国「ワクチン外交」 提供で関係強化目指す(3/31)

    2021年3月31日

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、先進国などに比べて途上国での確保や接種が出遅れている「ワクチン格差」が課題になる中、アフリカでは中国がワクチンの提供を通じて関係強化を目指す「ワクチン外交」を活発化させています。

    アフリカ中部の赤道ギニアには、2月10日、中国政府から国有の製薬会社「シノファーム」が開発したワクチン10万回分が届けられ、首都マラボの国際空港には、政府高官が参加した歓迎式典が開かれました。

    人口140万人のうちこれまでにおよそ7000人が新型コロナウイルスに感染した赤道ギニアは、中国から無償でワクチンを提供されたアフリカで最初の国となり、式典でオバマアスエ首相は「ワクチンの援助に感謝している」と述べました。

    その後、国内各地で医療関係者や高齢者などを優先にした接種が始まり、保健当局によりますと、3月27日までに1万人近くが1回目の接種を終え、このうち、ヌゲマ大統領を含む2400人余りが2回目の接種も終えたということです。

    接種を受けた28歳の男性は「ワクチンを提供してもらい中国へのイメージはよくなった」と話していました。

    中国はアフリカ有数の産油国である赤道ギニアに接近し、大量の石油を輸入する一方、政府の支援で外務省の建物を建てるなど、密接な関係を築いています。

    巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて、アフリカへの進出を強める中国にとって、ワクチンを提供することで新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けているアフリカ経済が回復すれば、大きな利益が得られるという判断があると見られていて、中国はこれまでにアフリカの35か国にワクチンの提供を始めていて「ワクチン外交」を活発化させています。

    赤道ギニア保健相「中国製が最良だと判断」

    赤道ギニアのヌズエミラン保健相は、首都マラボでNHKのインタビューに応じ、中国から中国製のワクチンの援助を受けたことについて「友好国として中国とは、インフラ整備などさまざまな分野で協力関係にあり、ワクチンの供与はその延長線上にあるものだ」と述べ、歓迎しました。

    また赤道ギニアとして「中国以外にもブラジルやロシアなどとも交渉を進めた。しかし、中国で早期にワクチンの接種が開始されたことを受けて、中国製が最良だと判断した」と交渉の経緯を明らかにしました。

    一方、ヌズエミラン保健相は供与された10万回分については無償で援助されたものだとしたうえで「今後さらに200万回分を購入したいが、手始めに50万回分を購入する交渉を進めている」として、今後は中国からワクチンを購入することになるとの見通しを示しました。

    また、一部で中国製のワクチンの安全性や品質に対して懐疑的な見方があることについて「ワクチンに対する懐疑的な声は何も中国製にだけ向けられているものではない。大統領や大統領夫人などが率先して接種していて、今後もワクチン接種の必要性を訴えていく」と述べました。

    中国は国内で新型コロナウイルスワクチンの大規模な接種を進めていて、中国政府は29日までの接種回数は、延べ1億1000万回以上にのぼるとしています。

    その一方で、中国はワクチンを各国に積極的に提供する「ワクチン外交」を展開していて国営メディアは、連日のように途上国や新興国で接種が始まったと伝えています。

    中国外務省は3月30日の時点で、80か国と3つの国際組織に援助し、40か国余りに輸出するとしているほか、ワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組み「COVAXファシリティ」にも1000万回分を提供するとしています。

    中国がこれまでに提供しているのは、主に東南アジアやアフリカ、中南米、中東欧などの国々でこのうち、アフリカ各国については王毅外相は、3月7日の記者会見で「アフリカの35か国にワクチンの提供を始めている」と述べています。

    中国メディアは、中国製のワクチンは、2度から8度という温度で保管できるため、輸送や保管も容易で途上国も導入しやすいと伝えていて欧米製のワクチンが浸透していない国々に提供し、影響力の拡大を図るねらいもあるとみられます。

    一方、王外相はこうした協力の背景に政治的な思惑があるという指摘については「ワクチンをめぐる協力を政治問題化しようとするいかなるたくらみにも反対する」と述べて反論しています。

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    WHOと25か国の首脳が「パンデミック条約」の制定呼びかけ(3/31)

    2021年3月31日

    WHO=世界保健機関とEU=ヨーロッパ連合などは新型コロナウイルスの感染拡大を教訓に、今後、世界的な感染症が起きた際、国際社会が効果的に協力することを目指す新たな条約「パンデミック条約」の制定を呼びかけました。

    WHOのテドロス事務局長は3月30日、EUのほか、ヨーロッパやアジアなど、25か国の首脳と合同でメディアに寄稿し「今後もパンデミックや人々の健康に関わる緊急事態は起きる。こうした脅威に国や機関が単独で立ち向かうことはできない」として、今後の世界的な感染症に備え、国際社会が効果的に協力することを目指す新たな条約「パンデミック条約」の制定を呼びかけました。

    新型コロナウイルスでは各国が協調した対応を取れなかったことへの反省から、新たな条約では感染症のデータを速やかに共有するとともに、ワクチンや治療薬の開発などで協力する仕組みをつくるとしています。

    WHOのテドロス事務局長は3月30日、条約の必要性を訴えていたEUのミシェル大統領と合同で開いた記者会見で「条約は国際協力と連帯に向けた枠組みとなる」と述べ、その意義を強調しました。

    新たな条約は5月のWHOの年次総会で議論される予定で、具体的な協力内容をどうするかや、どれだけの国から賛同が得られるかなどが課題となります。

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    米ニュージャージー州の大学 対面授業受講 ワクチン接種必須に(3/29)

    2021年3月29日

    新型コロナウイルスワクチンの接種が進むアメリカで、東部ニュージャージー州の大学が、秋の新学期から対面での授業を受ける学生はワクチンの接種を必須とする方針を発表し、ほかの大学が今後、同様の対応をとるかに関心が集まっています。

    およそ7万人の学生が在籍するニュージャージー州の州立大学ラトガース大学は3月26日、対面での授業を受けるためには新型コロナウイルスワクチンの接種を必須とすると発表しました。

    大学は健康や宗教上の理由で接種できない場合は例外を設けるとしているほか、オンラインで授業を受ける学生は対象外としています。

    アメリカでは2020年の秋、対面授業を再開した複数の大学で感染の拡大が報告されました。

    このため、大学によっては対面とオンラインの授業を組み合わせたり、定期的にウイルスの検査をしたりと感染対策をとってきましたが、学生からは完全な対面授業の再開を求める声が強まっています。

    地元メディアは、アメリカの主要な大学で新型コロナウイルスワクチンの接種を必須とするのは初めてだと伝えていて、ほかの複数の大学でも事実上の義務化を検討していると伝えられています。

    バイデン大統領は、2021年5月までに優先順位に関係なく、すべての人がワクチンの接種を受けられるようにするという目標を掲げていて、若い世代にも接種が拡大する見通しとなっています。

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    インドで感染者増加 WHO主導のワクチン公平分配 遅れる見通し(3/26)

    2021年3月26日

    インドで新型コロナウイルスの感染者数が再び増加する中、WHO=世界保健機関などが主導するワクチンの公平分配の枠組みは、インドで製造されているアストラゼネカなどのワクチンの供給に遅れが出る見通しだと明らかにしました。

    インドでは減少傾向にあった新型コロナウイルスの感染者数が2月下旬以降再び増加していて、3月25日発表された感染者の数は5万3000人余りとなっています。

    こうした中、WHOなどが主導するワクチンの公平な分配を目指す「COVAXファシリティ」は3月25日、インドの大手製薬会社「セラム・インスティテュート・オブ・インディア」が製造しているアストラゼネカなどのワクチンの供給について、3月から4月にかけて遅れが出るという見通しを明らかにしました。

    理由についてCOVAXは、インド国内でワクチンの需要が高まっていることをあげ、インド政府と引き続き連携し供給を受けていくとしています。

    一方で、具体的な遅れの見通しについては明らかにしていません。

    COVAXは、2021年6月末までに145の国と地域に3億3720万回分のワクチンを供給する計画ですが、このうち7割を超える2億4000万回分を「セラム・インスティテュート・オブ・インディア」が製造するワクチンに頼っていることから、分配の大幅な遅れにつながることが懸念されます。

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    EU首脳会議 ワクチン輸出管理の強化 重要性を確認(3/26)

    2021年3月26日

    EU=ヨーロッパ連合は3月25日、首脳会議を開き、新型コロナウイルスのワクチンについて輸出管理の強化の重要性を確認するとともに、ワクチン証明書の導入を急ぐことで一致しました。

    オンライン形式で開かれた首脳会議では供給が遅れている新型コロナウイルスのワクチンなどについて話し合われました。

    EUは域内で製造されたワクチンを輸出する際には許可を得ることを義務づける措置を導入していて、3月24日にはEUの執行機関、ヨーロッパ委員会がこの措置を強化することを各国に提案していました。

    これを受けて各国の首脳は輸出管理の強化の重要性を確認するとともに製薬会社に対して契約通りに供給するよう求めていくことで一致しました。

    また、域内の自由な移動の実現に向けて夏の観光シーズンまでの導入を目指しているワクチン証明書についても整備を急ぐことを確認しました。

    首脳会議にはEUから招きを受けたアメリカのバイデン大統領も参加し、新型コロナウイルスの対応や経済の立て直しなど世界的な課題について協力を進めることで一致しました。

    アメリカの大統領がEUの首脳会議に参加するのは2009年の当時のオバマ大統領以来で、連携強化を目指す双方の姿勢を改めて示しました。

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    アストラゼネカ ワクチン臨床試験 新たな分析結果を発表(3/25)

    2021年3月25日

    イギリスの製薬大手アストラゼネカは、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験の新たな分析結果を発表し、有効性が当初の発表より3ポイント低い76%だったと明らかにしました。

    アストラゼネカは、新型コロナウイルスのワクチンについて、アメリカなどで行われた臨床試験の暫定的な結果を3月22日に発表し、有効性を「79%」としていましたが、この分析結果に対し、NIAID=アメリカ国立アレルギー 感染症研究所は「古いデータが含まれ、有効性の評価が不完全な可能性がある」と指摘していました。

    これを受けてアストラゼネカは「当初の発表は2月17日までのデータに基づいたものだった」として、3月25日に新たな分析結果を公表しました。

    それによりますと、臨床試験で確認された新型コロナウイルスの発症数は190例と、当初の発表より49例多くなっていて、発症を防ぐ有効性は76%と、3ポイント低い数値になっています。

    一方、65歳以上については、発症を防ぐ有効性は85%と、当初の発表より5ポイント高くなっています。

    アメリカ政府で新型コロナウイルス対策に関わる高官は、3月24日に開かれた会見で、アストラゼネカのワクチンをめぐる一連の経緯について「透明性と信頼が重要だ」としたうえで、アメリカでの使用許可にあたっては、提出されたデータをもとに規制当局が審査し、問題は起きないという見方を示しました。

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    ファイザー ワクチン輸送「冷蔵はやむをえない場合にかぎる」(3/25)

    2021年3月25日

    新型コロナウイルスのワクチンについて、開発したアメリカの製薬大手ファイザーが、冷凍での輸送が原則としたうえで「冷蔵状態での輸送は、自治体がやむをえないと判断した場合にかぎってほしい」とする見解を自治体などに向けたウェブサイトに掲載したことが分かりました。

    ファイザーは、4月12日から高齢者へのワクチンの接種が始まるのを前に、3月22日付けでワクチンの取り扱いに関する見解を、自治体や医療従事者向けのウェブサイトに掲載しました。

    この中で、ワクチンは分解されやすく衝撃や振動を避ける必要があり、接種を行う診療所などに小分けして輸送する場合は、冷凍して運ぶのが原則だとしています。

    そのうえで、2度から8度の冷蔵した状態で輸送することについては「品質管理の観点から振動を避ける必要があるため、自治体の判断において、やむをえない場合にかぎるようお願いしたい」と求めています。

    冷蔵輸送をめぐっては、ファイザーが「推奨せず、自治体がやむをえないと判断した場合は容認する」と、2020年12月に厚生労働省に伝えていたことが明らかになり、3月に厚生労働省は「冷凍して輸送したほうが、より安定した品質管理が可能だ」とする見解を自治体に伝えています。

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    EU ワクチン輸出 条件強化の方針を発表(3/25)

    2021年3月25日

    EU=ヨーロッパ連合は、新型コロナウイルスワクチンの供給が遅れていることを受けて域内で製造されたワクチンの輸出について条件を厳しくする方針を発表しました。

    EUは新型コロナウイルスのワクチンの供給が当初の予定より遅れていることを受けて、ことし1月から域内で製造されたワクチンを輸出する際には許可を得ることを義務づけています。

    EUは3月24日この輸出の許可について条件を厳しくする方針を発表しました。

    それによりますと、
    ▽輸出先の国がワクチンや原材料の輸出を制限していないかに加え、
    ▽その国の感染状況とワクチンの接種の進捗などを考慮するとしています。

    EUはイギリスの製薬大手、アストラゼネカなどが開発したワクチンがイギリスに優先的に供給されているのではないかとの疑念を強めていて、このことが今回の背景にあるとみられています。

    この方針が正式に承認されれば、日本を含むEU域外の各国へのワクチン供給にも影響が出る可能性があります。

    EUのドムブロフスキス執行副委員長は記者会見で「EUの市民のためのワクチンを確保する必要がある」と今回の方針を打ち出した理由を強調しました。

    EUによりますと、これまで域外の33の国と地域に合わせておよそ4300万回分のワクチンの輸出を認め、このうち日本に対しては3番目に多いおよそ540万回分を輸出したとしています。

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    プーチン大統領 ロシア製ワクチンを接種と公表 ロシア大統領府(3/24)

    2021年3月24日

    ロシア大統領府は、プーチン大統領が3月23日新型コロナウイルスのロシア製ワクチンを接種したと明らかにし、ワクチンの安全性などを国内外に強調するねらいもあるとみられます。

    ロシア大統領府のペスコフ報道官は3月23日、プーチン大統領が新型コロナウイルスのロシア製ワクチンを接種したと明らかにしました。

    プーチン大統領の体調は良好で、3月24日も公務を行うとしています。

    ただ、ロシアが開発した「スプートニクV」など3種類のワクチンのうち、どのワクチンを接種したかについては明らかにせず、接種の写真や動画も公開されていません。

    プーチン大統領は、ロシア製のワクチンについて「安全で信頼できる」と誇示する一方で、みずからは接種しておらず、ロシア国内ではいつ接種するか関心を集めていました。

    ロシアでは、2020年12月にワクチンの大規模な接種が始まりましたが、2月行われた世論調査で「ワクチンを接種する用意がある」とした人は安全性などを理由に30%にとどまっています。

    また、プーチン政権は、中南米や中東などに加えてヨーロッパ各国へのワクチンの供給にも力を入れています。

    プーチン大統領としては、みずから接種したことで、ロシア製ワクチンの安全性や有効性を国内外に強調するねらいもあるとみられます。

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    アストラゼネカ製ワクチン 評価に「古いデータ」 米研究所(3/24)

    2021年3月24日

    アメリカNIAID=国立アレルギー・感染症研究所は3月23日、イギリスの製薬大手アストラゼネカが発表した新型コロナウイルスワクチンのアメリカなどでの臨床試験の結果について「古いデータが含まれていて、有効性の評価が不完全な可能性がある」として、最新のデータを公表するよう求めました。

    イギリスの製薬大手アストラゼネカは3月22日、新型コロナウイルスのワクチンについて、アメリカなどで行っている臨床試験で、79%の有効性があったなどとする暫定的な結果を発表しました。

    これについて、NIAIDは3月23日、アストラゼネカの臨床試験のデータを監視する独立した委員会から「古いデータが含まれ、有効性の評価が不完全な可能性がある」と指摘されたとする声明を発表しました。

    NIAIDはアストラゼネカに対し、有効性の評価を再確認するほか、最新かつ正確なデータをできるかぎり早く公表するよう求めています。

    これに対し、アストラゼネカは48時間以内に最新のデータを公表するとしています。

    NIAIDのファウチ所長はアメリカメディアのインタビューに対し「アストラゼネカのワクチンはいいワクチンだと思うが、疑いをもたれるような不注意のミスはワクチンへの不信を招く」と苦言を呈しました。

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    米 妊娠中の女性 すでに5万人以上がワクチンを接種(3/24)

    2021年3月24日

    各国で接種が進む新型コロナウイルスのワクチンについて、アメリカでは感染すると重症化するリスクが高いとされる妊娠中の女性がすでに5万人以上接種を受けています。安全性などについての情報はまだ限られていますが、妊娠中の女性を対象にした複数の研究が進められていて、今後、さらなる情報が得られることが期待されています。

    妊娠中の女性への新型コロナウイルスのワクチン接種についてアメリカCDC=疾病対策センターは安全性と有効性の情報は限られているとしながらも「妊婦は感染した場合に重症化するリスクが高いうえ、いまアメリカで接種されているワクチンに特定のリスクがあるとは考えにくい」として、接種を認めています。

    CDCによりますと、3月15日の時点ですでに5万1000人を超える妊娠中の女性が接種を受けていますが、ワクチンと関連した妊娠への影響は報告されていません。

    また、CDCが公表した、妊娠中の女性およそ1800人を対象にした調査では、ワクチン接種を受けた人のうち妊娠合併症や早産といった母体や胎児への影響が出る割合は、接種していない人と比べて変わらないという結果が示されています。

    妊娠中の女性への影響については新型コロナウイルスワクチンを開発した製薬会社が安全性と有効性を確認する臨床試験を開始しているほか、複数の研究機関も研究を行っていて、今後、接種を受ける時期や、ワクチンによる抗体が胎児にどの程度移行するかなど、より詳しい情報が得られることが期待されています。

    接種を決めた日本人女性「情報を集め納得のいく判断が必要」

    アメリカ・ハーバード大学の病院で精神科医として働く内田舞さんは(38)妊娠中だったことし1月から2月にかけて新型コロナウイルスワクチンの接種を2回、受けました。

    妊娠がわかったのはアメリカで新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になっていた2020年5月でしたが、当時、勤務先の病院で診療の支援にあたっていた内田さんは「感染が広がる状況の中で病院に行かなければいけないことや妊娠中に感染してしまったらどのような経験をするのかなどいろいろな不安がよぎりました」と当時の心境を振り返りました。

    その後、感染による妊娠や胎児への影響を避けたいと考えた内田さんは、新型コロナウイルスワクチンについての科学的な情報を集めたうえで、おなかの子どもへの影響は考えにくいと判断し、接種を決めたといいます。

    内田さんは「ワクチンが怖いので接種を受けないという判断はウイルスへの感染という別のリスクを負うことにもなります。一般の人で十分安全が確認されていて、ワクチンの仕組み上も影響が考えにくいので、接種によって得られる利益がリスクを超えると判断しました」と話していました。

    そのうえで「妊娠中の女性は新型コロナウイルスのことだけでなく、さまざまな負担や、不安でいっぱいだと思います。ワクチンの接種でさらに不安になってしまうという人は、ほかの感染対策を徹底したうえで産後に接種を受けるといった選択肢もあります。接種に関する判断はそれぞれですが、自分と子どもの安全のため信頼できる医療従事者や、公的機関の情報などからできるかぎり正しい情報を集め、納得のいく判断をしてほしいと思います」と話していました。

    妊婦へのワクチン接種にはさまざまな見方

    妊婦へのワクチンの接種について、WHO=世界保健機関は、現時点ではデータが限られているとして、医療従事者など、感染のリスクが高い人や、重症化のリスクを高める基礎疾患がある人以外は妊婦への接種を推奨していません。

    一方、接種が進んでいるイスラエルでは「妊娠や胎児への影響があったという証拠はない」として接種を推奨しています。

    イギリスは推奨はしないものの、医師に相談したうえで接種することを認めています。

    アメリカCDC=疾病対策センターの分析では、妊娠した女性は、していない女性に比べて、感染した場合、集中治療室で治療を受けるリスクがおよそ3倍、死亡するリスクも1.7倍となるほか、ユタ大学病院などの研究では早産のリスクが上昇することも指摘されていて、妊娠中の女性の感染や発症を防ぐことの重要性が指摘されています。

    アメリカ・ジョージタウン大学病院の産婦人科に勤務し、新型コロナウイルスに感染した妊娠中の女性を多く診療している安川茉弥医師は「妊娠中の女性は肺などの呼吸器にかかる負担が大きく、免疫の働きも弱まっていることが多い。アメリカでは高血圧や肥満といった重症化リスクのある妊婦も多く、出産後も含めて新型コロナウイルスに感染したときのリスクは大きい」と、指摘しています。

    安川医師は「これまでのデータから一般の人には安全性の高いワクチンであるということがわかっているものの、妊婦や胎児への影響は現時点では情報が限られているのも事実だ。妊婦が接種するにあたっては自分の職業や、生活する環境、重症化のリスクなどを考慮して信頼できる医師などに相談して判断してほしい」と話しています。

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    WHO“先進国は高齢者などへの接種終了後 ワクチン提供を”(3/23)

    2021年3月23日

    新型コロナウイルスのワクチンの接種が進む先進国と供給が進まない途上国との格差が問題となるなか、WHO=世界保健機関は先進国に対し、リスクの高い人たちへの接種が終わったあとはワクチンの公平な分配を目指す枠組みに提供するよう求めました。

    ワクチンの公平な分配を目指す「COVAX(コバックス)ファシリティ」によりますと、2月24日に西アフリカのガーナに初めてワクチンを供給して以来、3月22日までのおよそ1か月で、57の国と地域に3100万回分余りを届けたということです。

    ただ計画では、ことし6月末までに3億3000万回分余りを供給するとしていて、現状の供給量はその10分の1未満にとどまっています。

    これについてWHOのエイルワード事務局長補は3月22日の定例の記者会見で「率直に言って十分なワクチンを手に入れられないのが問題だ」と述べました。

    ワクチンの接種をめぐっては先進国と途上国の格差が問題となっていて、WHOのテドロス事務局長は「供給を全く受けられない国がある一方、いくつかの国は全国民に接種しようと競っている」と述べ、現状に懸念を示しました。

    そして先進国に対し、医療従事者や高齢者などリスクの高い人たちへの接種が終わったあとはCOVAXにワクチンを提供するよう求めました。

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    アストラゼネカ ワクチン“79%の有効性” 米などで臨床試験(3/23)

    2021年3月23日

    イギリスの製薬大手アストラゼネカは、新型コロナウイルスのワクチンについて、アメリカなどで行っている臨床試験で、79%の有効性があったとする暫定的な結果を発表しました。

    アストラゼネカは、イギリスなどで接種が進められている新型コロナウイルスのワクチンについてアメリカとチリ、それにペルーで最終段階の臨床試験を行っていて3月22日、暫定的な分析結果を発表しました。

    それによりますと、臨床試験の対象となった3万2449人のうち新型コロナウイルスの症状が確認されたのは141例でした。

    実際にワクチンを接種した人と、しなかった人を比較して分析した結果、新型コロナウイルスの発症を防ぐ有効性は79%だったということです。

    重症化した人はいなかったということです。

    また臨床試験の参加者のおよそ20%が65歳以上で、この年代では発症を防ぐ有効性は80%だったとしています。

    このワクチンをめぐっては、接種後に血栓が確認された例があるなどとして、ヨーロッパなどの一部の国で予防的な措置として一時、接種を見合わせる動きが相次ぎましたが、詳しい調査を進めてきたEMA=ヨーロッパ医薬品庁が3月18日、安全であるとの見解を発表し、フランスやドイツが接種を再開しています。

    これについて今回の臨床試験のデータを独立した機関が検証した結果、少なくとも1回接種したあとに血栓症などになるリスクが高まる状況は確認されなかったとしています。

    アストラゼネカは近くアメリカのFDA=食品医薬品局に対して緊急使用の許可を申請するとしています。

    米 首席医療顧問 ファウチ博士「いい知らせだ」

    これについてアメリカ政府の首席医療顧問として新型コロナウイルス対策に関わるアンソニー・ファウチ博士は「幅広い年代を通じて高い有効性を示している。いい知らせだ」と評価しました。

    このワクチンをめぐっては、接種後に血栓が確認された例があるなどとして、ヨーロッパなどの一部の国で予防的な措置として一時、接種を見合わせる動きが相次ぎました。

    これについてファウチ博士は「今回の臨床試験では、接種を受けたグループで血栓症のリスクが高まるという証拠は見つからなかった」としています。

    その上で「今後、アメリカFDA=食品医薬品局もあらゆる観点から厳密な審査を行う」と述べ、安全性を再度確認した上でアメリカでの使用が許可されるという見方を示しました。

    アメリカでは現在3種類のワクチンが使われていて、アストラゼネカのワクチンが許可されれば4種類目となります。

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    アストラゼネカなどが開発のワクチン EU当局「安全で効果的」(3/19)

    2021年3月19日

    アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンで接種後に血栓が確認されたことについて、EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は調査結果を公表し、「安全で効果的なワクチンだ」とする見解を示しました。

    アストラゼネカなどが開発したワクチンをめぐっては、接種後に血栓が確認された例があるなどとして、ドイツやフランスなどヨーロッパ各国が予防的な措置として接種を見合わせています。

    これを受けて詳しい調査を進めてきたEMA=ヨーロッパ医薬品庁は3月18日、記者会見でその結果を公表し、「安全で効果的なワクチンで、新型コロナウイルスから人々を守るメリットはリスクを上回る」とする見解を示しました。

    一方で「血栓ができるまれなケースとワクチンの間の因果関係を完全には排除できない」とも述べ、調査を続ける考えを示しました。

    これを受けてフランスやイタリアが早ければ3月19日に接種を再開すると相次いで発表するなど、ヨーロッパでは接種を再び進める動きが出ています。

    アストラゼネカのワクチンについては、WHO=世界保健機関も血栓とワクチンの間に必ずしも関係があるとは言えないとして、接種によるメリットがリスクを上回るという認識を示しています。

    アストラゼネカのワクチンの接種を続けているイギリスでは、規制当局が3月18日、このワクチンによって血栓ができることを示す根拠はないという見解を改めて示しました。

    イギリス国内でこれまでに接種した1100万人のデータを見直した結果、接種後に血栓が確認されたという報告は5件と100万人に1人以下の割合で、接種していなくても自然にできる可能性があるとしています。

    ジョンソン首相は3月18日の会見でワクチンの安全性を強調し「ウイルスに感染することこそが安全ではない」などと述べたうえで、3月19日にみずから、アストラゼネカのワクチンの接種を受けることを明らかにしました。

    フランス イタリア ドイツなどは接種再開の方針

    EMAの調査結果の公表を受け、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種を見合わせてきたフランスやイタリア、それにドイツなどは相次いで接種を再開する方針を発表しました。

    このうちフランスのカステックス首相は記者会見で「このワクチンが信頼できることを示すために自分も接種する」と述べて、3月19日にもアストラゼネカのワクチンの接種を再開する考えを示しました。

    また、ドイツのシュパーン保健相も記者会見で「私たちの目標はあすのうちにアストラゼネカのワクチンの接種を再開することだ」と述べ、3月19日にも再開する方針を示しました。

    このほか、イタリア政府も早ければ3月19日から、スペイン政府は来週の3月24日から接種を再開するとしています。

    アストラゼネカ 「今後も緊密に連携していく」

    アストラゼネカはEMAの調査結果の公表などを受けて、3月18日に声明を発表し、ワクチンの安全性に関するEMAの見解を歓迎したうえで「ワクチンの適切な使用のために、今後も各国の保健当局と緊密に連携していく」としています。

    そして「安全性は最優先事項であり、アストラゼネカは、有害事象についての報告やその分析などをしっかりと行い、各国の規制当局と情報を共有している」と強調しました。

    田村厚生労働相 「非常に朗報 承認されれば接種体制に含め対応」

    田村厚生労働大臣は、閣議のあと記者団に対し「EUの医薬品規制当局が『大丈夫だ』と評価し、フランスでも接種を再開して、首相も接種をするとのことで、非常に朗報だ。日本では審査をしている最中だが、承認されれば、接種体制にアストラゼネカのワクチンも含めて対応していくことになるだろう」と述べました。

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    バイデン大統領 コロナワクチン1億回分の接種 早期実現へ(3/19)

    2021年3月19日

    アメリカのバイデン大統領は、政権発足から100日で達成を目指すとしていた新型コロナウイルスワクチンの1億回分の接種を、予定よりも大幅に早いおよそ60日で実現できると明らかにしました。

    アメリカのバイデン大統領は国内の死者数が53万人を超える新型コロナウイルスへの対策を当面の最大の課題と掲げていて、ことし1月に政権が発足してから100日で1億回分のワクチンの接種を目指してきました。

