【画像を選択すると動画をご覧いただけます】
ブータンは「GNH=国民総幸福」というユニークな指標に基づいて政策が決められてきました。しかしコロナ禍以降、経済の低迷とインフレで難しい課題を抱えています。
国外からの観光客 3分の1に
豊かな自然や文化が残り、国民の幸せを追求する国として知られるブータン。しかし、主力の観光業がいま苦境に立たされています。首都・ティンプー中心部の広場を訪れると…
ブータンは、コロナ禍で停止していた国外からの観光客の受け入れを2022年に再開しました。しかしその数はコロナ前の3分の1にとどまっています。
観光客が減った要因の1つは「観光税」の引き上げです。1日当たりの観光税は2022年には65ドルでしたが、一時は3倍程度の200ドルに設定しました(現在は100ドル)。
旅行者の著しい増加を避けつつ外貨を獲得するねらいでしたが、客足の戻りに影響を与えたと指摘されています。
ホテル経営者
「コロナ禍が終わり観光客を受け入れる準備を進めてきたのに、人を雇えない。宿泊業者が多額のローンを抱えているからだ」
国外に移住する人が増加
観光ガイド10年以上のベテランで、日本にも留学経験があるドルジ・ノルブさん(35)はいま、海外に教育と就労の機会を求めてオーストラリアに行く計画をたてています。
観光ガイド ドルジ・ノルブさん
「昔はたくさん仕事があったのに、いま仕事がなくなった。海外の場合は、収入はちょっといいみたいだ」
地元メディアによると、国外に移住する人の数は、2022年の1年間で人口の2%にあたる1万6000人余りに増加したといいます。
インフレが生活を圧迫
さらにインフレが国民の生活を圧迫しています。背景には、食料などを多く輸入する隣国インドの物価高や、世界的なエネルギー価格の高騰があるとされています。
市場で買い物をしていた人は次のように話しました。
投資呼び込みへ新都市を建設
厳しい国内経済をどう立て直すのか。政府が取り組むのが、人々の幸福を重視しながらも、経済成長との両立を目指す政策です。
それが、新しい都市づくりです。物流が多いインドとの国境近くの1000平方キロメートルの広大な土地に国際空港や鉄道を建設し、国外からの投資を呼び込みます。
あわせて、寺院や、めい想のための施設なども整備し、自然や固有の文化との共生を目指します。
「幸福は経済と切り離せない」
2024年1月に就任したツェリン・トブゲイ首相は、雇用創出を柱としつつ、働く人の精神的な豊かさも尊重したいとしています。
ツェリン・トブゲイ首相
「幸福は経済と切り離して手に入れることはできない。新都市はブータンに進出する企業にとって、よい投資環境となり、ブータンにとっても、やりがいのある価値ある仕事を生み出す」
経済を発展させながらブータンならではの文化や価値観を守り、国民の幸福を追求できるか、注目されます。
(ニューデリー支局 山本健人)
【2024年4月11日放送】
あわせて読みたい