2023年の農林水産物と食品の輸出額は1兆4547億円となり、前の年を2.9%上回って過去最高を更新しました。
「日本の農業は海外で戦える」。日本の農作物の潜在力に活路を見いだして、独自の技術でいちごの品種改良の高速化に取り組む農業系スタートアップ企業があります。新しい品種を開発し、農家とともに収益アップを目指すそのビジネスとは?
5倍以上の速さで新しい品種を生み出す
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3年前に農業系スタートアップ企業を立ち上げた野秋収平さんは、いちごの品種改良の高速化を進めています。
葉から遺伝子情報を取り出して、ひとつひとつの株が持つ甘さや固さ、収穫できる量など10項目以上を評価。どのように交配すればよりよい品種ができるのかシミュレーションします。
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そして、光の波長や二酸化炭素の濃度などを調整して光合成を促進します。
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これまでの5倍以上の速さで新たな品種を生み出せるといいます。
農業系スタートアップ企業 代表 野秋収平さん
「3000~4000以上の株(品種)は育ててきたのかなと思う」
「日本の農業は海外で戦える」
大学時代から農業とテクノロジーを組み合わせた研究を続けてきた野秋さんは、海外に留学したときに日本の農作物が持つブランド力の高さを実感し、「農業は海外で戦える」と考えて起業しました。
社内会議で、野秋さんは仲間に次のように伝えました。
野秋さん
「半導体とか、やっぱり台湾のほうが強い。日本はいろんな産業で厳しい戦いになってきているけど、日本の最後のフロンティアは“食”なんじゃないのか」
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農家と一緒に収益アップを
野秋さんたちは、このビジネスを農家と一緒に育て上げたいと考えています。地域の農家に協力してもらい、新たな品種の量産化に向けて、育てやすさや味にばらつきがないかを確認しています。
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東京・練馬のいちご農家。生育状況を確認するために訪れた野秋さんに、農家の男性は「一つの(新しい)品種として持ってみたい気持ちは強い」と話していました。
構想では、新しく作った品種が海外に流出しないように登録します。農家に生産を委託し、それを高い値段で買い取って国内外に販売することで、農家の収益を上げようとしています。
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国内外ファンドが関心
日本の農作物がさらに評価されるのではという期待から、国内外のファンドから申し出が来ているといいます。
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「日本発のイノベーションを次のステージへ」
そして将来目指すのは、気候変動に対応した品種の開発です。市場を広げるだけでなく、世界の課題解決にもつなげたいと考えています。
野秋さん
「いちご以外の作物にもどんどん展開を進めていきたい。日本発のイノベーションを、もっと大きいマーケット、生産地域に広げていく」
日本でもスタートアップ企業を税制面などで支援する仕組みができつつあります。日本から世界的なイノベーションを生むために、スタートアップを育てる環境づくりがますます重要になっています。
【2024年1月31日放送】
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