    これについてバイデン大統領は3月18日会見し、政権発足からおよそ60日にあたる3月19日には1億回分の接種を達成できると明らかにしたうえで「ウイルスを克服するために文字どおり戦時体制を敷いた」として成果を強調しました。

    アメリカCDC=疾病対策センターによりますと、これまでに65歳以上の66%が少なくとも1回のワクチン接種を行い、38%がワクチンの必要な接種を完了したということで、バイデン大統領は大統領の権限で民間企業に協力を求める「国防生産法」に基づいてワクチンの原材料の製造を加速させたことなどが功を奏したとしています。

    一方で、アメリカの一部の州では状況が改善されたとしてマスク着用の義務を廃止する動きが出ていて、バイデン大統領は会見で「まだ警戒を緩める時期ではない」と述べ、引き続きマスクの着用や人との距離を取ることなど対策を怠らないよう呼びかけました。

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    ヨーロッパ各国 政府や専門家 高齢者にワクチン接種の効果指摘(3/19)

    2021年3月19日

    日本に先駆けて2020年12月から新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まったヨーロッパ各国では、優先的に接種を受けた高齢者の間で感染者や死者が減っていて、政府や専門家はワクチン接種の効果が出始めていると指摘しています。

    このうちフランスでは、3月15日の時点で、75歳以上の40%余りが、少なくとも1回の接種を受けました。

    なかでも優先的な接種が行われた高齢者施設では全国の施設のおよそ70万人の入所者のうち、89%が1回目の接種を、68%は2回目の接種も終えています。

    保健当局のまとめによりますと、高齢者施設での1週間の感染者数は、ことし1月には9000人以上にのぼっていましたが、3月初めには3025人と3分の1まで減少したほか、死者も3分の1近くに減りました。

    この間のフランス全体の傾向をみますと、感染者数はわずかに増えていて、死者の数はほぼ横ばいとなっています。

    ワクチンの効果について、カステックス首相は3月4日の会見で「感染リスクの高い人たちを対象としたワクチン接種の最初の効果が確認された」と評価しました。

    高齢者施設で亡くなった人は、2020年の春の感染拡大以来、これまでに2万5000人を超えてフランス全体の4分の1以上を占め、感染を防ぐため、入所者は外出や家族との面会も制限され、孤立した生活を強いられてきました。

    全国の高齢者施設の事業者で作る団体の幹部、エリック・フレゴナさんは「極めて多くの入所者が亡くなり壊滅的な1年でした。ワクチンの接種で入所者の生活が少しずつ元に戻ることを期待しています」と話していました。

    ドイツ

    ドイツでは2020年12月から新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まり、3月16日までに人口の8%にあたるおよそ680万人が少なくとも1回接種を受け、このうち、およそ300万人が2回目の接種を終えています。

    接種にあたっては、80歳以上の人や高齢者施設の入所者などが最優先とされ、このうち、1回目の接種を受けたのは80歳以上の人で52%、高齢者施設の入所者で91%にのぼっています。

    ドイツでは2020年12月にほとんどの小売店の営業を禁止するなどの措置をとり、ことし1月に入って新たな感染者数はいったん減少しましたが、2月からは再び増加傾向にあります。

    感染症対策にあたる政府の研究機関、ロベルト・コッホ研究所によりますと、感染者を年齢別にみると、2020年末ごろまでは特に80歳以上の人たちの間で感染が拡大していましたが、現在の感染の拡大は子どもや若者が中心で85歳以上の人たちの感染は減少傾向にあるということです。

    一方、1日あたりの死者数は、ことし1月には1000人を超える日も相次いでいましたが、最近では100人を下回る日もあります。

    ロベルト・コッホ研究所のロタール・ウィーラー所長は3月12日の記者会見で、重症化のリスクが高い高齢の人たちの間で感染者数が減少しているのは大きな成功だとしたうえで「ワクチン接種は、私たちが持っている最も強力な手段だ。死者数が継続して減少しているのは確実に接種の効果だ」と述べています。

    イギリス

    イギリスでは、2020年12月から高齢者を優先にワクチンの接種が始まり、これまでに人口のおよそ38%にあたる2520万人余りが1回目の接種を受けました。

    このうちロンドンのあるイングランドでは、65歳以上のおよそ90%が1回目の接種を済ませ、現在は50歳以上を対象に接種が進められています。

    イングランドの保健当局は2月21日までに入院したケースや亡くなった人などの増減を分析しました。

    それによりますと、ファイザーなどが開発したワクチンについて80歳以上の高齢者の死亡を83%減らしたとみられるとしています。

    また、70歳以上で新型コロナウイルスの発症を、1回目の接種の4週間後で57%から61%減らしたということです。

    保健当局は、ワクチンが高齢者に対し高い効果があるとする一方、どの程度、感染の拡大を抑えるのかはわかっていないとしています。

    スペイン

    スペイン政府のまとめによりますと、スペインの高齢者施設では、ワクチン接種が始まったばかりのことし1月には、1週間(1月18日~24日)の感染者数が多いときで4463人にのぼっていましたが、3月初めの1週間(1日~7日)には44人にまで減少したということです。

    また、同じ時期の死者も715人から33人にまで減ったということです。

    スペインでも重症化リスクの高い人たちにワクチンの優先的な接種が行われていて、高齢者施設などの入所者の97%が1回目の接種を、87%が2回目の接種を受けています。

    スペインのダリアス保健相は3月16日、ワクチンについての国際会議で行ったあいさつで「ワクチンは希望をもたらしてくれた。高齢者施設での死者が減少するなど、確かな効果を示している」と述べ、ワクチンの効果を高く評価しました。

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    EU 域内の移動制限緩和へ ワクチン接種の共通証明書案発表(3/18)

    2021年3月18日

    EU=ヨーロッパ連合は、域内の移動制限の緩和に向けて新型コロナウイルスのワクチンを接種した人に共通の証明書を発行する制度案を発表しました。

    EUでは新型コロナウイルス対策として域内での「自由な移動」が制限されていて、制限の緩和に向けてワクチンを接種した人に発行する共通の証明書の導入について議論が続けられてきました。

    EUの執行機関、ヨーロッパ委員会は3月17日、ワクチンを接種したことを証明する「デジタルグリーン証明書」の制度案を発表しました。

    それによりますと、証明書にはワクチンの接種の有無に加え、接種していない人が差別的な扱いを受けないようPCR検査や抗体検査の結果も盛り込まれるということです。証明書はスマートフォンや印刷した紙に記載されたQRコードを読み取る仕組みで空港や国境などで提示することで域内を自由に移動できるとしています。

    EUのフォンデアライエン委員長は記者会見で「安全かつ信頼できる形で移動の自由を取り戻すためのものだ」と述べ加盟国とヨーロッパ議会の承認を経て夏のバカンスシーズンまでに制度を導入したい考えを示しました。

    一方、フォンデアライエン委員長はEU域内からのワクチンの輸出について「EUからワクチンが出て行くが、入ってこない。あらゆる選択肢がある」と述べ今後、輸出規制を強化する可能性も示唆しました。

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    米モデルナ 6か月以上12歳未満対象にワクチンの臨床試験開始(3/17)

    2021年3月17日

    アメリカの製薬会社モデルナは、12歳未満の子どもを対象に新型コロナウイルスのワクチンの有効性と安全性を確認する臨床試験を開始したと発表しました。アメリカでは学校の対面授業の安全な再開に向け、子どもたちのワクチン接種が必要だという意見が出ていて、製薬大手ファイザーも4月から12歳未満の子どもの臨床試験を開始する見通しです。

    アメリカの製薬会社モデルナは3月16日、アメリカとカナダの子どもを対象にした臨床試験を開始し、最初の接種が行われたと発表しました。

    対象となるのは生後6か月以上12歳未満で、およそ6750人の参加者を集めることを目標にしています。

    モデルナのワクチンは18歳以上が接種の対象で、12歳以上18歳未満を対象にした臨床試験はすでに進められています。

    アメリカで接種されているワクチンでは、このほか、製薬大手ファイザーも4月から5歳以上12歳未満の子どもを対象にした臨床試験を開始する見通しです。

    アメリカでは、学校の対面授業の安全な再開やいわゆる「集団免疫」の状態に達するため、子どもへのワクチン接種が必要だという意見が出ています。

    アメリカ政府の高官は臨床試験の結果に問題がなければ12歳以上はことしの秋にも、それ以下の子どもたちは来年はじめにもワクチン接種の対象になるという見通しを示しています。

    ワクチン接種で対面授業再開の期待も

    新型コロナウイルスの感染拡大が続く影響で、依然、多くの地域の学校でインターネットなどを利用した遠隔授業が行われているアメリカでは、児童、生徒へのワクチン接種が進めば、対面での授業が安全に再開できるようになると期待されています。

    また、人口の一定の割合が新型コロナウイルスに対する免疫を獲得し、感染が広がらなくなる、いわゆる「集団免疫」の状態に達するためには、子どもたちへの接種も必要だとされています。

    ベイラー医科大学小児感染症科の池田早希医師は「小児は重症化しにくい傾向はあるが、それでも一部は重症化し、命を落とすケースもある。感染した子どもが家庭内で親や祖父母に感染を広げることもあるので、ワクチン接種でこうした事態を防ぐ効果が期待できる」と話しています。

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    アストラゼネカ製ワクチン EU当局「メリットはリスク上回る」(3/17)

    2021年3月17日

    アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスワクチンの接種後に血栓が確認されたことなどを受けて、調査を行っているEU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は、3月18日に予定している調査結果の公表を前に記者会見し「接種によるメリットはリスクを上回る」という現段階での見方を改めて示しました。

    アストラゼネカなどが開発したワクチンについては接種後に血栓が確認された例が報告されているとして、これまでドイツやフランスなどヨーロッパの少なくとも15か国が予防的な措置として接種を見合わせると発表しています。

    これについて、EMA=ヨーロッパ医薬品庁は3月16日、記者会見し「ワクチンが血栓を引き起こしたと示すものはない」として因果関係は確認できていないとの現段階での結果を改めて強調しました。

    そのうえで「これまで同様、接種によるメリットはリスクを上回る」という見方を改めて示しました。

    EMAはアストラゼネカワクチンの接種後に血栓が確認された例について詳細な調査を進めていて3月18日に結果を公表する予定です。

    現在、アストラゼネカのワクチン接種を見合わせている国の多くはEMAの判断を待つとしており、結果の内容を各国が注視しています。

    仏伊「速やかに接種再開の用意」

    フランスのマクロン大統領とイタリアのドラギ首相は16日、電話会談を行い、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種を見合わせていることについて意見を交わしました。

    イタリア首相府の声明によりますと、この中で両首脳はEMAが記者会見で「接種によるメリットはリスクを上回る」という見方を示したことについて「心強い」と歓迎したということです。

    そして、現在の接種の見合わせはEMAが調査結果を公表する3月18日までの一時的で予防的な措置だと改めて強調し「調査の結果が肯定的であれば速やかに接種を再開する用意がある」としています。

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    UAE 新型コロナ ワクチン接種進む 半ば強制的に促す対策も(3/17)

    2021年3月17日

    各国が新型コロナウイルスのワクチン接種を急ぐ中、中東のUAE=アラブ首長国連邦ではすでに、人口の35%が少なくとも1回の接種を終え、世界的にも早いペースでワクチンの接種が進んでいます。接客業などにあたる人に対して優先的な接種を行うと同時に、接種を強く促す対策も始まり、普及を急いでいます。

    人口およそ980万人のUAE=アラブ首長国連邦では、2020年12月から、中国の製薬大手「シノファーム」や、アメリカの製薬大手「ファイザー」が開発したワクチンの接種を始め、3月16日時点で、650万回余りの接種が行われました。

    イギリス・オックスフォード大学の研究者などが各国の接種状況をまとめた「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと2月23日の時点ですでに人口の35.2%が少なくとも1回は接種を終えたということで、イスラエルとイギリスに次いで世界で3番目に早いペースとなっています。

    UAEでは、優先的な接種の対象者に、医療従事者や高齢者などに加え、接客業を担うエッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちも加えています。

    政府系のエミレーツ航空は、地上スタッフなど8万人をエッセンシャルワーカーと位置づけ接種を進めるなど、政府と関わりが深い大手企業を中心に、大規模な接種が進められています。

    また、ワクチンを接種していない人に対しては、PCR検査を定期的に受けることを義務づけることで、接種を強く促しています。

    このうち、北部のシャルジャでは2月から、飲食店や食料品店の従業員でワクチンを接種していない人については、2週間に1度、PCR検査を受けることを義務づけています。

    同様の対策は公務員も対象となり、ワクチンを接種していない人についてはやはり、定期的な検査が義務づけられ、接種を促す対策となっています。

    UAEは、中東の経済ハブとして、外国からのビジネス客や観光客を頼りに発展し、2021年10月には、国際博覧会「ドバイ万博」も開かれる予定で、感染の収束に向けた取り組みを進めています。

    大手企業や大学で大規模なワクチン接種

    外国人居住者が人口のほとんどを占める、UAE=アラブ首長国連邦では、政府系の大手企業や、大学などで、国籍を問わない形で大規模なワクチン接種が進められペースの加速につながっています。

    このうち、政府系の大手航空会社エミレーツ航空は、関連企業と合わせた社員およそ8万人を、優先的な接種の対象とするエッセンシャルワーカーに位置づけ、ドバイ国際空港内に設けた会場で接種を進めています。

    会場には、業務の合間をぬって地上スタッフや整備士などが次々と訪れ中国の製薬会社が開発したワクチンの接種を受けていました。

    接種を受けたフィリピン人の男性は「都市封鎖や国際線の停止はもうこりごりで、客や家族の安全のために接種を決めました」と話していました。

    政府系の大手企業では、通信会社や国営の石油会社も従業員に、ワクチン接種を受けてもらうと発表し、企業ごとに大規模な接種が進められています。

    また接種は大学でも行われ、UAE北部にある私立のアジュマン大学では、7日、キャンパス内に会場が設けられました。

    この大学ではすでに、教職員の7割が接種を済ませ、現在は学生に対しても接種を受けるよう強く求めているということです。

    大学では、卒業生も無料で接種を受けられるということで、大勢の人が訪れていました。

    接種に訪れた、建築学を教えるアルジェリア人の男性教授は「建築学の場合、オンライン学習では教えるにも学ぶにも限界がある。少しでも多くの人がワクチンを接種して通常の形で授業を再開させたい」と話していました。

    ワクチン接種の会場の担当者、ヒシャーム・ムタナウィさんは「大学構内の施設はアクセスもよいので、多くの人に来てもらい、100%の接種率を目指したい」と話していました。

    半ば強制的に接種促す対策も

    UAE=アラブ首長国連邦では、ワクチンの接種を受けていない人たちに定期的なPCR検査を義務づける動きも一部で始まり、半ば強制的な形で接種を促す対策を進めています。

    こうした対策はUAEの複数の地域で始まり、このうち北部のシャルジャでは2月末、飲食店や食材を扱う店舗で働く従業員については、ワクチンを接種していない場合、2週間に一度、新型コロナウイルスのPCR検査を義務づけると発表しました。

    こうした動きに対して市内の飲食店からは、ワクチンを接種する以外に選択肢はないという声があがっています。

    このうち、市内のパレスチナ料理店は、店長と従業員の5人で交代しながら勤務にあたっていますが、検査を受けると結果が判明するまで自宅での待機が求められるため、業務を続けることが難しくなるということです。

    店のオーナーで、パレスチナ人のアハマド・ムゼイニさんは、「定期的な検査は経営には大きな負担で、ワクチン接種以外に選択肢はありません。私たちのような外国人はUAEでの仕事を守るため、政府が推奨することを拒むことはできないので、従業員にはワクチンを受けてもらいます」と話していました。

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    アストラゼネカ製ワクチン 欧州で接種一時見合わせ動き広がる(3/16)

    2021年3月16日

    ヨーロッパではアストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを、接種したあとに血栓が報告されたなどとしてヨーロッパ各国が予防的に接種を見合わせると相次いで発表し、ワクチンセンターが一時的に閉鎖されるなど接種計画に影響が出ています。

    アストラゼネカなどが開発したワクチンをめぐっては、接種後に血栓が確認されたケースがあるなどとして、3月16日までにドイツやフランス、イタリアなど15か国が予防的な措置として接種を見合わせると発表しました。

    このうちイタリアでは3月16日、首都ローマ中心部の駅近くに設置されたワクチンセンターが政府の見合わせの決定を受けて朝から閉鎖されるなど、ローマのあるラツィオ州では30か所以上が一時的に閉鎖されているということです。

    市民からは「調査をするためにワクチンの接種を止めることは良いことですが、その後は接種を進めるべきです」といった声や、「血栓は偶然かもしれないが心配です。アストラゼネカ製のワクチンの信用が失われている」といった声が聞かれました。

    また、フランスでは3月15日から全国の薬局でアストラゼネカなどが開発したワクチンの接種が始まったばかりでしたが、政府の決定を受けて、接種が急きょ中断される事態となっていて、ワクチン接種を急ぐ各国の計画に影響が出ています。

    調査を行ってるEU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は「ワクチンを接種した人が血栓を起こしたケースは接種していない人に比べて多くないとみられる」とした上で、「ワクチンを接種して得られる効果の方が、接種しないリスクを上回る」と強調していて、3月18日にも今後の対応を発表する予定です。

    一方、WHO=世界保健機関は、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種が死亡につながった例は確認されていないとして各国に接種を続けるよう呼びかけています。

    ヨーロッパではアストラゼネカ製のワクチンを接種したあとに血栓が報告されたなどとして一時的に接種を見合わせる国が相次いでいます。

    3月11日に北欧のデンマークが予防的な措置として2週間接種を見合わせると発表し、これを受けてノルウェーやアイスランドも接種を見合わせました。

    その後、ブルガリアやアイルランド、オランダが続きました。そして3月16日までにドイツやフランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、キプロス、スロベニア、ラトビア、スウェーデンが接種の見合わせを発表し、これまでに少なくとも15か国にのぼっています。

    110万回分届いたインドネシアも接種計画見直しへ

    アストラゼネカなどが開発したワクチン、およそ110万回分が3月8日に届いたインドネシアでは、このワクチンを使った接種計画を見直すことを明らかにしました。

    インドネシアでは2021年1月から中国の製薬会社「シノバック」が開発したワクチンの接種が医療従事者らを優先して始まっていますが、これに加え、アストラゼネカなどが開発したワクチンの緊急使用を3月9日に許可し、国内のイスラム教団体による「ハラル認証」を待ったうえで接種の開始時期を決める計画でした。

    こうした中、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種後に血栓が確認されたとの報告があったことから、インドネシアのブディ保健相は、3月15日議会への説明の中で、「EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局などの情報も確認している。ワクチンの接種と関係があるかどうかはまだ明らかになっていない」と述べました。その上でブディ保健相はWHO=世界保健機関の調査結果をもとに、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種計画を見直すことを明らかにしました。

    接種延期していたタイは3月16日から再開

    タイ政府も、3月12日に予定していたプラユット首相へのこのワクチンの接種を急きょ延期し、国民への接種も見合わせていました。

    しかし、タイ政府は「科学的な根拠に基づいて安心して使用できるとするアストラゼネカの声明や、ワクチンの接種と関係があるとは言えないという WHOの見解などを受けて、タイの医療チームが安全性を総合的に判断した」として、3月16日から接種を開始し、プラユット首相も自ら接種を受けました。

    プラユット首相は接種を受けた後「国民の間にワクチン接種への信頼感が高まってくれればよい」と述べました。

    タイでは、中国の製薬会社「シノバック」が開発したワクチンの接種が2月から始まっていますが、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種が延期されたことで、ワクチンの接種自体を心配する声が上がっていました。

    6000万人分供給契約 日本への影響は

    現在日本ではファイザー製のワクチンの接種が進められていますがアストラゼネカも日本政府との間で6000万人分を供給する契約を結んでいます。

    日本への影響について東京都内で「ヨーロッパの一部の国で使用が一時停止されているが日本の接種計画に影響はないか」と記者団から質問された菅総理大臣は「まずは、情報をしっかり集めて、それを精査したうえでの判断になると思う」と述べました。

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    アストラゼネカ開発のワクチン問題 EUが3月18日の会合で対応決定(3/16)

    2021年3月16日

    アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、接種後に血栓が確認されたなどとしてドイツやフランスが予防的に接種を見合わせると発表しました。会社側は安全性を強調していて、EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は3月18日に会合を開いて今後の対応を決めることにしています。

    アストラゼネカなどが開発したワクチンをめぐっては、接種後に血栓が確認されたケースがあるなどとして、ヨーロッパの一部の国が接種を見合わせていて、3月15日には、ドイツやフランス、イタリア、それにスペインの政府が予防的な措置として接種を見合わせると発表しました。

    各国とも、EUの医薬品規制当局のEMA=ヨーロッパ医薬品庁の対応を待って接種の再開を判断するとしています。

    これについてEMAは、3月18日に臨時の安全委員会を開き、今後の対応を発表する方針を明らかにしました。

    これまでEMAは「ワクチンを接種して得られる効果のほうが接種しないリスクを上回る」としています。

    また、イギリスは今後も接種を続ける方針を示しています。

    アストラゼネカ「安心して使用できる」との声明発表

    オックスフォード大学と共同でワクチンを開発したアストラゼネカは、3月14日、科学的な根拠に基づいてワクチンを安心して使用できるとする声明を出しています。

    声明では、EU=ヨーロッパ連合やイギリスでこれまでに接種を受けた1700万人以上のデータを確認した結果、年齢や性別、ワクチンの製造時期などによって血栓症などのリスクが高まる根拠は見つかっていないとしています。

    そのうえで、安全性は最優先だとして今後も状況を注意深く見ていくとしています。

    緊急使用の許可審査 米でも近く始まる見通し

    アメリカのNIH=国立衛生研究所のフランシス・コリンズ所長は3月15日、ロイター通信とのインタビューでアストラゼネカのワクチンの緊急使用の許可の審査がアメリカでも近く始まる見通しだという認識を示しました。

    一方、ヨーロッパの一部の国が接種後に血栓が確認されたなどとしてアストラゼネカのワクチンの接種を見合わせていることについてコリンズ所長は「ワクチンを接種された人のほうが血栓ができる割合が多いかどうかはまだ明確になっていない」と述べるにとどめています。

    WHO 各国の報告評価し議論

    WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は3月15日の定例の記者会見で、アストラゼネカなどのワクチンの接種後に血栓が確認されたとの報告を受けて複数の国が予防的に接種を見合わせていることを把握していると述べました。

    そのうえでテドロス事務局長は「必ずしもワクチンの接種と関係があるとは言えず、調査は日常的に行われることだ」と述べました。

    そして、ワクチンの安全性を調査する国際的な諮問委員会が各国からの報告を評価していて、3月16日に会合を開いてさらに議論すると明らかにしました。

    また、主任科学者のスワミナサン氏は「ワクチンの安全性は最も重要だ」としたうえで「100%、完全に安全なワクチンは存在せず、100万人に1人の割合で問題が起きることもある。しかし何百万人もの命を奪っている病気から人々を守ることの利益について考える必要がある」と述べ、接種によるメリットがリスクを上回るという考えを強調しました。

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    フランス 変異ウイルス拡大で病床ひっ迫 重症患者の移送措置も(3/15)

    2021年3月15日

    フランスでは、パリと周辺の地域で変異した新型コロナウイルスの感染が拡大し、病床がひっ迫していることから、比較的余裕がある地域の病院へ重症患者を移送する措置が始まりました。

    フランスでは、イギリスで最初に確認された変異ウイルスが新たな感染のおよそ70%を占め、特にパリと周辺地域では重症化する患者も増えて、集中治療室の病床がひっ迫しています。

    このためフランス政府は、病床に比較的余裕がある西部や南西部の病院に重症患者の一部を移送することを決め、3月14日には、パリ近郊の空港から2人の患者を乗せた航空機が出発しました。

    立ち会った政府のアタル報道官は「病院に入れないまま放置される人がいてはならない。手当てが必要な市民を病院が受け入れられる状態を維持しなければならない」と述べ、医療現場の負担を軽減するため、政府としてあらゆる手段を講じる方針を示しました。

    政府は航空機に加え、高速鉄道も使って、今後1週間で100人ほどの患者を移送する計画です。

    フランスでは感染拡大に歯止めをかけるため、全国で午後6時以降の夜間の外出を制限しているほか、南部のニースや北部のダンケルクなど、変異ウイルスの感染拡大が著しい地域については、週末に限って、日中も住民の外出を制限しています。

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    アストラゼネカワクチン 接種見合わせでEU調査 英仏は接種継続(3/12)

    2021年3月12日

    EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は、アストラゼネカなどが開発したワクチンについて一部の国が予防的な措置として接種の見合わせを決めたことを受けて、調査を進めていると発表しました。接種後に血栓が確認されたということですが、規制当局は今のところワクチンの接種がこれらの症状を引き起こしたことを示す情報はないとしています。

    EUの医薬品規制当局は3月11日、EUとその周辺の国で、アストラゼネカなどが開発したワクチンを接種したあとに血栓が確認されたという報告が複数あったとして、調査を進めていることを明らかにしました。

    デンマークは3月11日、予防的な措置として2週間接種を見合わせると発表しました。ノルウェーやアイスランドもこれを受けて接種を見合わせるとしています。

    EUの医薬品規制当局は、接種後の血栓症のような事例の報告数は特段多いわけではないとしたうえで「今のところワクチンの接種がこれらの症状を引き起こしたことを示す情報はない。現時点では、接種して得られる利益のほうがリスクを上回る」としています。

    このワクチンをめぐって、フランスは保健相が引き続き接種を進める方針を示したほか、これまでに1100万人以上がこのワクチンを接種しているイギリスも、これまでに報告された血栓の事例は自然に起こりうる数を上回るものではなく、接種を続けるとしています。

    カナダ・オーストラリアも接種継続

    こうした中、カナダの保健当局は3月11日「ヨーロッパで報告された健康に関する事例については承知しているが、カナダ国民にはワクチンを接種することでもたらされる利益は、リスクを上回ることを再認識してほしい」などとする声明を発表し、2月承認したアストラゼネカなどが開発したワクチンの接種を進める考えを示しました。

    また、ロイター通信によりますと、オーストラリアの保健当局も、このワクチンが血栓の原因であることを示す証拠はないとして、接種を継続する方針を示したということです。

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    ファイザー ワクチン “無症状の感染者”を94%予防(3/12)

    2021年3月12日

    アメリカの製薬大手ファイザーは3月11日、開発した新型コロナウイルスワクチンについて、イスラエルでの大規模な接種のデータから、無症状の感染者になることを94%予防する効果を示したとする分析結果を発表しました。無症状の感染者は自覚がないままウイルスを広げる可能性が指摘されているため、ファイザーは「世界的に感染の拡大を止めるうえで重要な意味を持つ」としています。

    アメリカの製薬大手ファイザーは3月11日、イスラエルで大規模に行われているファイザーの新型コロナウイルスワクチンの接種のデータにもとづいたワクチンの効果についての分析結果を発表しました。

    それによりますと、2021年1月17日から3月6日までにファイザーのワクチンの2回目の接種を受けてから2週間後の時点での健康状態を、接種を受けていない人と比較した結果、新型コロナウイルスの発症や入院、それに死亡を予防する効果は少なくとも97%に上ったとしています。

    さらに、無症状の感染者になることについても、94%の予防効果を示したということです。

    発表では、どのくらいの人数を比較したのかなど、詳しい数値は明らかになっていませんが、無症状の感染者は自覚がないままウイルスを広げる可能性が指摘されているため、ファイザーは「世界的に感染の拡大を止めるうえで重要な意味を持つ」としています。

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    IOCバッハ会長 選手や関係者に中国製ワクチン提供の考え(3/12)

    2021年3月12日

    IOC=国際オリンピック委員会の総会はオンラインで2日目の会合が行われ、バッハ会長が、東京大会と北京大会について、希望する選手や関係者に対して中国製のワクチンを提供する考えがあることを明らかにしました。

    IOCの定例の総会は3月10日から3日間の日程で始まり、2日目の11日は東京大会などこれから行われるオリンピックの組織委員会による準備状況の報告が行われました。

    これに先立ちバッハ会長が発言を求め、中国のオリンピック委員会から「東京大会と北京大会の選手や関係者に対して中国製のワクチンを提供する」という申し出があったことを明らかにしました。

    バッハ会長は「IOCが費用の負担を行う」と述べて、オリンピックとパラリンピックに参加する選手や関係者に中国製のワクチンを提供する考えがあることを明らかにしました。

