笑顔というツールは本当に欠かせない

瀬立モニカ

パラカヌー

東京パラリンピック、カヌーの日本代表に内定している瀬立モニカ。
実力もさることながら、明るく笑って多くの人を笑顔に変える。
そういう笑顔が魅力の22歳だ。
そこには実は深い思いがあった。

「障害がある人たちが、みんなと普通に対等に接することができることを伝えたい。
自分自身が人とコミュニケーションを取ることで、車いすに乗っているだけで人間的には普通じゃないかって感じ取ってくれる人たちが少しでも増えたらいいな」

2019年12月から合宿を行っている拠点、沖縄県大宜味村の人たちも瀬立の笑顔にすっかり魅了された。
おばーたちからは、サーターアンダギーやのど飴など日々いろいろな差し入れが届く。
障害者とこれまでほとんど接したことがないというおじーも、今や熱心に瀬立を支える1人になっている。
車いすを利用する瀬立のために宿泊する施設の前に、木製のスロープを手作りで完成させた。
車いすのタイヤがはまらないようにと施設の前の道路脇の溝にはゴムシートもひいた。
夜になるとガジュマルの木の下で始まる宴会。瀬立も自然とその輪に入り、みんなと会話を楽しむ。

「幸せです。毎日」

高校生の時に事故で胸から下の筋肉が動かなくなった瀬立。
その瀬立が「笑顔」でいられるのは母、キヌ子さんからの「笑顔は副作用のない薬」という言葉に支えられてきたからだ。

「朝おはようから始まって、おやすみって言うまで声かけをすることで、村の人ともとても仲良くなれたという実感はありますし、ツンとしている態度で合宿をしていたら、自分たちだけ満足する合宿になってしまう。
笑顔というツールは本当に欠かせない」

新型コロナウイルスの感染拡大で東京パラリンピックは1年延期。
地元の東京には緊急事態宣言が出された。
それでも瀬立は笑顔で前を向く。

「練習する時間が増えた、より高みを目指せる時間が増えたと、すごく前向きに捉えています。
金メダル獲得を目指して、自分のやるべきことをただただ毎日こなす。
その毎日の積み重ねが未来を作る」

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