自分には相撲しかないと思って生きている。それが情熱につながっている

佐田の海

大相撲

2022年5月の夏場所、前頭12枚目で臨んだ佐田の海は持ち味の速攻と土俵際の粘りで白星を積み重ねた。
新入幕の場所以来となる8年ぶりの二桁勝利、11勝をあげて優勝争いを盛り上げた。

「相撲界に入って20年、積み重ねてきたものが出ている。35歳のいまがいちばん力が出て強い」

若い頃のように稽古場で激しい稽古を行うことは難しくなっている。
しかしその分、体の使い方を考えるようになり2年前にある気付きがあった。

「すり足をしていてしっくりこないなと思ったとき、足がかたいのかなという気付きがあった。そこからどうやったら足の裏が柔らかくなるか考えた」

土俵の砂をつかむ足の裏の感覚に注目した。
特殊な器具を使って足の指1本1本を動かすトレーニングを始めると、これまでと全く異なる手応えがあった。

「絹ごし豆腐のような感覚。足の裏が柔らかいとただ立っているだけでも自分の足が土俵の砂を勝手に包んでくれるような感覚があって、より深く土俵をつかめる」

このトレーニングを1日1回、場所中は大いちょうを結ってもらいながら続けている。
15歳で入門してから20年、いまでも相撲への探究心はつきない。

一日中、寝るときでも相撲のことを考えている。幕内力士として活躍した父への憧れ、力士になりたいと願った子どもの頃の思いが変わらずあり続けている。

「幼稚園の頃からずっと力士になりたいと言い続けてきて、15歳になったときにそれがぶれることがなかった。もし新弟子検査で引っ掛かってなれなかったらどうしようと考えたときに、何も思いつかないくらい相撲しかなかった。いまもし相撲というものがなくなって何かしたいものがあるかと聞かれても何も出てこない。自分には相撲しかないと思って生きているので、それが情熱につながっている。1分1秒でも長く、相撲のことを考えられたらいい」

衰えない相撲への情熱、土俵での真剣勝負が何よりも楽しい。

「勝ったときの喜びというのは何にも変えられないものがあって、こんなに気持ちいいものはない。勝ち名のりをうけて、水をつけて、花道を下がるときのあの気持ちよさは普通の人生じゃ味わえない」

今の目標は三役力士になること。
元小結だった父の背中を追いかけている。

「やめるまでにはそこが、いちばんの目標。35歳になっても相撲に集中できるというのはそこが1つモチベーションになっている。そこを目指して頑張っていきたい」

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