    参加者が2回接種できるだけのワクチンを確保できるとしています。

    このあと東京大会組織委員会の報告が行われ、2月に就任した橋本聖子新会長が、新型コロナ対策やジェンダー平等の推進など3つの重点対策などを報告し、武藤事務総長は、先週の5者協議での合意内容を踏まえ、海外からの観客の受け入れを聖火リレーが始まる3月25日より前に決めることなどを報告しました。

    このあとIOC委員から海外の観客に関する質問があり、コーツ調整委員長は、受け入れを断念した場合にはチケットの払い戻しや宿泊のキャンセルなど課題は多岐にわたるとしたうえで「こうしたことについて迅速に話し合いを行い、来週までには皆さんにお伝えできるようにしたい」と述べて、結論を急ぐ考えを強調しました。

    大会組織委「事前に話は全く聞いていない」

    IOC総会のあと大会組織委員会は記者会見し、IOCのバッハ会長が東京大会と北京大会で希望する選手や関係者に中国製のワクチンを提供する考えがあることを明らかにしたことについて、武藤事務総長は「事前に話は全く聞いていない。ワクチンの接種は日本政府がやっていることなので、組織委員会としてはコメントする立場にない」と述べるにとどまりました。

    一方、海外からの観客の受け入れについては、武藤事務総長がIOC総会での委員からの質問に対して、結論はまだ出ていないとしながらも、国内外で感染を広げるおそれがあることや、世論が非常に慎重になっていることなどをあげて「難しい状況だ」と説明し、受け入れを見送る場合は、チケットの払い戻しに応じることも明確にしました。

    橋本会長は会見で「現在も協議を続けていて、結論が出たものではない。3月25日までに改めて5者で判断したい」と述べました。

    また橋本会長は、東日本大震災から10年となったことについて「東京大会にとって復興への貢献は源流だ。犠牲になられ、つらい思いの中で一生懸命10年間にわたり復興に努めてこられたすべての皆様にとって、東京大会を通じて希望と夢が再び心の中にともされるような大会にしないといけないと、改めて思った」と述べました。

    丸川大臣「承認が前提 現時点で日本選手は対象外」

    丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣は閣議後の記者会見で、IOC側からの事前の調整はなかったとしたうえで「中国製のワクチンが承認された国において判断することだろうと思う。日本で中国の企業が承認申請をしているかどうか把握していない」と述べ、現時点では日本の選手らは接種の対象にはならないという認識を示しました。

    そのうえで「東京大会はワクチンを接種していなくても安心して参加と受け入れをできるようにするため、総合的な感染症対策をとることにしている。ワクチンの接種を前提としないという原則は変わらない」と述べました。

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    アストラゼネカのワクチン 欧州で見合わせの動き(3/12)

    2021年3月12日

    アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、北欧のデンマークは、接種後に血栓が確認されたという複数の報告があったとして、ワクチンとの関係はわからないものの、接種を一時見合わせ、調査を行うと発表しました。アストラゼネカは、ワクチンの安全性は臨床試験でも広く検証されているなどとコメントしています。

    デンマークの保健省は3月11日、アストラゼネカなどが開発したワクチンについて、接種後に血栓が確認されたという複数の報告があり、2週間接種を見合わせて調査を行うと発表しました。

    報告には死亡したケースが1件含まれるということですが、ワクチン接種との関係はわからないとしています。

    これを受けて北欧のノルウェーは、デンマークの調査の結果が明らかになるまで接種を見合わせるとしています。

    アストラゼネカは「ワクチンの安全性は臨床試験でも広く検証されている」などとコメントしています。

    一方、EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は3月11日、EUとその周辺国でアストラゼネカのワクチンを接種したおよそ500万人のうち、接種後に血栓症のような事例として30件の報告があったと明らかにしました。

    そして、いずれの事例もワクチンの接種との関係はわかっておらず、調査を進めているとしたうえで「現時点ではワクチンを接種して得られる効果のほうが、接種しないリスクを上回る」と強調しました。

    このほかヨーロッパでは、オーストリアやイタリアなどで、特定の時期に製造されたアストラゼネカのワクチンについて、接種後に深刻な健康への影響が報告されたとして、接種を一時見合わせる動きが出ています。

    加藤官房長官「現在の承認審査で安全性など確認」

    加藤官房長官は閣議後の記者会見で「デンマークなどで接種後に血栓ができる事例が報告されたことを受けて接種が一時中止されていることは報道で承知している。EUの医薬品規制当局のEMA=ヨーロッパ医薬品庁は、現時点で血栓症とワクチンとの関連性を示す証拠は見当たらないとする声明を発表していると承知している」と述べました。

    そのうえで「わが国においてアストラゼネカ社のワクチンについては2月5日に特例承認を求める申請がなされ、3月中には国内治験データを含め主要データが提出される予定で、現在まさに承認審査が行われているところだ。提出されたデータと最新の科学的知見に基づき有効性や安全性などがしっかり確認されていくものと承知している」と述べました。

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    EU ジョンソン・エンド・ジョンソン開発のワクチン 使用を許可(3/12)

    2021年3月12日

    EU=ヨーロッパ連合は製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した新型コロナウイルスワクチンについて使用するための許可を出しました。EUが許可を出した新型コロナウイルスワクチンとしては4種類目です。

    EUのヨーロッパ医薬品庁は3月11日、製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発したワクチンを審査した結果、販売許可を出すよう勧告し、これを受けてEUの執行機関のヨーロッパ委員会が即日、許可を出しました。

    EUはこれまでにファイザーやアストラゼネカなどのワクチンに許可を出していて、今回のワクチンが4種類目となります。

    ヨーロッパ委員会のフォンデアライエン委員長は、声明の中で「このワクチンは1回の接種で済み、2021年夏の終わりまでに成人の70%に接種するという、われわれの目標達成に近づくものだ」と述べ、域内の接種に弾みがつくことに期待を示しました。

    ただ、EUではこれまでワクチンの供給が軒並み遅れていて、一部の加盟国はEUが許可していないロシアなどのワクチンの接種を独自に進めているほか、域外への輸出を差し止める事態も起きています。

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    韓国 アストラゼネカのワクチン 65歳以上も接種対象に(3/11)

    2021年3月11日

    韓国政府は、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、これまで接種の対象としていなかった65歳以上の高齢者についても、効果を示す資料が発表されたなどとして、今後、接種を進めることを明らかにしました。

    日本も供給を受ける契約を結んでいる、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、韓国政府は、有効性のデータが不足しているとの指摘があるとして、これまで65歳以上の高齢者を接種の対象としていませんでした。

    これについてチョン・セギュン(丁世均)首相は3月11日午前、「最近、高齢者への効果を十分に示す資料がイギリスで発表され、各国が接種の対象を拡大している」として、今後、65歳以上についても接種を進めることを明らかにしました。

    2月26日からワクチンの接種が始まった韓国では現在、アストラゼネカのほか、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンが使われていて、これまでに50万人以上が、1回目の接種を終えたということです。

    一方、2021年初めは1000人を超えていた1日当たりの感染者は、1月下旬に300人台まで下がったあと、ほぼ300人台から400人台で推移する下げ止まりの傾向が続いていて、今後、どのようにして、さらに感染者を減らしていくかが課題となっています。

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    フランスの接種はどこまで進んだ?(3/11)

    2021年3月11日

    イギリス、アメリカなどに続いて、新型コロナウイルスのワクチンの接種が2020年12月下旬から始まったEU=ヨーロッパ連合の各国。このうちフランスは2020年12月下旬に行われた世論調査でワクチンを接種しないつもりだと回答した人が60%近くにのぼっていました。ワクチンの接種が進むか不安視されていましたが、実際はどうなったのでしょうか?

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    米CDC ワクチン接種後のマスク着用などに関する指針公表(3/9)

    2021年3月9日

    アメリカCDC=疾病対策センターは、ワクチンを接種した人のマスクの着用などに関する初めての指針を公表しました。
    接種した人どうしであれば、屋内でマスクなしで集まってもリスクは低いとする一方、公共の場所ではマスクの着用や距離の確保が必要だとしています。

    CDCは3月8日、ワクチンの接種を完了した人のマスクの着用や距離の確保に関する初めての指針を公表しました。

    それによりますと、ワクチンを接種した人どうしであれば、屋内でマスクなしで集まってもリスクは低いとしています。

    また、高齢者が子どもや孫の家庭を訪れることを念頭に、接種した人が接種していない人と会う場合でも、相手が単一の世帯であればマスクを着用せずに面会できるとしています。

    一方で、接種を済ませていない複数の世帯が集まる場や重症化のリスクの高い人と接する時、公共の場所ではマスクの着用や距離の確保が必要だとしており、大規模な催しへの参加も避けるべきだとしています。

    この理由についてCDCのワレンスキー所長は、ワクチンの接種を完了してもわずかに感染の可能性があり、無症状で感染を広げるおそれも否定できないとしていて、相手側のリスクも踏まえ「接種していない人との接触は慎重に判断すべきだ」と強調しています。

    加藤官房長官「ワクチン接種した人もマスク着用を」

    加藤官房長官は、閣議のあとの記者会見で「政府として、これまでも国民にマスク着用の徹底をお願いしているところであり、現時点で、ワクチンを接種した人に対してもマスクの着用をはじめとした基本的な感染防止対策の徹底をお願いしている。今後も最新の科学的な知見を踏まえ、専門家の意見を聴きつつ、厚生労働省を中心に必要な検討は行っていきたい」と述べました。

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    ワクチン 国際的枠組みで供給開始 課題も浮き彫りに(3/6)

    2021年3月6日

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、途上国を含め世界全体に公平に分配するための国際的な枠組みによる供給が始まりましたが、各国に届くまでの時間がかかることやワクチンの量が足りないことなどの課題が浮き彫りとなっています。

    国連などが主導する枠組み「COVAXファシリティ」は、190の国と地域が参加して先進国などが資金を拠出し、ワクチンを途上国を含め各国に公平に分配することを目指しています。

    この枠組みによって2月24日、西アフリカのガーナに初めてワクチンが届けられました。その後、アフリカのコンゴ民主共和国やアンゴラ、そしてアジアのカンボジアなど、3月5日までに20か国に合わせて2000万回分余りが供給されました。しかし、多くの国は依然、ワクチンの到着を待っていて、供給に時間がかかっています。

    また、この枠組みで供給されるのは各国の人口の最大20%までで、多くの人が免疫を持つことで感染が広がりにくくなる、いわゆる集団免疫の状態を獲得するのに必要とされる、世界の人口の70%を超える人に接種するには量が足りません。

    さらに、COVAXが目指している途上国などへの20%の供給を達成するにも年内いっぱいかかるとしています。

    先進国などに比べて途上国で接種が遅れている「ワクチン格差」を解消するのは簡単ではなく、国連は、国の経済力にかかわらず、各国が医療従事者や高齢者への接種を優先できるよう、さらなる支援を呼びかけています。

    ワクチン待つアフリカの国 供給の遅れに不満

    アフリカのカボベルデでは、COVAXによってアメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの供給を受けることになっていますが、供給は遅れています。

    このワクチンは、輸送や保管の際の低温での管理が必要なことから、WHO=世界保健機関によりますと、アフリカでは13か国が希望しましたが、管理態勢などを考慮して認められたのは、カボベルデのほか、ルワンダ、チュニジア、そして南アフリカの4か国でした。

    首都プライアにある政府が管理する医薬品の倉庫には、ワクチン供給に備えてマイナス80度にも対応できる特殊な冷凍庫が新たに輸入され、4台が設置されました。

    現場の担当者は「ワクチンが届くのを心待ちにしている」と話していました。

    しかし、カボベルデへの供給は当初予定されていた2月下旬から遅れ、政府は今のところ、3月中旬になるとの見通しを示しています。

    カボベルデ保健省でワクチンの確保や供給を担当するバレト局長は、NHKとのインタビューで「低い温度で管理しながら、まずは医療関係者への接種を行うための準備を進めてきたが、スケジュールがはっきりしない。速やかに供給してほしい」と供給の遅れに不満を示しました。

    苦境の観光業「アフリカの接種の出遅れは不公平」

    アフリカ西部の大西洋に浮かぶ島国、カボベルデは年間を通じて温暖な気候で、ヨーロッパを中心に年間100万人近い観光客が訪れ、観光業がGDP=国内総生産のおよそ25%を占める国の経済成長の柱です。

    カボベルデでは新型コロナウイルスの感染の広がりを警戒して、2020年3月から半年余りにわたって国境が閉鎖され、国際便の運航が制限されました。国際便の運航が再開されたあとも観光客はほとんど戻っておらず、真っ白な砂浜が続くビーチも閑散としています。

    首都プライアの中心部でホテルを経営するビノ・サントスさん(42)は、2008年に日本円で1億3000万円近くをかけてホテルを改装し、売り上げを順調に伸ばしていましたが、現在はホテルの利用客は激減し、2020年の売り上げは前の年と比べて9割落ち込んだといいます。

    サントスさんは「政府の計画では観光業で働く人は優先的にワクチンを接種できるようになっているので、早く接種を受けたい。ヨーロッパなどに比べて、アフリカでワクチンの接種が出遅れていることは残念だし、不公平なことだと思う」と話していました。

    “一部の先進国で過剰に買い占め”

    ワクチンの公平な分配のための国際的な枠組み「COVAXファシリティ」について、WHO=世界保健機関カボベルデ事務所のエルナンド・アグデロ所長は「実際の供給のスピードに課題がある。アフリカのいくつかの国に届き始めているが、カボベルデなどでは、まだ待っている」としたうえで、より早く供給を進める必要があると強調しました。

    また、供給の遅れについてアグデロ所長は「人口の4倍や5倍分ものワクチンを確保した国がある。パンデミックは、特定の国だけではなく世界のすべての国が影響を受けていて、世界で一斉に向き合うことが必要だ」と述べ、一部の先進国で過剰に買い占めが行われていると批判しました。

    3月5日までに20か国2000万回分余供給

    新型コロナウイルスのワクチンの公平な分配を目指し、WHO=世界保健機関やユニセフ=国連児童基金などが主導する国際的な枠組み「COVAXファシリティ」には、世界190の国と地域が参加しています。

    この枠組みでは、98の先進国などが資金を拠出して世界で進む10のワクチン計画に投資し、資金面で開発や製造を後押ししています。アストラゼネカやモデルナなどのワクチンもこれらの資金を受けて開発されてきました。

    資金を拠出した国は自国の資金で国民の人口の最大20%までのワクチンを購入することができます。

    一方、購入資金の確保が難しい途上国などは他国や団体などの拠出金を基に国民の人口の最大20%までワクチンの供給を受けることができます。COVAXでは2月24日、西アフリカのガーナにこの枠組みで初めてとなるワクチンが届けられ、3月1日から医療従事者への接種が始まりました。

    WHOによりますとCOVAXを通して、3月5日までにアフリカやアジアなど20か国に合わせて2000万回分余りのワクチンが供給されたということです。

    COVAXでは、ことし上半期中に途上国など145の国と地域に対し、アストラゼネカなどのワクチン3億3600万回分とファイザーなどのワクチン120万回分を供給する計画です。

    ユニセフ 途上国の遅れ「倫理的に受け入れられない」

    「COVAXファシリティ」で途上国への供給を担当する、ユニセフ=国連児童基金のベンジャミン・シュライバー氏はNHKのインタビューで、供給は始まったものの、課題は山積していると指摘しています。

    シュライバー氏は「極めて低い温度での輸送・保管が必要なワクチンの供給はとても複雑なことで、先進国ですら遅れているところもある。医療体制がぜい弱な国であれば、その難しさはさらに増す」と、途上国での課題を指摘しました。

    ユニセフは新型コロナウイルスの感染拡大以前から、冷蔵保存が必要な肺炎などのワクチンを供給するため、途上国へ、太陽光で発電できる冷蔵庫、合わせて4万台を設置してきました。

    シュライバー氏は「今後多くのワクチンが供給されるので、受け入れの準備が必要だ。ことしの夏までに低温輸送体制をさらに強化する」と、準備を急ぐ考えを示しました。

    一方で、先進国と途上国との間で供給のスピードに差が出ていることについて「裕福な国だけがワクチンを得る状況は倫理的に受け入れられない。すべての人をウイルスから守らなければならず、途上国も含めて、リスクの高い人から接種すべきだ」と述べ、まずは国の経済力にかかわらず、医療従事者や高齢者への接種を優先すべきだと指摘しました。

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    WHO ワクチン生産拡大へ“知的財産権の保護を一時停止に”(3/6)

    2021年3月6日

    WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスのワクチンの供給が依然として十分でないとして世界各地で広く生産ができるようワクチンに関する知的財産権の保護を一時的に停止すべきだと訴えました。

    WHOのテドロス事務局長は3月5日の定例の記者会見で、新型コロナウイルスのワクチンの公平な分配を目指す「COVAXファシリティ」を通して、これまでにアフリカやアジアなど20か国に合わせて2000万回分を超えるワクチンが供給されたことを明らかにしました。

    ただ、テドロス事務局長は「勇気づけられる進展だが、COVAXを通じて供給されるワクチンの数は比較的少ない」と述べ、ワクチンの生産を大幅に増やすしくみが必要だという考えを示しました。

    そのうえで緊急時の対応が求められるとして、新型コロナウイルスのワクチンに関する知的財産権の保護を一時的に停止し、世界各地でより広く生産できるようにすべきだと訴えました。

    ワクチンに関する知的財産権の扱いはWTO=世界貿易機関で議論されていて、南アフリカとインドが一時的な停止を提案して途上国の支持を集めていますが、製薬会社を抱える先進国は技術革新に支障が出るなどとしてこれに反対し、協議は難航しています。

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    ワクチン輸出差し止めの伊 外相「理由はEUへの供給遅れ」(3/6)

    2021年3月6日

    イタリアのディマイオ外相は国内で製造された製薬大手アストラゼネカのワクチンのオーストラリアへの輸出を差し止めたことについて、EU=ヨーロッパ連合へのワクチン供給の遅れが理由だとしたうえで、今後も遅れが続けば輸出を差し止める考えを示しました。

    EUは製薬会社が域内で製造した新型コロナウイルスのワクチンを輸出する際、工場がある加盟国から許可を得ることを義務づける措置をことし1月から導入しています。

    これに基づき、イタリア政府は域内で初めてアストラゼネカのワクチン、およそ25万回分のオーストラリアへの輸出を差し止めました。

    この対応についてイタリアのディマイオ外相は3月5日、記者会見で「製薬会社が約束した供給は、イタリアだけでなくすべてのEU加盟国で遅れている。こうした遅れは許されない」と述べて、輸出を差し止めたのはEUへの供給の遅れが理由だと強調しました。

    そのうえでヨーロッパ全体が変異ウイルスの感染が拡大する懸念すべき状況だと指摘し「ワクチンの供給の遅れが続く限り、EU加盟国はぜい弱でない国への輸出を止める権利がある」と述べました。

    EUからはベルギーなどで製造されるファイザー社のワクチンが日本に輸出されていますが、これまでのところ、輸出はすべて承認されています。

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    イタリア 新型コロナワクチンの輸出を差し止め EUで初めて(3/5)

    2021年3月5日

    イタリア政府は3月4日、国内で製造された製薬大手、アストラゼネカのワクチンのオーストラリアへの輸出を差し止めたと発表しました。EU=ヨーロッパ連合が加盟国に義務づけているワクチン輸出に関する措置に基づいたもので、輸出が差し止められたのは初めてです。

    EUは製薬会社が域内で製造した新型コロナウイルスのワクチンを輸出する際に、工場がある加盟国に事前に申告し、許可を得ることを義務づける措置をことし1月から導入しています。

    イタリア政府は3月4日、この措置に基づいて国内で製造された製薬大手、アストラゼネカのワクチンのオーストラリアへの輸出を差し止めたと発表しました。

    EUからのワクチンの輸出が差し止められたのは初めてです。

    その理由についてイタリア政府は、オーストラリアに輸出するワクチンの量がおよそ25万回分とイタリアやEU加盟国に供給されている量と比べて多いことや、イタリアやEUでワクチン不足や供給の遅れが続いていることなどをあげています。

    加藤官房長官「恒常的に働きかけ」

    加藤官房長官は、閣議のあとの記者会見で「EUの域内から日本に対するワクチンの供給が円滑に行われることが重要で、現地の在外公館などを通じて、恒常的に働きかけを行っている。これまでのところ、EU域内から日本に輸出されるワクチンは、輸出がすべて承認されており、引き続き、ワクチンの安定供給の確保に向けてしっかり取り組んでいく」と述べました。

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    米 バイデン大統領 “必要なワクチン5月末までに確保”(3/3)

    2021年3月3日

    アメリカのバイデン大統領は、新たに接種が始まった3種類目の新型コロナウイルスワクチンの生産を政府として支援し、接種の対象となっている人たちに必要なワクチンを、ことし5月末までに確保する見通しを示しました。

    アメリカでは、すでに接種が行われてきた2種類の新型コロナウイルスワクチンに加え、製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンの接種が始まり、接種が1回で済むため普及の加速が期待されています。

    このワクチンについてバイデン大統領は3月2日の演説で、別の製薬大手メルクが生産に協力すると明らかにするとともに、大統領の権限で民間企業に協力を求める「国防生産法」に基づいて、生産設備の整備を支援する方針を示しました。

    そのうえで、バイデン大統領は接種の対象となっている人たちに必要なワクチンについて「アメリカのすべての大人に行き渡る量のワクチンを、5月終わりまでに供給できる見通しだ」と述べ、5月末までに確保する見通しを示しました。

    また、バイデン大統領は高校までのすべての学校の教職員が、3月中に少なくとも1回ワクチンの接種を受けられるよう各州に指示を出したとして、アメリカ政府として学校の再開の拡大に向けてワクチンの普及に努めると強調しました。

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    J&Jのワクチン 米各地で接種始まる 供給の目標を前倒しも(3/3)

    2021年3月3日

    アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンの接種がアメリカ各地で始まりました。バイデン大統領は製薬大手メルクがこのワクチンの生産に協力することを明らかにしたうえで、「これにより、すべての成人に行き渡る量のワクチンを5月末までに供給できる」と述べました。

    アメリカFDA=食品医薬品局は2月27日に製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンに緊急使用の許可を出し、3月1日からワクチンの輸送が始まりました。

    オハイオ州コロンバス市にあるオハイオ州立大学の病院には3月2日、ワクチンが到着し、接種が始まりました。

    アメリカで使用が許可されたワクチンとしては3種類目となるこのワクチンは1回の接種で済むほか、2度から8度という冷蔵庫の温度で3か月間保管できることから輸送や保管が容易になり、接種のペースが加速することが期待されています。

    バイデン大統領は別の製薬大手メルクが、このワクチンの生産に協力することになったと明らかにしました。

    これまでジョンソン・エンド・ジョンソンは6月末までに1億回分を供給することになっていましたが、アメリカ政府は、大統領の権限で民間企業に協力を求める「国防生産法」に基づいてメルクの生産設備の整備を支援するなどして、生産を加速させるとしています。

    バイデン大統領は「これにより、アメリカのすべての成人に行き渡る量のワクチンを、5月末までに供給できる」と述べ、これまで7月末としていた供給の目標を前倒しできるとする見通しを示しました。

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    EU 移動制限緩和に向けワクチン接種証明書 法案を月内提出へ(3/3)

    2021年3月3日

    EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は、新型コロナウイルス対策として行っている域内の移動制限の緩和に向けてワクチンを接種した人にEU共通の証明書を発行するための法案を3月中に提出すると発表しました。

    EU域内では感染拡大の防止策として各国が不要不急の国境を越えた移動を原則禁止するなどしています。

    EUのフォンデアライエン委員長は、3月1日、ツイッターで、ワクチンを接種した人にEU共通のデジタルの証明書を発行するための法案を3月中に提出すると発表しました。

    証明書について「EU域内外の安全な移動を段階的に可能にするためのものだ」として移動制限などで域内の経済が落ち込む中、意義を強調しました。

    EU共通の証明書をめぐってはすでに、観光が盛んなギリシャなどが導入を求め、2月の首脳会議などで議論してきました。

    EUは夏の観光シーズンまでの導入を念頭に置いていますが、証明書に盛り込む情報の共有やセキュリティの確保など技術面の整備だけでも3か月かかるとしているほか、フランスなど一部の加盟国からは「接種が十分に進んでいない中で時期尚早だ」などの声も上がっています。

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    フランス アストラゼネカのワクチン 65歳以上も接種認める(3/3)

    2021年3月3日

    フランス政府はイギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、これまで接種の対象から外していた65歳以上の人についても有効性を示すデータが得られたとして接種を進める方針を示しました。

    日本も供給を受ける契約を結んでいるアストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンについて、フランスやドイツなどでは有効性のデータが不足しているとして65歳以上の人は接種の対象から外してきました。

    フランスでは3月2日、医薬品などの評価を行う機関のトップが記者会見を行い、イギリス北部スコットランドで65歳以上の人が接種した場合に入院を防ぐ効果があるとのデータが報告されたとして「アストラゼネカのワクチンの接種を65歳以上に広げることができる」と述べました。

    ベラン保健相は地元メディアに対して65歳から74歳までの基礎疾患がある人にこのワクチンを接種する方針を明らかにし、新たに250万人が対象になるとしています。

    また、ドイツでも地元メディアは専門家による委員会が近く65歳以上の人に対しても接種を推奨する可能性があると伝えています。

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    新型コロナ フィリピンで中国製ワクチンの接種始まる(3/1)

    2021年3月1日

    フィリピンで、中国の製薬会社が開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まりました。ドゥテルテ大統領は年内にも中国を訪問し、謝意を示したいという意向を示すなど、今後の外交にも影響を及ぼしそうです。

    フィリピンでは、中国の製薬会社「シノバック」が開発し中国政府が提供したワクチン60万回分が到着し、3月1日から接種が始まりました。

    接種は首都マニラにある6つの病院で始まり、フィリピン政府の閣僚や病院の医療関係者が次々と接種を受けていました。

    フィリピンでは、シノバックのほか、アメリカのファイザーやイギリスのアストラゼネカなどが開発したワクチンの接種も予定されていて、医療関係者を優先しながらことし中に少なくとも5000万人以上の接種を目指すとしています。

    フィリピンでは1日当たりの新規感染者が2000人前後で推移するなど感染状況は改善されておらず、国民の一部や議会などからは東南アジアのほかの国と比べてワクチン接種が遅れていると批判が出ていました。

    ドゥテルテ大統領は、2月28日の演説で「年内に中国を訪れ、習近平国家主席と握手をして個人的に感謝の気持ちを伝えたい」と述べていて、今後の外交にも影響を及ぼしそうです。

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    英 新型コロナワクチン 人口の約30%が少なくとも1回接種(3/1)

    2021年3月1日

    イギリスでは、新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも1回接種した人が人口のおよそ30%にあたる2000万人を超えました。2021年7月末までに18歳以上のすべての人に1回目の接種を行う計画です。

    2020年12月からワクチンの接種が進むイギリスでは、なるべく多くの人にワクチンを行き渡らせるために1回目の接種を優先していて、2回目は12週間後までに行うとしています。

    イギリス政府は2月28日、人口のおよそ30%にあたる2000万人を超える人が少なくとも1回の接種を受けたと発表しました。

    ジョンソン首相は、みずからのツイッターで、医療スタッフやボランティアなど接種計画に携わるすべての人に感謝の意を示しました。

    政府は、2021年7月末までに18歳以上のすべての人に1回目の接種を行うことを目指しています。

    イギリスでは、変異ウイルスの感染拡大で、2021年1月には1日の感染者が6万人を超える日もありましたが、外出制限などの厳しい対策もあって感染者は減少傾向で、政府は規制を段階的に緩和する計画です。

    一方で、2月28日には、ブラジルで感染が拡大している変異ウイルスが国内で初めて確認され、警戒も強まっています。

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    タイ 新型コロナワクチン接種始まる 周辺国と比べ遅れ 批判も(2/28)

    2021年2月28日

    タイでは中国の製薬会社が開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が2月28日から始まりましたが、国民の一部からは、東南アジアのほかの国々に比べ、接種が遅れているなどと批判も出ています。

    接種が始まったのは、中国の製薬会社「シノバック」が開発したワクチンで、2月28日、首都バンコク近郊の病院でアヌティン保健相が国内で初めて接種を受けました。

    接種を終えたアヌティン保健相はワクチンの安全性を強調したうえで「タイの国民をウイルスから守ってくれることを願う」と述べました。

    タイでは、シノバックのほか、イギリスの製薬大手、アストラゼネカなどが開発したワクチンも緊急使用が許可されていて、政府は2社のワクチン6300万回分を年内に調達し、医療関係者や持病がある人などに優先的に接種する方針です。

