悔しい思いは自分だけじゃない

大野均

ラグビー

「悔しい思いは自分だけじゃない」

ラグビー日本代表として歴代最多の98試合に出場した鉄人・大野均が、引退会見で新型コロナウイルスで大きな影響を受けている高校生にあてたことばだ。
大野は、2015年のワールドカップで『世紀の番狂わせ』と言われた南アフリカ戦の勝利に貢献した。身長1m92㎝の体格をいかしてスクラムやラインアウトの核となり、髪を振り乱して走り、激しくぶつかり、倒れても起き上がって、また激しくぶつかる。42歳で現役を引退するまで、信条の『灰になってもまだ燃える』を体現してきた。

実は、高校時代に大野が打ち込んでいたのはラグビーではなく、野球だった。甲子園を目指し、人一倍練習に励んだがレギュラーになれず、その悔しさをバネとした。

「この状況で本当に悔しい思い、切ない思いをしている高校生はたくさんいると思うが、そういう思いをしているのは自分だけじゃない。周りにもそういう思いの人たちがいっぱいいることを胸に刻んで過ごしてほしい」

大学から始めたラグビー。パスなどの技術は追いつかなくても、世界の強豪に何度打ちのめされても、決して立ち止まらず、今、自分にできること、チームに貢献できることにこだわって道を切り開いてきた。

よどみない大野のことばには、困難な状況でこそ大切にしたい要素がにじんでいる。そして、自身の経験を重ねて小さな選択肢も紹介した。

「ラグビーはパスが下手でもキックができなくても、自分が得意なもので勝負できるポジションが必ずある。少しでも興味を持ったら、少しでいいのでラグビーに触れてほしい」

日本ラグビー界の新たな鉄人が、再び別の競技から現れることも願って……。

ラグビー