バス120年も… 迫る“2024年問題”

120年前の1903年(明治36年)9月20日は、日本で初めてバスの運行が開始された日と言われ、業界団体は9月20日を「バスの日」としています。

しかしバス会社は今、厳しい経営を強いられています。大阪府の4つの市町村を中心に運行している「金剛バス」は、運転手の不足を理由に、ことし12月に路線バス事業を廃止することを明らかにしました。

そして、運転手不足にさらに拍車をかけるとされているのが「2024年問題」です。運転手の労働環境を改善するために24年4月から労働規制が強化され、バスの運転手の年間の労働時間の上限が3300時間に引き下げられます。また、退勤から次の出勤までの休息時間は今より長くなり、11時間を基本として最低でも9時間確保することを求められます

この問題にどう対応するかが、各地のバス会社の課題となっています。

「このままではヤバい」 社を挙げて運転手採用

神奈川県の大手バス会社「京浜急行バス」は、2024年度の労働規制強化で最大数十人の運転手不足が懸念されています。

そこで23年夏から運転手の採用に社を挙げて乗り出しました。訴えたのは「人財不足で、このままではヤバい」こと。率直なことばで厳しい現状を伝えました。

バス会社のポスター

会社は、全600両余りの路線バスの車内に運転手募集のポスターを掲示しました。

さらに、親会社の列車の車内広告すべてを、バスの運転手募集のポスターで埋めるというキャンペーンも打ちました。

こうした取り組みもあり、参加者がほとんどいなかった日もあったという採用説明会に、多い時で十数人が来るようになりました。

神奈川県のバス会社 人事労務課 玉井純 課長補佐
「(人手不足が)首都圏でも厳しい状況にあることを知っていただきたいというねらいがあった。また新しい施策を考えていきたい」

運転業務は勤務時間の一部だけ 負担軽減で人材確保

働き方を変えることで運転手を確保する取り組みも始まっています。愛媛県のバス会社「伊予鉄バス」は、コロナ禍で採用を控えたこともあって運転手不足に陥ったことから、3年前に新たな勤務制度を始めました。

それまでバスの運転手は終日乗務するのが基本でしたが、勤務時間の一部だけ運転する業務にあてるようにしたのです。

この制度を利用している真田誠司さんは、乗客が多い朝の通勤時間帯だけ路線バスに乗務しています。そして運転手の仕事以外は、行政向けの書類の作成などの事務作業を行っています。

バスを運転する真田誠司さん
運転手の仕事以外に事務作業をする

真田さんはかつて一日中バスを運転していた時より早く帰宅できるようになり、体の負担が減ったといいます。「帰ってから家族と過ごす時間が増えたりとか。時間を有効活用できるようになった」と話しました。

この会社では、ほかにも朝だけの短時間勤務など多様な働き方を認め、運転手の離職の防止や新たな採用につなげようとしています。

日本バス協会会長でもある伊予鉄グループの清水一郎社長は、バスの運転手の確保は全国共通の課題だと訴えています。

日本バス協会の清水一郎会長

日本バス協会 清水一郎 会長
「2024年問題は物流の問題として捉えがちだが、これは働き方の問題だが、バスのほうが厳しいんじゃないかというぐらい深刻だ。われわれとしては、この問題を喫緊の課題だと考えている」

外国人の人材受け入れ検討も

国も対策に乗り出しています。例えば国土交通省は、外国人の人材を受け入れるための在留資格である「特定技能」に、バスなどの「自動車運送業」を追加することを検討しています。

公共交通機関を今後どうしていくのか、行政や、私たち利用者を含めてもっと議論しなければならない時期に来ています。
(首都圏局 後藤茂文、松山局 伊藤瑞希)
【2023年9月20日放送】
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