    タイは新型コロナウイルスの感染を比較的抑え込んできたものの、ワクチンの接種では、インドネシアやシンガポールと比べ遅れているなどとして、国民の一部から批判も出ています。

    一方、タイ政府は感染対策を理由に延長を繰り返している非常事態宣言を3月末までさらに続けることにしています。

    タイ政府は隣国ミャンマーで起きた軍事クーデターによりミャンマー人の不法入国が増え、感染が広がる懸念があるなどと説明していますが、非常事態宣言が1年にわたり継続することになります。

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    米FDA 1回接種で済む新型コロナワクチンを緊急使用許可(2/28)

    2021年2月28日

    アメリカのFDA=食品医薬品局は2月27日、製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した新型コロナウイルスワクチンについて、緊急使用を許可したと発表しました。このワクチンは1回の接種で済むことから接種のペースが加速することが期待されています。

    FDAは2月27日、製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した1回の接種で済むタイプの新型コロナウイルスワクチンについて、緊急使用を許可したと発表しました。

    このワクチンは世界各国のおよそ4万人を対象とした臨床試験の結果、接種後28日目以降では、中程度から重度の症状を防ぐ有効性は66.1%、重度の症状に限ると有効性は85.4%を示したとされています。

    また初期段階の報告では変異ウイルスの感染が確認されている南アフリカやブラジルでもほぼ同様の有効性が示されたとしています。

    安全性についてもFDAは「深刻な懸念は示されていない」としています。

    アメリカではこれまでに製薬大手ファイザーと製薬会社モデルナのワクチンに緊急使用の許可が出ていて、今回のワクチンは3種類目となります。

    ファイザーとモデルナのワクチンは2回の接種が必要なのに対し、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは1回の接種で済むほか、2度から8度という冷蔵庫の温度で3か月保管できることから、接種のペースが加速することが期待されています。

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    変異ウイルスにもワクチンは効くの?(2/27)

    2021年2月27日

    WHO=世界保健機関は、イギリスで見つかった変異ウイルスについては、ファイザー、モデルナ、それにアストラゼネカのワクチンの効果に大きな影響はないとしています。一方で、南アフリカとブラジルで見つかった変異ウイルスについては抗体の攻撃から逃れる変異があることから、ワクチンの効果が弱まるおそれが指摘されていて、各メーカーはワクチンの効果への影響を調査しています。

    ファイザー「効果示す実験結果 得られた」

    アメリカの製薬大手ファイザーは、イギリスと南アフリカで見つかった変異ウイルスについて、ワクチンの効果を示す実験結果が得られたと発表しています。

    会社側はすでにワクチンを接種した人の抗体を使って細胞での実験を行っていて、イギリスで見つかった変異ウイルスに効果があることを示す実験結果が得られたとしました。

    南アフリカで見つかった変異ウイルスについては、実験では抗体がウイルスを中和する効果が3分の1になったということですが、会社側はこの変異ウイルスがワクチンの攻撃を逃れる証拠はないとしていて、引き続き詳しい検証を行っていくとしています。

    さらにこの変異ウイルスについてファイザーとビオンテックは2月25日、ワクチンの効果を確かめるため3回目の接種を行う臨床試験を始めると発表しました。

    モデルナ 南ア型に対応のワクチン候補製造

    アメリカの製薬会社モデルナも、自社で開発したワクチンについて同様の実験を行っています。

    それによりますと、イギリスで見つかった変異ウイルスに対する効果に目立った変化はありませんでしたが、南アフリカで見つかった変異ウイルスに対しては抗体の働きを示す値がおよそ6分の1に減少したとしています。

    ただ会社では、いずれの変異ウイルスに対しても抗体の働きはワクチンとして必要なレベルは上回っていたとしています。

    モデルナは2月24日、南アフリカで見つかった変異ウイルスに対応したワクチンの候補を製造し、臨床試験を行うためアメリカの国立衛生研究所に出荷したと発表しました。

    従来のワクチンを使って3回目の接種を行うことで、効果を高める方法なども検討するとしています。

    アストラゼネカ「重症化防ぐ効果あると確信」

    イギリスの製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンについては、オックスフォード大学などのグループが、イギリスで見つかった変異ウイルスに対しては変わらない効果が見られたという調査結果を公表しています。

    南アフリカで見つかった変異ウイルスに対しては、初期の臨床試験の結果、軽度から中程度の症状を防ぐ効果が著しく下がったという情報がある一方で、会社側は「重症化を防ぐ効果があると確信している」としています。

    いずれのワクチンも、変異ウイルスに対する効果は実験室での実験や少人数の臨床試験だけでは分からないことも多く、WHOはより多くのデータで詳しく分析する必要があるという認識を示しています。

    新型コロナウイルス 「変異」とは?

    多くのウイルスは感染を繰り返すうちに遺伝情報にごく小さな変異が起こります。

    新型コロナウイルスでは2週間に1か所ほどのペースで小さな変異が起こることがこれまでの研究で分かっていて、ほとんどの場合こうした変異はウイルスの性質には影響がありません。

    しかしイギリスで確認された変異ウイルスと南アフリカで広がった変異ウイルス、ブラジルから日本に到着した人から見つかった変異ウイルスは、いずれも変異によってウイルスの性質が変化していると考えられています。

    変異でリスク上昇の可能性 指摘する研究も

    この3つに共通しているのは、新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染する際の足場となる「スパイクたんぱく質」の遺伝情報に「N501Y」と呼ばれる変異が起こり、アミノ酸が変化していることです。

    国立感染症研究所によりますと、このうちイギリスで確認された変異ウイルスでは感染のしやすさが最大で70%程度高くなっているおそれがあるということです。

    イギリスからの報告では通常のウイルスと比べて入院率や死亡率に差は見られなかったとされていますが、死亡リスクの上昇と関連している可能性を指摘する研究もあるということです。

    さらなる変異も

    これとは別の変異も最近注目されています。

    南アフリカで確認された変異ウイルスとブラジルで広がった変異ウイルスでは「N501Y」の変異に加えて「E484K」と呼ばれる変異が確認されています。

    この「E484K」の変異があると、ウイルスが抗体の攻撃から逃れやすくなると考えられていて、細胞を使った実験でも抗体の効果が弱まったという報告があります。

    さらに最近になって国内で「N501Y」の変異はなく「E484K」の変異がある新たな変異ウイルスも確認されていて、海外から入ってきたとみられていますが詳しい起源は分かっていません。

    変異ウイルスを巡っては、現在使われているワクチンの効果に影響が出ないかや、1度感染した人が再び感染するおそれがあるのではないかといった懸念が出ていますが、まだ詳しくは分かっていません。

    影響については、現在、詳しい調査や研究が進められています。

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    アメリカ ワクチン国内接種 予定より早く5000万回に(2/26)

    2021年2月26日

    アメリカのバイデン大統領は新型コロナウイルスのワクチンの国内での接種が予定より早く進み、就任から1か月余りで5000万回に達したとしたうえで、今後も接種の態勢の整備や啓発に努めると強調しました。

    アメリカのバイデン大統領は2月25日、会見を開き、新型コロナウイルスのワクチンの国内での接種が先月の就任から37日間で5000万回に達したと明らかにしました。

    バイデン大統領は就任から100日で1億回分の接種を目指していて、会見では「予定より数週間早いペースだ」と述べ、目標は達成できるとアピールしました。

    バイデン大統領によりますと、65歳を超える国民のほぼ半数が少なくとも1回の接種を受けたということです。

    そのうえで、バイデン大統領は2021年7月終わりまでにすべての大人の接種に必要なワクチンを確保する見通しだとして、接種を行う場所や医療従事者の確保を進めていると述べました。

    さらに「ワクチンが十分に供給されても接種を行う場所に行けない人や接種したくない人もいるので、ワクチンの安全性などについて大規模な啓発活動を行う」と述べ、接種を呼びかける活動も強化し、ワクチンの普及に努めると強調しました。

    アメリカCDC=疾病対策センターによりますとアメリカで少なくとも1回ワクチンを接種した人は2月25日までに人口のおよそ14%となっています。

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    米FDA ファイザーワクチン 一般的な医療用冷凍庫での保存 認可(2/26)

    2021年2月26日

    超低温での保存が必要な、アメリカの製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチンについて、FDA=アメリカ食品医薬品局はマイナス25度からマイナス15度でも最大2週間、保存したり輸送したりすることを認めました。これによって、流通や接種がしやすくなると期待されています。

    製薬大手ファイザーとドイツのビオンテックが開発した新型コロナウイルスワクチンは、最大6か月保存するためにはマイナス80度からマイナス60度という超低温の冷凍庫が必要で、供給や接種の上での課題となっています。

    これについてFDAは2月25日、ファイザーが提出したデータに基づき、取り扱いの規則を改定し、一般的な医療用の冷凍庫の温度であるマイナス25度からマイナス15度でも最大2週間、保存したり、輸送したりすることを認めました。

    また、1回であれば、超低温の冷凍庫に戻すことができるとしています。

    FDAはこれまでファイザーのワクチンについて、超低温の冷凍庫から出して、2度から8度の冷蔵庫に移した場合、保存期間を5日間としていましたが、一般的な医療用の冷凍庫でも一定期間保存できるようになることで、輸送が容易になるほか、接種のスケジュールもより柔軟に組めるようになると期待されています。

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    中国政府 国内で開発のコロナワクチン2種類を新たに承認(2/26)

    2021年2月26日

    中国政府は、国内の製薬会社が開発した新型コロナウイルスのワクチン2種類を新たに承認したと発表し、中国が承認したワクチンは合わせて4種類となりました。

    中国の国家薬品監督管理局は、国内の製薬会社「カンシノ・バイオロジクス」と「シノファーム」がそれぞれ開発した新型コロナウイルスのワクチンについて臨床試験を続け、その結果を当局に報告することなどを条件に、いずれも2月25日付けで承認したと発表しました。

    中国政府はすでに国内で開発されたワクチン2種類を承認していて、承認したワクチンは合わせて4種類となりました。

    このうち、武漢の研究所で開発された「シノファーム」のワクチンはすでに承認されたものに続いて2種類目で、感染する能力を失わせたウイルスを使う「不活化ワクチン」と呼ばれる種類のものです。

    また「カンシノ・バイオロジクス」のワクチンは軍の研究所と共同で開発され、別のウイルスを遺伝子の運び役として使う「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれる種類のものです。

    中国政府は先行して承認したワクチンを中心に国内で大規模な接種を進めているほか、50か国余りに無償で提供しているとしていて、今後、国外への供給に一層力を入れていくとみられます。

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    【ワクチン供給契約 世界の現状は】需要増で供給力強化の動き(2/25)

    2021年2月25日

    アメリカ・デューク大学のまとめによりますと、アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、40を超える国や組織などとの間で、合わせて15億回分以上を供給する契約や合意が結ばれています。

    内訳は
    ▽EU=ヨーロッパ連合が最大6億回分、
    ▽アメリカが3億回分、
    ▽日本が1億4400万回分、
    ▽中国が1億回分、
    ▽WHO=世界保健機関などがワクチンの公平な分配のために立ち上げた枠組み「COVAXファシリティ」が4000万回分となっています。

    日本政府は、年内に1億4400万回分のワクチンの供給を受ける契約をファイザーと結んでいます。

    日本向けのワクチンは、ドイツにある製造施設とベルギーにある製造施設で作られることになっていて、これまで2回合わせて最大で83万8000回分余りがベルギーの施設から日本に向けて出荷されました。

    ファイザーは、アメリカでは2月はじめの時点で、1週間に400万回から500万回分のワクチンを供給していますが、この量を3月中頃までには1300万回分まで増やすとしています。

    一方、世界各国への具体的な供給の見通しについては明らかにしていません。

    2月23日に開かれたアメリカ議会下院の公聴会で、ファイザーの幹部は「ワクチンの切実な需要に応えるため、2021年の世界全体の生産量を当初の13億回分から、少なくとも20億回分に増やしている」と述べ、生産設備に投資して供給力を強化していると強調しています。

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    ワクチン 公平分配目指す「COVAXファシリティ」で初供給(2/25)

    2021年2月25日

    新型コロナウイルスのワクチン接種が先進国を中心に進められ、途上国との格差が問題となる中、公平な分配を目指す国際的な枠組み「COVAXファシリティ」による初の供給となる60万回分のワクチンが西アフリカのガーナに到着しました。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては先進国などを中心に接種が進められる一方、接種のめどがたたない途上国も少なくなく、「ワクチン格差」が問題になっています。

    ワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組み「COVAXファシリティ」では、各国からの拠出金をもとにワクチンの確保を進めてきましたが、2月24日、この枠組みによる初の供給となるワクチン60万回分がガーナの首都アクラの国際空港に到着しました。

    ワクチンは、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発し、インドで製造されたもので、「COVAX」でワクチン供給を担うユニセフ=国連児童基金は、「危機から抜け出す唯一の方法は、すべての人がワクチンを利用できるようにすることだ」とする声明を発表しました。

    「COVAX」では、2021年中に20億回分近いワクチンを確保して、途上国などに供給する計画ですが「COVAX」だけでは必要量を満たす見通しは立っておらず、国連は各国に資金の拠出を含めた支援の強化を呼びかけています。

    WHOテドロス事務局長「とても大きな第一歩」

    「COVAXファシリティ」によるワクチンの供給が始まったことを受けて、枠組みを主導するWHO=世界保健機関のテドロス事務局長は2月24日、声明を発表し「ワクチンの公平な分配という私たちが共有するビジョンの実現に向けて、きょうはとても大きな第一歩だ」としています。

    そのうえで「しかしこれは、始まりにすぎない」として、4月上旬までにすべての国で医療従事者と高齢者の接種を始めるという目標に向けて、各国や製薬会社などのより一層の連携が必要だという考えを強調しました。

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    新型コロナ ワクチン接種を示す証明書 ヨーロッパで発行の動き(2/24)

    2021年2月24日

    新型コロナウイルスのワクチンの接種が進んでいるヨーロッパでは、国をまたぐ移動がより自由にできるようにしようと、決められた回数の接種を終えたことを示す証明書を発行する動きが出始めています。

    このうち観光業が主要産業となっているギリシャは、決められた回数の接種を終えたことを示す証明書の発行を2月から始めました。

    入国時のPCR検査や自主隔離などを免除することを念頭においた取り組みです。

    証明書は印刷も可能で、氏名、生年月日、接種した日やワクチンの種類が記され、本物であることを証明するサイトにつながるQRコードも表示されています。

    ヨーロッパではこのほか、北欧のアイスランドもすでにワクチン接種の証明書を発行していて、ほかの国の証明書であっても持っている人が入国する際には、検査や隔離措置を免除しています。

    ギリシャは、EU各国に共通の証明書の発行を呼びかけていて、デンマークやスウェーデンなどもこうした証明書を発行する方針を示しています。

    一方、フランスやドイツは、ワクチンの接種が十分に進んでいないとして、現時点では証明書の導入に慎重な姿勢を示しています。

    また、証明書をめぐっては、接種の対象になっていない人や接種しない人への差別につながるおそれがあるという指摘も出ています。

    この点について、ギリシャのセオハリス観光相は「証明書がなければ旅行ができないというわけではない。あくまでPCR検査の陰性証明書以外の選択肢を作りたいというのがねらいだ」と述べています。

    航空業界でも「ワクチン証明」の仕組みづくり

    新型コロナウイルスの感染拡大で歴史的な打撃を受けている航空業界でも、安全な運航に向けて、ワクチンを受けた履歴などをスマートフォンのアプリで提示できる仕組み作りが進んでいます。

    世界のおよそ290の航空会社が加盟するIATA=国際航空運送協会が開発しているのが「IATAトラベルパス」です。

    利用者は、スマホのアプリに自身のパスポートの情報を登録します。

    そして、指定された医療機関などでワクチンを接種したり、PCR検査を受けたりする際、証明書の発行を依頼すると、その情報がQRコードなどでデータ化され、アプリに送られてきます。

    利用者が飛行機で別の国に渡航するとき、アプリを使って照会することで、渡航先の国の滞在資格を満たしているかどうか「はい」か「いいえ」で分かる仕組みです。

    滞在資格を満たしていれば、情報を航空会社に共有したり、搭乗する際に条件を満たしていることをアプリで示したりできます。

    IATAは、ワクチン接種が世界中で広く普及するまでには少なくとも数か月はかかる見通しだとして、まず、PCR検査の結果からトラベルパスの運用を始めたいとしていて、シンガポール航空やUAE=アラブ首長国連邦のエミレーツ航空など、複数の航空会社が実証実験に参加するということです。

    責任者「世界中で同じパスを使えるようにするのが願い」

    IATAでアジア太平洋地域のトラベルパスの責任者を務めるヴィノープ・ゴエル氏は「私たちの最終的な目標は航空業界がコロナ危機から回復することだ。トラベルパスが世界標準となり、航空会社や乗客が世界中で同じパスを使えるようにするのが願いだ」として、意義を強調しました。

    また、各国の政府や民間企業が同じような仕組み作りに乗り出していることについて「重要なのは、アプリを提供する企業や団体がいくつあろうとも、世界標準を1つにすることだ。IATAのトラベルパスはオープンな規格にして他のシステムと互換性を持たせる形で開発している。乗客が混乱したり、航空会社や各国政府にとって不便が生じたりしないよう、すべてのアプリが円滑に運用されることを望んでいる」と述べ、アプリなどの互換性を高めることが欠かせないという認識を示しました。

    さらに「さまざまな理由でワクチンの接種を受けられない人がいることを理解している。トラベルパスを使わなくても、他の選択肢を用意してすべての乗客が搭乗できるようにしたい」とし、追加の検査など、ほかの方法も取り入れていく考えを示しました。

    世界のワクチン接種状況

    各国の政府などが公表したデータをまとめている、イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するウェブサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、世界では80を超える国や地域で、少なくとも9つの種類の新型コロナウイルスのワクチンが接種されています。

    このうち世界全体でワクチンを少なくとも1回接種した人の数は、具体的な内訳が確認できない国や地域を除いて、2月22日の時点で、1億2342万人となっています。

    ▽このうち最も多いアメリカは4414万人、
    ▽イギリスは1772万人、
    ▽インドは1031万人、
    ▽ブラジルは586万人となっています。

    また、少なくとも1回接種した人が人口に占める割合は、
    ▽イスラエルで51.5%、
    ▽イギリスで26.1%、
    ▽アメリカで13.2%となっていて、世界全体では1.6%にとどまっています。

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    ファイザー 11歳以下対象のコロナワクチン臨床試験 開始の考え(2/24)

    2021年2月24日

    日本でも接種が始まっている新型コロナウイルスのワクチンを開発したアメリカの製薬大手ファイザーは、11歳以下の子どもを対象にした臨床試験を近く始めたいという考えを明らかにしました。

    アメリカ議会下院の委員会は2月23日、新型コロナウイルスのワクチンを供給する契約をアメリカ政府と結ぶなどしている製薬会社5社の幹部を招いて公聴会を開き、最新の開発状況などについて証言を求めました。

    この中でファイザーの幹部は「現在の緊急使用許可の対象外となっている人たちへの使用に向け、安全性と効果について研究を進めていく」と述べ、すでに始めている12歳から15歳までの臨床試験に加えて、11歳以下を対象とした臨床試験も近く始めたいという考えを明らかにしました。

    ファイザーのワクチンは現在、アメリカでも日本でも16歳以上が接種の対象となっています。

    またモデルナも現在、アメリカで接種の対象となっていない18歳未満について段階的に臨床試験を行うなど、対応を検討していることを明らかにしました。

    アメリカの教職員でつくる労働組合などは子どもたちへのワクチン接種を早期に開始するよう求めています。

    学校の対面授業が全米で本格的に再開する時期にも関わるとして、子どもたちへの効果や安全性、接種が始まる時期に関心が高まっています。

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    イスラエル ワクチン接種証明「グリーン・パス」発行(2/24)

    2021年2月24日

    世界でも速いペースで新型コロナウイルスのワクチン接種が進むイスラエルでは、接種したことを示す証明書「グリーン・パス」を発行し、スポーツジムやイベント会場などでの提示を義務づけ、接種率のさらなる向上を目指しています。

    イスラエルでは、2020年12月中旬から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、これまでに人口の4割を超える437万人が1回目の接種を受け、このうちおよそ7割にあたる299万人が2回目の接種を終え、世界でも速いペースで接種が進んでいます。

    1日の新規感染者数も1月中旬以降、減少傾向にあることから、2月21日から外出制限が一部緩和され、ショッピングモールなどが再開しました。

    さらにイスラエルは、接種を2回受けてから1週間以上経過したことを示す証明書「グリーン・パス」を発行し、スポーツジムやイベント会場などでの提示を義務づけました。

    ジムを訪れた女性は「戻ることができてうれしい。ワクチンを接種しても、感染する可能性もあるし、誰かに感染させてしまうかもしれないので、これまでと同じように対策をとりたいです」と話していました。

    また、ジムを経営するリア・エルバスフィンケルバーグさんは「5か月にわたって、ジムを開くことができませんでした。感染のリスクがないわけではないので、マスク着用や利用者どうしの距離に気をつけながら、運営します」と話しています。

    イスラエルは来月末までに16歳以上のすべての国民にワクチンを接種することを目標に、今後グリーン・パスを普及させて、接種率のさらなる向上を目指しています。

    グリーン・パスの仕組み

    「グリーン・パス」は、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けたことを示すイスラエルが発行する証明書で、2月21日からワクチン接種を2回受けた人なら誰でも証明書を受け取ることができます。

    イスラエルでは、政府の公式ウェブサイトで自身のIDカードの番号や電話番号を入力することで発行されるほか、政府が開発したスマートフォンの専用アプリでも表示できるようになる予定です。

    また、インターネットを使わないユダヤ教の教えを厳格に守る「超正統派」と呼ばれる人たちや高齢者は、公的な保険機関の窓口などで受け取ることができます。

    グリーン・パスはスポーツジムやプール、それにイベント会場などで提示が義務づけられていて、利用にあたっては施設側が専用のアプリで利用者のグリーン・パスに掲載されているQRコードを読み込むと、ワクチンの接種時期などについて確認できるようになっています。

    イスラエルでは医療サービスのデジタル化やデータベース化が進んでいて、政府と公的な保険機関の間でワクチン接種などの医療情報が共有されていることから、簡単な手続きでグリーン・パスを発行することができます。

    さらに、新型コロナウイルスにすでに感染した人には「回復証明書」が発行され、グリーン・パスと同様に提示することで施設などを利用することができるということです。

    コンサート会場でも提示

    イスラエルが占領し自国の領土として扱っている東エルサレムのユダヤ人入植地では2月22日、イスラエルの人気歌手のコンサートが行われました。

    会場の入り口では係員が入場者にグリーン・パスの提示を求め、接種の有無を確認したうえで、体温をはかるなどの感染対策を行っていました。

    エルサレム近郊から訪れた男性は「イベントに出かけるのはおよそ1年ぶりで、こうして友人と一緒にコンサートに行けるのをずっと楽しみにしていました。ワクチンを接種して、グリーン・パスをもらえば、こうして出かけることが許されるので、理にかなっていると思います」と話していました。

    一方、女性の1人は「2020年の3月以来、初めてのコンサートで、夢がかなったみたいです。ただ、こんなに大勢の人がいるので、ワクチン接種が証明できても、本当に安全かどうかは分からず、不安は残ります」と話していました。

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    世界に広がる「ワクチン格差」 実情は? 対策は?(2/22)

    2021年2月22日

    日本でも始まった、新型コロナウイルスのワクチン接種。しかし世界には、ワクチンをまだ1回も打つことができてない国が数多くあります。豊かな国と貧しい国の間に広がる「ワクチン格差」が大きな課題となっています。
    (ヨハネスブルク支局 別府正一郎、ニューデリー支局 太田雄造、ヨーロッパ総局 古山彰子)

    世界の「ワクチン格差」はどれくらい深刻なのか?

    WHO=世界保健機関は10日現在、世界で行われたワクチン接種は、1億3000万回分を超えたとしています。

    しかし、それらの大多数は高所得国に集中していると指摘しています。

    国家間の格差がそのまま、ワクチンを入手できる/できないの格差につながっているのです。

    WHOのテドロス事務局長は、2021年1月「世界は、壊滅的な倫理上の失敗を犯す寸前だ。代償となるのは貧しい国の人々の命や暮らしだ」と述べて、危機感をあらわにしています。

    途上国にワクチンが行き渡らない理由は何か?

    途上国にワクチンが行き渡らない理由は、資金力の違いです。先進国を中心に一部の国が、人口を大幅に上回る量のワクチンを購入し、買い占めが起きているのです。

    国際NGO「オックスファム」などがまとめた、各国の人口に対するワクチンの調達量はカナダが最も多く、人口の5倍。アメリカやイギリスなどがこれに続いています。

    一方、途上国を中心とした67の国で2021年中に接種を受けることができるのは、10人に1人にとどまる見通しだとしています。

    WHOなどと協力してワクチンの公平な分配に取り組んでいる団体「GAVIワクチンアライアンス」のセス・バークレー事務局長は、「多くの豊かな国は当初、どのワクチンがいいか分からず、必要分以上に購入したのです。その一部を回してもらえないか取り組んでいます」と話しています。

    ワクチンが届かない中で、途上国では何が起きているのか?

    アフリカ コンゴ共和国

    途上国では、感染拡大を防ぐ、最前線に立つ医療従事者への影響が特に深刻となっています。

    人口540万のアフリカ中部の国、コンゴ共和国は、ワクチンの入手や接種の具体的な見通しがたっていない国の1つです。

    コンゴ共和国 検体の分析施設

    首都ブラザビルにある、PCR検査で採取された検体が持ち込まれる検査場では、医療スタッフが防護服のほか手袋やマスクなどをつけて、高い感染リスクのある業務にあたっていました。

    すべてのスタッフは毎月、PCR検査も受けています。

    ワクチン接種のめどが立たない中で、日々業務にあたっている医療スタッフの1人は「感染症の研究者として、今の業務に誇りを持って取り組んでいますが、先進国に比べてアフリカで接種が出遅れていることは不公平だと感じています。同じように接種を受けたいです」と訴えていました。

    先進国で大規模な接種が進む中で、途上国の医療従事者や高齢者が後回しになっているのが現状です。

    ワクチンの公平な分配に向けて、対策は進められているのか?

    WHOやUNICEF=国連児童基金などは、国際プロジェクト「COVAXファシリティ」を通じて格差の是正に取り組んでいます。

    プロジェクトには、日本など190の国や地域が参加し、希望すれば、最大で人口の20%をカバーする量のワクチンの提供を受けることができます。

    参加国のうち、98の中・高所得国は拠出金を支払い、資金はワクチンの開発や製造にあてられます。

    残りの92の所得の低い国は拠出金なしで参加することができ、格差を減らし、公平な分配を目指すというものです。

    ワクチンの安全性の確認に時間がかかり、先進国による買い占めの問題も起きる中で、枠組みを通じたワクチンの提供はまだ始まっていません。

    3月末までには、最初の1億5000万回分のワクチンを供給し、年内には世界のすべての医療従事者や高齢者をカバーする、20億回分を供給することを目指しています。

    ワクチンの供給が進めば、問題は解決されるか?

