ブータンのマツタケ 秋の味覚で外貨獲得

秋の味覚マツタケ。2021年に日本に輸入されたもののうち約70%は中国産ですが、実はヒマラヤの王国ブータンからも輸入されています。

日本向けが重要な輸出品に

人口70万人余りの王国ブータンでは、生活必需品などを輸入に頼っていることから外貨獲得が重要です。

その手段の一つが農産品の輸出で、日本向けのマツタケも重要な輸出品です。

ゲネカ郡の山あいで、早朝からマツタケ採りが行われるというので、30年以上マツタケの収穫をしているサンゲイ・ダワさんに同行させてもらいました。

サンゲイ・ダワさん

サンゲイさんは険しい山道をどんどん登っていきます。歩くこと40分、この日初めてのマツタケを見つけました。

サンゲイ・ダワさん
「朝早くからこんなマツタケが採れるなんてきょうはついている。たくさん収穫できると思う」

取材した日、サンゲイさんは早朝から夫婦で3時間ほど探し、10本以上のマツタケを収穫。業者に買い取ってもらいました。

輸出額10年で10倍もコロナで大幅減

もともとブータンではマツタケの香りが好まれずほとんど食べられていませんでしたが、日本では高級食材だと知られるようになって収穫が本格化しました。

一方、採れるマツタケには限りがあるため、ブータン政府は保護にも力を入れています。7.5センチ以下の小さいマツタケは採らないなど、収穫の注意点を守るよう住民に求めています。

7.5センチ以下のマツタケは採らず保護している

サンゲイさんたちのもとを訪れた取引業者は「木を切ってはいけない。マツタケを採ったあとは土をしっかりかぶせるように。とても大事なことです」と呼びかけていました。

マツタケの輸出額はコロナ禍前の10年間で10倍に増加しました。ただ2020年は新型コロナの影響で航空便が減ったため大きく減少。21年もこれまでの水準には戻っていません。

外国人旅行者受け入れ再開 販売に期待

ブータンでは22年にかけて航空便が徐々に回復してきました。9月からは事実上停止していた外国人旅行者の受け入れも再開されました。

サンゲイさんは、今ではマツタケの売り上げが年収の3割以上を占めています。日本からの観光客にマツタケを販売できるようになることを期待しています。

サンゲイ・ダワさん
「私はこの仕事(マツタケの収穫)が大好き。マツタケのシーズンに多くの人にブータンを訪れてほしい」

ブータンのマツタケを使っている日本の料理店では、色合いや香りなどが日本産と似ていると評判もいいようです。

ブータンを訪れた日本人は3年前には約3000人でしたが、コロナ禍で激減したということです。これから本格的に観光需要が回復すれば「ブータンへ行ってマツタケを食べよう」ということになるかもしれません。
(ニューデリー支局 森下晶)
【2022年10月22日放送】
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