好きなことで世界一になれたら一番すてきだなと思う

緒方良行

スポーツクライミング #やっぱ好きだなぁ

鍛え上げられた筋肉で力強く登るスタイルからクライミング界で「フィジカルモンスター」と呼ばれる緒方良行。その“怪物”がパリオリンピックと同じ形式の「2種目の複合」で行われたワールドカップで2位に入った。

オリンピックの試金石となる大会での表彰台。
それでも大会を終えた緒方から満足感は感じられなかった。

「優勝を目標にきたので2位は悔しい。ボルダリングもリードも得意・不得意に差があるので、どんな課題が出ても確実に優勝できる選手を目指したい」


小学5年生のときにクライミングを始めた緒方は東京オリンピックでスポーツクライミングが採用されることが決まった高校生のときから、オリンピック出場を「特別な存在」としてきた。


しかし、東京オリンピックでは目標の代表入りを逃し「次こそは出場権を取って金メダルを獲得する」とパリオリンピックに向けて強い思いを抱いている。

力強い登りが持ち味の緒方が得意とする種目はボルダリング。制限時間内に課題と呼ばれる壁をいくつ登れるかを競うこの種目で緒方は、2021年・2022年と2年連続でワールドカップの年間総合優勝に輝いた。


「上半身のパワフルな動きで、バンバン登っていくスタイルが僕には合っている。テクニックや足の繊細さも大事だが、昔ながらの腕だけで登るとか筋肉で登るスタイルが自分の強み」


その一方で「圧倒的に足りないのが目に見えて分かる」と自己分析するのがリード種目だ。1発勝負で登った壁の高さを競うリードでは持久力が求められる。

ボルダリングで世界トップレベルの実力を持つ緒方にとって、リードをどこまで底上げできるかは、2種目の複合で行われるオリンピックを狙ううえで大きなカギを握る。

課題の持久力アップに向けて、2022年を「トレーニングのシーズン」と位置づけ、大会がある期間も重点的に強化に取り組んできた。日本にはリード専用の施設が少ないため、海外遠征に合わせて練習場所を見つけては大会の合間に登りを磨いた。

その成果が現れたのが「2種目の複合」で行われた盛岡でのワールドカップ決勝だ。得意のボルダリングで6位と出遅れた緒方は、後半のリードで、驚きの登りを見せた。

磨いてきた持久力を生かして粘り強く高度を上げると、決勝に進んだ8人の中で誰よりも高く登った。一気に巻き返し、2位に入ったのだ。

「リードで挽回できたのはうれしい。トレーニングや大会で培った経験や戦い方が生かせた。リードも世界のトップで戦えるくらいの実力がついているのかなという自信になった」

この大会では日本勢が表彰台を独占するなど、トップレベルの選手がそろう中で、オリンピック代表争いはしれつを極める。それでも緒方はクライミングを楽しむことを忘れない。

「楽しいを第一優先でクライミングを続けたい。仕事のために頑張るとか、そういうふうには絶対なりたくない。自分が楽しめていないと、この競技の魅力は伝わらないと思うので、全力で楽しんで魅力をどんどん広げたい」


そして緒方は最後にこう言った。
「好きなことで世界一になれたら一番すてきだなと思う」

好きなことを楽しみながら強くなる。緒方はその思いの先にパリでの金メダル獲得を見据えている。

スポーツクライミング #やっぱ好きだなぁ