高専から羽ばたけ 半導体人材

台湾の半導体大手「TSMC」は24日、熊本県菊陽町の工場の開所式を行う予定です。北海道千歳市では先端半導体の国産化を目指す「Rapidus(ラピダス)」の工場建設が進み、国内で半導体産業への投資が加速しています。

しかし、いま直面しているのが人材不足です。半導体人材を送り出そうと、高等専門学校が企業と連携して動き出しています

佐世保工業高専の“いちばん人気” エンジニアに製造工程学ぶ講座

ぎっしり座席が埋まる半導体の製造工程を学ぶ講座

長崎県佐世保市にある佐世保工業高等専門学校。学生にいちばん人気の授業が2022年から始めた半導体の製造工程を学ぶ講座です。現在84人が学んでいます。

長年、半導体メーカーで働いてきたエンジニアが講師となり、製造工程ごとに求められる技術や工夫を、現場の目線で解説しています。取材した日は、半導体メーカー出身の神田誠さんが授業を行っていました。

講師を務めた半導体メーカー出身の神田誠さん
ユニークな授業内容も

神田さんは「ダイシング(半導体の切断)の命は、ブレードソーという砥石が命。刃をすごく精度よく作れるのが日本のメーカーのいちばんの強みになっている」と話し、半導体産業の中でも、日本企業が持つ強みや将来性をアピールしていました。

高専と企業 「一緒に人材育成の仕組みづくり」

高専と講師らとの打ち合わせ

企業から講師を招いた高専側も、半導体業界に多くの学生を送り出したいと考えています。

TSMCの進出を契機にますます高まる半導体人材へのニーズに応え、即戦力を育成することで、“シリコンアイランド”九州の新たな担い手になってもらおうというのです。

佐世保工業高等専門学校 猪原武士 准教授
(企業から)ご意見をいただいたり、仕組みづくりを一緒にした。半導体の業界を志す学生を増やす、きっかけづくりという位置づけで授業しようと

今春 40人が半導体業界へ

4月からは、この高専で学んだ40人が半導体業界に羽ばたきます。5年生の町田智幸さんもその1人です。

5年生の町田智幸さん

町田さんは、高専が導入した、企業でもあまり置いていないという超小型の製造装置で学んだ経験から、即戦力としての活躍が期待されています。

超小型の製造装置で学ぶ

半導体企業に就職する 町田智幸さん
学校で半導体をつくっている学生なんてあまりいないと思うし、貴重な時間だなと思う

北海道の高専でもエンジニア授業が始動

千歳市で進むラピダスの工場建設

こうした九州での人材育成に学ぼうと動き出したのが、北海道です。千歳市では、先端半導体の国産化を目指すラピダスの工場が建設されています。

旭川市にある旭川工業高等専門学校は2024年から、半導体企業からエンジニアを招いた授業を始めました。

ただ九州と異なり、半導体産業が地元にまだ根づいていないため、学生にどう魅力を伝えていくか模索が始まっています。

旭川工業高等専門学校 篁 耕司 副校長
企業の方がどういった授業をして学生に伝わるか、という感覚をもっていない状態。人材育成をしようとする場が広がっていく、そういう仕組みをつくっていきたい

高専の教育プログラムは日本独特のもので、最近は企業と連携するケースも増えています。
授業で企業と連携することができれば、学生にとっては就職したイメージを持ちやすく、企業にとっては即戦力育成が期待されます。

日本が半導体産業で復活するために人材育成は欠かせません。高専が果たす役割が期待されます。
(経済番組 家坂徳二)
【2024年2月6日放送】
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