    ワクチンが途上国に届けられたあとも、課題は山積しています。

    ワクチンを大勢の人が接種するには、低温管理ができる輸送網や医療スタッフの体制が欠かせませんが、途上国の多くではこうしたインフラが不足しているのです。

    インド西ベンガル州 病院に唯一ある冷蔵庫

    人口13億のインドでは1月から接種が始まりましたが、西ベンガル州の農村部の病院では、保管用の冷蔵設備がない上、たびたび停電が起きるなど電力供給も不安定な状況でした。

    インド西ベンガル州 病院に設置されている発電用太陽光パネル

    さらに病院では、2人の医師で1万3000人の地域住民に医療サービスを提供していて、ワクチン接種を行うことになれば、通常の医療にも影響が出かねないと、医師の1人は話していました。

    COVAXでは、こうした設備を整備するための支援も行う予定ですが、そのためには莫大な資金が必要で、各国に協力を呼びかけています。

    いくら先進国でワクチン接種が進んでも、世界全体で取り組まなければパンデミックは抑え込むことができません。

    「ワクチン格差」を是正し「ワクチン弱者」を取り残さないことは、世界全体の共通の課題です。

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    ワクチン2回接種者「死亡は非接種より98.9%減少」イスラエル(2/21)

    2021年2月21日

    世界でも速いペースでワクチン接種が進むイスラエルの保健省は2月20日、ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを2回接種して2週間経過した場合、感染したあと死亡した人の数は、接種しなかった場合に比べて98.9%減少したと発表しました。

    イスラエルでは、これまでに国民の4割を超える421万人が1回目の接種を受け、このうち260万人以上はすでに2回目の接種も終えるなど、世界でも速いペースでワクチンの接種が進んでいます。

    イスラエルの保健省は、ファイザーなどが開発したワクチンの接種を2回受けた人について、その後の感染状況などを2月13日までのデータをもとに分析し、2月20日公表しました。

    それよりますと、接種しなかった人と2回接種した人を比べると、感染後に熱や呼吸器系の症状などが出た人の数は、2回目の接種から1週間後で96.9%、2週間後で98%、接種しなかった人に比べて少なかったということです。

    また、感染したあとに死亡した人の数は、2回目の接種から1週間後で94.5%、2週間後で98.9%、接種しなかった人に比べて少なかったということです。

    イスラエルでは2月21日から外出制限が一部緩和され、2回の接種を受けた人は、スポーツジムやプールの利用などが認められるということで、政府は16歳以上の全国民への接種を促しています。

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    米ファイザー 妊婦対象にコロナワクチンの臨床試験開始を発表(2/19)

    2021年2月19日

    アメリカの製薬大手ファイザーは、妊娠した女性を対象にして新型コロナウイルスのワクチンの効果や安全性を確かめる臨床試験を開始したことを明らかにしました。

    ファイザーなどが開発したワクチンは、アメリカや日本など複数の国で接種が行われていますが、妊娠した女性に対する効果や胎児への安全性を確かめる臨床試験は行われていません。

    ファイザーは2月18日、およそ4000人の妊婦を対象にした臨床試験をアメリカなど複数の国で開始したと発表しました。

    それによりますと、対象は18歳以上の健康な女性で、妊娠24週から34週の間にワクチンか、比較のため体に害のない濃度の食塩水を投与します。

    臨床試験に参加する妊婦は、7か月から10か月にわたって体の免疫反応や健康への影響を調べるほか、ワクチンによって母親の体の中で作られる抗体が胎児に移行するのかなども調べることにしています。

    ファイザーは、動物試験では生殖能力に影響を与えるという結果は出ていないとしています。

    アメリカでは、妊婦への接種について、安全性に関するデータは限られているとしながらも、感染した場合、重症化するリスクが高いことなどから接種を認めていて、実際に接種している人もいます。

    また、イスラエルでは「胎児や妊娠への影響があったという証拠はない」として、妊娠中の女性への接種を認めているほか、イギリスも推奨はしないものの、医師に相談したうえで接種することを認めています。

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    アストラゼネカワクチン WHO見解は(2/18)

    2021年2月18日

    日本では厚生労働省がファイザーなどが開発したワクチンを含め、欧米の製薬会社3社との間で、合わせて1億5700万人分の供給を受ける契約を結んでいます。
    このうち、イギリスの製薬大手アストラゼネカとは6000万人分を契約していますが、このワクチンをめぐっては南アフリカで確認された変異ウイルスに対して軽度から中程度の症状を防ぐ効果は限定的だという見方も出ています。
    WHO=世界保健機関と、諮問機関の最新の見解をまとめました(2月10日現在)。
    (ヨーロッパ総局記者 古山彰子)

    Q. 世界のワクチン分配の現状は?アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンって?

    WHO主任科学者 スワミナサン氏

    スワミナサン氏
    2月10日現在、世界各地で1億3000万回分余りのワクチンがすでに接種されています。

    多くの国で接種が始まっていますが、高所得国と低所得国で不均衡が生じています。

    アストラゼネカなどが開発したワクチンは、世界に公平にワクチンを分配するためにWHOなどが立ち上げた「COVAXファシリティ」で、メインとなります。

    大量生産され、2月の後半には、多くの国に届けられる予定です。

    このワクチンの特徴は、一般的な冷蔵庫でも保管できるということです。

    それなので超低温冷凍庫を準備できない国でも、扱いが便利です。

    Q. このワクチンは65歳以上の高齢者について有効性のデータが不足しているとして、ヨーロッパで接種を控える動きも相次いでいますが、どうすればいい?

    WHOの諮問委員会 クラビオト委員長

    クラビオト委員長
    諮問委員会(SAGE)としては、ワクチンは2回打つこと、1回目と2回目の間隔は4週間から12週間空けることを勧めます。

    このワクチンの臨床試験には65歳以上の高齢者が少人数しか含まれていませんでした。

    しかし、高齢者の免疫反応は若い年齢層と変わらないようです。

    高齢者も含め18歳以上の人たちにワクチンの接種を勧めます。

    Q. このワクチンは変異ウイルスにも効くの?

    クラビオト委員長
    初期段階の臨床試験で、南アフリカで確認された変異ウイルスでは軽度から中程度の症状を防ぐ効果は著しく下がるという結果が出ましたが、重症化を防ぐ効果への影響を評価できるだけのサンプル数は得られませんでした。

    これらのことを鑑みて、完全な予防効果がなかったとしても、変異ウイルスの感染が広がる国々で、接種を推奨しない理由はどこにもありません。

    Q. 初期段階の臨床試験で、南アフリカの変異ウイルスでは軽度から中程度の症状を防ぐ効果は著しく下がるという結果が出たとのことだが、それでも接種を勧める?

    スワミナサン氏
    いくつかの国は、複数の会社などからワクチンを購入していて、選択肢があります。

    そういった場合、どの種類を使うのかみずから選ぶという選択肢がありますね。

    しかし、世界の圧倒的大多数の国は、いまだにワクチンの分配を受けるのを待っています。

    COVAXを通して分配を受ける最初のワクチンは、アストラゼネカのワクチンになる可能性が高いんです。

    はっきり言えるのは、ワクチンの接種を計画どおり進めることによるメリットが、リスクを上回るということです。

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    国連事務総長「ワクチン格差」に懸念 格差解消へ連帯が焦点(2/18)

    2021年2月18日

    国連の安全保障理事会は、新型コロナウイルスへの対応をめぐる閣僚級会合を開き、グテーレス事務総長はワクチンが一部の国に偏っているとして「ワクチン格差」に懸念を示しました。アメリカと中国は、公平な分配を目指す国際的な枠組みに協力する姿勢を強調しましたが、格差の解消へ国際社会が連帯していけるかが焦点となっています。

    会合は2月17日、議長国イギリスのラーブ外相が議長を務めてオンラインで開かれました。

    冒頭でグテーレス事務総長はワクチンの接種が一部の国に偏っているとして「ワクチン格差」に懸念を示し、WHOなどが主導して、ワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組み、COVAXファシリティへの支援を呼びかけました。

    これに対して、アメリカのブリンケン国務長官は、WHOから脱退するとした前政権の方針をバイデン政権が撤回したことにともなって、2月中に2億ドル余り、日本円にして210億円余りを拠出すると表明するとともに「COVAXに対して相当な資金援助を計画している」と述べました。

    また中国の王毅外相は、COVAXに中国製のワクチン1000万回分を提供するほか、途上国など53か国に無償で提供していると述べました。

    国連は、変異ウイルスが拡大するなか、医療体制がぜい弱な途上国へのワクチンの供給を急ぐべきだとしていて、国際社会が途上国支援で連帯していけるかが焦点となっています。

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    パレスチナ ガザ地区に新型コロナワクチン 初めて運び込まれる(2/18)

    2021年2月18日

    中東のパレスチナでは、イスラエルによってガザ地区への新型コロナウイルスのワクチンの輸送が止められていましたが、2月17日、輸送が認められ、初めてワクチンがガザ地区に運び込まれました。

    イスラエルの占領下にあるパレスチナでは、2月2日からヨルダン川西岸地区でワクチンの接種が始まる一方、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するガザ地区ではワクチンの入手が遅れています。

    こうしたなか、ガザ地区では2月17日、パレスチナ暫定自治政府が提供したロシア製のワクチン1000回分を載せたトラックがヨルダン川西岸地区からイスラエルの検問所を通過し、新型コロナウイルスのワクチンが初めて到着しました。

    人口200万人が暮らすガザ地区では、これまでに5万人以上が感染し、医療体制もぜい弱なことから感染拡大への懸念が続いていて、保健省は2月21日から医療従事者向けの接種を始めるとしています。

    このワクチンをめぐっては、2月15日、西岸地区からガザ地区への輸送が予定されていましたが、イスラエル側が検問所の通過を認めず、パレスチナ暫定自治政府が国際法違反だと非難していました。

    イスラエル政府は正式にコメントしていませんが、議会では、ハマスが実効支配するガザ地区へのワクチンの輸送に反対する意見も出ていました。

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    南アフリカ ジョンソン&ジョンソンのワクチン接種開始(2/18)

    2021年2月18日

    変異した新型コロナウイルスの感染が広がる南アフリカで、ワクチンの接種が始まりました。南アフリカ政府は、研究の枠組みを使って始めたものだとしていて、接種には、当初予定していたイギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンではなく、アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンを使用しています。

    南アフリカでは、2020年12月、イギリスとは別の変異ウイルスが確認され、第2波のピークが過ぎた今も、感染が広がっていて、感染者はこれまでにアフリカ大陸で最も多い、149万人を超えています。

    こうした中で、2月17日、南部の主要都市ケープタウンの病院では、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンの接種が始まり、医療関係者のほか、ラマポーザ大統領も接種を受けました。

    南アフリカ政府は、接種は研究の枠組みを使って開始したもので、今後、広く進めるとしています。

    アストラゼネカなどが開発したワクチンをめぐっては、WHO=世界保健機関が緊急使用のリストに加えたと発表していますが、南アフリカ政府は、初期段階の臨床試験の結果、南アフリカで確認された変異ウイルスに対しては軽度から中程度の症状を防ぐ効果が低い可能性があるとして、接種の開始を見合わせています。

    南アフリカ政府は、人口の67%にあたるおよそ4000万人分のワクチンの確保を目指していますが、今回輸入されたジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは8万回分で、目標の量の確保には時間がかかる見通しです。

    世界では先進国などに比べて途上国でワクチンの確保や接種時期が遅れる「ワクチン格差」が課題となっています。

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    イギリス 健康な人に“人為的に感染” 新型コロナ研究を承認(2/18)

    2021年2月18日

    健康な人に人為的に新型コロナウイルスを感染させて開発中のワクチンの有効性などを調べる「ヒューマン・チャレンジ」と呼ばれる研究について、イギリスの倫理委員会が実施を承認し、近く研究が始まることになりました。

    この研究は、効果的なワクチンや治療法を開発することを目標に、インペリアル・カレッジ・ロンドンなどが計画し、イギリス政府は2月17日、倫理委員会が研究の実施を承認したことを明らかにしました。

    研究は第1段階で、18歳から30歳までの健康な人、最大90人を安全な場所に隔離した状態で人為的に新型コロナウイルスに感染させ、どれくらいの量のウイルスで感染するのかや、免疫システムがウイルスにどのように反応するかなどを調べます。

    この間は、医師などが24時間態勢で健康状態などを確認するということです。

    また、変異したウイルスは詳しいことがまだわかっていないことから、研究には従来の新型コロナウイルスを使用するということです。

    続いて研究では、第1段階の結果をもとに、開発中の新型コロナウイルスのワクチンの有効性などを検証するため、ごく少人数の健康な人にワクチンを接種した上で、人為的にウイルスに感染させるということです。

    イギリス政府は、この研究に3360万ポンド、日本円でおよそ49億円を支援すると発表しています。

    研究チームは被験者を募集していて、研究は1か月以内に始まる見通しです。

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    【ワクチン接種】世界の状況は? 日本が遅れた背景はどこに?(2/17)

    2021年2月17日

    世界各国の政府などが公表したデータをまとめているイギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するウェブサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、世界では、70を超える国や地域で、接種が始まっていて、少なくとも7種類の新型コロナウイルスワクチンが実際に使用されています。

    一方で2月17日に接種が始まった日本は、G7の中で最も遅い接種開始となるなど遅れをとりました。各国の接種の状況や日本が遅れをとった背景についてまとめました。

    日本時間の2月17日午前10時の時点で、全世界で接種された新型コロナウイルスのワクチンは合わせておよそ1億7800万回分です。また少なくとも1回、接種を受けた人の数は、中国などのデータが含まれていないものの9157万人にのぼります。

    接種回数を国別にみますと、アメリカが5288万回と最も多く、次いで中国が4052万回、イギリスが1584万回、インドが872万回、イスラエルが660万回などとなっています。

    人口に対する接種を受けた人の割合では、 イスラエルがおよそ46.1%と最も高くなっていて、 イギリスは22.5%、アメリカは11.5%などとなっています。

    また、世界人口全体に対しての割合は1%余りにとどまっています。

    英 “70歳以上や医療従事者ほぼ終了”

    2020年12月、世界に先駆けて、ファイザーなどが開発したワクチンの接種が始まったイギリスでは、これまでに1550万人以上が少なくとも1回ワクチンを接種し、人口に対する割合は、およそ23%となっています。

    人口が6660万人余りのイギリスで、これまでに確認された感染者は400万人を超え、死者はヨーロッパで最も多く、11万人を超えています。

    イギリスでは2020年12月、変異ウイルスが急速に拡大し、1日当たりの感染者が、1月上旬には6万人を超えた日もありました。

    しかし、その後は減少傾向となり、2月16日に報告された感染者は1万625人となっています。

    背景には、外出制限や生活必需品を扱う店以外の営業を原則として禁止するといった厳しい措置の効果があると指摘されています。

    ワクチンを接種した人の感染状況などは近く発表される見通しで、現時点でワクチンの効果を示すデータは明らかになっていません。

    接種は、国が運営する医療制度、NHS(国民保健サービス)が取りしきっていて、まずは、高齢者施設の入所者や職員、70歳以上の高齢者や医療従事者が優先されました。

    2月中旬にはこのグループはほぼ終わり、現在は65歳以上の高齢者などへの接種が進められています。

    ファイザーなどが開発したワクチンは厳しい温度管理が必要となるため、高齢者施設での接種は当初、数週間遅れましたが、その後は順調に進み、1月からは、アストラゼネカなどが開発したワクチンも加わって、最近では、1日当たり平均でおよそ42万人が接種を受けています。

    感染状況が深刻で、さらに変異ウイルスの影響も懸念されるだけに、イギリス政府は厳しい感染対策とともに、ワクチンの接種を急ピッチで進めていて、政府は秋までに対象となるすべての人への接種を終わらせたいとしています。

    米 “全国民3億人分のワクチン確保は7月終わりまでに”

    2020年12月から新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まったアメリカではこれまでに3900万人以上が少なくとも一回の接種を受けています。接種のペースは加速していますが、大都市では供給のスピードが接種を求める人に追いつかない状況も生まれています。

    これまでに確認された新型コロナウイルスの感染者が2700万人以上と世界で最も多いアメリカでは、1日当たりの感染者数が1月はじめのおよそ30万人をピークに、このところ減少傾向にあり、1日当たりに報告される感染者はここ1週間の平均でおよそ8万8000人にまで減少しています。

    ワクチンの接種は2020年12月から始まりましたが、アメリカCDC=疾病対策センターによりますと、これまでに3967万人が少なくとも一回の接種を受け、1501万人が2回の接種を終えていますが、人口に対する割合は4.5%余りにとどまっています。

    このため多くの専門家は、ワクチンの接種は、まだ感染状況に大きな影響を与える水準には達していないとの見方を示しています。

    そのうえでワクチンの供給や、接種のペースについても課題が指摘されています。

    CDCによりますと、2月16日の段階で全米に供給されたワクチンの数はおよそ7160万回分で、1日当たり、平均でおよそ150万回分が接種されています。

    ワクチンを供給する製薬会社のファイザーとモデルナは、それぞれ3月末までに1億回分ずつ、合わせて2億回分を供給するほか、7月末までにさらに2億回分ずつ4億回分、合わせて6億回分を供給する契約をアメリカ政府と結んでいて、バイデン大統領は「3億人のアメリカ国民が接種するのに十分なワクチンを2021年7月終わりまでに供給できる見通しだ」と述べています。

    アメリカ政府の高官は3月にかけて供給量が増加するという見方を示していますが、接種を行う場所や、医療従事者の確保も必要で、接種のペースの加速が課題となっています。

    “世界でも速いペース”のイスラエル 若者の接種促進が課題

    世界でも速いペースでワクチンの接種を進めているイスラエルでは、2020年12月中旬から新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まり、これまでに国民の4割を超える399万人が1回目の接種を受け、このうちの261万人は2回目も受けています。

    年齢別で見ますと、60歳以上では、すでに87%が少なくとも1回は接種を受けています。

    政府は、16歳以上の国民全員に接種を呼びかけていますが、少なくとも1回の接種を受けた人は、10代で33%、20代で44%となっていて、若い世代への接種をどのように進めるかが課題となっています。

    イスラエルでは、2020年12月下旬から続いてきた3度目の厳しい外出制限が、2月、一部緩和されていて、政府は、来週以降、ワクチンを2回接種した人については、スポーツジムやホテルが利用できるようにするよう、議論を進めています。

    1月中旬には7日間の平均で、8000人を超えていた1日の新規感染者数についても、現在は5000人程度にまで減少していて、ネタニヤフ首相は、3月末までに16歳以上の国民全員にワクチンを接種することを目指しています。

    日本 ”G7の中で最も遅い接種開始” 遅れた背景は?

    イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するウェブサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、新型コロナウイルスのワクチンはすでに70を超える国や地域で接種が始まっています。

    G7、主要7か国で見ても、イギリスで2020年12月8日に接種が始まった後、各国で12月中に始まっており、日本はG7の中で最も遅くなりました。

    この背景について専門家はワクチンに対する考え方や危機管理への意識の違いがあるとしています。

    具体的には、一部の国ではワクチンの接種を早めようと、国内での臨床試験を行わず、海外でのデータをもって承認するケースもありますが、日本国内では、海外メーカーのワクチンについても、法律に基づいた手続きで小規模ながら臨床試験が行われ、日本人でも安全性と有効性が確保できるか、慎重に確認が行われました。

    これについて政府の分科会のメンバーで川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「遅れによって、国内外での臨床試験の結果に加え海外で実際に接種が始まったあとの効果や副反応の状況を参考にしながら接種を進められる側面もある。ワクチンの安全性は接種がどう行われるかにも影響を受けるので、遅れを取り戻そうと自治体で接種率を競うなど、現場に焦りを強いることは避けるべきだ」と話しています。

    一方で、国内でのワクチン生産体制の確保は日本の感染症対策の課題になっていて、2009年に当時の新型インフルエンザの流行後に政府の対策を振り返った報告書でも当初、ワクチン確保が難しかった経験から「国家の安全保障という観点からも可及的速やかに国民全員分のワクチンを確保するため、製造業者を支援し、ワクチン生産体制を強化すべきである」としていました。

    ところが今回、国内では、少なくとも10のグループが新型コロナウイルスのワクチン開発を行っていますが、比較的小規模なメーカーが多く、実際に人に投与する臨床試験に入っているのは、大阪のバイオベンチャー企業「アンジェス」と製薬大手の塩野義製薬の2社で、ほかは臨床試験に入る前の動物や細胞での実験の段階などとなっていて、欧米のメーカーに後れを取っています。

    政府分科会の尾身茂会長は2月行われた記者会見で「日本のワクチン業界は、世界と比較すると欧米の非常に競争力の強い企業に比べて、どうしても弱くなってしまう。新型コロナウイルスへの対応以前からの問題として、ワクチン業界の世界的な競争力の違いが本質にあったのではないかと考えている」と指摘しています。

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    イギリスのワクチン接種事情は?課題は?(2/17)

    日本でも医療従事者への先行接種が始まった新型コロナウイルスのワクチン。イギリスでは2020年12月から始まっています。イギリス政府は、実際、どのようにワクチン接種を進めているのか?そして課題は?ロンドン支局の向井麻里支局長が取材しました。

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    ハンガリー 中国のワクチン接種へ EU加盟国では初(2/17)

    2021年2月17日

    中国の製薬会社が開発した新型コロナウイルスのワクチンがハンガリーに到着し、中国のワクチンの接種が始まれば、EU=ヨーロッパ連合の加盟国では初めてとなります。

    ハンガリーでは2月16日、中国の製薬会社シノファームが開発した新型コロナウイルスのワクチンを積んだ飛行機が首都ブダペストの空港に到着しました。

    今回、到着したワクチンは55万回分で、ハンガリー政府は合わせて500万回分のワクチンを購入する計画だとしています。

    中国のワクチンは、ヨーロッパではセルビアで1月から使用されていて、ハンガリーで接種が始まれば、EU域内では初めてとなります。

    EUの加盟各国では、2020年12月からアメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの接種が始まっていますが、ワクチンの供給に遅れが出ていて影響が懸念されています。

    こうした中、ハンガリーのオルバン首相は、EUの当局が許可したワクチンだけに依存せず、関係が深い中国やロシアからもワクチンを購入し、国民の接種を進める方針を示しています。

    中国のワクチンをめぐっては1月9日、中国の習近平国家主席が中東欧17か国の首脳らと会談し、要請があれば、積極的に供給する姿勢を強調しています。

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    “接種は1回” J&J ワクチン 使用許可をEU当局に申請(2/17)

    2021年2月17日

    新型コロナウイルスのワクチンについて、アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンは、使用するための許可をEU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局に申請しました。

    アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは、1回の接種で済むため、許可されれば接種のペースが加速すると期待されていて、会社は2月4日、FDA=アメリカ食品医薬品局に対して緊急使用の許可を申請しました。

    こうした中、EUの医薬品規制当局、EMA=ヨーロッパ医薬品庁は2月16日、ジョンソン・エンド・ジョンソンから新型コロナウイルスのワクチンの販売許可の申請を受け取ったと発表しました。

    EMAは、期限を1年などとする「条件付きの販売許可」を出すかどうか、3月半ばにも結論を出すとしています。

    許可が出ればEUでは4例目になります。

    新型コロナウイルスのワクチンをめぐってEUは、供給が予定より遅れているため1月から域外に輸出する際には事前の申告と許可を得ることを義務づける措置を導入しています。

    これについて輸出の制限につながるとの懸念も出ていますが、EUは、これまで各国への輸出を認めなかったケースはないとしています。

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    バイデン大統領 “ワクチン 7月まで ほぼ全国民分確保見通し”(2/12)

    2021年2月12日

    アメリカのバイデン大統領は、新型コロナウイルスのワクチンの接種を進めるため、2億回分のワクチンを追加で購入する契約を済ませ、2021年7月終わりまでには、ほぼすべての国民が2回の接種を受けるのに十分なワクチンを確保できるという見通しを示しました。

    アメリカのバイデン大統領は2月11日、新型コロナウイルス対策を担うNIH=国立衛生研究所を訪れ、職員に訓示しました。

    この中でバイデン大統領は、すでに契約したワクチン4億回分に加えて追加で購入すると表明していた2種類のワクチン合わせて2億回分について、この日、最終的な契約を交わしたと明らかにしました。

    また、ワクチンの供給時期も、当初より早めることで製薬会社と合意したということです。

    そのうえで、バイデン大統領は「3億人のアメリカ国民が接種するのに十分なワクチンを2021年7月終わりまでに供給できる見通しだ」と述べ、従来の計画より早い、2021年7月終わりまでには、ほぼすべての国民が2回の接種を受けるのに十分なワクチンを確保できるという見通しを示しました。

    バイデン大統領は1月、ほぼすべての国民分のワクチンを確保できるのは「夏の終わりか秋の初め」だと述べていました。

    さらにバイデン大統領はワクチンの接種を支援するため、連邦政府が各州に資金を提供したほか、全米に1000人を超える職員を派遣したとして、就任から100日となる2021年4月末までに1億回分の接種を行う目標を達成できると強調しました。

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    ワクチンの効果「有効性93%と推定」イスラエルの保険機関発表(2/12)

    2021年2月12日

    世界でも速いペースでワクチン接種が進む中東イスラエルの保険機関は、ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンの予防の効果について「有効性は93%と推定される」と発表しました。

    イスラエルでは、2020年12月中旬から新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まり、これまでに国民の4割近くにあたる360万人が1回目の接種を終えこのうち222万人は2回目も終えています。

    国内でワクチン接種を担う公的な保険機関の1つ「マッカビ」は2月11日、ファイザーのワクチンを接種したあとの感染状況について公表し、2回目の接種から1週間以上が経過した52万3000人のうち、その後、検査で陽性反応が出た人は544人だったことを明らかにしました。

    一方で、比較のために同じような人口構成で、ワクチンを接種していない62万8000人を調べたところ、陽性反応が出たのは1万8435人だったということです。

    そのうえでマッカビは、予防の効果について「2回目の接種から7、8日後のワクチンの有効性は、現在のところ93%と推定される。ワクチンの有効性を示すうえで勇気づけられるデータだ」と指摘しています。

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    アメリカ ワクチン接種拡大へ薬局やスーパーなどに直接供給(2/12)

    2021年2月12日

    アメリカでは、新型コロナウイルスのワクチン接種のペースを速めるため、2月11日からは政府が、より多くの薬局やスーパーマーケットなどでもワクチンの接種が受けられるよう直接、供給を始めました。

    CDC=疾病対策センターのまとめによりますと、アメリカでは、2月10日の時点で、少なくとも1回、新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人は、3378万人余りと、人口のおよそ1割となっています。

    バイデン大統領は、政権発足から100日で1億回分のワクチン接種を目指していて、2月11日からは、政府がより多くの薬局やスーパーマーケットなどでもワクチンの接種が受けられるよう直接、供給を始めました。

    このうち、ニューヨーク州のイーストチェスターにある大手薬局チェーンの店舗では、ウェブサイトや電話で接種の予約を受け付けていて、2月12日から、薬剤師が地域の住民を対象に接種することにしています。

    薬局の近くに住む86歳の男性は「妻は車いすを使っていて、家の近所でワクチンが接種できるようになって助かりました」と話していました。

    アメリカ政府は、まずは全米各地のおよそ6500店舗に合わせて100万回分のワクチンを直接供給し、供給量が増えれば、およそ4万店舗に増やす計画で、接種を受けやすい体制づくりを急いでいます。

    飲食店従業員もワクチン接種

    ニューヨーク市では、飲食店の従業員への新型コロナウイルスワクチンの接種も始まっていて、2月12日からはおよそ2か月ぶりに店内での営業が再開される予定です。

    ニューヨーク市では、ワクチンの供給が増える見込みとなったことを受けて、2月2日には、医療従事者や65歳以上の高齢者などに加えてタクシー運転手や飲食店の従業員などへのワクチン接種を行うと発表し、接種が始まっています。

    2月12日からは、感染の状況が落ち着いているとして、およそ2か月ぶりに飲食店の店内営業が再開される予定で、有名ステーキ店の経営者は「自分や家族を守るだけでなく、お客さんへの感染を防ぐことにもなるので、従業員たちがワクチンを接種できてよかったです」と話していました。

    一方で、店内営業の再開にあたっては通常の客席数の4分の1に制限することが求められているため、多くの店が店先の歩道や道路の一部を使ったテラス席の利用も続けるものとみられます。

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    アメリカ 新型コロナワクチン接種者が人口の1割に 供給不足も(2/11)

    2021年2月11日

    アメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、新型コロナウイルスワクチンの接種を、アメリカで少なくとも1回受けた人はおよそ3380万人と、人口の1割に達しました。しかし、ワクチンの供給不足などから接種の予約が難しい状況が続く州もあり、接種を加速するうえでの課題となっています。

    CDCのまとめによりますと、2月10日の時点で、少なくとも1回、新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人は、3378万人余りと、アメリカの人口のおよそ1割に達しました。

    ワクチン接種の1日当たりのペースは2月3日に、およそ196万回を記録するなど徐々に加速しています。

    一方で、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズのまとめでは、2月10日現在、供給されたワクチンのうち、
    ▽西部ユタ州は92%、
    ▽中西部ノースダコタ州は91%をすでに接種しているのに対し、
    ▽人口の多い東部ニューヨーク州では68%、
    ▽西部カリフォルニア州では65%にとどまるなど、接種のペースにばらつきも出ています。

    ニューヨーク州では大リーグの球場や学校などを臨時の会場にするなどして接種を進めていますが、いまだに予約がとりにくい状態が続いていて、接種を求める人の数に対し、ワクチンの供給や、接種に当たる医療従事者が不足していることが課題となっています。

