国産ワクチンの開発状況に関するQ&Aをまとめました。

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    Q.まだ臨床試験中で安全性は未確認?

    A.
    現在、日本で接種が進む新型コロナウイルスのワクチンについて「臨床試験が終わっておらず、安全性は十分検証されていない」という情報がSNSで拡散されていますが、厚生労働省は臨床試験に参加した人の情報収集を続けている一方、厳格に審査されて、すでに有効性と安全性が確認されたうえで承認されたとしています。

    日本で接種が進むファイザーとモデルナのワクチンは、アメリカなど海外で数万人規模が参加した大規模な臨床試験で有効性と安全性が確認され、アメリカではFDA=食品医薬品局での厳格な審査を経て、緊急の使用許可が出されました。

    その後、日本国内でも数百人規模の臨床試験が行われ、国内で医薬品の審査を行うPMDA=(ピー・エム・ディー・エー)「医薬品医療機器総合機構」が安全性などを確認したうえで、海外での信頼できる臨床試験のデータも踏まえて国の特例承認が出され、現在、接種が進められています。

    医薬品は臨床試験を経て承認されたあとも一般に広く投与されると、臨床試験では見られず、予期していなかった副作用が出ることがあるため、長期にわたって調査が続けられます。

    ワクチンの副反応は、ほとんどが2か月以内に出るとされています。

    新型コロナウイルスのワクチンについては、現在も臨床試験は続けられていますが、ワクチンの効果が続くかどうかや長期間にわたる安全性に関わる情報がないか確認するためで、これまでのところ、安全性に関わる重大な懸念は示されていません。

    (2021年7月29日時点)

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    Q.臨床試験の状況、国内勢は?

    A.
    WHO=世界保健機関のまとめによりますと、2021年4月9日時点で、新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験は、世界各国で87件行われていて臨床試験に入る前の段階にあるものは186件あります。

    臨床試験が行われている87件のうち、▼遺伝子組み換え技術を使ってウイルスのたんぱく質の一部を人工的に作って投与し、体の中でウイルスを攻撃する抗体を作る「組み換えたんぱく質ワクチン」が28件と最も多くなっています。

    続いて▼ウイルスの遺伝子の一部を別の無害なウイルスに組み込んで投与する「ウイルスベクターワクチン」が19件、▼ウイルスを処理して毒性をなくしたものを投与する「不活化ワクチン」が12件、▼人工的に合成したウイルスの遺伝子を投与する「RNAワクチン」が12件、「DNAワクチン」が10件などとなっています。

    日本国内で最初に接種が始まったアメリカの製薬大手、ファイザーなどが開発したワクチンは、「mRNAワクチン」でウイルスの表面にあるスパイクたんぱく質を作るための遺伝情報を伝達する物質、「mRNA」を使っています。

    こうしたタイプのワクチンが実用化されたのは初めてで、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を機に一気に開発が進みました。

    国内のメーカー

    日本国内のメーカーでは、大阪のバイオベンチャー企業、アンジェスが500人規模での臨床試験を行っています。

    この会社のワクチンは、遺伝子ワクチンの一種のDNAワクチンで、人工的に合成したDNAを投与して、ウイルスを攻撃する抗体を体の中で作る仕組みです。

    また、大阪に本社がある製薬大手、塩野義製薬は214人を対象に「組み換えたんぱく質ワクチン」の臨床試験を行っています。

    さらに2021年3月下旬からは、▼製薬大手の第一三共が152人を対象に「mRNAワクチン」の臨床試験を、▼熊本市に本社があるワクチンメーカーのKMバイオロジクスが210人を対象に「不活化ワクチン」の臨床試験を始めています。

    ほかにも▼バイオベンチャー企業のIDファーマが「ウイルスベクターワクチン」の開発を進め、臨床試験の実施を目指しています。

    ただ、日本で行う臨床試験には課題があり、欧米や南米などと比べると感染者の数が少なく、臨床試験に参加した人が感染する可能性が各国に比べると低いため、ワクチンの効果を確かめるのは難しいと指摘されています。

    このため、国内で医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構は、国内で少人数を対象に行う初期段階の臨床試験を終えたあとは、海外で大規模な臨床試験を行うことも選択肢の1つだとしています。

    海外メーカーも国内で臨床試験

    一方、ワクチンを開発している海外の製薬会社も日本国内で臨床試験を行っています。

    日本政府が供給を受ける契約を交わした欧米の3社のうち、アメリカの製薬大手、ファイザーは「mRNAワクチン」について、海外で行った臨床試験の結果と国内で行った小規模な臨床試験の結果をあわせて承認申請を行い、2021年2月に承認されて接種が行われています。

    イギリスの製薬大手アストラゼネカは「ウイルスベクターワクチン」について、2021年2月に承認申請を行っていて今後、審査の結果、承認されると、接種が始まることになります。アメリカのモデルナ社が開発した「mRNAワクチン」については日本の武田薬品が国内で臨床試験を行っていて、2021年3月、承認申請を行いました。

    このほか、武田薬品は、アメリカのバイオ企業、ノババックス社が開発した「組み換えたんぱく質ワクチン」についても国内で臨床試験を行っています。

    また、アメリカの製薬大手、ジョンソン・エンド・ジョンソンの「ウイルスベクターワクチン」についても国内で臨床試験が行われています。

    (2021年4月12日時点)

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    Q.国産ワクチン 開発の現状は?

