迫る2024年問題 トラック業界が“常識”見直し

トラックドライバーの時間外労働の規制が4月から強化されます。輸送力不足が懸念される物流の「2024年問題」に備え、これまでの業界の“常識”を見直す動きが起きています。

ドライバーを積み込み作業から解放

大手宅配会社は車体と荷台を分離することができるトラックの導入を進めています。トラックは通常、車体と荷台が固定されていますが、荷台を分離することでメリットがあるといいます。

物流業界には荷物の積み込みをドライバーが行う商習慣があり、ドライバーの長時間労働につながっていました

車体と荷台を切り離したことで、ドライバーが到着するまでの間に別の従業員が荷物の積み込みを行えるようになったのです。

荷物の積み込みは別の従業員が行い…
ドライバーの負担を軽くする

このトラックではドライバーは荷台の入れ替えをするだけで済み、これまで2~3時間かかることもあったという作業時間が20分ほどに短くなったそうです

トラックドライバーの一人は「自分で積み込みをしなくていいぶん、体力的にも時間的にも助かっている」と話しました。

この大手宅配会社は今後、この車両を増やして、配送を委託している協力会社にも広げたいと考えています。

大手宅配会社 輸送ネットワーク部 西井茂 担当部長
ドライバーの労働時間を短くするところでは(この車両を)1つのアイテムと考えて、業界全体で促進していただければ、いろんなところで活躍できる車両なのかなと考えている

「積載率平均38%」を量子コンピューターで効率化

効率的な輸送として広がりつつある共同輸送のかたちも進化しています。神奈川県相模原市の物流倉庫では、飲料メーカーや自動車部品メーカーなど業種を超えた約40社の荷物を集めて、神奈川と兵庫の間で共同輸送を行っています。

これを取りまとめている会社が使っているのが、高速計算が可能な「量子コンピューター」です。

形や重さ、輸送期限などが異なるさまざまな荷物を組み合わせると、その数は数十万通りに及びますが、量子コンピューターはわずか40秒で最適な組み合わせのプランを見つけだします。トラックのどの場所に積み込めばいいかなどを教えてくれるのです。

「日用品は1番」など、どの部分に荷物を積めばいいかを示す

トラックにどれだけ荷物が載っているかという割合を示す積載率は平均で38%(国土交通省調べ)とされています。しかしこの共同輸送を行う会社では、このシステムを導入したことで積載率が平均65%に上昇しました。

取材したトラックの積載率は「86%」だった

輸送を効率化する共同配送だけではなく、トラックを2台つなげる「ダブル連結トラック」を使うことで、一度に多くの荷物を運ぶことができるようにしました。

ダブル連結トラック

輸送の効率化が進めば、物流業界のドライバーの収入増加にもつながると考えています。

共同輸送を行う会社 梅村幸生 社長
生産性を上げた部分を例えばドライバーの賃金に還元することで、『トラックドライバーを目指したい』という方も増えていく。物流の課題を乗り越えていく輪をもっと広げていきたい

宅配サービスを利用する消費者側も、「置き配」を選んで再配達を減らすといった工夫が求められています。
【2024年2月28日放送】
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