    アメリカ政府の新型コロナウイルス対応チームは2月10日の会見で、バイデン大統領の就任から100日後までに1億回分の接種を行うという目標に順調に近づいているとしながらも、各州へのワクチンの供給を増やし、資金面などでの支援も強化すると改めて強調しました。

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    アストラゼネカなどのワクチン 接種メリット強調 WHO諮問委(2/11)

    2021年2月11日

    WHO=世界保健機関の諮問委員会は、製薬大手アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて「接種を推奨しない理由はどこにもない」と述べ、南アフリカで確認された変異ウイルスに対して効果が限定的だという見方もある中、接種によるメリットがリスクを上回ると強調しました。

    イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンをめぐっては、初期段階の臨床試験の結果、南アフリカで確認された変異ウイルスに対し、軽度から中程度の症状を防ぐ効果は低い可能性があるとして、南アフリカ政府が接種の開始を一時的に見合わせています。

    予防接種に関してWHOに助言する諮問委員会は2月10日、記者会見を開き、クラビオト委員長は、このワクチンについて臨床試験の結果、南アフリカで確認された変異ウイルスに対し軽度から中程度の症状を防ぐ効果は著しく下がった一方、重症化リスクを評価できるだけのサンプル数は得られなかったとしました。

    そのうえで「完全な予防効果がなかったとしても、変異ウイルスの感染が広がる国々で接種を推奨しない理由はどこにもない」と述べ、各国は計画どおり接種を進めるべきだと勧告しました。

    また、このワクチンをめぐっては65歳以上の高齢者について有効性のデータが不足しているとして、ヨーロッパで接種を控える動きが相次いでいますが、諮問委員会の事務局を統括するホンバック博士は、高齢者の免疫反応は若い年齢層とほとんど変わらないとして、高齢者も接種を受けるべきだと指摘しました。

    さらに主任科学者のスワミナサン氏は、感染が拡大する中、多くの国ではアストラゼネカのワクチンが、供給される最初のワクチンになる可能性があるとして、接種によるメリットがリスクを上回ると強調しました。

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    ロシア 新型コロナワクチン製造へ日本と協力を進めたい意向(2/11)

    2021年2月11日

    新型コロナウイルスのロシア製ワクチンについて、90%を超える有効性が示されたとする中間報告が、イギリスの医学雑誌に発表されたことを受け、ロシア側はワクチンの製造に向けて日本などとの協力を進めたい意向を示しています。

    ロシアなど複数の国で接種が始まっている新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」をめぐっては、開発したロシアの研究所による、最終段階の臨床試験で91.6%の有効性が示されたとする中間報告が、イギリスの医学雑誌「ランセット」に掲載されました。

    これについてプーチン大統領は2月10日、政府内のオンライン会議で「われわれのワクチンの信頼性を高めた」と評価しました。

    また、日本に駐在しているロシアのガルージン大使も、2月10日に放送された国営テレビのインタビューで「日本のパートナーがワクチンの製造面でわが国と協力する機会を十分に検討することを期待する」と述べ、ワクチンの製造に向けて日本との協力を進めたい意向を示しました。

    ワクチンの海外への売り込みを担当しているロシア政府系のファンドによりますと、このワクチンの接種は南米や中東などで進んでいるほか、一部の国とは現地での製造に向けた協議も行われているということで、ロシア側は、イギリスの医学雑誌への掲載をきっかけに、各国への働きかけにいっそう力を入れています。

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    WHO事務局長「ワクチン接種始まっていない国は約130か国」(2/6)

    2021年2月6日

    WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まっていない国は世界でおよそ130か国にのぼるとして、接種が始まっている国に対して、自国の医療従事者や高齢者への接種が終わった場合は国際的な枠組みにワクチンを提供するよう呼びかけました。

    WHOのテドロス事務局長は2月5日の定例の記者会見で、新型コロナウイルスのワクチンの接種は複数の国で始まっているものの、全体の4分の3を上回る量が10か国に集中していると指摘しました。

    また、世界のおよそ130か国、25億人が1回もワクチンを接種していないとしています。

    テドロス事務局長は「すべての政府は国民を守る義務があるが、自国の医療従事者や高齢者への接種を終えたら、他国にワクチンを供給することこそが自国民を守る最もよい方法だ」と述べ、世界的な感染拡大を収束させるために、途上国を含むすべての国の医療従事者や高齢者などリスクの高い人たちが優先的に接種を受けられるよう、国際的な枠組み「COVAXファシリティ」にワクチンを提供するよう呼びかけました。

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    英 ワクチン接種716万人余のうち「激しいアレルギー」は114件(2/6)

    2021年2月6日

    イギリスの規制当局は、2021年1月下旬までに716万人余りが新型コロナウイルスのワクチンを接種し、アナフィラキシーなどの激しいアレルギー反応の報告は114件だったなどとする報告書を発表しました。
    アナフィラキシーはほかのワクチンでもみられる極めてまれな副反応だとしたうえで、ワクチンの接種で期待される利点は、こうした副反応をはるかに上回るとしています。

    イギリスでは、2020年12月からファイザーなどが開発したワクチン、2021年1月からアストラゼネカなどが開発したワクチンの接種が進められています。

    規制当局は2021年2月5日、このうち1月下旬までに716万人余りが少なくとも1回これらのワクチンを接種し、この間、副反応の疑いなどとして報告のあった2万2820件の分析結果を発表しました。

    それによりますと、多くは腕の痛みやインフルエンザのような症状、頭痛、寒気、けん怠感、筋肉痛などで、接種後まもなく起き、1日から2日以内で治まったということです。

    また、アナフィラキシーなどの激しいアレルギー反応の報告は合わせて114件で、報告書はアナフィラキシーはほかのワクチンでもみられる極めてまれな副反応だとしています。

    ほかの症状などについては、ワクチンを接種しなくても起きるものでワクチンが関係していることを示すものではないとしています。

    そのうえで報告書は、新型コロナウイルスに感染して引き起こされる病気の防止などワクチンの接種で期待される利点は、こうした副反応をはるかに上回ると結論づけています。

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    米 NY ヤンキースタジアムもワクチン接種会場に(2/6)

    2021年2月6日

    アメリカ・ニューヨーク市にある大リーグ・ヤンキースの本拠地、「ヤンキースタジアム」で、新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まり、大規模な接種会場の設置で、接種のペースが加速すると期待されています。

    アメリカで、少なくとも1回の新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人は2月4日の時点でおよそ2800万人と、人口の8.3%にとどまっています。

    こうした中、全米各地では競技場などの大規模な施設を会場にした接種や、車に乗ったまま接種を受けるドライブスルー方式による接種が次々に始まっていて、2月5日ニューヨーク市では大リーグ・ヤンキースの本拠地「ヤンキースタジアム」を会場にした接種が始まりました。

    接種には予約が必要で、地域の住民を対象に午前8時から午後8時まで毎日行われ、当面は1週間当たり1万5000人に接種する予定です。

    早速接種に訪れた人は「これまでなかなか予約がとれませんでしたが、この会場は簡単にとれました」と、会場が広くなり接種を受けやすくなったと喜んでいました。

    アメリカでは州ごとに接種の進み方にばらつきが出ていて、ニューヨーク州では希望者の数にワクチンの供給が追いつかず、一時、予約を停止したり、キャンセルしたりする事態が起き、バイデン政権はワクチンを供給するペースを速める方針を明らかにしています。

    今後、ヤンキースタジアムのほかにも大リーグ・メッツの本拠地なども接種会場として活用される見通しで、大規模な施設の活用で、接種のペースが加速すると期待されています。

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    中国 国内の製薬会社「シノバック」のワクチン承認 新型コロナ(2/6)

    2021年2月6日

    中国政府は、国内の製薬会社シノバックが開発した新型コロナウイルスのワクチンを承認したと発表しました。中国政府が新型コロナウイルスのワクチンを承認したのは2例目です。

    中国の国家薬品監督管理局は、国内の製薬会社シノバックが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、臨床試験を続けて当局に報告することなどを条件に、2月5日付けで承認したと発表しました。

    中国政府が新型コロナウイルスのワクチンを承認したのは、国有の製薬会社シノファームが開発したワクチンに続いて2例目です。

    シノバックのワクチンは、中国ではすでに緊急使用が認められ、2020年7月から接種が進められているほか、インドネシアやトルコ、ブラジルなどでも同様に接種が進められています。

    中国では、感染リスクの高い人たちを対象に、このワクチンやシノファームのワクチンの大規模接種が進められていて、2月3日の時点で、接種回数は、延べ3100万回を超えたとしています。

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    J&J “接種は1回” ワクチン 緊急使用許可を米FDAに申請(2/5)

    2021年2月5日

    アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンは、2月4日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、FDA=アメリカ食品医薬品局に対し、緊急使用の許可を申請しました。このワクチンは1回の接種で済むため、許可されれば接種のペースが加速すると期待されています。

    アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンは、2月4日、正式な承認の前に、緊急での使用を可能にする許可をFDA=アメリカ食品医薬品局に申請したと発表しました。

    このワクチンについては、アメリカのほか、変異したウイルスが広がっている南アフリカなども含めた各国での臨床試験の中間報告が1月29日に発表され、それによりますと、中程度から重症の新型コロナウイルスの感染症に対しての有効性は66%、重症のケースに限ると85%だったということです。

    また、健康への影響についても、安全性に関する重大な懸念は報告されていないとしています。

    緊急の使用許可は、正式な承認とは異なり、公衆衛生上の緊急事態に際して規制当局が特別に出すもので、FDAは今後、申請されたデータを基に専門家の委員会に諮るなどして審査を行い、許可の判断をすることになります。

    FDAの許可が出れば、アメリカで接種が可能なワクチンは3種類に増えるほか、すでに接種が始まっている2種類のワクチンが、いずれも2回の接種を必要とするのに対し、このワクチンは1回の接種で済むため、接種のペースが加速すると期待されています。

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    北欧の国々でワクチン接種受けた人にデジタル証明書発行の計画(2/5)

    2021年2月5日

    北欧のスウェーデンやデンマークは、新型コロナウイルスのワクチンの接種を受けた人にデジタルの証明書を発行する計画を相次いで発表しました。

    新型コロナウイルスの感染が広がるヨーロッパでは各国でワクチンの接種が始まっています。

    このうちスウェーデン政府は2月4日、ワクチンを接種したことを証明するデジタル証明書について国際的な基準が整備されれば、2021年夏までに導入するという計画を明らかにしました。

    また、隣国のデンマークも2月3日、同じような証明書を発行する方針を明らかにしています。

    詳細は今後決めるとしていますが、2月末までにウェブサイト上で接種を受けたかどうか確認できるようにし、数か月のうちにはスマートフォンのアプリを整備する予定だということです。

    ワクチンの接種証明は今後、経済活動を本格的に再開していくうえで必要だとしてビジネス界などから歓迎する声が上がっています。

    ただ、ワクチンの効果がどの程度続くかなどわかっていないことが多いこともあって、加盟国共通の証明書の導入を検討しているEU=ヨーロッパ連合内では各国で温度差があり議論が続いています。

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    イギリスで異なる2種類のワクチン接種する臨床試験実施へ(2/4)

    2021年2月4日

    異なる種類の新型コロナウイルスのワクチンを同じ人に接種して安全性や有効性を確かめる臨床試験がイギリスで行われることになり、イギリス政府は日本円で10億円余りを支援することを明らかにしました。

    現在、接種が進められている新型コロナウイルスのワクチンは、同じ種類のものを2回接種することになっていますが、供給量の確保が課題になっています。

    こうした中、1回目と2回目で異なる種類のワクチンを接種して安全性や有効性を確かめる臨床試験をイギリスのオックスフォード大学などが中心となって始めることになりました。イギリス政府は、こうした研究は世界で初めてだとしていて、700万ポンド、日本円で10億円余りを支援すると発表しました。

    臨床試験の期間は13か月で、1回目にアストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチン、2回目にファイザーとドイツのビオンテックが開発したワクチンを接種してどのような免疫反応が起きるのか検証するなど、接種の順番を入れ替えたり、間隔を変えたりして、800人を超えると見込まれる参加者を8つのグループに分けて安全性や有効性を調べるということです。

    すでに倫理委員会や規制当局の許可を得ていて、2月中旬から接種を開始し、最初の結果は夏ごろに判明する見通しです。イギリス政府は結果次第では今後の接種計画を見直すことも検討するとしています。

    研究チームの責任者は「2種類のワクチンが一緒に使えるようになれば、ワクチンを柔軟に供給できるようになる」とコメントしています。

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    インド製薬会社が11億回分ワクチン提供へ 世界分配枠組みに(2/4)

    2021年2月4日

    新型コロナウイルスのワクチンを世界に公平に分配する枠組み「COVAXファシリティ」で、ワクチンの供給に向けて運営に関わるユニセフ=国連児童基金は、インドの大手製薬会社から11億回分のワクチンの提供を受けることで合意したと発表しました。

    「COVAXファシリティ」は、新型コロナウイルスのワクチンを世界に公平に分配するため、WHO=世界保健機関などが主導して立ち上げた枠組みで、途上国を含めた世界190の国や地域が参加し、ワクチンの供給に向けて、ユニセフなどが国際的な団体とともに運営に関わっています。

    これについてユニセフのフォア事務局長は2月3日、記者会見し、インドの大手製薬会社「セラム・インスティチュート・オブ・インディア」からアストラゼネカとノババックスのそれぞれが開発するワクチンの提供を、長期的に合わせて11億回分、受けることで合意したと発表しました。

    インドはワクチンの製造が盛んで、この製薬会社はアストラゼネカとノババックスのワクチンを大量生産する契約を結んでいます。

    COVAXとしては、世界各地の医療従事者のほか、高齢者などリスクの高い人たちに優先的に接種すべきだとして、2021年末までに世界に20億回分余りのワクチンを供給することを目指していて、2021年の上半期には、途上国などを中心に145の国と地域に分配を始める計画です。

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    英で最初に報告の変異ウイルス 75の国や地域で確認 WHO(2/3)

    2021年2月3日

    WHO=世界保健機関のまとめによりますと、イギリスで最初に報告された新型コロナウイルスの変異ウイルスは2月2日の時点で、日本を含むアジアや欧米、それに中東など世界の75の国や地域で確認されたほか、5つの国や地域で確認中だということです。

    また、南アフリカで最初に報告された別の変異ウイルスは、日本や中国、オーストラリア、欧米など34の国や地域で確認されたほか、6つの国や地域で確認中だということです。

    さらに、日本やブラジルから報告された、これら2つとは別の変異ウイルスは、アメリカやイギリス、それにドイツなど10の国や地域で確認されたということです。

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    ロシア研究機関 “ロシア製ワクチンの有効性91.6%”と発表(2/3)

    2021年2月3日

    ロシアなど複数の国ですでに接種が始まっている新型コロナウイルスのワクチンについて、開発したロシアの研究機関は、最終段階の臨床試験で91.6%の有効性が示されたとする中間報告をイギリスの医学雑誌ランセットに発表しました。

    ランセットは「このワクチンの開発は見苦しいほどに性急で、透明性を欠いたことで批判を招いてきたが、今回の結果は明確だ」とするコメントを併せて掲載しました。

    掲載されたロシアの国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所の中間報告によりますと、臨床試験は18歳以上のおよそ2万人を対象に実施し、無作為に選んだ4分の3の人にはこのワクチンを2回接種し、残りの人には「プラセボ」と呼ばれる偽薬を接種して、それぞれ新型コロナウイルス感染症になった人の割合を比較しました。

    その結果、新型コロナウイルス感染症と確認された人は、ワクチンを接種したおよそ1万5000人では16人、0.1%だったのに対し、プラセボのグループではおよそ5000人中62人、1.3%だったということで、91.6%の有効性が示されたとしています。

    ワクチンを接種した人のうち45人、およそ0.2%から深刻な健康への影響があったという報告がありましたが、この割合はプラセボのグループの半分で、ワクチンとの関連はないとみられるとしています。

    このワクチンについて、ロシアは世界に先駆けて開発に成功したとして、去年8月に承認し、すでに複数の国で接種が始まっていますが、国内外からは臨床試験のデータの公開が不十分だという指摘が出ていました。

    ランセットは「このワクチンの開発は見苦しいほどに性急で、透明性を欠いたことで批判を招いてきたが、今回の結果は明確だ」とするコメントを併せて掲載しました。

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    ワクチンの副反応割合は0.24% 国民約3割接種のイスラエル(2/3)

    2021年2月3日

    速いペースで新型コロナウイルスのワクチンの接種を進めているイスラエル政府は、1月下旬までに接種した国民のおよそ3割にあたる276万人のうち、副反応が出た割合は0.24%だったと発表しました。

    イスラエルでは去年12月中旬から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンを中心に接種を進めています。

    イスラエル政府は、1月27日までに接種した人の副反応をまとめ、公表しました。

    それによりますと、1回目を接種した276万8200人のうち、副反応があったのは6575人で、割合にして0.24%だったということです。

    また、2回目では137万7827人のうち、報告は3592人と、割合にして0.26%だったとしています。

    副反応のほとんどが痛みや腫れなどの軽い、一時的な副反応だった一方で、入院が必要になったのは100万人に対し、1回目で17人、2回目でおよそ3人だったということです。

    さらに、報告書では、若い人や女性で副反応が出やすい傾向にあったと指摘しています。

    イスラエルでは、世界でも特に速いペースでワクチン接種が進む一方で、1日の新規感染者数は6000人前後と高止まりの状態が続いていて、3度目となる厳しい外出制限が続いています。

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    アストラゼネカ社ワクチン “1回目でも3か月後の有効性76%”(2/3)

    2021年2月3日

    イギリスのオックスフォード大学は、製薬大手アストラゼネカと開発した、新型コロナウイルスのワクチンについて、1回目の接種の3か月後でも有効性は76%で、一定期間は効果が続くとする研究結果を発表しました。

    イギリス政府は、1回でも接種する人を増やすために2回目までの間隔を最大3か月に延ばすことにしていて、研究チームはこの方針を支持する結果だとしています。

    オックスフォード大学は、去年12月までにイギリスやブラジル、そして南アフリカでおよそ1万7000人を対象に行ったこのワクチンの追加の臨床試験の結果を2日、発表しました。

    このワクチンは通常2回接種ですが、発表によりますと、1回の接種でも、有効性は22日後から90日後まで76%で、この間、有効性の低下はみられなかったということです。

    また、2回目の接種までの間隔を変えたところ、6週間以内に2回目を接種した場合の有効性は54.9%だったのに対し、12週間以上空けて2回目を接種した場合の有効性は82.4%に高まったとしています。

    イギリス政府は1回でも接種する人を増やすため、2回目までの間隔を最大3か月まで延ばすことにしています。

    今回の結果について研究チームは「1回の接種でも一定の期間、高い有効性が維持されることがわかった。接種の間隔を最大3か月とするイギリスの専門家委員会の方針を支持する結果となった」としています。

    一方、これとは別のワクチンで、接種の間隔を3週間としている、アメリカの製薬大手ファイザーは、イギリス政府の方針について「臨床試験では1回目の接種後にどれだけの有効性があるか十分示されていない」として、間隔を変えて接種することは推奨しないとしています。

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    “3億人にワクチン” 接種状況をデジタル管理 インド(2/3)

    2021年2月3日

    新型コロナウイルスのワクチンを夏までに3億人に接種するという大規模な計画を始めているインドでは、個人の接種状況などを一元的に管理するデジタル・プラットフォームを政府が開発し、円滑な接種につなげる方針です。

    新型コロナウイルスの感染者が世界で2番目に多いインドでは、1月からワクチンの接種が始まり、政府は医療従事者や50歳以上の人、基礎疾患のある人を優先し、夏までに3億人に接種する計画です。

    この大規模な計画の実行に向け、政府は「Co-WIN」と呼ぶ新たなデジタル・プラットフォームを開発しました。

    接種を希望する人は専用のアプリにインド版のマイナンバー、「アーダール」などをひも付け、電話番号や基礎疾患の有無などを入力して登録します。

    準備が整うとアプリで会場や日時を選んで予約できるようになり、接種の回数などが管理できるほか、接種を受けた証明書もデジタルで発行され、必要に応じて交通機関や飲食店を利用する際に提示できるということです。

    政府にとっても、優先接種の対象でない人が抜け駆けで接種を受けることなどを防げるほか、接種の全体状況や各地のワクチンの在庫状況も適切に把握できるとしています。

    この仕組みの運用に携わるインド電気通信規制庁のシャルマ前長官は「接種状況を記録するのに必要不可欠なものであり、政府と個人、双方にメリットがある」と有効性を強調しています。

    インド版マイナンバーが大きな役割

    インドでは、「アーダール」と呼ばれるインド版のマイナンバーがさまざまな行政サービスのデジタル化で大きな役割を果たしています。

    ヒンディー語で「基礎」を意味する「アーダール」は12桁の個人識別番号で、およそ10年前に作られました。

    利用者は指紋や虹彩と呼ばれる瞳の模様などの情報を登録し、個人と番号とをひも付けます。

    もともと貧困層への給付金の配布のために導入が始まり、今では、本人確認の手続きや電子署名、電子決済など、さまざまな手続きをスマートフォンやパソコンでできるようになっていて、人口13億のうち90%以上が登録しています。

    「アーダール」を活用したデジタル行政の仕組みを作った、IT企業インフォシスのナンダン・ニレカニ会長は「パンデミックにおいて、ペーパーレス、キャッシュレス、そして対面しなくても成り立つ仕組みはとても便利だ」と話しています。

    そして「政府には異なる省庁や局があり、それぞれ独自のシステムを作っていてシステムどうしがつながっていないことが多い。アーダールは横串を刺した仕組みにしたことで、便利で簡単に使えるため、多くの国民が使っている」と述べ、利便性を強調しました。

    現金給付でもデジタル活用

    インドでは新型コロナウイルス対策として行われた貧困層などへの現金給付でもデジタル技術が活用されました。

    去年3月、インド政府は、全土で厳しい外出制限を行ったことで経済に深刻な影響が出たため、貧困層や失業者などに現金の給付を行いました。

    対象は4億2000万人、総額は日本円で9800億円に上りました。

    給付はアーダールにひも付いた個人の預金口座にオンラインで送金するシステムが利用され、政府は支援を必要とする人を速やかに特定し、迅速に給付できたとしています。

    首都、ニューデリーの貧困地域で夫と2人の子どもと生活するラトネシュ・カシャップさんも給付を受けた1人で、屋台で生計を立てていた夫が外出制限によって仕事を失い、月に1万円余りあった収入がなくなりました。

    給付金は、政府が支給を決めてから1週間後に最初の振り込みがあり、3回にわたって合わせて2000円余りが支給され、食料の配給など、ほかの支援と合わせて生活を続けることができたといいます。

    カシャップさんは「給付金によって日用品などを買うことができとても助かりました」と話していました。

    個人情報保護の観点から懸念の声も

    インド政府は、医療分野でもデジタル化を推進していく方針ですが、個人情報の保護の観点から懸念の声も出ています。

    モディ首相は、去年8月の独立記念日の演説で「保健分野に革命をもたらす『ナショナル・デジタル・ヘルス・ミッション』を始める。診察の予約や支払いなどの問題を解決する」と述べ、医療分野でもデジタル化を推進する方針を明らかにしました。

    計画では国民一人一人に医療IDが付与され、かかった病気や処方された薬のほか、診察した医師や診察内容が記録され、データベース化されます。

    患者の同意のもとでデータが医師や医療機関などと共有され、患者は迅速に効率的な医療を受けられるようになるほか、政府や民間企業も膨大なデータを基に必要な政策を決めたり、新たなサービスを開発したりできるようになるとしています。

    一部の地域では試験運用が始まっていて、政府は全国に拡大する予定ですが、個人情報の保護の観点で専門家からは懸念の声も上がっています。

    デジタル分野での個人情報の保護を訴える国際的な団体のラマン・ジット・シン・チマさんは「インドには適切なデータ保護の法律がなく、健康に関する個人情報が政府だけでなく民間企業にも提供され、利用されることが大きな懸念だ」と話しています。

    そのうえで「膨大なデータを集めているが政府と独立した監視機関がない。データやプライバシーを保護する独立した機関による開かれた議論が行われるべきだ」として、拙速にデジタル化を進める前に個人情報保護などの仕組みづくりを進めるべきだと指摘しています。

    専門家は

    行政のデジタル化に詳しい一橋大学の市川類教授は、インドの事例から日本が学べる点について「インドの場合は、個人識別番号を作るにあたって新しい省庁を作り、デジタルに詳しい非常に有力な民間企業の人材をトップに据えた。システムを構築する事業者に単に委託するのではなく、政府みずから考えて事業者と一緒に進めていく体制作りが重要だ」と述べました。

    また、日本の行政デジタル化の現状について「利用者の目線に立ち、国民にとって利用しやすいシステムができているのかが大きな論点だ。全体的に使い勝手がよいとは言えない」と指摘しています。

    そして、新型コロナワクチンの接種に関する情報のデジタル化については「世界では、ワクチンの接種を受けたことを示すデジタル証明書を作る議論もあるので、今後、証明書として使えるようにするためにも、接種情報とマイナンバーをきちんとひも付けていくことは重要で、そういった開発を進めていくことが課題になる」と述べました。

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    アストラゼネカなど開発ワクチン 高齢者控える勧告相次ぐ 欧州(2/3)

    2021年2月3日

    ヨーロッパではイギリスの製薬大手、アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、65歳以上の高齢者に対する有効性のデータが不足しているとして、当面、高齢者への接種を控えるよう求める勧告が相次いでいます。

    日本も供給を受ける契約を結んでいるアストラゼネカとオックスフォード大学が開発した新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては1月29日、EU=ヨーロッパ連合の当局が、55歳以上のデータが不十分としながらも、18歳以上の使用を条件に販売の許可を出しました。

    これを受けてEUの加盟国ではそれぞれの専門機関などがワクチンの接種に関する勧告を政府に出していて、このうちフランスでは2日、医薬品などの評価を行う機関のトップが記者会見し、「65歳以上の被験者についてのデータが不足している。当面は、65歳未満に使用するよう勧告する」と述べました。

    高齢者に対する有効性のデータは今後、数週間のうちに得られるとしていてその段階で改めて評価を行うとしています。

    フランス政府は、今回の勧告に沿って65歳以上の高齢者への接種は控えるものとみられます。

    またスウェーデンでも2日、同様の勧告が出たほか、ドイツ政府は専門家による委員会の勧告を受けて65歳以上の高齢者への接種を控える方針を示しています。

    一方で、イギリスではアストラゼネカのワクチンの接種が高齢者にも行われているほか、イタリアでも政府の専門家委員会が高齢者にも接種をすべきだと結論づけるなど対応が分かれています。

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    EU 「アストラゼネカがコロナワクチン900万回分の追加供給へ」(2/1)

    2021年2月1日

    EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は、イギリスの製薬大手、アストラゼネカから900万回分の新型コロナウイルスワクチンの供給を追加で受けると明らかにしました。このワクチンはEUへの当初の供給量が予定を大幅に下回る見通しになり、EUが強く反発していました。

    アストラゼネカの新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては1月、会社側がEUへの当初の供給量が予定の半分以下になると通告したのに対してEUは強く反発し、予定どおり供給するよう求めてきました。

    双方が協議を続けた結果、EUのフォンデアライエン委員長は31日、アストラゼネカがヨーロッパでの生産態勢を強化し、900万回分の追加供給を受けることになったとツイッターに投稿しました。

    これでアストラゼネカがEUに供給するワクチンは、3月末までに4000万回分になります。

    フォンデアライエン委員長は「1歩前進だ」と歓迎していますが、当初の供給量は、なお予定には届いていません。

    EUは、ほかの会社のワクチンも含めて域内への供給が遅れている事態を受けて、域内で生産されたワクチンを輸出する場合には、事前申告と許可を必要とする措置を導入すると先週発表しましたが、この措置をめぐっては輸出の制限につながるとして懸念の声も上がっています。

    加藤官房長官「必要量確保へ各企業と調整」

    加藤官房長官は午前の記者会見で「情報収集を行いつつ、EUに対し、日本への供給に支障が生ずることがないよう申し入れを行っている。日本に供給されることになっているワクチンのうち、EUの工場で製造されている数量などの情報は、各企業との間で秘密保持契約を締結しているので差し控えたいが、引き続き必要な数量の確保に向けて各企業と調整を図りたい」と述べました。

    また「アストラゼネカ」が国内で製造するワクチンについて「海外向けではなく、国内向けに生産されるものと承知しており、その旨が厚生労働省に報告されていた」と述べました。

