インドの生乳生産量は年間2億トン余りと日本の30倍近くに上り、世界1位です。今後もさらなる成長が見込まれる巨大な牛乳市場へ、日本からも現地での生産を通じて参入を目指す動きが始まっています。
小規模酪農多く品質ばらばら
人口が14億を超えるインドでは、宗教上の理由などから肉を食べない人が多く、牛乳は貴重な栄養源として需要の拡大が続いています。
しかし、インドの酪農家のほとんどは牛を数頭しか持たない小規模経営です。飼育方法がばらばらで品質に差が出てしまうのが課題でした。
品質管理にITを 商社が事業化目指す
そこに注目しているのが、日本の大手商社です。2023年12月に現地のNGOやスタートアップ企業と連携し、牛乳の栄養価を測定できるIT機器を使って「品質管理のデジタル化」に取り組み始めました。
この機器を農村に導入して質の高い牛乳づくりを支援することで、酪農産業の底上げを図ろうと考えています。
丸紅インド会社 若森 進 社長
「生産性がまだ低くて。ただ課題と言うのは裏返せばそこにビジネスチャンスがあるわけだから、現場経験を積み、最終的に事業化の検討を進めていきたい」
付加価値高い牛乳を 日本の牧場が始動
より付加価値の高い牛乳を生産することでインドに参入しようと動き出した日本人もいます。
秋葉秀威さんは千葉県で130年以上の歴史がある牧場を経営し、搾りたての牛乳や乳製品を販売しています。事業拡大を目指すなかでインド進出をチャンスと捉えました。
成田ゆめ牧場 秋葉秀威さん
「牛乳を飲んでくれる、消費してくれる人の数も(インドは)たいへん魅力的なマーケットと感じている」
秋葉さんはインド南部の牧場の一部と乳牛を借り受け、地元の牧場関係者に、実証的に生乳づくりを指導していきます。
秋葉さんは新たな販路の拡大にも乗り出しています。取材した日は、インド人実業家などを招いた試食会を企画。生乳を使ったスイーツを食べてもらい、将来性をアピールしました。
試食会の参加者の1人は「どれも品質が最高によかった。インドではいま健康志向が高まっているため、低脂肪の商品なども需要があると思う」と話していました。
秋葉さん
「この先の(需要の)広がりというのも感じられたので、そこは本当に安心した。まだ誰も前に進めたことがない道だと思うので、しっかり一歩一歩確かめながら前に進めていきたい」
インドでは所得が一定以上ある中間層が20年後には人口の約6割にまで増えるという推計もあるということで、高品質の牛乳の提供を通じて日本企業の進出がどこまで進むか、注目です。
(ニューデリー支局 山本健人)
【2024年2月29日放送】
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