    A.
    国内の企業も国産のワクチンの開発を進めていて、これまでに4社が人に投与して安全性などを確認する臨床試験を始めていますが、臨床試験を終えて承認申請を行ったケースはなく、海外メーカーに比べると遅れをとっています。

    アンジェス

    大阪のバイオベンチャー企業、アンジェスは、500人規模での臨床試験を行っています。

    開発しているのは遺伝子ワクチンの一種の「DNAワクチン」で、人工的に合成したDNAを投与して、ウイルスを攻撃する抗体を体の中で作る仕組みです。

    この会社は2020年6月30日に国産のワクチンとしては初めて30人を対象にした臨床試験に入り、その後、臨床試験に参加する人数を増やしています。

    塩野義製薬

    大阪に本社がある製薬大手、塩野義製薬は2020年12月16日に214人を対象に「組み換えたんぱく質ワクチン」の臨床試験を始めました。

    会社の担当者が2021年5月、日本感染症学会で行った発表によりますと、これまでのところ安全性に問題はなく、2021年7月以降、抗体が十分できるかどうかなど免疫の働きについて分析を進め、次の段階の臨床試験に進みたいとしています。

    また、2021年5月に開かれた決算についての記者会見では、大規模な臨床試験の実施方法や承認審査の手法など条件が整った場合には、年内の供給も可能になるという考えを示しています。

    第一三共

    製薬大手の第一三共は、2021年3月22日、152人を対象に臨床試験を始めました。

    開発しているワクチンは国内で接種が始まっているファイザー製と同じ、ウイルスの遺伝情報を伝える「mRNA」を使った仕組みです。

    KMバイオロジクス

    熊本市に本社があるワクチンメーカーのKMバイオロジクスも、2021年3月22日、210人を対象に臨床試験を始めました。

    ワクチンはウイルスを加工して毒性をなくした「不活化ワクチン」で、季節性インフルエンザなどのワクチンと同じタイプです。

    会社の担当者が2021年5月、日本感染症学会で行った発表によりますと、2021年秋には次の段階の臨床試験に進めたいとしたほか、現在の審査方法では承認は2023年になる見込みを示していて、前倒しを目指して検討を続けたいとしています。

    IDファーマ

    バイオベンチャー企業のIDファーマは、「ウイルスベクターワクチン」の開発を進め、動物実験を行うなどしていて臨床試験の実施を目指しています。

    海外メーカーのワクチン供給も

    一方、国内の製薬会社などが海外のメーカーが開発したワクチンの臨床試験を行い、供給を目指す動きも出ています。

    武田薬品工業

    製薬大手の武田薬品工業は、アメリカの製薬会社、モデルナが開発した「mRNAワクチン」の国内での臨床試験をすでに行い、今後、承認を受けて国内で供給することにしています。

    さらに、武田薬品工業はアメリカのバイオ企業、ノババックスが開発している「組み換えたんぱく質ワクチン」についても国内で臨床試験を行っていて、国内の工場で製造し供給を行うとしています。

    田辺三菱製薬

    製薬大手の田辺三菱製薬は、カナダの子会社が開発しているワクチンについて、現在、カナダで承認に向けた審査を受けていて、国内での展開も検討しているということです。

    海外メーカーも国内で臨床試験

    海外の製薬会社でも日本国内で臨床試験を行う会社もあり、アメリカの製薬大手、ジョンソン・エンド・ジョンソンは「ウイルスベクターワクチン」の臨床試験を行っています。

    また、アメリカのバイオベンチャー企業の子会社、VLPセラピューティクスジャパンは、RNAが体内で増殖するという「saRNAワクチン」の開発を進め、日本国内での臨床試験の実施を目指しています。

    ただ、日本で行う臨床試験には課題があります。

    ▼欧米や南米などと比べると感染者の数が少なく、臨床試験に参加した人が感染する可能性が各国に比べると低いことや、
    ▼すでに効果が高いワクチンの接種が始まっていて今後、接種を受ける人が増えることもあり、
     正確にワクチンの効果を確かめるのは難しいと指摘されています。

    さらに、有効なワクチンがすでにある中で、新たに開発されるワクチンにどのような優位性があるか示すことが必要にもなります。

    国内の製薬会社からは、大規模な臨床試験を継続した状態での特例承認や条件付きの承認、それに、抗体の値を目安にした承認に期待する考えが示されています。

    国内で医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構は、新たに開発したワクチンの有効性をこれまでと同じ方法で確認するのは難しくなってくるとした上で、承認審査のあり方について海外の規制当局と意見交換したり、開発している企業と相談を行ったりしながら、検討を進めるとしています。

    (2021年5月21日時点)

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