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    J&J 開発中のワクチン66%の有効性 臨床試験の中間報告(1/30)

    2021年1月30日

    アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンは、開発中の、1回の接種で済む新型コロナウイルスワクチンについて、臨床試験で66%の有効性を示したとする中間報告を発表しました。

    ジョンソン・エンド・ジョンソンは、1月29日、開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、世界各国で行われた最終段階の臨床試験の中間報告を発表しました。

    それによりますと、臨床試験の対象となった4万3783人のうち、新型コロナウイルスの感染症が確認されたのは468例でした。

    そして、実際にワクチンを接種された人と「プラセボ」と呼ばれる偽薬を接種された人を比較して分析した結果、中程度から重症のケースでの有効性は66%で、重症のケースに限ると85%だったということです。

    変異したウイルスが広がっている南アフリカでの有効性は57%で、感染例のおよそ95%が変異したウイルスだったということです。

    また、安全性を検証する専門家の委員会から重大な安全上の懸念は報告されておらず、急激なアレルギー反応「アナフィラキシー」も報告されていないとしています。

    会社は、2月初めにもFDA=アメリカ食品医薬品局に緊急使用の許可を申請するとしています。

    すでに接種が始まっているファイザーやモデルナのワクチンが、2回の接種を必要とするのに対し、このワクチンは1回の接種で済むため、接種のペースを加速させられると期待されています。

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    WHO “宣言”から1年 ワクチンの世界的な公平分配呼びかける(1/30)

    2021年1月30日

    新型コロナウイルスの感染拡大を受けてWHO=世界保健機関が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言してから1月30日で1年になります。
    テドロス事務局長は、ワクチン接種を始めている国に対し、医療従事者や高齢者を優先したうえで、世界への公平分配の枠組みにも提供を呼びかけました。

    WHOは2020年1月30日、中国を中心に拡大していた新型コロナウイルスの感染がほかの国にも広がるおそれがあるとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

    テドロス事務局長は1月29日、定例の記者会見で、1年前は中国以外で感染が確認された人は100人に満たなかったのに対し、今週、感染者の累計が世界で1億人を超え、なお速いスピードで感染が広がっていると述べました。

    そのうえで、ワクチン接種が始まっている国々に対して「医療従事者や高齢者に優先的に接種し、ほかの国も同じようにできるよう、世界への公平分配の枠組み『COVAXファシリティ』にワクチンを提供してほしい。リスクが低い人たちは、自分の順番を待ってほしい」と述べました。

    ワクチンは、資金力のある先進国を中心に接種が始まる一方で、ほとんどの途上国では始まっておらず、テドロス事務局長は「世界全体で終わらせなければ、パンデミックは終わらない」と述べ、各国に協力を呼びかけています。

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    韓国 ワクチン接種計画発表 11月までに「集団免疫」目指す(1/28)

    2021年1月28日

    韓国政府は、新型コロナウイルスワクチンの接種計画を発表し、2月から医療従事者への接種を始めて、11月までに多くの人が免疫を持つことで感染が広がりにくくなる、いわゆる「集団免疫」の状態を目指す方針です。

    これは韓国政府が、1月28日午後開いた記者会見で発表しました。

    それによりますと、韓国はアメリカのファイザーや、イギリスのアストラゼネカなどから、全人口を上回る5600万人分のワクチンの提供を受ける契約を結んでいて、2月からまずは医療従事者を対象に接種を始めることにしています。

    そして、3月に接種の予約ができる仕組みを立ち上げ、5月以降、接種の対象を65歳以上の高齢者などに、7月以降は65歳未満の成人にも広げる計画です。

    そのうえで、11月までに国民の70%以上にワクチンを接種し、多くの人が免疫を持つことで感染が広がりにくくなる、いわゆる「集団免疫」の状態を目指す方針です。

    接種は無料ですが、ワクチンの種類は選べないということです。

    最終的には、全国の1万か所余りで接種できる環境を整備し、接種にあたる医療従事者などの確保は、それぞれの地域が担いますが、必要に応じて韓国政府が支援することにしています。

    また、接種のあと体調に何らかの異常が生じ、ワクチンとの因果関係が認められた場合には、国が補償するとしています。

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    英アストラゼネカ 日本国内でワクチン生産を近く開始へ(1/28)

    2021年1月28日

    新型コロナウイルスのワクチンを供給する契約を政府と結んでいるイギリスの製薬大手「アストラゼネカ」は、日本国内でワクチンを製造する体制を整え、近く生産を始める方針です。

    「アストラゼネカ」は、2020年12月に1億2000万回分の新型コロナウイルスのワクチンを国内に供給する契約を政府と結び、このうち、3月までに3000万回分を輸入する見通しです。

    会社によりますと日本に速やかにワクチンを供給するため、兵庫県にある医薬品メーカーなどにワクチンの製造を委託し、近く、生産を始める方針です。

    アストラゼネカのワクチンは、現在、臨床試験が行われ、厚生労働省の承認が得られれば日本の製造拠点から最大で9000万回分が供給されるとみられます。

    ワクチンの供給はヨーロッパなどで予定より遅れていて、会社では、日本国内でワクチンを製造する体制を整えて安定供給に努めたい考えです。

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    ワクチン 米でモデルナは6月末ファイザーは5月末までに2億回分(1/27)

    2021年1月27日

    新型コロナウイルスのワクチンを開発したアメリカの製薬会社モデルナは、2021年6月末までに、アメリカ国内に2億回分を供給できるとする見通しを公表しました。また、製薬大手ファイザーも、当初の見通しより早い2021年5月末までに2億回分を供給できると明らかにしています。

    アメリカの製薬会社モデルナは1月26日、2020年12月から接種が始まっている新型コロナウイルスのワクチンについて、これまでにアメリカ国内に3000万回分以上を供給したと発表しました。

    そのうえで、今後の供給量は3月末までに1億回分、さらに6月末までに2億回分に達する見通しだとしています。

    一方、製薬大手ファイザーのアルバート・ブーラCEOは、アメリカメディアに対し、アメリカ政府と供給契約を結んでいるワクチン2億回分について、当初の見通しより早い5月末までに供給できる見通しだと述べました。

    アメリカメディアは、その理由としてファイザーのワクチンひと瓶当たりに含まれるワクチンの量が、当初想定されていた5回分より多く、アメリカの規制当局も6回分接種できることを正式に認めたためとしています。

    アメリカでは、一部の州や大都市でワクチンの供給が不足し、接種が滞る事態も起きていて、ワクチンの迅速な供給で接種を拡大することが課題となっています。

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    UAE 大手航空会社社員対象 コロナワクチン優先接種開始(1/26)

    2021年1月26日

    中東の拠点となる空港があるUAE=アラブ首長国連邦は、空港などで働く大手航空会社の社員を対象にした優先的なワクチンの接種を開始し、新型コロナウイルスの感染拡大で経済が深刻な影響を受ける中、対策を急いでいます。

    UAE政府が優先的なワクチンの接種を始めたのは、政府系の大手航空会社「エミレーツ航空」やその関連会社で働く、地上スタッフやパイロットなどで、対象者はおよそ8万人に上るということです。

    接種は1月18日から始まり、ドバイ国際空港に設けられた会場には社員らが長い行列をつくり、中国の製薬会社「シノファーム」が開発したワクチンの接種を受けていました。

    UAEは、中東の物流やビジネスの中心地で、ドバイの国際空港がその発展を支えてきました。

    政府は、去年から医療従事者や高齢者への優先的な接種を始めていますが、航空会社の社員についてもこうした対象に含めることで、感染対策と経済対策の両立を目指すねらいがあるとみられます。

    エミレーツ航空の幹部は「国際都市のドバイで社員らは感染リスクにさらされながら第一線で働いている。感染リスクを抑え込み、落ち込んだ運航状況を回復させていきたい」と話していました。

    UAEは、2020年7月から観光客の受け入れを再開していますが、世界的な感染拡大に加え、国内でも2021年に入り1日当たりの感染者数がこれまでで最も多くなっていて、経済が深刻な打撃を受けています。

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    ヨーロッパでコロナワクチンの供給遅れる 法的措置検討の国も(1/26)

    2021年1月26日

    ヨーロッパでは、製薬会社からの新型コロナウイルスのワクチンの供給が予定より遅れていて、イタリア政府が製薬会社に対し法的措置も辞さない姿勢を示すなど、各国はいらだちを募らせています。

    EU=ヨーロッパ連合ではアメリカの製薬大手ファイザーとドイツのビオンテックが開発したワクチンの接種が2020年12月から始まっていますが、研究者らのウェブサイトによりますと、1月24日の時点で少なくとも1回、接種した域内の市民は2%未満にとどまっています。

    EU各国が製薬会社からのワクチンの供給が遅れていると指摘しているのに対し、ファイザーなどは、ワクチンを生産しているベルギーの拠点で生産拡大に伴って工程を変更しているため、一時的に供給量が減少していると説明しています。

    また、近くEUは、イギリスの製薬大手アストラゼネカのワクチンにも使用許可を出す見通しですが、アストラゼネカも当初の供給量は予定を下回るとコメントしていて、EUは1月24日、会社側に契約どおりの供給を強く求める書面を送りました。

    こうした事態にイタリアのディマイオ外相が24日、地元のテレビで「契約を履行させるようあらゆる手段を尽くす」と述べ、製薬会社に対して法的措置も辞さない姿勢を示すなど、感染力が強いとされる変異ウイルスが拡大する中、EU各国はいらだちを募らせています。

    イギリスもワクチンの供給に懸念

    変異したウイルスの感染拡大が深刻なイギリスでは、ワクチンの接種が急ピッチで進められていて、これまでに650万人余りが1回目の接種を受け、80歳以上の高齢者のおよそ78%が接種を受けたということです。

    政府は、高齢者施設の入所者や職員、70歳以上の高齢者や医療従事者など1500万人への接種を2月15日までに行うことを目指していて、今のところ順調に進んでいるとしています。

    ただ、イギリス政府はワクチンの供給についてたびたび懸念を示していて、ハンコック保健相は1月25日、記者会見で、「ワクチンの供給に余裕はない状況だ」と述べ、接種を計画どおり進めていくには、供給が大きな課題になるという見方を改めて強調しました。

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    米 製薬会社モデルナのワクチン 変異ウイルスにも効果と発表(1/26)

    2021年1月26日

    アメリカの製薬会社モデルナは、イギリスと南アフリカで見つかった変異した新型コロナウイルスについてもワクチンが効果を示す結果が得られたと発表しました。
    ただ、南アフリカで見つかった変異ウイルスについては、ウイルスの働きを抑える抗体の値が、6分の1に減少したということで、効果を高めるための追加試験や新たなワクチンの臨床試験を始めるとしています。

    アメリカの製薬会社モデルナは1月25日、モデルナのワクチン接種を受けた人の血液などを使って、イギリスと南アフリカで見つかった変異ウイルスにワクチンが、どのくらい効くか調べ、いずれのワクチンも効果を示す結果が得られたと発表しました。

    ただ、イギリスの変異ウイルスに対しては、ワクチンが作り出すウイルスの働きを抑える抗体の値に目立った変化は見られなかった一方、南アフリカの変異ウイルスに対しては、抗体の値がおよそ6分の1に減少したということです。

    モデルナは、いずれの抗体の値も必要なレベルを上回っていて効果はあるとしながらも、南アフリカの変異ウイルスについては、追加のワクチン接種が効果を高めるかどうか確かめる試験を行うほか、このウイルスに対応できる新たなワクチンの臨床試験も始めるとしています。

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    ワクチン接種場所を地図上に… 米IT大手 普及支援の動き相次ぐ(1/26)

    2021年1月26日

    アメリカのIT大手グーグルは1月25日、新型コロナウイルスのワクチンの接種場所をインターネットの地図上に表示するサービスを近く始めると発表しました。アマゾンも、ワクチン接種のための診療所を本社に設けるなど、IT大手の間でワクチンの普及を支援する動きが相次いでいます。

    グーグルは1月25日、ワクチンを広く普及させるため、インターネットの検索結果や地図上にワクチンを接種できる場所などを表示させるサービスを、近く開始すると発表しました。

    関係機関からの情報を集めて予約の必要があるかどうかなど詳しい情報も表示するとしていて、アメリカの一部の州から利用できるようにし、ほかの地域や国に広げていくということです。

    またWHO=世界保健機関やアメリカCDC=疾病対策センターへの助成などとして、日本円にして150億円以上を投じるとしています。

    アメリカのIT大手では、アマゾンが西部ワシントン州シアトルにある本社にワクチン接種用の臨時の診療所を開設したほか、マイクロソフトもワクチンの接種場所として会社の施設を開放するなど、ワクチンの普及を支援する動きが相次いでいます。

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    世界最速ペース イスラエル ワクチン接種どう進められている?(1/25)

    2021年1月25日

    世界各国で新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっていますが、スムーズに接種を進めるにあたって、課題に直面している国も少なくありません。そんな中、世界最速ともいえるペースで接種を進めているのがイスラエルです。どのような方法がとられているのか、イスラエルの曽我支局長の解説です。

    Q1.イスラエルのワクチン接種 どれほど進んでいる?

    バスケットボールアリーナの特設会場に並ぶ人たち

    (記者)
    イスラエルでは2020年12月19日から、ファイザーなどが開発したワクチンの接種が始まりました。

    それからおよそ1か月後、1回目の接種を終えた人は230万人を超え、人口のおよそ3割にのぼっています。

    優先的に接種が行われている60歳以上となると、すでに7割を超えています。

    接種後15分間、会場で待機する人たち

    イギリス・オックスフォード大学の研究者らがまとめている「アワー・ワールド・イン・データ」によりますと、少なくとも1回はワクチンの接種を受けた人が人口に占める割合は、1月21日の時点でイスラエルが最も多く33.93%。2位のUAE=アラブ首長国連邦の21.85%や、3位のバーレーンの8.44%を引き離し、最速ペースで進んでいます。

    イスラエルではすでに2回目の接種も始まっていて、政府は3月末までに、16歳以上のすべての国民に対する接種を終えたいとしています。

    Q2.なぜそんなに早く進められる?

    接種後15分間、会場で待機する人たち

    (記者)
    複数の理由が考えられますが、大きく2つの理由が考えられます。

    ●理由1 国民皆保険制度

    1つ目が、整備された医療制度の基盤です。

    イスラエルでは日本と同じように、国民皆保険制度が導入されていて、国民は「医療保険機構」への加入を義務づけられています。日本で言う「健康保険組合」のような団体です。

    イスラエルの場合、保険による医療サービスの提供などは「医療保険機構」に一元化されていて、今回のワクチン接種でも、この団体が業務を一手に担っています。

    接種する場所はすべて機構が準備し、自分たちで経営する病院や診療所を会場にあてているほか、ドライブスルーやスポーツ施設での接種も行っています。

    ドライブスルー方式の接種会場
    テント内で車に乗ったまま接種を受けられる

    人材が足りない施設では、看護師や救命救急の人員を臨時で雇い、対応にあたっているということです。

    各会場の稼働時間は自治体の規模などによって異なりますが、取材をしたエルサレムのバスケットボール専用施設では、午前8時から午後10時までの1日14時間、接種を受けつけていました。

    また1日あたり30人ほどが働き、2000人に接種することができるとしていました。

    ●理由2 デジタルヘルスの推進

    そして医療保険機構の業務を支えているのが、ITを取り入れた「デジタルヘルス」です。

    イスラエルでは1990年代、人口の増加や高齢化にともなって、医療費の増加が課題となりました。

    このため「デジタルヘルス」の推進を進め、業務の効率化を図ってきた経緯があります。

    IT化によって機構は現在、国民の病歴といった膨大な個人情報を一元的に管理しています。

    そうしたデータに基づいて、接種は高齢者や基礎疾患のある人など、感染によるリスクの高い人から順番に行われています。

    対象者には、携帯電話のメッセージで直接連絡。

    出向いてもらう日時や会場を伝え、同意する人は専用のアプリなどに登録した上、接種を行うという仕組みです。

    機構は、各会場の混雑状況も一手に把握し、対象者をすいている会場に案内することで、混雑を回避する取り組みもなされています。

    最大の政府系の病院「シェバ・メディカル・センター」で業務改革の責任者を務める、エイアル・ツィムリヒマン氏は「データに基づいて、対象者にすいている会場に行くよう指示できるし、ワクチンが余れば次の対象者に連絡してすぐに来てもらうこともできる。イスラエルの制度はこうしたオペレーションに非常に適している」と話していました。

    Q3.ワクチンの入手は順調だった?

    (記者)
    イスラエルは、800万回分のワクチンをファイザーから購入することで合意しています。

    ネタニヤフ首相は1月、「友人であるファイザーのCEOと17回目の会談を行い、さらなるワクチンを受け取ることで合意した」と述べ、個人的な関係をいかして調達を進めていることをアピールしています。

    また報道では、他国よりも高値で契約を結び、早期の経済再開を急いだとも伝えられています。

    1月17日には政府が、ファイザーとの合意文書の一部を明らかにしました。

    この中では、イスラエル側がワクチンの接種状況などのデータを定期的に公開する代わりに、ファイザー側もすみやかにワクチンを提供するといった内容も含まれていました。

    専門家は、迅速な接種から得られる情報は、製薬会社にとってもメリットが大きく、各国との競争においてもイスラエルは、有利な立場にあると指摘します。

    「シェバ・メディカル・センター」のアルノン・アフェク副事務局長は「接種後に腕が痛くなったり頭痛がしたり、極めて少ないが深刻な副反応が起きたりといった情報はファイザーにとって非常に重要な情報だ。ファイザーは開発の最終段階で4万人に臨床試験を行ったが、イスラエルは3週間で190万人に接種できている。ファイザーにとってイスラエルにワクチンを提供した方が良いということになる」と話していました。

    Q4.これまでに公開されている情報から分かることは?

    (記者)
    これまでのところ、生死に関わるような深刻な副反応は報告されていないということです。

    一方、ワクチンの成果についても具体的なものはまだ示されていません。

    ワクチンの接種が進むことで、感染はいつどういったタイミングで収束に向かうのか。世界最速ペースのイスラエルにおけるワクチン接種の進め方や、そこから得られるデータに、各国や製薬会社の注目が集まっています。

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    モデルナのワクチン接種 400万人中激しいアレルギー反応10人(1/23)

    2021年1月23日

    アメリカCDC=疾病対策センターは1月22日、アメリカの製薬会社モデルナが開発した新型コロナウイルスのワクチンを接種したおよそ400万人のうち、アナフィラキシーと呼ばれる激しいアレルギー反応を示した人は10人だったとする報告書を公表しました。追跡できた人は全員すでに回復したということです。

    報告書によりますと、アメリカの製薬会社モデルナが開発したワクチンを接種した人は2020年12月21日から2021年1月10日までに全米でおよそ404万人で、性別は61%が女性、36%が男性で、残りは不明だとしています。

    このうち健康に関する報告は、ワクチンと関係があるかわからないものも含めて、1266件、0.03%だったということです。

    また、激しいアレルギー反応であるアナフィラキシーの症状を示した人は10人、100万人当たり2.5人で、このうち9人は、過去に薬や食べ物などでアレルギー反応が出たことがあったということです。

    症状を示した10人はすべてが女性で、9人は接種後15分以内で症状が出たということです。

    10人のうち、その後の経過が追跡できた8人は全員すでに回復しているということです。

    CDCは「モデルナのワクチン接種後のアナフィラキシー症状はまれな出来事とみられる」としたうえで、念のため激しいアレルギー反応に備えて接種を行うよう求めるとともに、健康への影響を注意深く検証していくとしています。

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    ワクチン接種の経験語る 海外在住の日本人医療従事者(1/22)

    2021年1月22日

    海外では新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まり、現地に住む日本人も接種を受け始めています。どんな流れで接種するの?接種のあとに体に変化は?アメリカ在住で優先的に接種を受けた2人の医療従事者に話を聞きました。
    (国際部記者 北井元気 藤井美沙紀)

    山田悠史医師

    (ニューヨーク州マウントサイナイ医科大学病院 山田悠史医師・1月16日取材)

    Q.いつ接種しましたか?
    (山田医師)
    12月21日に1回目、3週間後の1月11日に2回目を接種しました。

    Q.アメリカでは接種は義務ですか?
    (山田医師)
    義務ではなく、接種するかしないかは完全に個人の意思に委ねられています。

    Q.接種しようと思った理由は?
    (山田医師)
    医師として高齢者の診療にあたっているので、例えば自分が感染すれば患者に感染を広げてしまうおそれがあります。「接種が始まったら必ず受けなければいけない」と半ば責務のように考えていました。

    Q.接種を断った方は周りにいますか?
    (山田医師)
    周りの医療従事者にそういう方はいませんでしたが、患者の中にはアメリカで以前起きたワクチンをめぐる問題を理由に接種しないという方もいました。また、SNS上の根拠のない情報を信じて打ちたくないと話す方もいました。

    Q.接種は医療機関で行われるのですか?
    (山田医師)
    医療機関でも行われますが、ほかに介護施設や街なかの薬局でも行われています。日本とは違い、薬剤師や薬学生も注射器を使って接種を行うことができます。地域の人々が集まる施設を会場にした接種や、ドライブスルー方式の接種も計画されているようです。

    Q.どんな流れで接種しましたか?
    (山田医師)
    接種が始まることを知らせるメールが大学から届き、インターネット経由で場所と日時を選んで予約しました。現状(1月16日時点)では2月まで予約がいっぱいなようです。

    ワクチンの種類は選べず、私はファイザーなどが開発したワクチンを接種しました。

    私の接種会場は勤務先の1つである高齢者福祉施設の1室でした。一般的な病室ぐらいの大きさの診察室に1人ずつ順に入りました。

    部屋の前に着くと、まず問診票が渡されました。記入を終えて同意の署名をしたあと診察室に入り、インフルエンザなどのワクチンと同じようにアルコールで消毒してから、左肩の筋肉に注射しました。わずか1~2秒で痛みもなく、気付いたら終わっていました。

    もしかしたら少し「チクッ」としたのかもしれませんが、覚えていないぐらいあっという間でした。他のワクチンと大きな差はないと思います。

    Q.接種の時、周りはどんな様子でしたか?
    (山田医師)
    私の時は接種の対象がまだ医療従事者だけだったので、来ていたのは同僚でした。互いに接種の様子を写真に撮ったり、SNSに投稿したりしていて、期待感あるいは使命感のようなものを感じました。

    写真などを多くの人に見てもらおうという行動には「接種して大丈夫」というメッセージを発信したいという意味合いが込められていたのではないかと思います。

    Q.接種のあとは?
    (山田医師)
    診察室のすぐ隣の部屋が待機場所になっていて、体に異変がないか15分間様子をみました。医師や看護師も常駐していました。重いアレルギー症状に備えるためです。私は幸いにもアレルギー反応は出ず、15分たったあと帰宅しました。

    Q.副反応のような症状はありましたか?
    (山田医師)
    次の日の朝、左腕に少し違和感がありました。痛みといえるほどではありませんが、動かすと何かおかしな感覚がありました。違和感は翌日も続きましたが、接種から3日後にはなくなりました。

    Q.周りで何か症状を訴えた人はいましたか?
    (山田医師)
    私の上司と同僚の何人かが、接種の翌日に38度を超える熱が出たり、体のだるさを訴えたりしました。仕事を休んだ人も何人かいました。

    そのうちの1人は以前、新型コロナウイルスに感染したことがある人で「感染した時のような症状が、軽めに、短期間で出た感じ」と話していました。

    Q.2回目の接種はどうでしたか?
    (山田医師)
    1回目と同じ左肩に接種しました。症状も1回目と全く同じで、打った直後は何もなく、翌日から2日間ほど左肩に違和感が出て、3日後からは違和感はなくなりました。強いて言えば、2回目のほうが少し痛みが強かった印象です。

    Q.周りの人は?
    (山田医師)
    人によってバラバラで個人差が大きいと感じました。

    1回目では体調が悪くなったけれど、2回目は何ともなかった人や、反対に1回目は何ともなかったのに、2回目では少し体調が悪くなったという人がいました。

    2回目の時も、接種のあとに熱が出て休まなければならなくなった人が何人かいて、私もそういう方のカバーで急きょ別の業務に入りました。

    Q.効果の実感や、気持ちのうえでの変化は?
    (山田医師)
    そもそもワクチンは、苦しい症状を抑える薬のようなものではなく、病気になったり重い症状になったりするのを未然に防ぐものだと思います。この辺に治療薬とは違う、効果を実感しにくいワクチンの難しさがあると思います。

    一方で、感染対策は続けていますが、自分自身への安心感というか、“見えない頑丈なマスク”をもう1枚着けているような感覚はあります。

    Q.これから接種が始まる日本の方々に伝えたいことは?
    (山田医師)
    これからワクチンを接種する日本の方々に私自身の経験が参考になれば、という思いで取材に応じました。

    アメリカでもワクチンに不安を抱く方がたくさんいます。私は家族や友人を守るために、このパンデミックを終わりに近づけるために、ワクチンは最も有効な手段の1つだと考えています。

    桑間雄一郎院長

    (ニューヨーク州マウントサイナイ病院ニューヨーク東京海上記念診療所 桑間雄一郎院長・1月14日取材)

    Q.いつ接種しましたか?
    (桑間院長)
    1月5日に1回目を接種しました。

    Q.接種はどうやって決まりましたか?
    (桑間院長)
    病院から「ワクチンの接種がまもなく始まる」という説明が12月中旬にありました。院内で優先順位が最も高かったのは救急、集中治療室、そして新型コロナの患者の対応をしている医師や看護師で、私をはじめとする診療所のメンバーは入っていませんでした。病院から接種を予約するようメールで連絡が来たのは1月4日でした。

    Q.どのように予約しましたか?
    (桑間院長)
    届いたメールから予約専用のWEBサイトに誘導され、そのサイトで会場となる医療施設や時間帯を選択しました。

    勤務先の診療所には非常に低い温度でワクチンを保管する設備がなかったため、そうした設備があるグループ内の施設に出向いて接種する手順でした。

    サイトではアレルギー歴や最近の体調などに関する多くの質問に答えました。

    Q.接種にためらいはありませんでしたか?
    (桑間院長)
    インフルエンザのワクチンの有効率は半分程度と言われています。それに比べてファイザーなどが開発した新型コロナのワクチンは効果がはるかに高いと言われています。

    新型コロナで死ぬ危険性が、ワクチンで副反応に見舞われる危険性より圧倒的に高いので、接種を心待ちにしていました。

    Q.接種当日は、どんな流れでしたか?
    (桑間院長)
    勤務先の診療所から1キロほど離れた病院でファイザーなどが開発したワクチンを接種しました。

    その病院は3階のフロア全体を接種用にしていて、受付に並ぶ人のために、6フィートの間隔で床にマークがつけられていて、その上で待つと、人々の距離が保たれるような工夫がされていました。

    受付では本人確認のほか、事前にサイトで答えたのと同じような質問を口頭で聞かれました。

    その後、今回のワクチンは緊急で使用が認められたことなどの説明を受け、ワクチンのリスクなどに関する情報が記されたパンフレットを渡されたのち、接種の同意の確認がありました。

    Q.会場はどんな様子でしたか?
    (桑間院長)
    フロアは10か所くらいのブースに分かれていて、待っているとその1つから声がかかりました。

    中に入ると看護師がいて、アレルギー歴や健康状態などについて再び聞かれ、それらに次々と答えました。看護師は私の回答をコンピューターに打ち込んでいました。

    そのあと肩に接種を受けました。

    Q.接種後は?
    (桑間院長)
    終わるとフロアの出口近くに設けられた観察室に行くよう指示されました。観察室で名前を告げると、だいたい2メートルおきに置かれたいすの1つに座るよう案内されました。

    そこで15分間、体調に異常がないか観察し、変わったことは起きていないことを確認して、帰ってよいと言われ病院を出ました。午後6時15分に接種会場の病院に到着し、離れたのは6時45分でした。

    Q.その後、体調はどうでしたか?
    (桑間院長)
    接種の時は全く痛みはありませんでしたが、その後肩に痛みが出て接種の2日後まで残りました。

    他のワクチンでも似たような痛みが出たことはありますが、強めだと感じました。周りでも肩の痛みを訴える人が多かったようです。

    私の場合、接種から3日後には症状はなくなりました。

    Q.接種に慎重な人は周りにいますか?
    (桑間院長)
    診療所が所属する母体の病院には、接種したくないという医療従事者もいるようです。接種が始まって1週間が経過したころ、接種を拒否している職員も少なからずいることを受けて、病院の幹部がワクチンについて説明する機会をもうけました。

