1台2役!バスや乗り合いタクシーが進化

地域の人たちの移動を支えるバスや乗り合いタクシーを高齢者の日々の買い物にも役立てて、「1台2役」で活用しようという試みがいま各地で始まっています。

路線バスの後部は百貨店

北海道・帯広市を走る路線バス。停車したバスの車内には、地元の百貨店が用意した化粧品や農産物など約300の商品が並んでいます。買い物をできる店が少ない地区などで週に2日行う移動販売の実証実験です。

客の1人は「年をとったらなかなか(店に)行きづらくなった。ありがたい、すごくうれしい」と笑顔を見せました。

このバスは前方に10席ほどを残し、後方が売り場に改造されています。

移動販売を行うことで百貨店にとっては新しい売り場ができ、バス会社には売り上げの一部が入ります。人口減少などでバスの利用者が少なくなる中、双方にメリットが生まれる仕組みを目指しています。

運行する十勝バス 長沢敏彦事業本部長

「収益の多角化と地域の不便さの解消、課題解決につなげられるのではないか」

乗り合いタクシーで生鮮品などを宅配

乗り合いタクシーを宅配サービスにも活用することで買い物を便利にしようという取り組みも始まっています。

福島県浪江町で2月上旬まで行われた実証実験では、客を乗せたタクシーが途中でスーパーや鮮魚店などに立ち寄り、別の客がインターネットで注文した商品を集荷。そして注文した客の自宅まで配達します。

利用した客の1人は「車がなくても生活できる実感が湧く」と話します。 

乗り合いタクシーのシステムでは、客がアプリを使って時間や乗る場所、行き先を予約します。複数の客を最も効率的に乗せたり降ろしたりできるよう、最適なルートを割り出すためにAI=人工知能が使われています

タクシーの運行中に買い物の注文が入ると、AIが客の輸送と宅配をむだなく行うルートをすぐに決めて運転手に伝えます。

このシステムの開発を担う大手自動車メーカー「日産自動車」では、タクシーと宅配の両方を1台で担い、2つの収益を上げる仕組みを目指しています。

モビリティ&AI研究所 宮下直樹さん

「人が少ない地域で持続可能なサービスをやっていくためには、効率的な運行が可能な技術・仕組みと、その地域でのニーズ・課題をうまく結びつけることがポイント」

今回の実証実験は国や自治体の補助金を受けて行われ、事業化をこれから検討していくということです。地域交通の維持は全国共通の課題ですから、さまざまなアイデアが出てきてほしいと思います。

【2022年2月14日放送】