牛乳「1滴でも飲んで」 酪農家・メーカーの模索

牛乳の価格(1リットル当たり、東京都区部)は2022年夏まで210円台で推移していましたが、その後大幅に上昇し、23年8月は255円になりました。

消費者の買い控えが懸念される中、酪農家や乳業メーカーは少しでも牛乳を飲んでもらおうと懸命に取り組んでいます。

イベントやキッチンカーで消費訴え

「『牛乳の日(9月2日)』、かんぱーい!」

生乳の生産額が全国2位を誇る栃木県那須塩原市。「牛乳の日(9月2日)」に牛乳の消費を喚起しようとイベントが開かれ、来場者に牛乳が無料でふるまわれました。

会場でひときわ目を引いたのが、乳牛をモチーフにしたキッチンカーです。栃木県の酪農家の団体が消費者に直接働きかけようと導入しました。

牛乳にイチゴや抹茶シロップを入れたドリンクをふるまった

イチゴシロップ入りの牛乳ドリンクを飲んでいた女の子は「イチゴの味もするけど牛乳の味が多い」と話し、その父親は「暑い時に冷たい牛乳を外で飲むのがいい」と笑顔でした。

酪農家は餌代や燃料費の高騰などで厳しい経営を強いられています。このキッチンカーは消費者に少しでも牛乳を飲んでもらおうと各地を巡回しています。

栃木県酪農協会 臼井 勉 会長
「酪農を50年やっているが、初めてこういう経営が厳しい状態。とにかくコップ半分、1滴でも多く飲んでくれとお願いしている」

「とろみつき牛乳」でニーズ開拓

牛乳の新たなニーズを開拓しようという動きも起きています。高知県南国市で乳業メーカー「ひまわり乳業」を経営する吉澤文治郎さんは取り引き先と雑談する中で、高齢者向け商品の開発を思い立ちました。

父親が誤えん性肺炎で亡くなる経験をしたことも、新商品の開発へ背中を押しました。

完成した商品は一見ふつうの牛乳ですが、とろみがついていて、誤えんのリスクを減らすことができます。

飲んでみると、飲むヨーグルトとふつうの牛乳の中間ぐらいのとろみが。
とろみ剤

牛乳は市販のとろみ剤を入れても混ざりにくいのが課題でしたが、とろみ剤の種類や入れるタイミング、温度を工夫することで解決しました。

完成した商品を高齢者施設で試飲してもらいました。

とろみは「いい(感じ)。このくらい」

このほかにも「飲みやすい」、「簡単に変えればそれはいい」といった感想が出ていました。

メーカーは今後の需要拡大を見込んで、とろみつきの乳飲料の品ぞろえを増やしていく予定です。

乳業メーカー 吉澤文治郎 社長
「近所のスーパーマーケットの牛乳売り場に、そういうもの(とろみつき牛乳)が置いてある。そういう状況をつくるのが、いちばんいいんじゃないか」

牛乳の値上げは家計に響きます。一方で長期的に牛乳離れが進む中、酪農家や乳業メーカーを守り、牛乳の生産を守るという視点が求められています。
(宇都宮局 村松美紗、高知局 奥村敬子)
【2023年9月8日放送】
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