    病院も強制はできないので、それでも接種しない職員は専用のフォームに記入して提出することになりました。

    接種の予約を受け付け始めて1週間の時点で、外来患者の対応をしている職員のサンプル調査の結果、およそ400人のうち90人余り、4人に1人が接種をためらっているというデータが示されました。

    Q.そうした理由は何でしょうか?
    (桑間院長)
    具体的な理由はわかりませんが、個人的には周りにいろいろ聞いています。

    12月はじめに聞いた時には「安全性が完全には確立されていない。心配があり、受けたくない」「副反応が不安だが、医療従事者としてやむをえず接種する」などの声が聞かれました。

    また、ある診療科では受付と看護師、合わせて4人全員が「受けたくない。安全かわからないから」と言っていました。これは私にとって予想外で、未知のものに対する不安感が多くの人にあると感じました。

    Q.2回目もワクチンを打ちますか?
    (桑間院長)
    すでに2回目を予約しています。私が周りに話を聞いて感じるのは、初めてのワクチンに不安を抱く人も少なくないということです。

    丁寧に説明することで、そうした人たちの不安を解消できるよう努めていくことが大切だと感じています。

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    ブラジル 中国製ワクチン接種開始 南米で中国・ロシア製が拡大(1/20)

    2021年1月20日

    各国で新型コロナウイルスのワクチンの接種が進む中、アメリカやイギリスで開発されたワクチンが確保できていない南米では、中国製やロシア製のワクチンを使う動きが広がっています。感染者の累計が世界で3番目に多いブラジルでは、中国製のワクチンの接種が今週から始まりました。

    ブラジルでは17日、中国の製薬会社シノバックが開発したワクチンと、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンの緊急使用がそれぞれ承認されました。

    このうち、シノバックのワクチンの接種が今週からブラジル全土で始まり、最大都市サンパウロの中心部にある病院では、1日当たりおよそ1000人の医療関係者が接種を受けています。

    接種を受けた1人は「ワクチンは私たちが生きる上での希望だ。状況が改善することを願っている」と話していました。

    また、アルゼンチンでは、ロシア製のワクチンの接種が2020年12月から始まっています。

    中国製やロシア製のワクチンをめぐっては、ヒトで安全性や有効性を確かめるために行われる臨床試験の結果が十分に公表されていないという指摘が欧米のメディアから出ています。

    ただ、アメリカやイギリスで開発されたワクチンが確保できていない南米では、価格が比較的安く管理も簡単だなどとして、中国製やロシア製のワクチンを使う動きが広がっています。

    貧困地区を中心に感染拡大 医療ひっ迫

    ブラジルでは貧困地区を中心に感染が拡大していて、累計の感染者数は850万人を超えて世界で3番目、死者数は21万人を超えて世界で2番目の多さとなっています。

    一方、経済対策を優先するボルソナロ大統領は、ブラジル国内で臨床試験が行われていた中国で開発されたワクチンについて「私は接種しない」と述べていました。

    また、今月1日には大勢の人でにぎわう海で自身が海水浴をする様子をインターネット上に投稿するなどの言動を繰り返してきました。

    しかしその後、状況が変わります。

    政府の自粛要請にもかかわらず、多くの人々が街に繰り出す状況が続いたあと、感染が再び拡大。

    多い日には1日当たりの新たな感染者数は8万人、死者数は1500人を超え、多くの都市で医療態勢がひっ迫し始めたのです。

    中でも、感染者が多い熱帯雨林のアマゾンがある北西部アマゾナス州では、治療に必要な酸素やベッドの不足が深刻になり、州政府は多くの病院でベッドの使用率が100%になっているとして、他の州に患者を搬送する事態となっています。

    有効な対策を見いだせない中、ブラジル政府が頼ったのが、ボルソナロ大統領が使用に消極的だった中国製のワクチンでした。

    ブラジルで行われた臨床試験では有効性は50%程度で、市民からは安全性についても不安の声が出ていましたが、ブラジル政府は17日、WHO=世界保健機関の基準を満たしているとして承認しました。

    中国政府 ブラジルへの支援加速もワクチン全く足りず

    一方、中国政府もブラジルへの支援を加速させています。

    医療事情がひっ迫しているアマゾン地域の病院に対し、不足している酸素の供給を約束したほか、サンパウロではシノバックが開発したワクチンを製造する工場の建設にも協力しています。

    ただ、ブラジルが確保している中国製のワクチンは現時点では1000万回分程度と、2億人を超える人口には全く足りておらず、ブラジル政府は中国の製薬会社から追加でワクチンを購入したいとしています。

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    「4月上旬までにすべての国で接種開始を」WHOテドロス事務局長(1/19)

    2021年1月19日

    WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスのワクチンが所得の低い国に行き渡らないことに強い懸念を示し、4月上旬までにすべての国で、医療従事者と高齢者が接種を始められるよう各国が協力すべきだと訴えました。

    WHOのテドロス事務局長は1月18日、オンライン形式で始まった執行理事会で、新型コロナウイルスのワクチンについて、所得の高い国ではこれまでに合わせて3900万回分余りが接種された一方、最も所得の低い国ではわずか25回分しか入手できていないと明らかにしました。

    WHOなどは、途上国を含め世界各国にワクチンを分配するための枠組みを設けていますが、テドロス事務局長は、一部の国が枠組みの外で製薬会社と独自に契約を結んでいることでワクチンの価格がつり上がっていると指摘しました。

    そのうえで「世界は壊滅的な倫理上の失敗を犯す寸前だ。代償となるのは貧しい国の人々の命や暮らしだ」として、ワクチンが公平に行き渡らないことに強い懸念を示しました。

    さらに「所得の高い国の若く健康な成人が、貧しい国の医療従事者や高齢者よりも先にワクチンを接種するのは正しくない」と述べ、国際的な分配の枠組みにワクチンを提供し、4月上旬までにすべての国で、医療従事者と高齢者が接種を始められるよう協力すべきだと各国に訴えました。

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    ロシア 18歳以上の全国民へのワクチン接種 始まる(1/18)

    2021年1月18日

    ロシアでは1月18日、18歳以上のすべての国民を対象に新型コロナウイルスのロシア製のワクチンを接種する大規模な取り組みが始まりました。ロシア製のワクチンの有効性などを強調するねらいもあるとみられます。

    ロシアでは、国内で開発された新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」の接種が医療従事者や教師などを優先に2020年12月から始まっています。

    これについてプーチン大統領は、接種の規模を拡大するよう指示し、1月18日からは、妊婦などを除く、18歳以上のすべての希望者に対象を広げて大規模な接種が始まりました。

    このうち極東のウラジオストクの医療機関には事前に申し込みをした人が次々に訪れ、接種を受けていました。

    50代の女性は「自主的な隔離の生活に疲れ、安全のために接種しました。ロシアの科学を信頼しています」と話していました。

    ロシアでは、これまでの感染者数が350万人を超え、感染拡大が収まっていない一方、ワクチンの安全性や有効性に対しては、国民の不安も根強いのが実情です。

    ロシアの国営メディアはワクチンの接種拡大を大きく伝えていて、プーチン政権としては、大規模な接種によってロシア製のワクチンの有効性などを強調するねらいもあるとみられます。

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    ブラジルで中国の製薬会社のワクチン接種始まる(1/18)

    2021年1月18日

    南米のブラジルで1月17日、中国とイギリスの製薬会社のワクチン2種類の緊急使用が承認され、最大都市サンパウロでは中国のワクチンの接種が始まりました。

    ブラジルでは1月17日、中国の製薬会社「シノバック」とイギリスの製薬大手「アストラゼネカ」の2種類のワクチンの緊急使用がそれぞれ承認され、最大都市サンパウロでは、シノバックのワクチンの接種が他の地域に先駆けて医療従事者らを対象に始まりました。

    ブラジル政府によりますとシノバックのワクチンは、欧米のワクチンに比べて値段が安く、中国側もデータの提供などに協力的で、安全性も確保されているということです。

    ブラジルは、累計の感染者数がおよそ840万人、死者も20万人を超えていて、ワクチン接種の早期開始を求める声が高まっていました。

    ブラジル政府は今後、ワクチン接種を拡大していきたいとしていますが、2億人を超える人口に行き渡るだけのワクチンはまだ確保できておらず、今後の接種に向け、大きな課題となっています。

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    インド 新型コロナワクチン接種開始 夏までに3億人の計画(1/16)

    2021年1月16日

    各国で新型コロナウイルスのワクチンの接種が行われる中、インドでも1月16日から接種が始まり、政府は、夏までに3億人が接種を受ける世界最大規模の計画だとしています。

    インド政府は1月はじめ、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンと地元の企業が開発したワクチンの2種類の緊急使用を許可し、16日から接種が始まりました。

    首都ニューデリーの病院では政府や病院の関係者が多く見守る中、医療従事者らにワクチンが接種され、大きな拍手が起こっていました。

    視察したバルダン保健・家族福祉相は「このワクチンはウイルスとの闘いにおいてすばらしいものとなるだろう」と述べました。

    人口が13億にのぼるインドで、政府は、医療従事者から優先して接種を進め、50歳以上の人や基礎疾患のある人などを対象に夏までに3億人に接種することにしています。

    モディ首相は各地の会場と映像を結んで演説し「世界最大規模のワクチン接種計画が始まった。インドの科学の能力を示している」と述べ、計画に自信を示しました。

    インドの累計の感染者は1000万人を超えアメリカに次いで多くなっているだけに、現地ではワクチンの効果に注目が集まっています。

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    新型コロナワクチン 世界の状況や効果 WHOの見解は?(1/13)

    2021年1月13日

    2020年12月以降、世界各地で始まっている新型コロナウイルスのワクチン接種。ワクチンって、みんな打っていいの?効果がどのくらい続くの?
    WHOが、専門家の諮問委員会の議長とともに1月7日に行ったオンライン会見のポイントをまとめました。

    世界の全体状況

    (問)
    世界各地でワクチンの承認、接種が始まっています。新型コロナウイルスのワクチンをめぐる世界の全体状況は?

    WHOの予防接種部門の統括 キャサリン・オブライエン氏
    「状況は日々変わっています。この疾患に対する効果を示す多くのワクチンがあります。そして複数のワクチンが、異なる国々で承認されています。ワクチンは今、主に先進国で接種が始まっていますが、今後すぐに低所得国や中所得国でも始まるでしょう。最も高い審査水準をもつ規制当局によって評価されたのワクチンがすでに少なくとも3種類あります。各国の規制当局は、安全性や病気を防ぐ効果に関するデータを確認し、製造の質も確かめます。3種類のワクチンは、アストラゼネカ、モデルナ、それにファイザーのワクチンで、これらは基準を満たしているとして、少なくとも1か国で承認されています。このほかにも、効果があるとする結果を公に発表している複数のワクチンがあり、それらのワクチンに関するデータを目にしているところです。中国のシノファームとシノバックのワクチンです。ロシアのガマレヤ研究所が開発したワクチンもあります。最も大切なのは、臨床試験を経たワクチンがたくさん出てきているということ、そして一般の人への接種に向け承認するため、私たちは今後、数週間、数か月間かけてデータを見ていき、データが十分かどうか確かめることです」

    変異株に効果は

    (問)
    世界で今、変異株が広がっている。ワクチンは変異株にも効果がありますか?

    キャサリン・オブライエン氏
    「こうしたワクチンは、開発や試験の中で複数の異なる変異株に対しても効果があるかどうか、評価されました。ウイルスは常に変化するものです。それはウイルスにとって自然なことです。問題は、ウイルスの変異が、病気そのものや治療方法、もしくはワクチンに影響を及ぼすかどうかです。世界各地で感染の広がりが懸念されている複数の変異株が確認されています。すでに開発されたワクチンの効果にも影響を与えるものかどうかは、今検証しているところです。しかし強い自信を持って言えるのは、すでにあるワクチンの接種をできるだけ早く進める必要があるということです。こういった変異は、ワクチンの効果を変えるものではないものだと考えられています」

    既往歴のある人は

    (問)
    既往歴のある人もワクチンを接種していいですか?

    アレハンドロ・クラビオト議長
    「状況によります。確かなのは、ほかのワクチンで重篤な反応、アレルギー反応を起こしたことがある人は、受けるべきではないです。食べ物やほかのものに対するアレルギーがある人については、避ける必要はありません。しかし、ワクチン接種は、受けた人が重いアレルギー症状を起こした場合、効果的に、直ちに治療を行える場所で行うべきだと勧告します」

    キャサリン・オブライエン氏
    「基礎疾患のある人、つまり心臓や肺の病気を抱えている人、糖尿病の人や肥満の人は、新型コロナウイルスに感染した場合、ほかの人よりも高いリスクがあることがわかっています。こうした病気を抱えている人は、接種してほしい人たちです。妊娠している女性にどのような影響を与えるのかどうかに関してはデータはありませんが、強調したいのは、これらのワクチンが妊婦や胎児に有害かもしれないということを信じる理由はないということです。妊娠している女性で上であげられた高いリスクのあるグループに属する人たち、特に医療従事者の場合には、接種をする側の人々と話し合い、リスクが高いと判断するのであれば、接種することにしていいと思います。HIV感染者の人は接種を受けるべきだし、新型コロナウイルスに感染することで重症化するリスクの高い人は、だれもが接種を受けるべきです」

    回復した人も接種すべきか

    (問)
    新型コロナウイルスに感染し、すでに回復した人も接種すべきですか?

    アレハンドロ・クラビオト議長
    「それは私たちが特に勧めていることです。PCR検査、抗原検査で陽性になった人も、ワクチン接種から除外すべきではありません。一度感染した人がどのくらいの期間、再び感染しないのかはまだわかりません。きのう(1月6日)発表されたデータでは8か月までは感染しないとありましたが、ワクチンの接種から除外すべきではありません。一方で、一度感染した人自身が、まずは高齢者が優先的に受けるべきだと考え、自分が接種を受けるのは待つというのであれば、それはそれぞれが判断すべきことです」

    キャサリン・オブライエン氏
    「アレハンドロの言うとおりです。ワクチン接種は世界で始まったばかりで、各国はまず、最も優先させるべき人たちから接種を始めています。すでに感染したことのある人は、少なくとも今後6か月間、再び感染する可能性は極めて低いでしょう。ただ、WHOとしては、1度感染した人を、接種の対象外にしたり、感染したことがあるという理由で遅らせたりすることは勧めません」

    1回目と2回目で違うワクチンは?

    (問)
    接種するワクチンは、1回目と2回目、別の製造者が作ったワクチンでもいい?

    キャサリン・オブライエン氏
    「すでにいくつかの国では、2種類以上のワクチンの使用が始まっていますね。1回目のワクチンとは異なるワクチンを2回目として接種していいかどうか、これについてのデータはないんです。今の段階では、ファイザーなどのワクチンを1回目に接種した場合、2回目も、同じワクチンを接種すべきだと勧めます。いくつかの国では、2回目の接種は、1回目と異なるワクチンを使っているのを把握しています。これは研究すべきとても大事な分野であり、勧告を作るために、優先的に研究を進めるつもりです」

    ワクチンの効果は

    (問)
    ワクチンの効果はどのくらいの期間続きますか?

    キャサリン・オブライエン氏
    「2020年の春に臨床試験が始まったばかりで、まだ日が浅いので、臨床試験に参加した人たちを引き続き見ていくことで、どのくらい効果がもつのか見えてくるでしょう。それなので、まだわからないんです。持続性のある免疫が得られればいいと思っていますが。新型コロナウイルスに感染した人たちの免疫がどのくらい続くかもみています、これはもしかしたら、ワクチンを接種して得られる免疫の期間にも関係あるかもしれないので。今の段階で、ワクチンの効果がどのくらい続くか、説明するのは早すぎます」

    15歳以下の子どもは

    (問)
    ファイザーなどのワクチンについては、接種を受けられるのは16歳以上だということですが、15歳以下の子どもたち、赤ちゃんはどうすればいいですか?

    キャサリン・オブライエン氏
    「研究は今も続いています。臨床試験は16歳に満たない人たちは除外されましたが、今、12歳から16歳までの子どもたちへの効果を見ようという研究が進んでいます。ですので、将来的には、情報が出てくるはずです。諮問委員会としては、データがないので、16歳に満たない人は接種を受けないよう推奨しています。しかしWHOとしては、状況に応じて、ワクチンの接種の従事者が、持病がある子どもについて、家族と相談し、新型コロナウイルスに感染することで非常に深刻な病状に陥るリスクがある可能性がある場合には、接種を受けることを選択してもいいと思います。ただ、推奨はしていません。いかなる環境でも、はいどうぞ、と言っているわけではありません」

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    英 病床ひっ迫深刻化 政府 ワクチン接種 急ピッチで進める(1/12)

    2021年1月12日

    変異した新型コロナウイルスの感染拡大が続くイギリスでは、病床がひっ迫する事態が深刻化していて、政府は外出制限などのルールを守るよう強く呼びかけるとともに、ワクチンの接種を急ピッチで進めています。

    イギリスでは、感染力が強いとされる変異した新型コロナウイルスの感染が依然、拡大していて、1日あたりの感染者が6万人を超える日も出ています。

    ロンドンのあるイングランドでは、入院患者が2021年に入ってから40%以上増加して3万人を超えるなど病床のひっ迫が深刻化しています。

    ウィッティ首席医務官は1月11日、公共放送BBCのインタビューで「今後数週間は最悪の時になるだろう」と医療が崩壊する事態に警戒を示し、政府が定める厳しい外出制限などのルールを守るよう強く呼びかけました。

    一方、イギリス政府は、ワクチンの接種を急いでいて、これまでにおよそ230万人が1回目の接種を受け、このうち39万人近くが2回目の接種も済ませたということです。

    ジョンソン首相は1月11日、ワクチン接種のために新たに設置された大規模な施設を訪れ、「2月15日までに1500万人が接種できるようにするため態勢を拡充する」と述べ、70歳以上の高齢者などへの優先的な接種を急ぐ考えを強調しました。

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    WHO「集団免疫」“2021年中に獲得 難しい”(1/12)

    2021年1月12日

    WHO=世界保健機関は、新型コロナウイルスのワクチンの接種をめぐって、世界の多くの人が免疫を持つことで感染が広がりにくくなる、いわゆる「集団免疫」の状態を2021年中に獲得することは難しいという認識を示しました。

    WHOによりますと1月8日の時点で先進国を中心に42か国でワクチンの接種や準備が始まっています。

    WHOの主任科学者、スワミナサン氏は1月11日の定例の記者会見でワクチンを広く世界に行き渡らせるにはまだ時間がかかるとした上で「世界が2021年『集団免疫』を獲得できる水準には届かない」と述べました。

    「集団免疫」の状態になることについて、WHOは1月7日の会見で、正確には分からないものの世界の人口の70%を超える人がワクチンを接種する必要があるという見方を示していました。

    スワミナサン氏は一部の国だけで免疫を持つ人が増えても世界全体の人々を守ることにはつながらないとして、引き続き、感染対策を徹底することが重要だと呼びかけました。

    また、テドロス事務局長は中国政府がWHOの国際的な調査チームを14日に受け入れると発表したことを歓迎し、中国側との連携がスムーズにいくかどうか見守る考えを示しました。

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    ファイザー“コロナ変異ウイルスにもワクチン効果示す結果”(1/9)

    2021年1月9日

    アメリカの製薬大手ファイザーは、イギリスと南アフリカで見つかった変異した新型コロナウイルスについてもワクチンの効果を示す実験結果が得られたと発表しました。
    そのうえで、今回の結果は研究室での実験によるもので、変異ウイルスに対する有効性については引き続き調べる必要があるとしています。

    アメリカの製薬大手ファイザーは1月8日、ドイツの企業と開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、イギリスと南アフリカで見つかった変異したウイルスに対しても効果があることを示す実験結果が得られたと発表しました。

    それによりますと、実験では、新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染する際に重要な役割を果たす「スパイクたんぱく質」と呼ばれる部分の一部がイギリスや南アフリカのものと同じように変異したウイルスを人工的に作り、使いました。

    そしてファイザーのワクチン接種を受けた人の血液を使って、このウイルスが中和されるかどうか調べたところ、従来のウイルスと同等の結果が示されたということです。

    ファイザーは、イギリスと南アフリカの変異ウイルスに共通して起きている変化は「ワクチンに対する耐性につながっていないことを示す結果だ」としています。

    そのうえで、今回の結果は研究室での実験によるもので、まだ外部の専門家による検証を受けておらず、変異したウイルスに対するワクチンの有効性については引き続き調べる必要があるとしています。

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    コロナワクチン 米で約190万人中21人に激しいアレルギー反応(1/7)

    2021年1月7日

    新型コロナウイルスのワクチンを接種したおよそ190万人のうち、アナフィラキシーと呼ばれる激しいアレルギー反応を示した人は21人に上ったとする報告書を、アメリカCDC=疾病対策センターが1月6日、公表しました。追跡できた人は、全員すでに回復したということで、CDCの幹部は「アナフィラキシーは、まれだが、今後も調査を続ける」としています。

    報告書によりますと、製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンを接種した人は、2020年12月23日までに全米でおよそ190万人に上り、性別は62%が女性、34%が男性で、残りは不明でした。

    このうち健康に関する報告は、ワクチンと関係があるか分からないものも含めて4393件、0.2%だったということです。

    また、激しいアレルギー反応であるアナフィラキシーの症状を示した人は21人に上り、このうち17人は、薬や食べ物などで過去にアレルギー反応が出たことがあったということです。

    症状を示した人の年齢の中央値は40歳で、9割が女性、症状が出るまでの時間は2分から2時間半までありますが、7割は接種後15分以内で、その後の経過が追跡できた20人は、全員すでに回復しているということです。

    CDCの幹部は「新型コロナウイルスのワクチンによるアナフィラキシーは、まれだが、今後も安全性の追跡調査を続けていく」として、接種後、一定の時間の健康観察や激しいアレルギー反応への備えのほか、ワクチンの成分にアレルギーのある人は接種を受けないよう注意を呼びかけることが重要だとしています。

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    米医学雑誌 コロナワクチンで激しいアレルギー“10万人に1人”(1/7)

    2021年1月7日

    欧米で接種が進められている新型コロナウイルスのワクチンで激しいアレルギー反応がみられる割合は、これまでのところおよそ10万人に1人だとする記事をアメリカの有力な医学雑誌が掲載しました。こうした安全性に関わる出来事は大規模に接種を行う場合、ほとんど避けられないものだとしたうえで、引き続き安全性を慎重に見極めつつ、情報を公開していく必要があるとしています。

    アメリカのハーバード大学などの専門家は、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンについて、およそ200万人が接種した段階で、激しいアレルギー反応「アナフィラキシー」の症状を示す割合はおよそ10万人に1人だとする総説を「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載しました。

    この中では、こうした情報によって新たなワクチンに対する不安感を抱いた人もいるとする一方、アナフィラキシーの症状はほかのワクチンでもまれに起きるほか、治療が可能で影響が続くこともないとしています。

    そのうえで、安全性に関わる出来事は数百万人に接種していく場合、ほとんど避けられないものだとしたうえで、人々がワクチンを信頼し接種をためらわないよう、安全性を慎重に見極めつつ情報を公開しながら進めていく必要があるとしています。

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    EUがモデルナの新型コロナワクチン 販売許可(1/7)

    2021年1月7日

    EU=ヨーロッパ連合はアメリカの製薬会社モデルナが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて使用するための販売許可を出しました。EUが新型コロナウイルスのワクチンに許可を出すのは2例目です。

    EUの医薬品規制当局のEMA=ヨーロッパ医薬品庁は1月6日、審査していたモデルナのワクチンについて期限を1年間などとする「条件付きの販売許可」を出すよう勧告しました。

    これを受けてEUの執行機関、ヨーロッパ委員会が直ちに手続きを進め、この日のうちに許可を出しました。

    ヨーロッパ委員会が新型コロナウイルスのワクチンを許可するのはアメリカのファイザーなどが手がけたワクチンに次いで2例目で、合わせて1億6000万回分が2021年秋ごろまでに順次、EUの加盟各国に供給されるとしています。

    ヨーロッパ委員会のフォンデアライエン委員長は声明で「人々を守るのに十分なワクチンを手にすることになる」として変異ウイルスも相次いで見つかる中、感染拡大の抑制に期待を示しました。

    ただ、2020年12月末に接種が始まったファイザーなどのワクチンは供給に遅れが出ていてEUや各国政府の対応に批判も出ています。

    また、今回許可が出されたモデルナのワクチンもヨーロッパでの生産能力は限られているとの指摘も出ていて、思惑どおりに接種が進むかは不透明です。

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    イギリス 2種類目 アストラゼネカなど開発ワクチン接種始まる(1/5)

    2021年1月5日

    イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が1月4日、イギリス国内で始まりました。
    アメリカの製薬大手ファイザーなどのワクチンに続き、これが2種類目です。

    イギリスでは、アストラゼネカとオックスフォード大学が開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が、1月4日から始まりました。

    オックスフォードの病院で最初に接種を受けた82歳の男性は「ワクチンによって普通の生活に戻ることができる」と期待を示していました。

    イギリスでは、2020年12月から製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの接種が始まっており、ジョンソン首相は「2種類のワクチンがあるのはすばらしいことだ」と述べました。

    接種は高齢者施設の入居者や施設の職員、それに80歳以上の高齢者などが優先されます。

    2回目の接種は、4週間から12週間の間隔をあけて行われますが、政府は2回目をできるだけ遅くすることでその分のワクチンを1回目にまわし、より多くの人がワクチンの効果を得られるようにする方針です。

    アストラゼネカのワクチンは、2度から8度と通常の冷蔵庫で保存でき、管理しやすいのが利点です。

    政府は、退職した医師や看護師などにも呼びかけて態勢を整え、全国1000か所以上で接種を進めていくことにしています。

    イギリスでは、これまでにすでに100万人以上がファイザーのワクチンの接種を受けています。

    2回目の接種時期の変更で議論

    今回、接種が始まったアストラゼネカのワクチンも、すでに接種が始まっているファイザーのワクチンも2回の接種が必要ですが、イギリス政府は、1回目のワクチン接種が受けられる人をできるだけ増やすため、2回目の接種時期を最も遅い場合には、12週間後にする新たな戦略を打ち出しました。

    1回目の接種でワクチンの効果が一定程度、得られるためとしていますが、イギリス国内で議論を呼んでいます。

    イングランドなど各地域の首席医務官が連名で公表した医療関係者向けの書簡によりますと、世界的にワクチンの供給不足が課題になることを指摘したうえで、2回目の接種を最も遅い場合には12週間後にすることで、その分を1回目の接種にまわし、より多くの人がワクチンの効果を得られるとしています。

    政府の諮問委員会が臨床試験のデータを分析した結果、1回目の接種によっても新型コロナウイルス感染症への有効性は一定程度得られ、2回目の接種によってその効果は長続きするようになるものの、短期的にみれば有効性に大きな違いはないと結論づけたということです。

    そのうえで、感染拡大が続く現在の状況を考えれば、多くの人がワクチンを接種できずに感染し、重症化する危険性があるとして理解を求めました。

    これについて、3週間後に2回目の接種を行う形で臨床試験を行ったファイザーは、ワクチンの効果を最大限にするためには2回の接種が必要で、1回目の接種のあとのワクチンの効果が3週間を過ぎても保たれていることを示すデータはないなどとコメントしています。

    また、イギリスの医師会も2020年12月中に接種した人たちは、すでに2回目の日程も決まっており、直前での予約のキャンセルは心理的に大きなダメージを与えるなどと批判しています。

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    WHO緊急使用リストに初めてコロナワクチン ファイザーなど開発(2021/1/1)

    2021年1月1日

    WHO=世界保健機関は、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを緊急使用リストに加えたと発表し、審査体制が整っていない途上国が自国で緊急使用を承認する際の目安とすることができるようになりました。

    WHOは、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発し、イギリスやアメリカなどで接種が始まっている新型コロナウイルスのワクチンについて、2020年12月31日、緊急使用リストに加えたと発表しました。

    新型コロナウイルスのワクチンがWHOの緊急使用リストに加えられるのは、これが初めてです。

    これによって、審査体制が整っていない途上国が自国で緊急使用を承認する際の目安とすることができるほか、ユニセフ=国連児童基金などがワクチンを必要とする国に届けることもできるようになるということです。

    WHOのシマオ事務局長補は声明で「安全性と有効性が確認されたとするワクチンの評価を日夜続けている。すべての国が必要とするワクチンを確保し、パンデミックを止めることが極めて重要だ」として、今後、さらに複数のワクチンを緊急使用リストに加えていく考えを示しました。

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