“スポーツには人を結び付ける力がある。すべてのアスリートが“競い合える”日を待ちわびる

オクサナ・マスターズ

パラクロスカントリースキー/パラバイアスロン

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に世界が揺れる中で開催された北京パラリンピック。ウクライナへの思いを発し続けた選手がいる。
オクサナ・マスターズ。クロスカントリースキーとバイアスロンに出場したアメリカ代表の32歳だ。

開幕3日前の公式練習でマスターズのヘアバンドやビブスの胸にはウクライナの国旗の色をハートにかたどった模様があった。

「私の心と魂はウクライナとアメリカの両方にある。いつもいつまでもウクライナの味方」

そうSNSに記したマスターズの生まれ故郷はウクライナだ。1989年にウクライナで生まれたマスターズは7歳のときにアメリカ人女性の養女になり、アメリカに移住した。両足の長さが異なる障害などの影響で9歳と14歳のとき片足ずつ切断する手術を受けふだんは義足で生活している。

自転車やボートなどでも活躍し夏と冬のパラリンピックで金メダルを獲得している、世界的なアスリートだ。そのマスターズは、大会中も繰り返しウクライナへの思いを口にした。

「私が獲得した金メダルは幼い私に闘う意欲と、困難な状態に立ち向かう力を学ばせてくれたウクライナのためのものだ。ウクライナの子どもたちの未来のためのものだ。その思いを表彰台に立って表現する」

生まれ故郷への思いを胸に臨んだ北京大会では、3つの金メダルを含む7つのメダルを獲得した。マスターズは表彰台に立つたびにパラリンピックの持つ意義やスポーツの価値を発信し続けた。

「スポーツには人を結び付けるすばらしい力がある。そして団結することで自分たちの力以上のものを表現することができる」

そして、軍事侵攻によって、大会への参加が認められなかった選手たちのことを思い語った。

「私はロシアとベラルーシの出場できなかった選手たちにも心を寄せたい。すべてのアスリートに機会が与えられるべきだが、そうならなかったことは不幸なことだと思う。平和が訪れ、すべてのアスリートが“競い合える”日を待ちわびている」

パラクロスカントリースキー/パラバイアスロン