水道が維持できなくなる?新技術に活路

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水道事業に携わる全国の職員の数は1980年には7万3556人いましたが、2021年には4万7174人となり、ピークだった80年代から減少が続いています。さらに自治体の財政難や作業員の高齢化などで、各地で事業を継続することが難しくなっています。

いま、これまでとは全く違った手法を取り入れることで、事業の継続を目指す動きが生まれています。

住民がメーター検針 実証実験始まる

栃木県足利市では2024年3月から、水道メーターの検針を住民自身で行う実証実験が始まりました。モニターは市の職員の世帯です。

スマートフォンのアプリでメーターを撮影し…
市の管理サイトに送信する

メーターには識別番号と位置情報が登録されていて、別のメーターの数字を送るなどの不正はできません。

実証実験で検針を行った住民の一人
非常に簡単かなと思う。1分もかからずに多分できるんじゃないか

足利市上下水道部 大竹一弘 部長
今までのやり方にとらわれない形で、できる限りのDXを取り入れて水道の効率化を図っていかないと、水道事業を安定的に継続していくことはかなり難しい時代にはなってくる

水道管が老朽化 耐用年数超えが2割

水漏れ被害への対策も重要です。日本水道協会によると、全国で使われている水道管は2割以上がすでに耐用年数を超えていて補修や点検が急務になっています。

水道管の点検は、熟練の担当者が聴診器のような器具を使って、地中の音を頼りに見つけ出さなければならないため、膨大な時間がかかります。

人工衛星で水漏れエリア特定 職員の調査範囲は5分の1に

そこで大分県では今、この作業に「人工衛星」を活用した技術を取り入れています。

人工衛星から地中まで届く特殊な電波を反射させて、水漏れの可能性があるエリアのデータを取得するのです。

データはイスラエルのIT企業のAIによって解析され、水漏れがあるエリアが半径100メートルの範囲で特定されます

点線で囲まれた半径100メートルのエリアに水漏れの可能性がある

水道水は電波の反射が地下水とは違うため、水が漏れだしているエリアを特定できるといいます。1分間当たり100ccの水漏れも見逃さないそうです。

水道水と地下水で電波の反射が異なることで箇所を特定

水道管の調査サービスを提供する会社 岸本賢和 社長
この技術を通して、より効率的に社会インフラを維持できる状況をつくることに貢献していきたい

大分県では、このシステムの導入で水漏れの調査範囲を5分の1以下に減らすことができたといいます。取材した日は水道管を点検する担当者が、人工衛星のデータが示した水漏れエリアに向かい、調査を行っていました。

大分県環境保全課 松原輝博 課長補佐
県内水道管の老朽化が進んでおり、耐震化の取り組みも十分ではない。今回のような先端技術の活用を生かしながら事業効率化を働きかけていきたい

水道事業は地道な作業の上に成り立っています。デジタル技術を活用し、これまでの慣例にとらわれない発想で維持していくことが求められているのかもしれません。
【2024年3月18日放送】
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