建設業 人手不足に技術で挑む

深刻な人手不足に直面している建設業界では、革新的な技術を導入することで事態を打開しようという動きが起きています。一体どんな技術なのでしょうか?

埋設物の破損を防ぐ「2次元コード」

重機のアームに2次元コードが貼られている

札幌市の建設会社「岩田地崎建設」などが、人手不足対策にもつながるとしてことし開発したのが、重機のアームに貼られた2次元コードを活用した技術です。

運転席に設置したタブレット端末でこの2次元コードを読み取ると、アームがどの高さで動いているかなど正確な位置が割り出せます

タブレット画面を見ると水道管とアームの位置が分かる

アームの位置情報に加え、地中のどこに水道管が埋まっているかなどのデータをあらかじめ入力しておき、それらのデータを照らし合わせて作業を行う仕組みです。

水道管などに近づきすぎると、アラームとともに文字で警告が出るので避けることができます。

工事中に水道管などの埋設物を傷つける事故は、2022年の1年間に全国で181件発生し、2年連続で増加しています。こうした事故が起きると補修が必要になり、工期の延長につながります。

事故を防止することで余計な人手を割かなくてもよくなります

札幌市の建設会社 岩田幸治 副社長
「作業の効率化・生産性の向上といったところに寄与できるものと手ごたえを感じている」

かすれた白線 「スマホカメラ」で把握

スマートフォンを用いた新たなシステムを開発することで、労働力の削減に取り組む会社もあります。

広島市の建設会社「宮川興業」は、薄くなった路面の白線を塗り直す作業を請け負っています。以前は、補修が必要な箇所を調べるために担当者がそのつど車を停めて写真を撮っていました。

広島市の建設会社 香川 良 工務課長
「従来は3人~4人体制で(作業)していた。1キロの調査をするにも1時間くらいかけてやっていた」

新たなシステムで使うのはスマートフォンのカメラです。道路を走るだけで撮影することができて、作業を1人で行うことが可能になりました。

さらに、画像を取り込むと白線がどのくらいかすれているかをAIが解析し、色分けして表示します補修が必要な箇所を割り出すための作業日数は4分の1ほどに減ったといいます。

黄色・赤の箇所は塗り替えが必要

このシステムはこれまでに、全国の100社以上の建設会社などに導入されています。

香川 工務課長
「実際に担い手不足解消になっているのを痛感しているので、いろんな技術が普及すればいいと思う」

建設業界では2024年4月から時間外労働の規制が強化されることから、人手不足が一層深刻化するおそれもあると懸念されています。こうした技術が各地の建設現場に普及して人手不足の解消につながることが期待されます。
(札幌局 波多野新吾、広島局 橋本奈穂)
【2023年10月6日放送】
あわせて読みたい