どう確保?建設業の担い手

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建設業界は、働く人の高齢化などで将来の担い手不足が懸念されています。若い人材の確保に向け、専門的な書類作成の業務を担う新たな職種を導入して働き方改革を進めたり、高校の建設系学科の教育や生徒の募集に地域の建設業界が協力したりするなど、取り組みが始まっています。

書類は「建設ディレクター」技術者は「現場に集中」

佐賀市にある従業員40人ほどの建設会社で働く諸石千佳さんは、「建設ディレクター」の仕事をしています。図面の修正や施工写真の管理など、専門的な知識が必要な書類作成を行っています。

図面修正や施工写真の管理などを担う

建設ディレクターは6年前に誕生した民間資格で、48時間の講座を修了して得られます

中小の建設業ではこれまで、書類作成の多くを現場の技術者がみずから行っていました。書類作成は仕事の6割に上るとも言われ、長時間労働の要因にもなってきました。

現場技術者 納冨孝昭さん
「昼は現場。夜は帰ってから書類。徹夜も、昔は当たり前のようにやっていた」

これまで現場技術者が書類作成も行っていた

この建設会社では3年前に2人が建設ディレクターの資格を取り、技術者の指導を受けながら経験を積んで、今では書類作成の7割ほどを手がけています。

それによって技術者は現場の仕事に集中できるようになり、残業も月10時間程度にまで減少しました。若手の離職にも歯止めがかかったといいます。

建設ディレクター 諸石千佳さん
「仕事を頼まれることがいちばんうれしい。力になれていることが」

建設会社 江頭一樹 社長
「現場監督の離職防止を何とかしたい。若い子が入りやすい環境整備になっていくのかなという期待はある」

建設業を巡っては、2024年4月に時間外労働の罰則付き規制が始まることになっていて、建設ディレクターを導入する動きが全国の約500社に広がっているということです。

地元業界が要望 復活した建設系学科を支える

復活した「建築デザイン科」

担い手の育成を地域の建設業界が支援する動きもあります。三重県立伊賀白鳳高校です。少子化などの影響で3つの高校が統合され2009年に開校したこちらの高校。それまであった建設系の学科は一部定員割れしたこともあり廃止されましたが、2019年、地元建設業界の要望で「建築デザイン科」として復活しました。要望の背景には、将来の担い手不足への危機感がありました。

建設系学科復活の要望を取りまとめた 三重県建設業協会伊賀支部 和田晴男 前支部長
「いま建設に関わっている方々は本当に高齢化が進んでいる。あと10年たったら何か災害などが起きた時に仮復旧ができるかどうか」

10年前の台風で国道に被害 要請を受け地元業者が対応にあたった

要望に対しては当初、再び定員割れしてしまわないか?という懸念も示されました。そこで、業界側は機械や指導者を提供して実習の場を設けたり、中学生向けの現場見学会を行ったりするなど、教育や生徒の募集での協力を打ち出しました。これまでに5回新入生を迎えましたが、定員割れは起きていません。

2022年に卒業した第1期生のうち、6人が地元や近隣の建設関連の会社に就職するなど、成果をあげています。

地元の建設会社に就職した建築デザイン科1期生 桝田颯斗さん
「難しいことだらけで覚えることばかりだが、この地域に少しでも貢献できるように頑張っていきたい」

地元の業界の要望を受けての建設関連の学科やコースの設置は、最近では新潟県立塩沢商工高校や、神奈川県立横須賀工業高校といった例があります。

若い人たちが魅力を感じる職場を実現し、将来の担い手の確保につなげていこうという取り組みが、今後も広がっていきそうです。
【2023年4月21日放送】
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